ティエラの地より 〜転生少年、深淵に挑む〜   作:エアロダイナミクス

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 見てくれる人がいるだけでも喜び! 


20、仲間

 

 

 

 

【SIDE:ビト】

 

 

 

 

 組合の会議室のうちの1つで、組合長とその共犯者であるガブリエラはナギの教育方針について話し合っていた。この会議ももうかなり回数を重ねている。この日はある重大な方針についての話し合いだった。

 

 

「奴もそろそろ次の段階かね」

 

「えぇ。とりあえずはいいんじゃないかしら。彼、正直浅層ならソロでもいけるしね。本人はそうは思ってないみたいだけど。あとは開花するのを待つだけってトコかしら。で、これからどうするの?」

 

「そうだなぁ。奴にはそろそろ仲間と共にダイブする経験を積んでもらおうか」

 

「あーそうねー……」

 

 ガブリエラが渋る。

 

「なんだ、反対か?」

 

「…いや、別にいいんじゃない? 私たちも暇じゃないしね。ただ、そんな都合のいいパーティーがあるかしら? 訓練生達はとっくに卒業してるし、パーティー組むなら時期ハズレよね」

 

「それがな、ちょっと、いや、かなり癖がある奴等だがちょうど卒業してて有望な年齢の近い奴等がいる。そいつ等をあてがおうと思ってな」

 

 

 その特徴に聞き覚えのあるパーティーをガブリエラは思い出していた。

 

 

「卒業したてで癖のある……まさか『暁の剣』じゃないわよね?」

 

「まさにそいつらだ。お前さんなら知ってるだろ?」

 

「あ”〜…まぁ、ね。メンバーの1人が私の大ファンらしくて、しょっちゅうつきまとってくるのよ。困ったもんだわ。こちとら引退してるってのに」

 

「はは。人気者は辛ぇな」

 

「笑い事じゃ無いんだからね! ま、悪い奴等じゃ無いのは分かるからいいんだけど。ただ、アイツらに彼の特異性を受け入れられるかしら」

 

「その辺は抜かりねぇ。奴等も大概個性的だからな。危なっかしいとは思ってたからむしろ丁度いいかもな。とりあえずその辺のもろもろはまかせとけ」

 

「本当に頼りになる組合長だこと。ま、あまり過保護も良くないし、いいんじゃない?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【SID:ナギ】

 

 

 

 

 

「お前さんにはとりあえず伝えられる事は伝えた。よって預かっていたダイバー資格を返す。これにてお前は正式なダイバーだ。おめでとう!」 

 

 本来なら戦闘訓練が始まる時間、組合長とガブリエラさんに組合長室に案内された。そしてそこで告げられたのが今の台詞だ。

 

「訓練とは言え、よく依頼をぶっ通しでやり切ったわね。偉いわ、少年」

 

「えっと……ありがとうございます? じゃあいよいよ独り立ちって事!?」

 

「そういう事だ、ワンダーボーイ。で、これからお前さんは独立して1ダイバーとして依頼をこなして貰う訳だが、普通はソロじゃやらねぇ。理由は分かるな?」

 

「そりゃまぁ…それはもう嫌って程実感しましたし。1人じゃ依頼をこなすのは無理ゲーっすよ」

 

「そうだな。他にも理由はあるんだが今はいい。それで、とりあえずお前にもパーティーを組んでもらう。本来ならテメーで探せって言う方針だが、お前の場合は色々と特殊だからオレらからお前に合いそうな奴らを選別した。ありがたく思え」

 

「パーティー…仲間、か」

 

「そうだ。お前の事情も分かってる優秀な奴らだ。入ってこい!」

 

 仲間か……だが、1人でのダイバー活動の難しさはここ1か月で良く分かったつもりだ。だからいずれはやらなければならない事をお膳立てしてくれた組合長には感謝すべきかもしれない。

 そう考えていると、3名の少年少女が部屋に入って来た。

 

「よぅ! お前がナギか! 会いたかったぜ」

 

「失礼します。って、ちょっとエル! いきなり失礼よ! まずは挨拶でしょ!」

 

「うるせーなぁ! 細かいことを気に……わーったよ。失礼します」

 

「失礼します……」

 

 

 

 入ってきていきなり騒々しい2人のうち1人は赤髪の少年だ。エル君というらしい。彼を注意しているのは長い金髪をポニーテールでまとめている少女。どことなく委員長的な雰囲気を感じる。彼女はエル君を注意しつつも、ガブリエラさんを見て目が爛々とし始めた。ファンかな?

