ティエラの地より 〜転生少年、深淵に挑む〜   作:エアロダイナミクス

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15、試験

 

 

 

 

 

 オレの持ち帰った数々の物品は、マドリーにとっては革命的な戦果であったようだ。

 あの場所で、あの山のような魔物どもから結構な数の素材をいただいた結果ではあるが、普通は無理だろう。しかも、瘴気の深さが深奥級の階層で拾った宝の数々だ。一つ一つがものすごい効果を発揮するだろう。

 今は組合でどんな効果があるか鑑定待ちだ。オレはと言えば、ドニさんの愛剣1つを貰ってそれで済ませようとしたが、ビトさんから宝石類や鎧を結構な数貰った。これで装備を新調してこいとのことだ。そして、それを差し引いてもかなりの額が手に入った。

 オレはドニさんの後継者だ。ドニさんはどういうお金の使い方をしていたか聞いたところ、孤児院や街に9割は寄付していたらしい。だからオレもそれにならって半分孤児院に寄付した。少しでも多くの子達が育ちますように、と。残りの半分は街に寄付した。いずれも莫大な金額となったため、かなり潤うのではないだろうか。

 

 

 オレは、まだダイバーでは無い。しかし、ドニさんの意志を継ぐと決めた。だから、オレはダイバーになる。それは、あの帰ってきた日に告げた。ビトさんからは追ってから連絡するから少し待っていろと返事を貰った。

 

 

 ドニさんが死んだというニュースはマドリーの街全体にあっという間に広がった。街には彼を悼む住民達が大勢いた。ドニさんは自分の事を卑怯者だと言っていたけれど、これだけの人に慕われているという事は、人格者だったという事の証明であるだろう。

 

 彼の葬儀は組合で行われた。ダイバーが暗黒領域で死亡した場合はそうする習わしらしい。喪主はビト組合長だ。連日ダイバー組合には弔問客が来て、彼の冥福を祈り、帰って行く。

 ドニさんはかなり慕われていて、弔問客の数が多すぎて急遽整理券が発行されたほどだった。オレはと言えば、そんな人々からは白い目で見られていた。ビト組合長から彼の遺言でオレが彼の後継者になったと言うことを皆に告げたが、それでもオレのせいでドニさんが死んだと彼らは思っているらしい。まぁオレも以前から住民に嫌われていたし、今更な事だ。否定する気にもなれない。

 

 

 ただ、改めてオレは強くならねばならないと思った。それこそ、ドニさんに匹敵するぐらいには。

 

 

 

 

 

 数日後、何かやる事ないかとドニさんの愛剣でひたすら素振りをしていたオレの元に、ダイバー組合からの連絡が届いた。曰く、組合に顔を出せ、と。連絡員はガブリエラさんだ。彼女はオレと目も合わせず事務的にその内容を告げると、足早に去ろうとした。

 しかし、数歩歩いて立ち止まり、質問を投げかけてきた。

 

 

「……ドミニク様は……立派に闘ったの?」

 

 

 どう返したらよいか少し躊躇ったが、脚色する事や長々と話す事はしたくなかった。だから簡潔にありのままに伝えた。

 

 

「……あぁ。強かった。とても。彼は最期まで一流の騎士であり、ダイバーだった」

 

「そう……」

 

 

 それだけ告げると、彼女はそのまま歩き出した。彼女が去って行く中、微かに「ありがとう」という声が聞こえた気がした。

 

 

 

 

 組合に赴くと、玄関にビト組合長が待ち構えていた。腕組みして仁王立ちしている。それが様になる男ではあるが、この人は大組織の長の筈だ。いいのだろうか。そんなこんなでちょっと組合に入り辛い。そう躊躇していたらビト組合長から檄が飛ぶ。

 

 

「おいコラ、サッサとこっちに来い」

 

 

 そそくさとビトさんの元へ向かう。何事だろうか。おそらくサプライズ的な何かだろうが……ビトさんはそこから何も言わずに着いてくる様に促してきた。そして、広く、大きな石造りの建物内部の廊下を抜けて、広い闘技場の様な場所に出た。ローマのコロッセオの様な造りだ。地面は砂地であり、観客席からは結構な数の人々がこちらを見ている。その中で一際異彩を放つ者が何名かいる。あれはこの街のダイバーか。後は一般の街の人か。

 

 

 中央まで進むと、ビトさんが叫ぶ。

 

 

「これより! 臨時のダイバー試験を行う! 審査長はこのビトが直々に務める! 皆の者、審査員としての働きを期待する! よいか!!」

 

 

 おぉーっ!! と、周りから歓声が上がる。

 

 

 ──そうか。そう言う事か。なるほどね。確かにサプライズだ。しかしオレにとってはありがたいこった。

 

