ティエラの地より 〜転生少年、深淵に挑む〜 作:エアロダイナミクス
それからというもの、オレたちは順調に依頼をこなしていった。毎回上下はあるが、1人100ペスタ前後で稼ぎ、メンバーも生活が潤い出した様だ。オレは相変わらずドニさんの家に住んでいるが、他のメンバーはダイバー組合直営の宿舎に寝泊まりしている。メイン層は木級から銅級ダイバーだ。宿舎といってもきちんと個室はあるし、共同だがシャワーやトイレもある。有料だが食堂もあるとのこと。
あまり余裕のない駆け出しに対する組合の福利厚生でもあるので家賃は月に300ペスタである。それでもオレの加入前はギリギリだったらしいが、最近漸く安定したらしく、道具の補充や整備がいい感じにできはじめたとのこと。上手く回り始めているようだ。
オレの方はと言うと、依頼を終えたら大部分を自己鍛錬の時間に充てている。最近はマラソンの距離も40キロに増えた。前世では考えられない距離だが、これは霊力のおかげでもあるのでより距離を増やしていきたい。最近は走っていると声を掛けてくれる人も増えた。
「よぉ! ナギ坊、今日もがんばってんな!」
「ありがとう! おっちゃん」
「精が出るねぇ! リンゴあげるから終わったら食べな!」
「ありがとう! おねえさん! 助かるよ!!」
果物屋がリンゴをパスしてくれたのでありがたく受け取る。ありがたいことだ。後で美味しくいただこう。そうこうしてゴール地点まで来ると、エルネストがいた。
「よ、自己鍛錬か。熱心だな」
「やぁエル! 今日はオフだろ? どうしたんだ?」
「いやな、オレも自己鍛錬はやってるが1人じゃつまんなくてなぁ。折角だからいっしょにやらねぇか?」
「あぁ、なるほど。望むところだ! オレは今ランニングを終えてこれから素振りだから良かったら是非」
そういうことになった。2人で黙々と素振りをする。最近は1000回の素振りを行っているが、ようやくしっかり振れるようになってきたように思う。静止状態からという制限付きだが。これがどんな体勢からも振れるようになるまではまだまだ回数が必要だろう。
組合長との訓練でコツが何となくつかめた気がする。隣のエルは結構辛そうだ。1000回の素振りが終わった時に彼は大汗をかいて倒れこんだ。
「お前、いつもコレやってんの?」
「そーだなー。基本毎日やってる」
「は? 依頼の日もか!? ……は~なるほどね。オレもまだまだ気合いが足りなかったみたいだな。んじゃオレも今度からランニングから参加するから一緒にやらせてくれや」
「いいね、望むところさ。それで、この後どうする? オレは霊力訓練にうつるけど」
「まだやるのか……いいだろ。最後まで付き合うぜ」
そうしてエルは最後まで霊力訓練をオレと共に行う事になった。しかし彼は火の属性変化を中心とした訓練なのでメニューが若干異なる。よって再びそれぞれでの練習だ。彼は火を剣に纏わせて攻撃する練習を繰り返していた。まだまだ持続が難しそうだが、アレが本番でも出せれば非常に有効な攻撃になりそうだ。
最後の仕上げとして彼はオレとの模擬戦を希望してきたので、組合に赴き闘技場が空いているかを確認してから防具を着けて模擬戦を行う事となった。
「そう言えばお前が闘ってる姿は見たことねぇからな。楽しみだぜ」
「オレもさ。じゃ、始めようか」
「勝敗は一撃入れること。ま、武器は木製だが、あまり依頼に響かないようにできれば寸止めな」
彼は言うやいなや、彼はオレの懐に飛び込み連撃を打ち込もうとしてきたので、木製の大剣を正眼に構えて牽制する。全く油断も隙も無い。
「おい! いきなしかよ!」
「チッ。さすがに無理だったか。じゃあこういうのはどうだ?」
彼は剣の先から霊力を炎に変換して飛ばしてきた。結構な弾速だ。危うく喰らうところだったが何とか躱した。熱っ! これはまともに喰らうと不味いな。2発目が飛んできたので今度は大きく躱すが、体勢も崩れた。そこを見逃すエルじゃない。今度こそ飛び込んできて双剣での連撃を打ちこんできた。何とか大剣を駆使してそれを押しとどめるが、双剣だとこのスピードが厄介だ。このままだといいのを貰ってしまう。何とか突き放さないと……!
