原神IF -知っているようで、知らない世界- 作:白い花吹雪。
ある朝、私はパイモンに璃月のことについて尋ねた。
トワリンの件も一段落したし、そろそろモンドを離れる時が近づいてきたのではないかと感じていた。
だが、今度の世界でも前と同じようにいくとは限らないし、何なら国を隔てた移動に何かしらの障害があるかもしれない。
なので、そのようなものがないか聞くためにもパイモンに知っていることがないかと尋ねたのだ。
「真っ先に思いつくのは、やっぱり『デカラビアの城壁』だな。モンドと璃月を隔てる、すごく大きくて長い城壁だ!」
さっそく知らない名前が出てきたので、詳しい説明を希望したところ、こういうことだった。
『デカラビアの城壁』は、およそ500年前に風神の眷属デカラビアが作ったという城壁で、厚さ10メートル、高さ40メートルの壁がモンドと璃月の国境に沿って建てられており、現在でも事実上両国の国境となっている。
建設の目的はよくわかっていないが、デカラビアは何らかの理由で璃月の人間あるいは仙人を嫌っており、彼らとモンドの者が関わるとロクなことがない、と考えてこのようなことをしたとも言われている。
ちなみに、ドラゴンスパインはしっかりモンド側に含まれている。
「昔はもっとちゃんとした城壁だったらしいけど、長い年月のうちに風化したり、人間が壊したりしたから、ボロボロなんだ。今じゃ壁がほとんどなくて、普通に通れる場所もあるくらいだぞ」
「そうなんだ。それにしてもモンドと璃月の国境になるなんて、相当長い城壁なんだね」
「ああ!あちこち壊れたり、ヒビが入ってるとこはあるけど、それでもすごく立派な城壁なんだ。初めて見たら、きっと驚くぜ!」
デカラビアの名前も久しぶりに聞いて、そういえばそんなのいたな……と思った反面、城壁というのは見てみたい。
話を聞く限り、モンドの町を囲む城壁など比べ物にならないほど大きくて立派なものらしいが……それが本当なら、見てみたいものだ。
「でも、どうしてそんなこと聞くんだ?璃月に、何か用事があるのか?」
「それは……まあ、そうだね。兄のことを知っている人がいないか、聞きに行きたくて」
忘れがちだが、今回も私の目的は「生き別れた兄を探すこと」。
詳しい状況はなぜか覚えていないが、とにかくこの世界に来てすぐ兄と離れ離れになったことは確実に覚えている。
今回の世界は、何もかもが前と少しだけ違う。
それでも、私のするべきこと、そして旅の目的は……前と何も変わりない。
地図を見た限り、国々の名前や地形は前とほとんど同じであるようだし。
「それなら、モンドのみんなにひとこと言っていかないとな。何にも言わずに立ち去るのは野暮だぜ」
「もちろん」
とは言ったが、前の世界と比べると何か違う……あるいは足りないような気がする。
具体的に何であるかは、わからないが。
町中を散策していたら、ガイアに連れられて歩く4人の男と、その後ろを歩くモナとアリアの姿を見かけた。
「おお、栄誉騎士か。なに、大したことじゃない。悪事を働いた連中を移送するところだ」
「悪事?この人たちが?」
「そうだ。こいつら、昨日の夜モナとアリアの家に盗みに入ったらしくてな。モナは気づかなかったが、アリアはばっちり気がついて、捕まえたってわけだ」
アリアは、たまたま深夜に起きてきた時に彼らが家の中を物色している現場に出くわし、炎元素の力で彼らを牽制……というかやっつけて、西風騎士団に報告した。
その後の調査で、アリアの家にあった貴金属類の他、モナのものをちらほら持っていたことから、少なくとも2軒の家で盗みを働いたとわかり、拘束に至ったという。
「こいつらは前にもモンドに来て、空き巣をやってたんだ。それでドーンマンポートに追放されたはずなんだが、こうして戻ってきてたからな。裁判なしで、また追放になったってわけだ」
「それはわかったけど、どうしてモナたちもいるんだ?」
「奴らの移送を見たいらしい。このお嬢さんたちは被害者だからな、それくらいはいいだろうさ」
2人は私たちとの再会を喜びつつ、昨晩の被害について語った。
モナは魔法の羅針盤と星座盤を盗まれたのだが、寝ていてまったく気が付かなかった。
アリアが彼らを捕まえてくれたことに、感謝していると言っていた。
そのアリアはというと、刀身が金でできた剣と弓、それにいくつかの武器の原型を盗まれたらしい。
彼女が盗人たちに出会ったのは、彼らがものを取って逃げようとしていたところであったらしく、ギリギリ間に合って良かったと言っていた……まさか、その前にモナの家でも盗みを働いていたとは思わなかったらしいが。
「それに、今日はちょうど向こうで遺跡発掘の仕事があるからね。時間的にもちょうどいいし、どうせならこいつらの移送を見てやろうと思って」
1人の男がアリアを見たが、彼女はそれに気づくなり険しい表情をして、手をかざした。
それを見て、男は小さく悲鳴を上げてしゃがみこんだ。
「おいおい、気持ちはわかるが脅かさないでくれよ。馬車に乗るまでは歩いてもらわなきゃないからな」
「馬車?そんなのあるの?」
「町の外に待機させてある。そいつに乗せて、ドーンマンポートまでこいつらを運ぶ。あーでも、追加で2人乗るとなると厳しいかもな」
「それなら大丈夫です。私たちは馬車の屋根の上に乗るので」
モナは平然とそんなことを言う。
大丈夫なのか?とガイアに心配されたが、別に問題ないとのことだった。
「この者たちの顔など見たくもありませんが、今回の移送についていったほうがよい……と朝の占いで出ましたので」
それはモナ自身だけではなく、私たちにも当てはまると言ってきた。
「お二人も、今回の移送には付き添っていただいたほうがいいようです。何か発見……またはいいことが起きると、占いに出ていました」
「そ、そうなのか……でも、どうしてオイラたちのことまで占ってたんだ?」
「お二人が来ること、こうなることも占い済みでしたから」
「えっ!?すごいんだな、おまえって……」
パイモンが驚く中、ガイアが男たちを連れて歩き出したので、私達もそれについていった。
町の外には確かに馬車があったが、全員は乗れそうにない。
モナが魔法陣を浮かべて自分とアリアを乗せて屋根の上に腰を下ろすと、ちょうど残りの全員が何とか馬車の中に収まった。
まさか、これもモナは予見していたというのか。
だとしたら驚きだ……彼女の自信は伊達ではない。
前の世界でも、少なからずそうだったが。