とある日の無限書庫録(凍結)   作:ノウレッジ@元にじファン勢遊戯王書き民

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ここからアリサ&すずかが登場します。
3話目以降はキャラ1人1人にスポットを当てていくスタイルになります。

では、スタート!


司書の毎日はこんな感じ

 

 司書が浮いている。

 いや、冗談でも何でもない。本当に浮いている。

 

 無限書庫の中には重力が存在しないため、浮いているのは当たり前なのだが……。今回は“浮かんでいる”では無く“浮いている”のだ。

 

「し、しりょーが分身したよー……」

「黒いインクで書けっつったのに……、何で赤だか、青だか分からん色を……」

 

 虚ろな目で資料を見るアミュレ。そして焦点の合わない目でブツブツと呟くスレイ。

 昨日は休みだったとある別の2人は、その光景を見てあんぐりと口を開けた。

 

「た、たった1晩でここまでしますか……」

「ボクらでもこんな地獄絵図は滅多に見た事無いってのに……」

 

 目を点にし、死屍累々と化した無限書庫の入り口で立ち止まっているのは、特務司書の2人。

 片や、身の丈程もある白色の槍を背負った男、ランサー・スクライア。

 片や、手甲を装備した、ボーイッシュな少女、ヴェルファ・N・スクライア

 

「ユ、司書長、何事です?」

 

 あまりにも無残な光景に、近くをこれまた浮いていた司書長、ユーノにヴェルファが尋ねる。

 だが、1週間は徹夜できるユーノですら、既にグロッキーだった。

 

「く、ろの……た、ち……」

 

 その一言で十分だった。

 ああ、またあの真っ黒提督か。

 特務司書の全員が、理由さえあれば抹殺したいとさえ思っている、ブラックリストの筆頭、クロノ・ハラオウン提督の資料請求がまた来たのだ。

 しかも「達」という事は、要するに複数人分の依頼が重なってしまったのだろう。

 なんとも不運な話である。

 しかし、僅か1日である程度体制が整って来ている無限書庫を阿鼻叫喚の地獄絵図に変えるとは、クロノ提督、恐るべし。

 

 ちなみに特務司書はユーノ(提督権限持ち)を筆頭に、様々な権力者の庇護下にあるため、多少の無茶は見逃してもらえる上に、出動する際は大抵相手が悪いので、大凡お咎め無しで済んでいる。

 

「おーい、無事なヤツ、どれだけいるー!?」

 

 ヴェルファが叫ぶと、返って来る声が2つ3つ程。それも元気が無い。勿論その内の1つは司書長。

 

「寝てなよ、司書長……」

 

 グロッキーであるのは誰の目でも明らか。丸で無茶をするのが専売特許の様なこのワーカーホリックは、最早病気の類だというのが知人の中で一致する見解である。

 

「ええい、兎に角、この中で資料ができたヤツ! ボク達でどうにかするから! まだ働けると思えるヤツ以外は休んでて!」

「うぃー……」

「ま、だまだ、働けるぞぉー……」

「休め!」

 

 無限書庫の司書において、「疲れたなら休め」は侮辱に等しい。が、そこに勤めているのは生物。休憩を取らなくては危険だ。無論機械であっても24時間年中無休のフル稼働なんてさせればすぐに壊れてしまうだろうが。

 

 ランサーとヴェルファは出来かけや完成した資料を片端から引っ手繰って行く。

 

「ランサー、そっち回収した資料はどんな感じ?」

「んー? そうですね、6割完成4割未完成ってトコでしょうか」

「ボクの方も同じくらいかな」

 

 そんなこんなで、今日も無限書庫の1日は過ぎて行く。

 これが半ばデフォなのだから、医務局の人も頭が痛いだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――管理局 PM 18:38

 

 

「おぉぁっ!」

「デヤァッ!」

 

 気合い一閃、ランサーの長槍とヴェルファの鉄拳が入り、襲い掛かって来た武装隊員を吹き飛ばす。並みの武装隊員では歯が立たないレベルの強さが求められる特務司書にとって、この程度は造作も無い。陣形も何も無い形では、彼らの敵では無い。

 

「ヴェルファ、あったよ」

「こっちも見つけました」

 

 死屍累々となった部屋の中に、無造作に置かれてあった資料を見つけた2人は、そのまま部屋を後にしようとして―――

 

「ガッ!?」

「ランサー!?」

 

 ランサーは腹部に強い衝撃を覚えた。

 背後には、デバイスを構えた男が1人。非殺傷設定のようだが、攻撃されたという事実は変わらない。ランサーはそのままその場に蹲ってしまった。

 

「テメェら司書ごときに、オレら武装隊員が、やられてたまるかぁ!」

 

 怒鳴り声をあげた男は、やたらめったらに魔力弾を乱射。ヴェルファは咄嗟にランサーを抱えてソファの後ろに飛び込むが……。

 

 バシュッ!

