ありふれた凡人の少年は異世界で無敵となる 作:究極の闇に焼かれた男
「──前門の虎に後門の狼というのは今の様な状況を言うのかも知れない、なっ!」
次々と襲い来る骨格だけの体に剣を携えた魔物「トラウムソルジャー」の軍勢を斬り捨てながら、晋司は自分達が立たされている状況をそう評した。
100体以上のトラウムソルジャーの軍勢と、巨大な魔物ことベヒモスの出現によって瞬く間に阿鼻叫喚の地獄絵図と化した橋上の戦況を混乱を極めていた。
メルド率いる騎士団は、ベヒモスを食い止めるべく魔法による多重障壁を張っていて身動きが取れず、天之河達も自分達も戦うと言い出しメルドと揉めており、トラウムソルジャーに襲われている他の生徒達は冷静な判断が出来なくなり混乱状態へと陥っていた。
そんな中、晋司はハジメと背中合わせで次々と襲い来るトラウムソルジャーの軍勢を相手取りながら、未だに混乱を極め続けている状況に苦虫を噛み潰したよう表情をする。
(クソッ、嫌な予感が最悪な形で的中するなんて。 騎士団はベヒモスの対処に当たってるせいで身動きが取れないってのに、肝心の天之河は此方の混乱に気付いた様子が無い。 他の連中も冷静を掻いてるせいでまともに動けてない。 最悪が重なり過ぎて、これじゃあ地獄絵図だな………仕方ない。 流石に天之河みたいには出来ないが、俺がやるしかない!)
戦況をみて事態が悪い方向へと進み続けている事に晋司は心の中で思わず悪態を吐きながら、意を決した表情を浮かべて声を上げていた。
「狼狽えるな!」
その声に周囲の生徒達は目を見開きながら晋司に視線を向けると、晋司は直ぐさま指示を飛ばし始めた。
「前衛組は2人1組で魔物の対処に当たりつつ退路を確保するんだ! その隙に後衛組は階段側へ向かい、着き次第魔法で援護してくれ! 後衛組が魔法を飛ばし始めたら前衛組も全速力で階段側に向かうんだ! ハジメ、錬成を使って魔物共の足場を崩してくれ! 俺は魔物の数を少し減らしたら天之河達を呼び戻しに行ってくる!」
指示を飛ばすと他の生徒達は一瞬だけ間の抜けた表情を浮かべるも晋司が即座に「いいから早くしろ!」と叫ぶと、その言葉に他の生徒達は一斉に動き出し始めた。
晋司は鞘からロングソードを抜き放つと、周囲のトラウムソルジャーを斬り捨てながら天之河達の元へと駆け出し、ハジメは錬成を使いトラウムソルジャーの足場を崩して橋上の外へと突き落としていく。 そして他の生徒達は各々に割り振られた役割をこなしながら次々と階段側へと向かい始めるのだった。
「天之河!!」
トラウムソルジャーを斬り捨てながらベヒモスのいる天之河達の元へと辿り着いた晋司は、声を荒らげながら天之河に声を掛けた。
「きっ、霧嶋!?」
「お前、この状況が本当に分かってるのか!!」
「いきなりなんだ? それより、何でこんな所に居るんだ! ここは君がいていい場所じゃな、・・・うっ!?」
天之河が言い切る前に晋司は襟首を掴みながら頭突きを顔面に叩き付けた。
「この大バカ野郎ッ!! 今のお前がするべき事は、アイツを相手にする事じゃねーだろうがッ!! すぐ近くにお前の助けを必要としている奴等が居るのに、こんな所で二の足を踏む暇が本当にあるのか? それが勇者の優先事項なのか?」
「っ!!」
晋司の言葉に天之河はハッとした表情をする。
「わかったなら、早くアイツらを助けてこい!」
「ああ、わかった。 直ぐに行く!」
「言う暇が有るなら早く行け!」
その言葉に天之河は坂上達を引連れて階段側へと向かおうとしている生徒達を助けるべく駆け出して行く。
「霧嶋くん、私も一緒に──」
「白崎、お前のするべき事は負傷した奴等の手当であって、俺と一緒に残る事じゃない! むしろ居られても帰って迷惑だろうが!」
「でも!?」
「でももへちまも無い! 分かったなら早く行け!」