 

 そして、恐る恐る入って来たのは、鮮やかな水色のボブカットの少女だ。ダイバーあるあるだが、属性の色に引っ張られて髪の毛や瞳の色が鮮やかに変化する場合もあるという。彼女の場合は髪の毛に出たようだ。キョロキョロしていたが、オレを見るとニコッと微笑んだ……なんだ? あの娘、なんかどっかで見たことあるような……。

 

 

「来たな、お前ら。んじゃ、コイツがお前らのパーティだ。ほれ、自己紹介しろ」

 

 

 そう促され、慌てて自己紹介する。

 

 

「あ、ども! 初めまして! オレはナギ=シュトルバーン。新米ダイバーとしてたった今スタートしました! よろしく!」

 

「聞いてるぜ。あのドミニクさんの後継者だってな。堅っ苦しい言葉遣いはしなくていい。オレはこの『暁の剣』パーティーリーダー。エルネスト=ガルシアだぜ。オレの事はエルと呼んでくれ!」

 

「私はこのバカのお守り兼サブリーダーのサラ=マルティンよ。あとは……フロウ! アンタボーっとしてないで挨拶しなさいよ!」

 

 ポニーテールの少女、サラに促され、ガブリエラさんに釘付けだった少女はハッと気付いたらしく、気まずそうにしながらも話し始める。

 

「あの……フロウ=アマネセールです……よろしくお願いします」

 

 

 気まずそうに恐る恐る名前を告げた少女は、自らをフロウと名乗った……思い出した! 昔いつもオレに話しかけてきてくれた孤児院の娘か! 髪の色や成長で一瞬分からなかった…。でもまあオレも良く知ってる娘がいるならありがたい。オレも何故かこの娘は気になるんだよね。それが何かは分からないけど。

 

 彼らがオレの仲間か。見たところ同年代だ。そう言えばオレは同年代と碌に交流した事が無かったからある意味新鮮だ。むしろフロウとしか交流してない。上手くやっていけるといいが。

 

 

「ナギ、コイツらがお前とこれから一緒にやっていく仲間達だが、とりあえず色々と打ち合わせしなきゃならんだろ。会議室を一部屋取ってあるからそこでやるように。ここから先はお前らの力だけでやっていく事になるからな。勿論聞きたい事が有れば受け付けるし、組合では有料になるが講習も受け付けている。遠慮なく使うといい。その研鑽次第で上に行くか無残にくたばるか決まるからな。お前らの活躍、組合長として期待してるぜ」

 

 

 

 組合長はそれだけ告げるとオレたちを退室させた。サラという子が名残惜しそうに部屋を振り返っていたが、組合長にシッシッと手を振られて渋々付いてきた。

 さて、何を話せばいいんだろう。初対面でいきなり行動を共にしなければならないのはハードルが高い。自慢じゃないがオレはここまで交流とか何もないボッチだったからな! いや、事情があるからしゃーないんだ。好き好んでボッチしてたわけじゃないからな。しかしここでミスれば後々まで響くので慎重にいかないと。そう思えば思うほど話かけ辛くなる。悪循環だ。

 そうしてぎこちない雰囲気の中、言われた会議室にたどり着いた。サラが気を利かせて椅子に座る様に促し、エルネストが会話の口火を切った。正直ありがたい。これが陽キャか…!

 

 

「さて、先ずは改めてよろしくな、ナギ」

 

「あぁ。こっちこそ。なんか飛び入りみたいで申し訳ないね」

 

「気にすんな。オレらもぺーぺーだし、ちょうどメンバーを探してたんだ。どうもしっくり来る奴がいなくってな」

 

「そりゃありがたいが…期待に応えられるかは分からないからなぁ…それでもいいかい?」

 

「ま、その辺は実際打ち合わせして潜ってみなきゃ分からないだろうな。ただ、お前が本当にあのドミニクさんの後継者ならば問題ないだろ」

 

「あぁ…まぁそう言われちゃ頑張るしかねぇな!」

 

 苦笑しながら返すと、スパーンと小気味の良い音が彼の背後から聞こえた。エルネストがサラにはたかれた様だ。

 

「アンタねぇ。その辺はデリケートな話題なんだから考えなさいよ!」

 