 

「「ああっ!?」」

 

 迂闊にもその場に残していた資料の本が、被弾してしまった。損傷は軽微だが、重大な損失であると言わざるを得ない。

 

「あ、あんの武装局員~ッ!」

「ちっと、頭冷やしてもらおうかな……!」

 

 慌てて更なる被弾を避けるために、資料を手繰り寄せる。憤怒の形相を浮かべた2人は、怒り心頭のまま、デバイスを構える。

 2人の心は、今1つに。

 

((怒られるのはボク(俺)達なんだよ!))

 

 普段は温厚な人は、怒ると怖い。それを体現しているのがユーノだ。

 もう2度と怒られてたまるか! 必死になってランサーとヴェルファはその男を鎮圧し、書庫への帰路に着いたのが、これから10分程後の事である。

 

 

 

 

 

 

「怒られなかったですけど」

「ねぇ」

 

 再び無限書庫。ランサーとヴェルファは、傷ついた本を修繕係の司書に渡し、司書本来の業務に戻っていた。

 2人を待っていたのは相変わらずの地獄絵図。ユーノも叱責するだけの元気が無いらしく、グッタリと空中を彷徨ったまま「お疲れ」と言ったきり、またどこかへとプカプカ浮いていってしまった。

 

 自分達の失態を叱られない事がここまで心苦しい事だったとは、と新しい発見をした事は兎も角、戻って来た2人は医務局に連絡して地獄絵図もといグロッキーな司書を引き取ってもらう事にした。

 とその時である。

 

「ユーノー、本返しに来たわよー!」

「こんにちはー!」

 

 無限書庫に2人のお客さんがやって来た。

 双方共に無限書庫から借り出した本を持っている。

 大きな声を出した短い金髪の女性と、をおっとりした雰囲気の長い黒髪の女性。

 

 第97管理外世界在住にて、ミッドチルダとの交易会社の社長と取締役、アリサ・バニングスと月村すずかである。週一の頻度でこの書庫へやって来る2人は、司書の間では顔馴染みになっている。

 

「こんにちは、アリサさん、すずかさん」

「こんにちは。って、アレ? ユーノは?」

「あっちです」

 

 ヴェルファが指差す先には、床に投げ出された人形の様な格好で浮かぶ司書長の姿。

 相変わらずなその姿に、アリサとすずかは深い溜め息。

 

「「ハァ……」」

 

 頭を抱える。

 そして2人は視線を合わせると、デバイスを(・・・・・)起動させた(・・・・・)

 

「『サラマンドラ』!」

「『カーミラ』!」

「「セットアップ!」」

 

【【SET UP】】

 

 掛け声と共に、アリサの胸元のペンダントとすずかのヘアバンドの横の髪飾りが光輝き、バリアジャケットが形成される。

 アリサは漆黒のコートに赤色のパーティドレス。すずかは紺色のマントに前が大きく開いたナイトドレスだ。すずかは無手だが、アリサの腰には日本刀が差してある。続いてアリサは髪と瞳が、すずかは瞳と爪が赤色に変色した。更にすずかは犬歯が鋭く伸びる。

 

 赤と黒の魔法陣を展開し、2人は調子を確かめる。

 

「あたし達も手伝うわよ。指示して頂戴」

「どうもすみません」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ツッ!」

「アリサちゃん、大丈夫?」

 

 検索開始から30分、アリサは頭痛に顔をしかめ、頭を押さえた。ふわふわ回っていた十冊余りの本がその場に停止する。

 無限書庫で使用される検索魔法と速読魔法は脳に多大な負担をかける。普通は痛みを感じたりすれば中断するものだ。仮に無視して続ければ脳の神経が焼き切れるだろう。後方の部署なのであまりパッとしないが、ここはここで責任のある、命に関わるケースも存在するのである。

 

 痛みのせいで一瞬揺らいだ魔法陣。それを見て、ランサーが彼女に声をかける。

 

「アリサさん、一休みしましょう」

「っ、でも……」

「頭痛を感じたら引くまで休憩。無限書庫(ここ)の規則です」

「……ルールなら仕方が無いわね」

 

 渋々、或いは抜け道を見つけて仕方なく、彼女は本を本棚に戻して休憩室へ向かう。一段落ついたのか、すずかとヴェルファもその後に続いた。

 

(すずか)

(何かな、アリサちゃん?)

