原神IF -知っているようで、知らない世界-   作:白い花吹雪。

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43.ドーンマンポートにて

 ドーンマンポートに陸路で行くには、町を出た後囁きの森を抜け、望風山地と風止みの山を通っていく北回りのルートと、清泉町や奔狼領、明冠峡谷の横を通っていく南回りのルートがあるが、今回は前者だった。

まあ、後者だとかなり遠回りになるし、地形的にも難しいので当然ではある。

 

しかし、こちらもこちらでヒルチャールがたむろしているエリアを通る必要があり、結局簡単な道のりではない。

それに、前の世界ではこの辺にやたらと強いヒルチャールがいたはず……もちろん今回もそうかはわからないが、警戒はしてしまう。

 

「それにしても、罪人を追放するために移送するにしては、守りが手薄なんじゃない?」

 

「ごもっともな意見だ。だが、今は騎士団も町の復興に忙しくてな。こんなことに人員を割いてる余裕がないんだ」

 

 今回は直接その被害を目にする機会が少なかったので忘れがちだが、モンドの町はついこの前まで風魔龍による龍災に晒されていたわけで、今でもその被害は決して小さくない。

突風によって壊れた建造物の修繕、ケガをした人の治療に多くの費用や時間・人員がかかっており、騎士団は毎日猫の手も借りたいくらいの忙しさなのだそうだ。

 

「そういうことなら、言ってくれればいいのに」

 

「そうだぞ!オイラたちだって手助けするぜ!」

 

「ほう?そいつはありがたい話だ。だがな、お二人さんにそれをしてもらうのはなんか気が引けるんだ。一度、モンドを救うという大役を果たしてくれた異邦人に、町の復興まで手伝わせるというのは……な」

 

 ただ、これはあくまでガイアの個人的な意見であり、騎士団の意向とは無関係らしい。

とはいえ、少なくともジンが私達を町の復興に駆り出すのを控えているのは事実。

その理由は、十中八九ガイアと同じようなものだろう。

 

「私もそう思うな。風魔龍を鎮めてくれた栄誉騎士様に、そんなことまで手伝ってもらうのは申し訳ない」

 

「私も同意見です。むしろ、あなた達にはしばらく町でゆっくりしてほしいくらいです」

 

そう言ってくれるのはありがたいが、残念ながら私には目的があるので、あまり長く滞在するわけにはいかない。

もっとも、なんやかんやで時々帰ってくることにはなると思うが。

 

 

 

 風止みの山の西側まで来た。

確かこの先はミルハーヴェンだが、その間に川があったはず……と思っていたら、やはり川があった。

ただし今回は川に橋がかけられていて、誰でも簡単に通れるようになっていた。

 

今回も、ミルハーヴェンには豊かな花畑があった。

かつてはここでフェザーモスや風止みの花を集めたこともあった……懐かしい話だ。

そんな場所を通り抜け、ドーンマンポートに近づいていくと、見慣れた七天神像の光が見えた。

 

今に始まったことではないが、今回ははじめから青色の光を放っている。

ならばワープも……と言いたいところだが、それはできないのが残念なところ。

 

 いざドーンマンポートに着くと、4人の兵士がお出迎えしてくれた。

ガイアが事情を話し、町中まではこのまま行くことになった。

 

次に馬車が止まった場所には、何やら白塗りの壁の大きな建物があった。

ここは騎士団の支部らしく、追放になった者やドーンマンポートで悪事を働いた者はここに送られ、裁判を受けるそうだ。

 

「あれ?でも、裁判は誰がやるの?」

 

「もちろんジンだ。本来の団長がいない今、あいつしかそんな権限のある奴はいないからな」

 

「そっか……」

 

 

 

 建物の中に入り、受付で手続きを済ませて男たちの身柄を兵士に引き渡した。

過去に一度追放になっていたというのは本当らしく、彼らは呆れた反応をしていた。

 

そんな中、私はパイモンがとある壁の絵を見つめているのに気がついた。

なんでも、「なんか見覚えがある」とのことだ。

絵には青髪の男の騎士が描かれていたのだが、私もどこかで見覚えがある。

 

 やがて手続きを終えたガイアが戻ってきて、「この絵が気になるのか?」と言われたのでうんと答えたら、彼はこの絵について語ってくれた。

 

「こいつはローエンって奴だ。知ってるかもしれんがな」

 

その名前を聞いて、そういえばそんな人が前の世界にもいたな、と思い出した。

 

「かつて、俺と同じく西風騎士団にいた奴だ。勇敢で優しくて、いい奴だったんだが……3年前、病気で死んだ」

 

「……えっ」

 

 思わず声が出た。

前の世界では、彼は故人ではなかったのに。

 

「あいつはドーンマンポートの出身でな、騎士団の一員になった後もこっちに住んでたんだ。町の騎士団員で一番の働き者で、熱心な奴だった。ジンじゃなく、あいつが代理団長に選ばれるんじゃないかって噂もあるほどだったな」

 

それはまあ、疑う余地はない。

しかし、まさかこっちの世界の彼が既に亡くなっていたなんて……。

 

「きっと、とても強い人だったんだね」

 

「もちろんそうだったさ。けど……今にして思えば、自分より周りのことを優先しすぎてたんだろうな。でなきゃ、自分の体調の変化にも気がついてたはずだ。そして今ごろは……っと、こいつは失敬。今さらそんなことを言っても仕方ないな」

 

 彼は、ドーンマンポートにとってはまさしく名誉騎士だったため、こうして絵画が飾られているそうだが、今となっては過去の人物。

あくまでも「かつて騎士団に存在した人物」として扱い、今の騎士団にいる人物とは違うと考えるのが妥当だろうな、とガイアは言った。

 

確かにそうなのだろうが、なんというか……信じられない気持ちだ。

前の世界で生きていた人が、既に死んでいるなんて。

ガイアにとっては単なる過去の事実上でしかないのだろうが、私にとっては……こっちのミカが女性であることや、リサとジンが同性愛者であることを知った時と同じくらいの衝撃だった。

 

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