原神IF -知っているようで、知らない世界- 作:白い花吹雪。
「はあ……!?っ、こいつ!」
雷蛍術師はウェンティを睨みつけ、彼目がけて雷蛍を飛ばした。
だが、それを私が剣で弾き飛ばす。
「このっ……!邪魔するな!」
そう言っている間に、横からジンの元素スキルで吸い寄せられ、空高く打ち上げられる。
そして落ちてきたところを、私の元素スキルで吹き飛ばす。
数秒遅れて立ち上がってきた雷蛍術師は雷蛍を3体召喚して吸収し、シールドを張って笑い声を上げた。
前の世界で、こいつのシールドは雷ハンマーとはまた違った理由で嫌いだったのを思い出した。
というのは、こいつはシールドを展開している間、近づくだけで持続的に雷元素のダメージを受ける電撃を発してくるのだ。
遠距離から攻めれば問題ないし、シールドは時間経過で自動的に割れてくれるが、それでも痺れさせられながら近距離で戦うのはストレスになる。
まあでも、それはあくまで前の世界の話だ。
今度の世界では……と思いきや、なんと浮遊して一度姿を消し、その直後に私たちの中に現れてノックバックする……という、アビスの魔術師のようなことをしてきた。
あちらと違って踊ったりはしないが、それでもシールドがあるのをいいことにこちらを嘲笑ってくるので、イライラさせられるのには変わりない。
「ずいぶんと度胸のある女だ……」
ディルックが呟き、元素スキルを使って斬り込む。
過負荷が起きるが、あいにくこいつはシールド展開中は吹き飛ばず、怯みもしなかったはず。
こちらの世界でもそれは同じであるようで、ディルックが爆発に巻き込まれて吹き飛んだだけだった。
ならばと、ジンが元素スキルを使う。
長押し……もとい溜めありの元素スキルにより、複数回の拡散が起きたことで、シールドの大幅な消耗が見込めると直感で感じた。
そして実際にシールドは壊れたのだが、その直後に雷蛍術師はテレポートをして、うまく逃げた。
だが、それは決して彼女が駆け引きに勝ったというわけではなかった。
「風だー!」
ウェンティが元素爆発を使い、雷蛍術師を吸い寄せつつ大きく巻き上げた。
狙ってかはわからないが、彼女がテレポートしたのは、ウェンティのすぐ近くだったのだ。
爆発終了と同時に雷蛍術師は墜落し、全身を地面に強く打ち付けた。
そして、「どうして……私は……」と呟き、動かなくなった。
「……よし、これで片付いたな。しかし、まさか君がとどめをやるとは」
ディルックに感心したような目で見られて、ウェンティは照れくさそうに笑った。
「ボクだって、戦えないわけじゃないよ。もちろん本業ではないけどね」
「まあ、当然ではあるか。何しろ君は、吟遊詩人の皮を被った風神様なんだからな」
前の世界から思っていたが、正直ディルックは風神をあまり信仰・尊敬していないように思う。
それはロサリアにも言えることではあるが。
ただ、こちらは店の常連でありながら、ツケをよく作っているのもあるかもしれない。
鍾離先生といい、テイワットの男の神様は金銭面の意識がちょっと変わっているのはなぜなのだろうか。
「それより、これで先に進めるのよね?」
リサが確認すると、ウェンティは頷いた。
「ボクと、復活したライアーの力に嘘はないよ。あの穴から、中に入れるはずさ」
そうして私たちは、ウェンティが空けた穴を通り抜け、風龍廃墟の中へ足を踏み入れた。
そしてすぐ、濃厚なアビスの力の気配を感じた。
同時に、私以外の全員が何かに苦しみだした。
リサ曰く、「この廃墟に満ちる力が、私たちの体内の元素力と何らかの反応を起こしているのでしょう」とのことで、例のトワリンの涙を思い出した。
「うわ……キツそうだな。大丈夫か?進めるのかよ?」
パイモンが心配げな顔をする。
もちろん、この非常食は元素力など持っていないため、特に何も感じてはいないらしい。
同様に私も、これといった不調は感じない。
また、ウェンティも同じく不調を感じてはいないそうだ。
「もしかしたら、神の目を持つ者だけが影響を受けているのかもしれないね。ボクの神の目は、見た目だけ似せた偽物だし、旅人はいろいろ特別だし」
確かにそうだ……と思ったが、そこでパイモンが何やらむくれた。
「おい!吟遊野郎!オイラのことを忘れんなよ!」
「はは、ごめんごめん。で?君は大丈夫なのかい?」
「おまえのせいでイラッとしたけど、大丈夫だぞ!」
「そっか、ならいいね」
「でも不思議だね、私たちだけ……」
そう呟くと、ウェンティは「その答えは、この先で見つかると思うよ」と言った。