 

 道すがら(無限書庫は入り口から蟻の巣の様に行き先が分かれている。司書長室と禁書室以外は書庫内部に行くのも、休憩室に行くのも入り口のホールを経由しなくてはならない)、アリサはすずかに念話で話しかける。検索魔法と速読魔法に比べれば、念話の1つや2つ、軽すぎて拍子抜けするレベルだ。

 人にはマルチタスクといって、1度に行使できる行動の限界値が存在する。1つの魔法につき1つのマルチタスクでは無く、1つのマルチタスクにつきX値相応の魔法を担当できる、といった仕組みである。会話、念話、食事等々、睡眠以外の日常生活でもこのマルチタスクが使用される。

 故に脳の神経を焼き切るというのはマルチタスクを全て潰す事とイコールであり、そんな事になれば、日常生活を送る事は最早不可能。一生病院のベッドの上だ。

 

(毎度毎度、改めて思うわ。ユーノって、やっぱり凄い)

(だよね。私もちょっと頭痛いし)

(我慢してたんか!)

(あはは~。大丈夫だよ、私は普通の(・・・・・)人より頑丈だし(・・・・・・・)

(ンなんあたしにも(・・・・・)半分当てはまる(・・・・・・・)でしょうが)

(それもそうだね)

 

 既にデバイスを待機状態に戻しており、2人の見た目はいつも通り。アリサは首からかけたペンダントを、すずかは側頭部の髪飾りを軽くいじる。

 

(にしても、何であいつはこんなにも無茶するのかしらね?)

(さあ……。でも、まるで無茶をする事が専売特許、それだけが得意分野って感じ)

(それはあたしも思った。そうするしか出来ない、っていうか……)

(私としては、ううん、私達としては、ユーノ君に無茶はして欲しくないんだけどね)

 

 もう1度、溜息。

 いつからだろうか、自分達が彼を意識し始めたのは。

 

 なのは。きっと撃墜事件の後だろう。

 フェイト。執務官試験の勉強中だろう。

 はやて。リインフォースⅡ誕生関係だろう。

 

 それじゃあ、自分達は?

 

(きっと、本当に意識し出したのは)

(あの時だね)

 

 再び待機状態のデバイスをいじる2人。これが無ければ多分、いや確実に自分達はこうしていられなかっただろう。予想でしか無いけれども、なのはの砲撃とかで塵一つ残さずに吹き飛ばしてもらっていたかも知れない。そしてきっと、彼女に友達殺しという重い罪を背負わせていた。

 

 あの時は本当に自害を考えた。

 もしもなのはやフェイト、はやてが感知するのが後半日遅れていればどうなっていた事か。

 仮に感知が間に合った所で、ユーノが対策を立ててくれるのが後数時間遅かったら。

 対策が間に合った所で、彼がこのデバイスの作り方を指導し切れていなかったら。

 考えるだけで悪寒が走る。

 

(地球を第2の太陽にしなくて良かったわ。ありがとうね、ユーノ)

(地球を無間地獄にしなくて良かったよ。ありがとう、ユーノ君)

 

 密かに安心しつつ、心の中で彼に感謝。

 と、その時であった。

 

「ししょちょー、たすけてぇー!」

「だばぁああああああああぁっ!?」

「「!?」」

 

 書庫の方から悲鳴が聞こえた。複数名の司書の声がホールの方にまで響く。

 

「アリサちゃん!」

「オッケー、すずか!」

「ランサー、行くよ!」

「解ってます!」

 

 休憩を急遽中止し、その場にいた4人、アリサ、すずか、ランサー、ヴェルファは急いで書庫の中へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「“アサルト・バレット”!」

「“魔神剣”!」

 

 書庫の中にモンスターがいた。

 比喩でも何でも無く。

 