有無を言わさぬ態度で白崎に先に行くよう促すと、その言葉に白崎は一瞬悔しげな表情を浮かべると直ぐさま階段側へと駆けていく。
「晋司、よくやってくれた! ここは俺達に───」
晋司の活躍に賞賛を送りつつも、メルドは"俺達に任せろ"、そう言おうとした瞬間だった。
「下がれぇーー!」
騎士団の1人が悲鳴と同時に、騎士団が張っていた多重障壁が砕け散る音が無情にも響き渡った。
暴風の様に荒れ狂う衝撃波が晋司達を襲おうとした瞬間、そこに割って入る様にしてハジメが飛び込んで来た。
「錬成っ!!」
そう叫ぶとともに、ハジメが錬成した石壁が襲い来る衝撃波を防ごうとするも、防ぎ切れず吹き飛ばされ咄嗟に駆け出した晋司がハジメを受け止める。
「ハジメ、大丈夫か!?」
「なんとか、大丈夫・・・・・・」
「それなら良かった。 いや、状況は寧ろ最悪か」
そう言いながら視線を前に向けると、ベヒモスが咆哮を上げながら此方を睨み付けていた。
「ハジメ、まだ錬成は使えるか?」
「う、うん。 それなら出来るけど・・・」
「なら、少しの間だけで良い。 アイツの動きを止めるぞ」
「えっ、そんなの無茶だよ!?」
「頼む、ハジメ! お前の力を俺に貸してくれ! お前だけが頼りなんだ!」
その言葉にハジメは一瞬目を見開くと、少し逡巡してから溜息混じりの声で答えた。
「・・・仕方ないな〜。 晋司に頼まれたんじゃ断れないしね」
「っ、ありがとう」
「その代わり、ここを生きて出られたら、わたしのお願い、きいてくれるよね」
「それくらいで良いなら、お易い御用だ」
「事質はちゃんと取ったからね」
そう言うと、ハジメが錬成を行う体勢に入ると同時に晋司はロングソードを構えながら飛び上がると、そのままベヒモスの目元に刃を突き立てながら詠唱した。
「吹き散らせ──"風壁"」
詠唱した直後、ベヒモスに突き立てていた刃を引き抜きながら後ろに飛び退くと、ベヒモスの頭部が地面へとめり込む。
ベヒモスは石中にめり込んだ頭部を引き抜こうとするが、それよりも早くハジメの錬成により動きを抑制される。
ベヒモスは足を踏ん張り力づくで頭部を抜こうとするが、今度はその足元に錬成が行使され地面に沈み込み、ハジメは再度錬成を行使する事で埋まった足元を固める。
その隙に晋司はベヒモスの足元に接近し、足首を斬り付けて赤い鮮血を宙に舞わせる。
「よし、ハジメ。 今のうちに逃げるぞ!」
晋司がそう叫ぶと、ハジメは錬成を切り上げ反転して階段側へと走り出し、晋司もその後に続くように駆け出した。
階段側へと走り出した瞬間、地面から抜け出したベヒモスが咆哮を上げながら2人の後を全速力で追いかけ始める。
ベヒモスが一歩踏み出す度に足場が崩れ、奈落の底へと消えていく光景に晋司とハジメは頬を引き攣らせながら全速力で階段側へと駆け出していると、階段側まで退避を終えた他の生徒達と騎士団が魔法をベヒモスに向けて放ち始めた。
行ける! そう確信しながら、躓かないように気をつけながら頭を下げて全力で走り続けるハジメ。 晋司もハジメの後に続く様に走り続けていた。 その時だった。
ベヒモスに向けて無数に飛び交う魔法の中で、一つの火球が軌道を変えて晋司を襲う。
晋司は思わず足を止めると、から抜き放ってロングソードで迎撃するも、それにより生じた隙を突かれる形で背後に迫っていたベヒモスを捉えると同時に足場が崩れ去る。
「なっ、うあああぁぁぁぁっ!?」
「っ、晋司!?」
足場が崩れ去ると同時にベヒモス共々奈落の底へと落ちて行く晋司を目にしたハジメは、階段側まで後僅かという所で体を反転させると、晋司の後を追うように奈落の底へ飛び降りて行くのだった。
第0章:始まり/異世界召喚編・完
次回、第1章:奈落の底/オルクス大迷宮編、に続く。
感想お待ちしております。
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