原神IF -知っているようで、知らない世界- 作:白い花吹雪。
時間をかけて掘り出したのは、おそらく建物の土台であろう四角く白い物体。
ただし角の部分が1箇所欠けており、土台自体もヒビが入っていた。
「この遺跡で出てくる建造物は材質が脆くて、ほとんどヒビが入ってたり壊れてたりするの。どうも、今のテイワットにはない石材でできてるみたいなんだけど……」
アリアはそう言うが、私はこの石材に見覚えがあるような気がした。
もちろん気のせいかもしれないが、前の世界の霜月にあった石と似ているように見える。
ただ、あっちは別に脆い石材ではなかったと思うので、同じものであるのかはわからない。
「なら、宝物もそうなの?」
「それがね、宝物はほぼ完璧な状態で残ってるものが多いのよ」
「へえ……それもちょっと不思議だね」
「そうなんだよね。どうして建物だけが壊れてるのか?っていうのも、今の調査と研究のネタになってるんだって」
彼女は発掘員ではあっても考古学者ではないので、その辺はよくわからないという。
ただし、発掘される建物の中には人為的に壊されたように見えるものもちらほらあることから、「何らかの理由で争いが起きたのではないか」と考えているようだ。
もちろん、それが原因で滅びたのかは証拠がないのでわからないが。
ただ、少なくとも争いが起きた……というのは私も確実であるような気がする。
それがなぜ、何のために起きた争いであったのかはわからないが。
「それにしても、よくこんなところに町を作ったよな。日が当たらないし、町を広げるのも大変だっただろうに……」
「それなんだけど……実はここ、始めから地下の都市として作られたものだったのか、よくわかってなかったりするんだよね」
「え?どういうことだ?」
アリア曰く、この都市に関する議論の1つで「ここが地下の都市として設計されたものであったのか」というものがあるそうだ。
遺跡からは、恐らく周囲の掘削に使われたと思われるつるはしやスコップらしきもの、地下の都市の町並みやそこで暮らす人々が描かれた絵画、といったものが複数見つかっている。
しかし、同時にたんぽぽなどの植物の化石や、鎌やクワなどの農具も見つかっている。
そのため、「始めから地下の都市として作られた」という説と、「元々普通の地上の都市だったが、何らかの異変によって埋もれた」という2つの説が出ているらしい。
なお、後者の説には後押ししている伝説がある。
はるか昔、この地には風神バルバトスとその眷属が住んでいた。
しかし、やがて彼らの間で諍いが起き、大きな争いにまで発展した。
そんな中、特にバルバトスと激しく衝突したとある眷属がいた。
彼はモンドの北の地でバルバトスと激突し、その時の戦いの衝撃で海沿いにあった山が半分ほど崩壊、ふもとにあった都市が埋もれた。
結局その眷属はバルバトスに敗れ、かくなる上は……と自害した。
バルバトスは彼に失望し、「名前を後世に残さない」という罰を与えた。
2人の争いで崩壊しつつも半分残った山は、後に人々の新たな生活の場となり、「風止みの山」と呼ばれるようになった……というものだ。
無論、これはあくまでも伝説であり、本当にあったことなのかはわからない。
しかし、この遺跡が「崩壊した山のふもとにあった都市」と位置的にかなり近いこと、地下に埋まっているということから、伝説に語られる「埋もれた都市」なのではないか……という推測がなされているようだ。
「埋もれた都市か……意外とあるかもね、そういうの」
その時、変な声が聞こえた。
『あら、別に意外じゃないわよ?』
明らかにアリアやパイモンの声ではない。しかし、どこかで聞いたことがある……そんな感じの声だった。
もう一度聞けばわかりそうな気もしたが、再び聞こえることはなかった。