原神IF -知っているようで、知らない世界- 作:白い花吹雪。
その後、アリアがそろそろ遺跡発掘の仕事に行く時間だと言うので別れ……ようと思ったのだが、ここでパイモンが彼女の仕事場がどんなところなのか気になる、と言い出した。
さすがにそれはどうなのかと思ったが、アリア曰く「別に非公開の場所でもないし、いいと思う」とのことで、同行することにした。
アリアの仕事場は『ブネの遺跡』なる場所だそうだが、前の世界ではなかった場所であり、私もどんなところなのか気になるので、好都合だ。
ちなみに、モナも一緒に来るそうだ。
ドーンマンポートの南側にはワープポイントがあり、そこを東にいった先の長い階段を降りた先に、何やら黄色い屋根の小さな建物が立っていた。
ここが、ブネの遺跡の入り口らしい。
「え?ここが?……あ、そういえば地下にあるって言ってたな!」
「そう。この中の階段を降りていった先が遺跡だよ」
建物の中に入ってすぐにあった階段を降りつつ、アリアから遺跡について詳しく聞いた。
まずこの建物だが、もともとはサモンという高齢の男性が所有していた倉庫だった。
それが2ヶ月ほど前、サモンが亡くなったのを機に倉庫の片付けを騎士団が行ったところ、床に隠し扉があるのを発見した。
その下には小さな階段があり、そこを降りた先には小規模なトンネルがあった。
当初は地下室でも作ろうとしていたのか?と言われたが、トンネルの先端の壁に人1人がギリギリ通れる程度の大きさの穴があり、その先にはなんと町の遺構らしきものがあった。
このことはすぐに知れ渡り、町はおろか騎士団にも衝撃が走った。
遺跡には明らかに最近荒らされた形跡があり、倉庫の地下にトンネルを掘り抜いたのもおそらくサモンだと考えられた。
さらに、倉庫自体から明らかにモンド……というか現代のテイワットのそれとは違う文化財が多数発見された。
そのため、サモンはもともと持っていた倉庫の地下室を掘ろうとしていたら偶然古代の遺跡を発見、そこに眠る宝物を独り占めしようと考えた。そして騎士団にも誰にも報告せず密かに発掘を行っていた、と考えられた。
こうした遺跡が町の地下にあるとは誰も思ってもいなかったが、それでも間違いなく大発見だ。
そのため、持ち主のいなくなったこの建物自体が騎士団の管理下に置かれ、考古学者たちによって調査と発掘が行われるようになった……ということだった。
ちなみに現在ここで作業している考古学者のチームは、テイワット各地から遺跡の存在を知って駆けつけてきた人々によって構成されているが、およそ半数は璃月の人間らしい。
まあ、あそこはフォンテーヌ並みに遺跡の類いが多い場所だったと思うし、納得はいく。
「サモンが最初に掘ってた階段とトンネルは、どっちも騎士団メンバーが拡張して今も使われてる。それが今、私たちが降りてる階段」
「へえ……ところで、なんでブネの遺跡って名前なの?」
「遺跡から最初に見つかった彫刻が、歴史書に書かれたブネの姿にそっくりだったからだよ。あ、ブネってのは昔この地にいたっていう女神様の名前ね。ウェンティの詩にも出てくるよ」
そんな神様もいたのか……聞いたことないが。
いや、前の世界とはいろいろ違う世界だし、おそらくは女神というより魔神の眷属の名前なのだろうが。
階段を降りきると、なぜか騎士団メンバーと思しき男性が立っていて、私たちに身分と目的を聞いてきた。
アリアが「採掘手伝いの仕事で来ました。これが身分証です」と小さな紙を提示し、私たちのことは付き添いだと紹介してくれた。
といっても彼は私たちを見るなり、モンドの栄誉騎士だと見抜いたようだったが。
「失礼しました。どうぞ」
何事もなく通されたわけだが、パイモンはなぜあんなところに騎士団がいるのかとぼやいていた。
ただ、アリアによればある種の防犯対策らしい。
「遺跡のことが知れ渡ってから、町中で宝盗団のメンバーがよく捕まるようになって……おそらく、遺跡の宝物を狙ってきてるんだと思う。だから、そいつらを遺跡に入れないために、ああして見張りの人がいるの」
「あー、宝盗団か。あいつら、お宝がありそうなところならどこにでも出てくるからな!」
この宝盗団たちは、いかにも普通の人のような格好で町中をうろつきつつ、隙あらば遺跡への侵入を試みている。
さらに、町に滞在している間は生活のために空き巣やスリを行う者が多い。
結果として現在のドーンマンポートは、「町中に宝盗団メンバーがおり、かつ悪事を働く」場所になってしまっている。
当然騎士団も黙ってはおらず、窃盗事件が起きるたびに調査や拘束を行っているが、キリがない。
彼らの被害に悩む町の人からは、外部からくる人間を1人1人徹底的に調べるべきだ、という意見も上がっているほどだそうだ。
確かに彼らからすれば、これまでほぼ手つかずだった遺跡というのは魅力的だろう。
いつだったか、道案内だか何かをするふりをして私たちを狙ってきた宝盗団もいたことがあった。
あの時は、確かモナのおかげで助かったが……。
そのモナはというと、「発掘の仕事でいくら稼げるのか」とアリアに聞き込み、「私もやってみましょうか……」と真面目に検討していた。
相変わらず貧乏なようだ……いや、知ってはいたが。