「って〜な! いきなり殴るなよサラ! 大丈夫だって! そうだろ!?」

 

「はは、気にしてないから大丈夫大丈夫! むしろ遠慮はしないでくれ。オレもその名に恥じない様に頑張るからな!」

 

「ほらな! 大丈夫だろ?」

 

「さっきもそうだったけど、お願いだからもうちょい考えて発言してって言ってんの! ヒヤヒヤするわ! だいたいアンタ、ウチらは初対面なんだからね。遠慮が無さすぎんのよ! このお馬鹿!」

 

「あんだと! 馬鹿って言いやがったなこの貧乳!!」

 

「あ”!? それを言ったら戦争だって言ったわよね!!?」

 

 

 ギャーギャーと目の前で喧嘩を始めた2人を横目に、もう1人の少女がこちらに向き直る。慣れた様な呆れた様な風情からいつもの事なんだと推察する。

 

「え〜っと、アレは気にしないでね。幼なじみだからなんだかんだで収まるからしばらくほっとこ。で、さっきはゴメンね? ナギくん。私もあまり人付き合いが苦手だから」

 

「あ、いや、オレも人の事言えないし大丈夫! それにしても…君はオレにいつも話しかけてくれた子、でしょ?」

 

「! ……気付いてくれたんだ。正解。もうちょっと引っ張ろうと思ったけど」

 

「あっぶね! スルーするトコだった! いや、かなり成長してたし、髪の毛の色とか変わってたからさ! 久しぶりだな! フロウ」

 

「ふふ、大丈夫だよ。むしろ早く気付いてくれて嬉しかった。久しぶりだね。ナギくんは変わらないようで安心したよ」

 

「オレはオレだからなぁ。そうそう変わらないさ!」

 

「これからは堂々と話せるね。また面白いお話聞かせてよ」

 

「勿論さ、(プリンセサ)

 

「もう! それは昔の渾名でしょ! 変に揶揄わないの」

 

「懐かしいなぁ、このやり取り」

 

 

 

 オレ達がそうやって和気藹々と話し込んでいると、先程までケンカしていた2人がこちらを仲良くじっと観察していた。

 

 

「見ろよあれ。中々いい雰囲気じゃねぇか?」

 

「あの男には塩対応のフロウが……これは何か始まる予感!」

 

 

 お前ら丸聞こえだからな! さっきまでケンカしてたのに仲良いな! フロウも気付いたらしく、顔を真っ赤にしながら彼らを嗜める。

 

 

「あのねぇ! 私は久しぶりに会ったから旧交を温めてるだけなの! 変な勘繰りしないで」

 

「いやお前、オレ達はんな事知らなかったぜ?」

 

「水臭いな〜! 気になる人がいるなら教えてくれたら良かったのに」

 

「だから違うってのー!!」

 

「ヤッベ怒った! 退散退散……」

 

「ちょっとエル! アンタが怒らせたんでしょ! 責任取りなさいよ!」

 

「なっ、お前だって同罪だろ! オレばっかりに濡れ衣着せんなよな!」

 

 

 そうして再びギャーギャー始まったので、なんとか矛先は逸れたようだ。なんつーか、こういう時にどうリアクションとったらいいか迷うよね。とりあえず苦笑しときゃいいか。まぁ、実際こんな所で会うとは思わなかったからオレも嬉しかったし。でも、なんか照れるね。妙に意識してしまいそうだ。

 エル達を完全に無視して、フロウは再びこちらに向き直った。どうやら放っておくと決めたようだ。

 

 

「コホン。ごめんね。とりあえず私達の立ち回りについて詳しく話すわ。私は短剣使いで、得意な属性は水。採取やパーティー回復・補助なんかが得意。というかむしろ戦闘は補助専門ね。エルは火、双剣使いで戦闘担当。サラは雷で、槍使い。同じく戦闘担当よ。で、私達は戦闘2人に補助1人なんだけど、ちょっと採取とかが追いつかなくて。だからナギくんには期待してるんだけど、ナギくんはどんな感じかしら?」

 

 よかった。漸くまともな話ができそうだ。できる限り正直に答えよう。

 

「オレはここしばらく採取や討伐訓練をしてたから、浅層の浅いとこならある程度ならなんでも貢献できると思う。ただ、属性は霊力が無色透明らしくて、無属性らしい。もっぱら身体強化ぐらいだし。だから強力な戦力とかは期待しないで欲しいけど、それ以外の雑用とか、ダイバー活動で必要なことは貢献できると思うよ」

