原神IF -知っているようで、知らない世界- 作:白い花吹雪。
炎銃が水辺に落ちたことで、一瞬だけ敵の陣形が乱れた。
大した深さではなかったので、炎銃は慌てて立ち上がろうとするが、水たまりのせいでまともにシールドを維持できない。
私は再び元素スキルを放つ。
吹き荒れる風が、周囲の水を巻き込みながら炎銃を叩く。
拡散した水元素によってシールドはさらに削られ、炎銃はその場で膝をついた。
だがその直後、雷ハンマーが横から突っ込んできた。
巨大なハンマーが唸りを上げる。
私は咄嗟に横へ飛び、地面を転がった。
その直後、私がいた場所に雷ハンマーが叩きつけられる。
轟音が響き、地面が砕け、紫色の電流が四方へ走った。
「危なかった……!」
「余所見をするな!」
今度は風拳が高速で接近してきて、拳を振るう。
しかし、その拳が届く前にディルックの大剣が割り込んだ。
金属同士がぶつかるような音が鳴り響く。
ディルックは無言で、大剣に炎を纏わせて振るった。
元素スキルを織り交ぜた3発の攻撃が、風拳を吹き飛ばす。
そこへ、リサの雷が落ちた。
タイミングよくポツポツと雨が降ってきており、それによって感電反応が広がり、近くにいた水銃と氷銃も巻き込まれた。
「ぐっ……!」
「なっ……!?」
先遣隊たちが動きを止める。
その隙を見逃さず、ジンが剣を抜いた。
「風よ!」
烈風が吹き荒れる。
ジンの元素スキルによって、敵がまとめて引き寄せられた。
私は思わず目を見張った。
……強い。やはり、西風騎士団の代理団長だ。
私が使う風元素とは比べ物にならないほどの力で、敵の体勢を崩している。
「今のうちだ!」
ジンの合図と共に、ディルックが元素爆発を放った。
炎の鳥が雨の中を突き進み、炎銃、水銃、氷銃がまとめて吹き飛ばされた。
蒸発、溶解、過負荷……元素反応が次々と発生し、戦場が眩しく染まる。
「おおー!ずいぶんと派手だな!」
パイモンが囃し立てる。
だが、敵も黙ってはいなかった。
「……術師様!」
岩使いが叫ぶ。
その声に応じるように、後方の雷蛍術師が手を上げた。
すると、周囲を飛んでいた雷蛍たちが一斉に紫色の光を放つ。
……嫌な予感がした。
「みんな、下がって!」
私が叫んだ直後、大量の雷蛍がこちらへ殺到した。
まるで紫色の嵐だ。
私たちは身構える。
幸い、この雷蛍たちは私の元素爆発でまとめて吸い寄せ、吹き飛ばすことができた。
さらに、そこにディルックがスキルを使って飛び込んだことで、容易く消し飛んだ。
その時、背後から竪琴の音色が響いた。
優しく、それでいて力強い風の音……ウェンティの演奏だ。
その音色に呼応するように、風龍廃墟を覆う不気味なバリアが震え始める。
「よし、もう少しだ……!」
ウェンティが額に汗を浮かべながら言う。
その様子を見た雷蛍術師は舌打ちした。
「急ぎなさい!あの男を止めるのよ!」
先遣隊たちが再び動き出す。
そして、私たちも改めて武器を構えた。
そこからは、ファデュイたちの行動が少しだけ変わった。
私たちを攻撃してくるのは変わりないのだが、その先の目的が変わっており、ウェンティを狙っているように思える。
例えば、炎銃はバックステップで距離を取りつつ狙撃してくるのだが、その銃口は私ではなくリサの方に向いている。
そしてそのリサのすぐ後ろには、ウェンティがいる。
また、定期的に飛び込んでくる氷銃と水銃は、あからさまに凍結を狙ってきているのだが、その際狙われるのは私たちだ。
だが、これは見方によっては「凍結で私たちの動きを止め、その隙に仲間にウェンティを攻撃させようとしている」ようにも思える。
そのことは他の人たちも薄々気づいていたようで、特にディルックは自然とウェンティへの攻撃を防ぐように戦っていた。
また、ジンも彼への攻撃を風で吹き飛ばし、反応が起きたりしないようにしていた。
そうこうしている間に雨が降り止み、炎銃がまたシールドを展開した。
まあ、どうせこいつは遠距離から攻撃してくるし、正直あまり影響はない。
ついでに、氷銃の脅威度も下がったように感じる。
こいつは水辺や雨の日に出てくると厄介だが、そうでなければ水銃と一緒でもない限り凍結は起きないし、その水銃はリサとディルックの爆発を受けて消し飛んでいた。
また、ジンが元素爆発を使ってくれたことで、私たちは持続的に体力を回復でき、かつ水銃や雷ハンマーのシールドを拡散で削ることができた。
水銃はリサの雷、雷ハンマーはディルックと私のスキルも合わさってみるみる削れていき、倒れるまでそう時間はかからなかった。
すると、これまで黙っていた雷蛍術師がシールドを纏いつつ攻撃してきた。
相変わらず雷蛍を飛ばし、距離を保ちつつ攻撃してくる。
隣にいる炎銃とのコンボで過負荷を起こしてくる可能性もあるので、厄介だ。
そこで、私は一か八か大きく踏み込んで近づいた。
そしてスキルで炎銃のシールドを吹き飛ばし、雷蛍術師の攻撃を紙一重で回避した。
私の狙いは、ひとまず炎銃を黙らせること。
どうせこいつは、もう一押しで倒せる程度には消耗しているはず。過負荷を起こされないよう、先に仕留めておきたい。
その目論みは見事成功し、炎銃は次の私の攻撃で倒れた。
これで、残るは雷蛍術師だけだ。
こちらはシールドの耐久値がまだあるので、炎銃のようにスキルを溜めてシールドを削り切ることは難しいだろう。
おまけにこいつらは、シールドがあるうちは吸引が効かないので、私が真っ向からやり合うのは危険だ。
なので、こればかりは他の人に頼らざるを得ない。
そう思っていると、ウェンティの声がした。
「……やった!成功だ!」