原神IF -知っているようで、知らない世界- 作:白い花吹雪。
翌日の午前10時、私たちはヴァルベリーを集めていた。
なぜそんなことをしているのかというと、冒険者協会の依頼を引き受けたからだ。
今回の依頼人は、母のためにフルーツジュースを作りたいらしく、自分はググプラムを集めてくるから、ヴァルベリーを集めてきてほしい……という内容の依頼だった。
依頼人の名前はわからないが、依頼文の書き方からするとおそらく女性。
内容的には、比較的幼い子供が書いたものだろうか。
それで、その要求数はなんと20個……多い。
ヴァルベリーはモンドの中でも北東のエリアにしか生えていない上、まとまった数を集めるのは地味に大変なので、そりゃ依頼を出したくもなるだろう。
ついでにこのあたりには、魔物やファデュイもうろついている。
後者は一般人を襲うようなことはまずないのでまだいいのだが、問題は前者だ。
魔物と言っても、この辺りに出てくるのは基本的にスライムやヒルチャール程度だが、時々トリックフラワーが出てくることもあり、この場合一般人にはさらに危険な存在となる。
普通に地上にいるものの他、相変わらず植物に擬態しているものもおり、ヴァルベリーから出てくることはないにせよ、スイートフラワーやミントを取る場合は注意が必要だ。
なお私はというと、最初は風スライムに少しばかり手を焼いていた。
言わずもがな風元素は無効だし、空を飛ぶと攻撃が当たらないしで、強くはなくとも面倒な相手だ。
なので、ここに来るまでの道中で偶然拾った弓を使って空中のスライムを仕留めた。
何気に前の世界でも、ギミックで浮遊している風スライムを弓で撃ち抜くというものがあったのを思い出した。
ちなみに今回拾った弓は、おそらくだが「シャープシューターの誓い」。
森の中にポツンと落ちていたのを拾ったのだが、なぜこんなものが落ちていたのか……いや、確かにその辺に武器が落ちていることは前の世界でもあったが。
弓としての性能はというと、私の知るシャープシューターと同じで何とも言えない。
ただ、前の世界のモンドではもっと弱い弓を握っていたので、まだマシだとは思う。
「しかしおまえ、すごいよな!剣だけじゃなく、弓の腕もあるなんて……!」
何を今更、と思うが、確かに今回の世界で弓を使うのは初めてだし、あくまで目の前のパイモンは前の世界のとは別人だから、そう思うだろう。
ちなみにこの後、たまの休日で来ていたらしいアンバーに出会った。
こちらも私が弓を握っていることに驚いていたが、何より自身と同じ弓を持っているのかと驚いていた。
確かに、アンバーが持っている弓はシャープシューターの誓いだ。
「これはついさっき拾ったものなんだけど……偶然だね」
「そうね。でも、あんたも弓を使えるなんてちょっと意外。いや……栄誉騎士様にこんな言い方は失礼かな」
「そうだぞ!何しろこいつは、この世界のことを全部知ってるんだからな!」
「……えっ?どういうこと?」
パイモンが余計なことを言い出したので、私は慌てて「何でもない。気にしなくていいよ」と取り繕った。
間違ったことは言っていないのだが、この世界の人にそれを言っていいのかわからないので、可能な限り秘密にしなければならない……後でそう釘を差しておかなければ。
「それで?ヴァルベリーを探してるんだって?」
「そうなの。冒険者協会から依頼を受けててね……あと4個なんだけど」
「4個か。なら、あっちのほうに生えてたと思う」
「わかった。ありがとう」
アンバーの言う通り、少し北に行ったらヴァルベリーが生えていた。
1つの株に4個実がなるので、一株見つければそれで解決だ。
「よし、これで20個だな!戻って報告しようぜ!」
あとは、いつも通りワープポイントを使って町まで戻り、冒険者協会に依頼のものを渡して、報酬を受け取る。
その「報酬」の中には、なんと片手剣の原型が入っていた……いや、ありがたいのだが、依頼人はどこでこんなものを。
ただ、現時点では有効活用する手段は少ない。
鉱石素材も集まっていないし、何ならレシピだって持っていない。
せいぜい、斬岩・試作を鍛造するくらいか。
いろいろと思い入れのある武器なので、持ってはおきたいが。