 

「ほぅ、そりゃいいな!」

 

「助かるわね。ウチは脳筋パーティーに近かったから」

 

 

 あ、ケンカしてたエルとサラが復活してきた。いつの間にか普通に接してるが大丈夫なのだろうか。

 

「良かったわ。サラの言うとおり戦闘ばっかり力入れちゃって解体とか採取とかが追いつかなかったのよ。私1人じゃ限界だったしね。それじゃ、早速役割分担を確認して明日から試しにダイブしてみましょうか」

 

 そこからオレ達は具体的な内容を詰めることができた。最初はどうなることかと思ったが、良かった。

 具体的な話が一段落して、雑談になった会話の中で彼らの人となりをある程度知ることができた。彼らは同じ孤児院出身の幼なじみだったそうな。例によって親がダイバーだったが、亡くなって引き取られた同士だそうだ。

 そして彼らは孤児院を出る前から生計を立てるためにダイバーの訓練を行い、見事合格を勝ち取ったらしい。全員15歳とのこと。癖の強いメンバーだが、安心した。

 

 いよいよ明日、このパーティーでダイブする。そのためにそれぞれの装備の確認と道具の新調をするために買い出しに行き、解散となった。最後にフロウが帰り際にこちらを振り向いて呟いた。

 

 

「……ナギくん。これからよろしくね」

 

「お、おう。こちらこそ、よろしくな」

 

 

 フロウは、花の様な笑みを浮かべて去っていった。その笑顔に再びドキッとしちまった。それをニヤニヤしながら後方から見守る2人。参ったな…でもまぁ険悪になったり、微妙な空気になるよか何万倍もいい。オレも彼女達に手を振って別れた。この新しい仲間達と冒険できると思うと心が躍る。久しく無かった感覚だ。オレも彼らに見限られないように全力を尽くして頑張りたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オレの現在の装備は以下の通りだ。

 

 

 

武器:ドミニクの大剣

防具:革の胸当て(組合長のお古)

   革の小手(組合長のお古)

   革のすね当て(組合長のお古)

   鉄の額当て(NEW!)

道具:収納袋(中)

   ・ランプ

   ・ドニさんの羅針盤(封印)

   ・ドニさんの特製周辺地図(封印)

   ・羅針盤

   ・地図

   ・ナイフ各種(解体・採取用)

   ・救難信号

   ・拠点用設備

   ・携帯食料

   

 

 

 封印、となっているのは、オレが自主的に封印しているものだ。他にも色々便利道具はあるが、自分の家に置いてきている。まずは自分の力を高めるために封印しているのだ。最低でも銀級(シルバークラス)になったら解除だそうだ。ただ、この2つはもしもの時の為に使うように収納袋に入れている。

 装備についてはドニさんの大剣以外は初心者用の物を使用している。初心者なのに高性能の装備に頼ると碌な事にならないという組合長やガブリエラさんの言葉からだ。

 最近ここに鉄の額当てを購入した。頭を守るのは大事だからだ。しかしそれも初歩的な特性を持たない初心者向けの安い物だ。

 本来ならば深奥層から持って来た素材や鎧があるが、自分の資金で自分用に調整できるようになるまでこちらも封印だ。

 そして収納袋。個人で中(四畳半ぐらいの部屋)サイズの収納袋など、普通駆け出しには持ち得ない。普通はパーティーで一つ、しかも莫大なローンでもって支給される物だ。そのサイズは極小(人間1人分)サイズである。

 この時点で新たな仲間たちからは大層ありがたがられた。自分の力ではないのが少し複雑だが、仮に荷物持ちであっても貢献できるのであれば良い事だ。

 

 

 

 明日から仲間達と初ダイブだ。買い出しを終え、仲間たちと別れて帰ったら道具の確認を終えて、自主訓練を始める。

 組合長曰く、自己研鑽を怠る者にダイバーの資格無しとの事。思えばドニさんも常に鍛錬は怠らなかった。よって、オレも走り込みから始めて素振り、霊力訓練を行う。

 地道な訓練だが手は抜かない。目に見える成果は出ないが、きっとこの積み重ねが生きる事があると信じて。下積みは大事だからな!

 

 

 

 

 

 そして次の日、いよいよダイバーとしての活動が始まった。







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