馬産地で始める領地改革 作:ゆーき
物心ついた時から隣には馬がいた。北海道の零細牧場。そこで俺は育った。小学校に入学した頃から家業を手伝いつつ、暇があれば馬に乗っていた。
「将来はダービージョッキーになる!」
9歳の誕生日にそう宣言した周囲の反応は冷ややかなものだ。分かっている。1年に1人しか掴めない夢の称号だ。才能・努力・運全てが揃ってなお届くかどうか分からない。それがダービージョッキー。俺は何をしてもそこに辿り着く!
そんな夢は中学になるとあっさりと打ち砕かれる。うすうすと分かってはいたんだよ。入学して直ぐに行われた身体測定。身長172cm。そう。夢を語った時の周りの反応の答えがこれだ。親父は180cmオーバー。母親も170にやや届かないレベル。その息子が大きくならないわけがない。努力・運以前の問題…。
まぁ、無理なものは仕方ない。ジョッキーが駄目ならブリーダー!
ありがたい事に大学まで進学させてもらい獣医師免許もとれた。牧場を継いでから順風満帆とは言えなかったが怪我が少なくコンスタントに走ってくれる馬を育てる牧場として固定客を獲得。生活に困らない程度の経営はできたと思う。
ダービー?うちの繁殖牝馬はバリバリのダート短距離血統だ。高額な種付け料を払えない零細牧場では手が届かなかった。
たった一度だけ、8頭の抽選をくぐり抜け出走にたどり着いたことがある。ユウキフライト。18頭立ての18人気だったが、あの興奮は今でも忘れられない。
もう一度あの舞台へ…。それだけが俺の人生での心残りだった。
「フライッ!フライはどこにいった!!」
「坊ちゃんでしたら、いつもの所でしょう」
「またか。今日は大事なお客さまがくると伝えていただろう。すぐに帰って身支度を整えるように伝えろっ」
「へいへい」
あぁ〜草原の匂い。馬上から観る眺め。生きてるって感じがするなぁ〜。
俺の名前はフライト・ノーザン。前世の記憶をもって生まれたノーザン男爵家の嫡男9歳だ。ノーザン家は国内唯一の馬産地であり騎士団に馬を納めることを生業にしている。男爵家といってもあるのは山に囲まれた広大な土地と馬だけだ。
これが異世界転生というやつなんだろうか?神様(仮)にも会ってなければ、転生特典ももらっていない。生まれてから何度も鑑定を試みたが、今日まで物の名前や人物のステータスは見えない。当然ステータスもオープンしてくれない。
そんな俺に新しい夢ができた。ダービーの熱狂をこの世界で再現する。競馬という文化を根付かせ、この領地を一大観光地にする事だ。
「なぁ、タキオン。ここに競馬場を作ってお前の子孫達が「かけっこ」するんだ。ワクワクしない?」