原神IF -知っているようで、知らない世界- 作:白い花吹雪。
戦闘が始まって、およそ5分経った。
戦況は……正直微妙なところだ。
引き続き、飛び出させてくる岩が消えた後に出てくるコアのような球体を攻撃し、それを敵に飛ばしてダメージを与える……という戦法で削ってはいるので、ある程度体力は減らせているはず。
しかし、何分攻撃が痛い。
ジャンプ攻撃はタイミングよくジャンプすれば躱せるし、引っ掻きやブレス、岩突き出しも避けること自体はできるものの、タイミングが難しい。
攻撃が強烈すぎてシールドが簡単に割られてしまうので、度々結晶反応が起きてできる欠片が勿体なく感じる。
こんな時、ナヴィアがいてくれれば……と思ってしまう。
何より、私たちみんな疲れてきている。
ロサリアなんかは、イライラしてきたのか悪態をつき始めている……人探しにきただけなのに、なんでこんなデカブツと戦わなきゃないんだ、と。
気持ちはわかるが、私からすればわりとよくあることだ。
前の世界でも、そんなことが何回あったことか。
「た、旅人……!本当に、このままでいいの!?」
焦りを隠しきれない様子のバーバラが、心配げな表情で言ってきた。
まあ、正直自信は持てないが、とりあえず答えた。
「大丈夫……無理に攻撃しても、ほとんど削れない。これまで通り、あの岩を出す攻撃の後に残る球体を攻撃して、その反動でダメージを与えていこう」
バーバラはもちろん、アンバーも本当にそれでいいの?と怪訝な顔で聞いてきたが、私は頷いた。
ギミックはわかった。あとは、それをしっかり攻略していけば、勝てるはず。
理不尽な強敵は幾度となく見てきたが、そのほとんどが「倒せない相手」ではなく、「攻略が難しい相手」だった。
そして今回も、正直場違いなほどの強敵ではあるけど、決して倒せない相手ではないはず。
今、また出してきた岩の中身を攻撃して跳ね返したら、大きく怯んだ後に咆哮を上げ、白いシールドを張ったのが、その証拠とも言えるかもしれない。
「何……!?」
ロサリアがスキルで飛び込み、アンバーも炎の矢を撃ったが、これまでにも増して効いている様子がない。
彼女らは焦ったが、私はすぐに見抜いた──白シールドを張ったということは、やはり弱ってきている。
たぶん、ここからは普通に攻撃してもほとんどダメージが通らない。
ギミック……つまり、例の岩攻撃の後に残る球体を攻撃して、相手にダメージを与える……というのをやることでダメージを与え、シールドを削れる。
「敵の召喚物を攻撃し、敵に打ち返すことでシールドを削る」というギミックは、黄金王獣やカニ皇帝などと似たものがある。
あれらとは違い、特定の元素攻撃でなければならない……というような制限はなく、どんな攻撃でも反応してくれるようだが。
というか、よく考えるとこの魔物……前の世界にいた黄金王獣とよく似ている。
フォルムや大きさ、ギミックはもちろん、何なら岩元素の攻撃をしてくる、デバフを付与してくる、というところも似ている。
もしかして、何か関係があるのだろうか。
「震えなさい!」
ロサリアが元素爆発を使い、岩の球体にダメージを与える。
そこにアンバーも爆発を使い、さらに私も飛び込んでスキルで攻撃した。
球体はたちまち膨れ上がり、ハウンドに向かって飛んでいく。
相変わらず敵は多少怯む程度で、すぐにこちらに飛びかかって引っ掻いてきたが、削れたとは思う。
あと数発、同じように攻撃を当てられれば……。
しかし、その前に回復がしたい。
攻撃も十分痛いが、そこに蝕破が追い打ちをかけてくる。
……今思い出したが、これは蝕破ではない。
確か、前の世界で「出血」とか「侵蝕」と呼ばれていたデバフだ。
「蝕破」のほうは、もっと後のボス……例えばグーシィ・トースなんかの攻撃によく付与されていたやつだ。
まあ、ほぼ同じようなものではあるが。
「元気出してよ!」
どこか懐かしさを覚えるセリフと共に、バーバラが元素爆発を使う。
それによって大きく体力とスタミナを回復できたおかげで、次に来たブレス攻撃を誰も被弾せずに避けることができた。
ところで、バーバラは確か爆発がかなり重かったような……と思って見たら、西風教典を持っていた。
なるほど、あれのおかげで元素エネルギーを回収できていたのか。
ちなみに他の2人の武器は、ロサリアが匣中滅龍、アンバーがシャープシューターの誓いとなっていた。
アンバーはともかく、ロサリアのはどこで手に入れたんだろう……と思ったが、きっとこの世界では一般人でもレア度が高めの武器を手に入れられるのだろう。
なお、私の武器は言わずもがな。
まだまだ冒険は始まったばかりなので、初期武器なのは仕方ない。
黎明の神剣くらいは持ちたいところだが、いつ入手できるかわからないし、今は期待しないでおく。
それからも猛攻を躱し続けること数分、再びハウンドは岩を召喚する攻撃を出してきた。
バーバラが被弾して吹き飛ばされたが、他の3人はちゃんと回避できたので、その後の球体への攻撃には支障はなかった。
そして私たちの攻撃を受け、膨れ上がった球体はハウンドに向かって飛んでいき、ハウンドの顔に命中した。
すると、ハウンドはひときわ大きな咆哮を上げ、その場にぐったりと倒れ……消滅した。
「……やった!」
バーバラが喜びの声を上げる。
また、ハウンドの死体が消滅すると同時に複数の素材が落ち、近くに宝箱も現れた。
素材はやはり獣域ハウンドのもので、指爪……つまり最低レア度のものが12個、その1つ上の利爪が6個、最高レア度の鬼爪が2個取れた。
宝箱の中身は、武器や天賦の強化に使う素材がそれぞれ8個ずつと10000モラ。
この報酬量からして、やはりこいつは地方伝説だったのだろう……倒すと、初回だけだが宝箱が出てくるというのも共通している。
しかし、序盤からこんな大量の素材を入手できるとは……何だか先行きが良い。
まあ、今の時点では使い道はあまりないだろうが。