原神IF -知っているようで、知らない世界- 作:白い花吹雪。
翌朝、私は起きてすぐに窓を見た。
昨日の夜に見たものが、夢ではないことを確認したかったからだ。
窓は、寝る前に開けた時とまったく同じ状態だった。
……つまり、あれはやはりというか、現実だったのだ。
「おはよー……ん?どうした?」
パイモンにそう聞かれたが、「なんでもない。目が覚めきらなかっただけ」と答えた。
間違っても、昨晩見たものを言うわけにはいかない。
いくら、彼女がどっちつかずの
廊下でガイアに会い、外で私たちを待っている者がいるので会いに行ってやれ、と言われた。
……正直、図書館とかでなくて良かったと思った。
外に行くと、すぐに「その人」に出会った。
そこにいたのは、モナとベネット……見慣れたモンドの住人2人。
ベネットは本来ナタの人間……だが、ここで言う必要はない。
私はこの世界の未来を知っている。だが、それを事前に本人たちに話すことがいいとは限らないと思うし、その結果どんなことが起きるかはわからない。
要するに、タイミングが重要なのだ。
もちろん、私と相手との関係性も。
「あなたが旅人さんですね?私は占星術士のモナ。こちらは、冒険者のベネットです」
うん、知ってる……モナが貧乏なことも、ベネットが絶望的にツイてないことも。
だが、ここで言うのは控えておく。
「そうだ、オレがベネットだ。よろしくな」
彼はそう言った直後、周りを素早く見回して「……よし!」と呟いた。
なんでも、こういう時に上から鳥のフンが落ちてきて、それが見事に頭に当たることがあるらしい。
「いや、そんなことそうそうないだろ……」
パイモンはそう言うが、彼なら十分あり得ると思う。
何しろ、目の前のスイートフラワーを取ろうとしたら、それがトリックフラワーの擬態だった……なんてことが日常茶飯時なのだから。
「それが、彼には十分あり得るのです。何しろ彼、いつ占っても不運な運命が待っているんですから」
モナは至って真面目な顔でそう言うが、直後にため息をついて「同情しますよ」と言った。
まあ、いつもそんな運命ばかり見せられていては、同情もしたくなるだろう。
「うーん、モナがそう言うと信じたくなるな……」
どうやら、この世界でもモナの占いは当たると有名なようだ。
まあ、そりゃ当たるだろう……何しろ、元々本物の魔女の弟子だったのだから。
その才能を活かせば、十分満足のいく生活ができると思うのだが、前の世界の彼女にはその気はなかった。
今回は、どうなのだろうか。
というかパイモン、もしかしてベネットに会ったことがないのだろうか?
どちらも、モンドに長らくいたはずなのに。
「それで、オイラたちに何の用があるんだ?」
「大したことではありません。ただ、挨拶に来たのと……ついでに、旅人さんの運命を占おうと思いまして」
「え、おまえが自分からそんなこと言うなんて珍しいな?」
「『風に乗って現れた異郷人を占い、その運命を見よ』……先日の占いで出た、私自身の運命です。それに、従っているだけです」
モナは私を見、「あなたは占いを信じますか?」と聞いてきた。
当然、はいと答えざるを得ない……別の世界で、何度も彼女の占いに助けられた記憶があるのだから。
「うん、信じるよ」
「では、いいでしょう」
モナは目の前に青い魔法陣を展開し、その中心を光らせてじっと見つめた。
あまりはっきりとは覚えていないが、前とはやり方が変わっているような気がする。
数十秒ほどして、モナは魔法陣を消して私を見てきた。
「あなたには、少しばかり不思議な運命があるようです。『運命を変える運命』、とでも言いましょうか。知る限り、できる限りの範囲で、未来をよい方向に変えていかなければならない……そんな運命が、あなたにはあります」
まあ……なんというか、納得のいく占いだ。
やはり、私はこれから先起きることを適期変えていかなければならないようだ。
パイモンは「え?もしかして、こいつ未来がわかるってことか!?」と驚いていた。
ベネットも同様だったが、私は「落ち着いて。静かにして」と2人を宥めた。
「自覚しているかとは思いますが、あなたは特別な存在です。これから起きることは、あなたが知っている未来とは異なるかもしれません。でも、どんな運命が待っていようと、可能な限りいい方向へ持っていかなければならない……それがあなたの運命です」
モナはそう言って、ふーっと一息ついた。
「では、そろそろ失礼します。仕事が残っていますので」
そう言えば、モナの本来の仕事は占いではないんだった。
しかし、まだ残っているならなぜわざわざ来てくれたのだろう……合間を縫って来てくれたとも言えるが。
「あ……そうだ。旅人、オレについても何かわかることないか?」
ベネットが身を乗り出し、そう聞いてきた。
「モナに言われたんだけど、おまえはオレのことについても知ってることがあるんだろ?だったら、教えてくれ!」
「え、えーっと……」
正直、一瞬のうちに悩んだ。
彼について知ることはたくさんあるが、どこまで話していいのだろうか。
いや、そもそもこの世界では微妙に異なる運命を辿っているわけだから、私が何かを言ったとしても、外れる可能性もあるわけだし……。
とりあえず、おそらくほぼ確定であろうことのヒントだけ言っておくことにした。
「私は……この世界のあなたのことはよく知らない。でも、少なくとも前の世界のあなたは、ナタの……」
ん?という顔をされたので、強引に話を終わらせて回れ右をし、城内に戻った。
申し訳ないが、今はこの程度が限界だ……この世界がどこまで同じ線をたどるのか、どこまで私の行為が影響をもたらすかが、わからない以上は。
だが、今回の彼からは、前の世界の彼と同じ雰囲気を感じた。
ということは、おそらく今回も……。
だから、ああ言ったのだ。
「あなたは、ナタの……」