 全長は10メートルくらいだろうか? シルエットは蜥蜴にも似ているが、蜥蜴とは違って鋭い牙と爪があるし、尻尾が三本ある。しかも口が二つ付いているし目なんて八つある。明らかに既存の生物にはカテゴライズできないだろう。

 現在、数名の特務司書と交戦中であり、非戦闘要員の、つまりは普通の司書が何人か巻き込まれて倒れている。

 

「うわあ……」

「キモ……」

 

 すずかとアリサの感想も御尤もだと言える。

 別に粘液が垂れているとか、しゅこーしゅこー呼吸音が聞こえるというワケでは無いのだが、全体的に生理的嫌悪感を呼び起こす見た目をしていると言える。それがこのモンスターだった。

 何時までも気味悪がるワケにもいかないので、アリサは近くに倒れている司書の1人に聞く

 

「で、これはまた例のアレ?」

「は、はい……」

 

 4人は頭が痛くなった。検索魔法と速読魔法の影響では無く。

 無限書庫は管理世界―――最近では管理外世界の物も発見された―――の本を自動で蒐集する(一冊拝借するのか、それともコピーするのかは不明)。当然、善悪の判断は無い。つまりそれは「本の形をした別の何か」や「中に何かを閉じ込めた本」も蒐集してしまう。そしてそれを不用意に紐解いてしまうと……。

 

『ギャオォオオオオオオオン!』

「喧しい、蜥蜴もどき!」

 

 まあ、こうなるワケだ。

 今回は本の中にこのモンスターが封印されていたらしい。

 と、その時命辛々といった様子で、新人と思われる司書が怪物の傍から逃げて来た。

 

「司書長は……!?」

「寝ていますね」

「じゃ、じゃあアインス秘書は!?」

「書類提出で不在だね」

「そんなぁ!?」

 

 無限書庫最強の2人は、現在戦線に出られない状況である。

 助けを求めた新人と思われる司書、思わず涙目。

 

 そんな彼を標的と定めたのか、モンスターは口を大きく開けて舌をカメレオンの様に伸ばして来た。

 

「うっざいわねぇ」

 

 それを見たアリサは、気怠そうに炎を纏った刀を一振りし、伸びて来た蜥蜴もどきの舌を切断。しかし、火にも斬られた事にも反応せず、蜥蜴は更に腕を振り下ろした。

 

「血は無いんだね、残念」

 

 が、その腕も吹き飛ぶ。すずかが腕を片手で受け止め、力任せに引き抜いて放り投げたからだ。

 ちなみに書庫の中の本は本棚の中にある限り、本棚にかけられた魔法の影響で傷一つ、汚れ一つ付かない。

 

「血があったら飲むつもりだったワケ?」

「まあね。最近ユーノ君の血、吸ってないし」

 

 怪物はこの会話の最中でも攻撃を仕掛けて来ている。しかし、アリサとすずかは涼しい顔でそれを対処し、会話を途切れさせない。

 この2人には敵わない。そう悟ったモンスターは、近くにいた眼鏡をかけた女性司書に標的を変えて腕を伸ばす。が―――

 

「認めた男以外に簡単には触らせないよー! “ブレード・バレット”!」

 

 次の瞬間、女性司書―――アミュレのライフルが火を噴き、ナイフ型の弾丸が肩口からざっくりとモンスターの腕を斬り落とした。

 ならば、とその隣にいた男に噛みつこうと、顎を大きく開くが―――

 

「俺に歯を立てて良いのは、俺が認めた女だけだ! “魔神剣・猛刃”!」

 

 スレイは二本の小太刀を引き抜き、モンスターの頭をバラバラに切断。哀れ怪物は胴体だけとなってしまった。

 だが、蜥蜴もどきとも呼べなくなったモンスターの腹に大きな赤い目がギョロリと開いた。どうやらこちらが本体らしく、頭を失っても死にそうな様子は見受けられない。

 

『ガァアアアアッ!』

「ヒッ!?」

 

 腹の目が更に別の司書を捉える。これまでとは違って特務司書では無いらしい。

 戦闘開始に合わせて既に一般司書は避難しているハズなのだが、この司書は逃げ遅れてしまったようだ。

 モンスターは逃げ遅れた司書めがけて尻尾を勢いよく振り―――

 

 ドガァーン!

