原神IF -知っているようで、知らない世界-   作:白い花吹雪。

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7.運命を変える者

 その後、ウェンティは1日半ほどで回復した。

そして私は、夕方に彼の休む部屋に行って彼と二人きりになったのだが……。

 

「旅人、君は……この世界の人間じゃないよね。それも、一度この世界に来たことがある」

 

単刀直入に言われて、少しばかり驚いた。

だが、彼は風神だし、それに……以前から、薄々気づいているような感じはしていた。

正直、確証は持てずにいたが。

 

「うん。私は、昔……この世界に来て、旅をした。離れ離れになった兄を探して、大陸中を巡った」

 

「そうだったんだね。……いや、実を言うとボクも薄々君に見覚えがあるような気はしてたんだよね。君を見て、昔、共にトワリンを救って、彼の背中に乗った人間がいたような……そんな記憶が蘇ったんだ」

 

 そう言えば、確かにそんなこともあった。

しかし、それを覚えているということは、彼もまた私と同じような存在なのだろうか。

 

「ボクは、なんでこの世界にいるのかはわからない。ただ、少なくとも……こことほぼ同じ、だけど何かが違う世界で、一度生きたことは間違いない。自分だけがおかしいんじゃないかって思ったけど、君を見てそうじゃないって確信できたよ」

 

ウェンティは、苦笑いするように微笑んだ。

 

「私は……たぶん、『生まれ変わって』きたんだと思う」

 

そう言うと、ウェンティは目を見開いた。

 

「どういう意味?」

 

「私は、一度このテイワットを旅した……最後まで。そして、その記憶をそのままに、少しだけ違うテイワットに降り立った」

 

 もちろん、全部はわからないし、説明もできない。

でも、今の私の理解している限りでは、そういうことだった。

 

「どういうことなのか、自分でもわからない。ただ、この世界は間違いなく見たことがある。でも……何というか、いろいろなところが前と違う。知らない人がいたり、“淑女”が現れて、あなたにケガを負わせたり……」

 

そこまで言うと、ウェンティは「ふーん……」と遠くを見て言った。

 

「それはきっと、違う季節の道を歩いているんだよ」

 

「……どういうこと?」

 

「同じ道でも、季節が違えば景色は変わる。それと同じさ。君は、同じ世界を別の季節でまた歩いているんだ」

 

「違う季節……」

 

「そう。まあ、わかりやすく言えば……『世界線』ってやつかな」

 

 そう言われると、途端に合点がいった。

つまり私は今、かつてとは異なる世界線にあるテイワットにいるのか。

だとすれば、これまでに起きた『記憶と違うこと』にも説明がつく。

 

どういう原理で、何が起きたのかはわからない。

だが、とにかく私は異なる世界線のテイワットに、記憶をそのままにしてやってきた。

であれば、気になるのは……。

 

「これから起きることは、どうなんだろう?」

 

「これから起きること?」

 

「そう。私は、前の世界で起きたことはすべて覚えてる。でも、それはつまり……これから起きることも、すべて……」

 

 できることなら、運命を変えたい。

良い結果は、より良い結果に。悪い結果は、少しでもマシな結果に変えたい。

 

だが、果たしてそれができるだろうか。

先の“淑女”の件もあったからか、不安な気持ちになる。

彼が神様だからよかったが、今後一般人があのような危険に晒されることがあれば……。

 

「それなら、心配はいらないよ。風向きは変わるもの。そして、風向きを意図的に変えられるのは、神に等しい存在だけだ」

 

「私は神じゃないよ」

 

「そうかな?でも……少なくとも、君がボクと同じようなものを持っていることは事実だろう?」

 

 確かに、ある意味ではそうかもしれない。

一度、違う世界線のテイワットを生きて、その記憶を今も持っているのだから。

 

「それに、君はこの世界で唯一、何も使わずに元素力を扱える存在だ。その意味では、神以上の存在だよ」

 

それは……まあ、否定はできない。

理由はともかく、私は神の目を持たずに元素力を扱える。それも、複数の種類の。

 

「とにかく、君はこれからまた、この世界を旅することになるだろう。でもきっと、前とは何かが違う。そこで吹く風の風向きをどう変えるかは……君次第だ」

 

 つまり、これからの運命は私自身が変えていけ、ということか。

それは、運命を知る者……つまり私にしかできないことだ。

 

「私は……この先、運命を変える」

 

そう呟くと、ウェンティは微笑んだ。

 

「怖がることはないよ。君ならできる。一度この世界を果てまで旅して、何人もの神の心を動かしたんだ。そんな旅人に、運命を変えることができないわけはないよ」

 

 そうだといいが……。

どうも、不安は抜けきらなかった。

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