 以前聞いた事がある。ダイバー試験は娯楽にもなっていると。チケット制になっており、賭け事も行われている。有望な若者が試験に受かるかどうか、それを住民同士で酒の肴にしながら賭ける。娯楽の少ないこの街で結構な人気を誇ってるらしい。貴重なダイバーの戦闘力を見ることが出来る機会でもあるし、住民にとっては興味深い事なのだろう。

 

 

「組合長! オメーが相手やんねーのかよ! つまんねーな!!」

 

「馬鹿野郎! オレがやったら誰が審査するっつーんだよ! いいから黙って見てろ!!」

 

 

 周囲からヤジが飛び、ビトさんがそれに野次り返している。まるでお祭りのようだ。オレの対戦相手は誰なんだろうか。まぁ、誰が相手でもオレはやるべき事をやるしか無い。

 

 

「本日の試験相手だ。入って来い!!」

 

 

 ビトさんが促し、オレの対戦相手が逆の入場口から入って来た。観客席が盛り上がる。女性だ。赤髪で、金属製の胸当てと腰帯にマントを羽織い、腕と脚それぞれに小手と脛当てを身につけている。まるでヴァルキリーの様な出立ちだ。手には得物である木製の大きめのハンマーを持っている。

 

 

 そして……()()だ。

 

 

「ガブリエラさん! まさか貴女が!」

 

「少年。さっきぶり。アタシが貴方の相手よ」

 

「いや、ガブリエラさんは……その……」

 

「気遣いは無用。少なくともルーキーにどうかされる程アタシは弱くないわ。今回はアタシが志願したの。ドミニク様の後継者に指名されたキミを見極めさせてもらうわ」

 

「両者、武器はそれでいいか?」

 

 

 ビトさんが確認する。ガブリエラさんはそのまま頷く。あのハンマーは木製とは言え、当てられたら相当応えそうだ。オレの武器は──

 

 

「使いなよ。その剣を。ドミニク様から受け取ったんでしょ?」

 

「……いい? 悪いね」

 

「ほぼ素人に本身を使われたぐらいで死にはしない。気遣い無用と言ったでしょ。今のうちに言っとくわ。キミはアタシに僅かにでも当てられたら合格ね」

 

「……了解」

 

 

 ガブリエラさんは熟練のダイバーだった。だからこその発言だろう。オレは挑戦する側だ。これは当然の事。今はそれぐらいの差があると言うことだ。ならば全力を尽くすのみ!

 

 

「そうね。キミは確か霊力を扱えるんだったわね。じゃあこちらも使わせてもらうわね」

 

「どうぞ、遠慮無く」

 

「馬鹿ね。遠慮しなきゃ死ぬわよ。まぁ、死なない程度には手加減したげる。たまにはファンサービスも必要だからね」

 

「……2人共いいようだな。では、始め!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【SIDE:モブダイバー】

 

 

 

「ガブリエラか……まさか、元ダイバーの中でアイツが出てくるとはな。アイツ、金剛石級(ダイアモンドクラス)だったろ?」

 

「いや、アイツはドニに執着してたからな。出てくるとは思ってたぜ。相手の小僧も可哀想な奴だな」

 

「そうはいってもな。あの小僧はドニの秘蔵っ子らしいじゃねぇか。わからんぞ?」

 

「けっ、あんな小僧が太刀打ちできるもんか。隻腕になったとはいえ、ガブリエラだぜ? しかもあの会話じゃ【大地の槌(タイタンハンマー)】の力も使うらしいじゃねぇか。無理にも程がある。一方的にやられて終わりだな」

 

「賭け率も偏りそうだなぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【SIED:とあるパーティー】

 

 

 

 

「……どう見る? アイヴァン」

 

「エレーナ、珍しいな。お前が興味を示すとはな。ふむ……普通に考えればガブリエラだが、あのドニの秘蔵っ子だからな。もしかすると、もしかするかもしれんな」

 

「アイヴァンは期待しすぎー。でもまぁまずあの歳で霊力を扱えるというのがまぁまぁ規格外だね。楽しみー」

 

「お前ら…黙って見てろ」

 

「おー怖! マリウスが怒ったー。黙っとこ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【SIDE:ナギ】

 

 

 

 とうとう始まってしまった。どうやら先手はくれるらしい。彼女は遠慮するなと言っていたから全力でいく。恐らくまるで届かないだろう。感じ取れる霊力はドニさん程じゃ無いがかなり強力だ。ドニさんの全力戦闘を思い出してみたが、彼女の実力はそれに近いものがあるのだろうし。やべぇ。隻腕というハンデがまるでハンデに感じられない。

 とにかく、ここをクリアできなければオレがドニさんの後を継ぐなど夢のまた夢だ。

 

 

 パァンと自分の頬を張る。気合い入れだ。…気合い入れ過ぎて若干痛い。まぁいい。気合いは十分入った。

 

 

 よし! 征くぞ!! 少なくとも合格ラインまでは奮闘してやる!

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