原神IF -知っているようで、知らない世界-   作:白い花吹雪。

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8.見てはいけないもの

 夜、どうにも寝付けなかった。

パイモンはいつものごとく、隣で寝息を立てているが……私は、なぜか眠れずにいた。

 

窓の外を見ると、外はきれいに晴れていて、柔らかな月光が差し込んでくる。

このままいてもどうにもならないし、散歩でもしてこようかと思い立ってベッドを抜け出し、そのまま城の客室を出た。

 

 そのまましばらく進み、ふと人の気配を感じた。

しかしそれは、この時間にはとうに閉まっているはずの図書館からだった。

 

まさか、盗人でも忍び込んだのだろうか。

もっとも、私も前回の冒険で、このモンドで風神と共に盗みを働こうとしたわけだから、非難する資格はないが。

 

とはいえ、やはりそうだとすれば放ってはおけない。

そう思って、扉に手をかけてそっと押した。

 

 部屋の中は暗闇に包まれていた……のだが、その奥に何やらぽっと明るい光があった。

やはり誰かいるのか、と思った私は、絶対に音を立てないよう注意を払いながら中へ入り、足を進めた。

 

奥に進むほど、何かの音が聞こえてくる。

じゅっ……はうっ……と言うような、奇妙とも艶めかしいとも言える音。

やがては、人の声のような音も聞こえてきた。

 

 光に近づくほど、そこにいるものの影がはっきりしてくる。

2つの人影……どうやら、2人の人間がいるようだ。

 

しかし、あの方向は図書館内のベッドだったはず。

初めて見たときは、なぜここにベッドがあるのかと疑問に感じたが、盗み目的の者は近づかなそうな場所だ。

とすると、一体誰が何のために?

 

 恐る恐る近づいていくと、影と音はよりはっきりしてきて、そこにいる存在の正体を浮き彫りにした。

音は、はむっ……ぢゅっ……という感じの音になり、何やら別の意味でヤバいものを感じる。

 

そして、いよいよ人の姿がはっきりと見えた。

そこにいたのは……リサとジン。

2人はベッドの上で向かい合い、抱き合って……胸を密着させ、舌を絡め合っている。

それも、上着を脱いで。

 

「んちゅっ……はあ、素敵……」

 

「はうっ……暖かいな、あなたの舌……」

 

 この数秒で、私はすべてを理解した。

この2人は……百合、つまり同性愛の関係にあったのだ。

 

しかし、なぜ深夜の図書館で?と思ったが、これもすぐに合点がいった。

個室でやれば、隣の部屋にも音が聞こえるだろうし、部屋に出入りするところを誰かに見られるかもしれない。

その点図書館なら、夜はみんな見向きもしないから、気づかれる心配もない。

 

もしかしたら、図書館にやけに大きなベッドがあったのは、そういうことだったのかもしれない。

だとしたら、この2人はどのくらい前から関係を続けていたのだろう。

 

 前の世界では、こんなことは絶対になかったが……やはりこの世界は、私の知るテイワットとは違うようだ。

いや、確かに2人は職業柄近い距離にはあったが……まさか2人して同性愛者だったとは。

 

見てはいけないものを見てしまった、という衝撃と同時に、体の芯から湧き上がるような嫌悪感を覚えた。

本人たちにとってはいいのだろうが、私からすれば……正直言って気持ち悪い。

 

 片手を耳に当て、音を聞かないようにしながら、回れ右をして出口へ向かう。

心臓がバクバクする……もちろん、まったく違う意味でだが。

 

そのまま、愛し合う2人に絶対気づかれないように扉を閉めた。

しかしその後も、恐ろしいまでの心臓の鼓動を感じ取りながら、ぎこちない動きで部屋に戻ることになった。

 

 

 私は……いや、何も見ていない。何も知らない。

バーバラが見たら……いや、何も考えなくていい。

私はただ、夜に寝付けなくて、部屋を出て……そのまま適当に歩いていただけだ。

図書館なんか、覗いてもいない。

 

彼女たちは、私の知る団長と司書さんだ。

まあ、厳密にはちょっと違うが……いやいや、やっぱり私の知るジンとリサだ。

そんな、不純だったり卑猥だったりする関係など持っていないし、そんな趣味もない。

 

 いや、趣味はあるのかもしれないが……とにかく、私は触れない。

人の趣味嗜好、性癖は千差万別だ。

 

私はそういう概念はないが、世の中にはそういう人もいるのだ。彼ら彼女らに、私が干渉する権利はない。

明日あの2人に会ったら、なんてことは考えなくていい。

寝て起きて、今夜のことは忘れよう……きれいさっぱり。

 

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