 

『ギャオォオオオオン!?』

「我輩に背を向けるとは、命知らずである」

 

 突如として背後から爆撃を受けた。モンスターの背後にいたのは、お得意の獲物を手にした大男、バスカ。バズーカの砲身から煙が上がっている所を見ると、彼が後ろから撃ったらしい。

 

『グロロロロロ……!』

 

 焦げた背中の衝撃でバスカに気付いたのか、怪物は赤い目でバスカを睨み、残った腕を叩きつける。

 しかし、それも通らない。

 

「鬱陶しいです。“豪雷撃天槍”!」

 

 残った腕は雷を纏った槍の一突きで吹き飛び、焼け焦げる。

 バジバジッ、と技の影響で迸る電流を纏った槍型デバイスを片手で軽々と回すのはランサーだ。自身の慎重の倍はあろうかという長槍を体の一部の用に振り回している。

 両腕を失った化物は一瞬、バランスを崩し―――

 

「はぁああああああああっ! “獄撃掌”!」

 

 真下からの突き上げによって胴体に大穴を空けられた。

 ガントレット形式のデバイスを装着したヴェルファの一撃が、倒れたモンスターの腹部に直撃。丁度噴火の様な形で突き上げられ、蜥蜴もどきは息絶えた。

 息絶えたモンスターは黒い塵となり、宙を彷徨っていた1冊の本の中へと吸い込まれるようにして消え去った。

 

「何よ、呆気無いわね」

 

 チン、と納刀し、デバイスを待機モードにするアリサ。不満そうな顔をして、自身の短い金髪をパサッ、と撫でる。

 暴れ足りないらしく、納刀した後も鍔を弾いて刀を抜き納めしてカチンカチン音を鳴らしている。

 

「禁書レベルBだって。これじゃ手応え無いのも仕方ないよ」

 

 空中に浮かぶ本を手に取り、すずかが言う。レベルB、即ち総合Bクラスの魔導士10人分の実力、という事だ。特務司書は能力に偏りがあれども、得意分野に於いてはAAA、強い者ならばオーバーSSの実力を持つ。相手にならないのも無理はないだろう。

 

「何事ですか?」

 

 そんな時だった。

 無限書庫司書長の秘書、アインスが帰って来たのは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――休憩室

 

 

「そうですか、私が不在の時にそんな事が……」

 

 膝の上で例の本に厳重な封印を施しながら、事情を聴き終えたアインスが深々と頷く。

 現在、司書の半数以上が動けなくなったため、無限書庫は機能を停止している。勿論通信も着信拒否状態である。

 不安の種は既に請求されている資料だが、取り急ぎの物も無いので、大丈夫だろう。

 ただ、書庫の中は怪物が暴れたせいで、色々と酷い有様になっているが。

 

「すみません、アインス秘書! 自分の不注意で書庫が!」

 

 その彼女の傍らでは、1人の司書が土下座をして頭を床に擦りつけている。どうやら彼があの本のモンスターを解放してしまったらしい。

 

「構いませんよ。あの疲弊しきった状態では、誰も貴方を責める事などできません」

「アインス秘書……」

 

 ニコリ、と笑うアインス。

 確かに睡眠不足どころか、休憩不足なあの状況では、注意力散漫になっても仕方がないだろう。

 アインスは「それに」と更に付け加える。

 

「寧ろ好都合です」

「え?」

「司書はほぼ全員が倒れていました。この惨状を逆に利用すれば、大々的に書庫の休館を打ち出せます」

 

 それを聞いたアリサとすずかは思わず舌を巻いた。

 要するにアインスはこの一件を逆に利用して無限書庫を休みにしようというのだ。もしもそれにクレームをつける輩がいるようならば、恐らく今回出て来たモンスターよりも強い奴が封じられた本を、その人物の部署で解放するだろう。封じられたモンスターの中にはエース・オブ・エースに匹敵するレベルのモンスターもいるのだ。そんなモンスターを解放された日には、その部署は当分の間機能が停止するだろう。

 

 さて、とアインスが席を立った。

 

「ファータはまだ眠っています。起きる前に、我々で荒れた書庫を整理しましょう」

 

 司書の中で、最後までこの一件を知らなかったのは、ユーノただ1人であったという。

 

 

To be continued




アイ自身、本から生まれた存在なので、色々と考える所があったりします。




キャラ名元ネタ

ランサー・スクライア
→ランサー・エヴォリューション(車の名前・通称ランエボ)

ヴェルファ・N・スクライア
→ヴェルファイア(車の名前)
N→ナックル


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