そう思っていたのが隙になったのだろう。エルは剣の片方に炎を纏わせ、その炎がオレの眼を眩ませた。気付いたら首元に木製の刃が当てられていた。参ったな。完敗だ。
「へへっ。オレの勝ちだな」
「くっそ〜参ったよ! まるで歯が立たなかった。完敗だな」
「リーダーとしての意地は見せられたってトコか。ま、あれほど連撃を防がれるとは思わなかったから霊力無しだとヤバかったかもな」
「う~ん、悔しいな! もうちょっと鍛錬を積まなきゃなぁ」
「ま、オレもリーダーとしては負けられねぇからな。リベンジはいつでも受けて立つぜ」
「言ったな。それじゃ明日もよろしく頼む」
「いいだろ。その代わり訓練も一緒にやるからな」
そうして、オレとエルは次の日から一緒に訓練をすることになった。模擬戦も同時にやっている。大体は負け越しなのが悔しいところだ。属性攻撃の攻略は急務だ。
そうこうしていると、いつの間にか鍛錬にサラとフロウも混じってきた。
アンタ達だけズルい、との事。
いや、別に自主訓練なんだからズルいも何も無いと思うんだが。それを言っても一緒にやると言って聞かないので仕方なく全員で自主訓練に取り組み始めた。
最初はフロウ辺りがランニングで遅れまくっていたが、1ヶ月もすれば慣れたのか付いて来れる様にはなっていた。
ここ最近ではオレたちは街の名物になっているらしく、結構声が掛かるようになってきている。まぁ悪い気はしない。こうした努力は直ぐには効果が現れないが、続ける事は大事だ。オレの目指す所は遥か遠い。そこに辿り着く迄にはしっかりと基盤を作っていかなきゃな。
◇
──そうして8ヶ月が経過した。
依頼後に精算をし終わった後で、帰りにまた打ち合わせして訓練に入ろうかという会話をしていたら、受付のクララさんから重大なお知らせがあると言うので、別室に呼び出された。
「貴方達はここしばらくは依頼の達成率がいいわね。というかほぼ100%達成してるわ。そして組合の貢献度ポイントも規定以上は合格した。よって『暁の剣』パーティー全員を
「「「「!!?」」」」
「マジで……!?」
「マジよ。これは異例の速さね。普通は1年以上掛かるんだけど優秀なパーティーをいつまでも下に留めとくのは勿体無いからね」
「優秀って…いや〜照れるなぁ」
エルがデレデレしてる。バレバレなんだよなコイツ。でもクララさん彼氏いるぜ? ガブリエラさんに聞いたから知ってる。残念だったな、エル。そんなエルを不愉快そうに横目で見ながらサラが質問する。
「
「
「おぉぉ……! ワクワクするな!」
「取れる素材も増えてくるわ。エリダ草より強めの回復薬草であるレクペラ草、万能調味料であるデリシソの実、保温効果のあるカリドの葉と冷却作用のあるフリオの葉などなどが追加されるし、加えて討伐依頼も入ってくるから腕に自信があるならやってみるのも悪くないかもね。ただし素材は持って帰ってきなさいよ」
「ん~でもいきなりは自信ないなぁ」
「そんな人のために元ダイバーが有料で訓練を付けてくれるから受けてみたら? というか受けなさい。階級が上がった直後ってダイバーは凄く死にやすいからね」
「それは誰でもやってくれるんです?」
「まぁ組合で暇してる奴なら大丈夫じゃない? でも階級の高かったダイバーは人気だし高いからね。いい教官にあたるか、コレばっかりは運だわ。ま、講習を受ける前提でちょっと問い合わせてみるから、その間今後の方針を決めときなさいな」
そういうわけで緊急会議である。内容は今後の方針について。活動範囲を増やすかどうかの話し合いだ。勿論
その話し合いが一段落ついたころ、クララさんが再びオレ達を呼び出した。
「良かったわね! ガブリエラが空いてるって! そんな事は滅多に無いから喜びなさいな。とりあえず3日後からスタートして1週間の講習ね。費用は経費込みで2000ペスタ! 正直このクラスがやってくれるなんて破格よ。しっかり学んできなさいな」
「ガブリエラお姉様!!? やったぁぁあーーー!!!」
サラが壊れた。うん。ガブリエラガチ勢のサラならそうなるとは思ってた。何かとオレに情報を求めてくるその目付きは若干怖かったし。
しかしガブリエラさんがまた受けてくれるとは思わなかった。まぁラッキーだったと思おう。約1名が心配だが、いざというときはひっぱたいてでも正気に戻さねば。オレとフロウとエルは無言でそれぞれの役割をバレないように確認した。
費用はこれまで貯めていたパーティー資金で何とかなる。とりあえず諸々の準備をするために明日と明後日はダイブして資金に余裕を作っておこう。
◇
「久しぶりね、少年。今度はパーティーの講習か。もう銅級って、やっぱり優秀ね。少年だけじゃなくパーティーもね。楽しみだわ。今日はよろしく」
「ハイ!! お姉様、よろしくお願いします!!!」
「「「よろしくお願いします」」」
やはり約1名のテンションが爆上がりである。これにはガブリエラさんも苦笑い。
それにしても、こうしてみると分かる。この人の強さは底が見えない。自然体にもかかわらず、隙という隙が一切無い。仮に背後から不意打ちしても確実にカウンターのハンマーを先に喰らうだろう。霊力も桁違いだ。あの霊力を測る玉なら恐らく赤色ぐらいは余裕で行くかも知れない。
それから、1つの依頼を取り、南門へ向かう。やはりこの人は実地訓練らしい。今日は南のアラン平原とのこと。それからオレ達は門を抜け、方角を教えて貰いながらアラン平原へと向かう。南の入り口は昔ドニさんと修行した場所だ。ここは入り口付近でも魔物が寄ってくるために注意が必要らしい。そしていつも通り集中して魔物を避けながら平原へと向かう。約1時間半掛かって漸く目的地に到着した。2レグアでこれならちょっと遅すぎだな。慣れないから仕方ないがせめて1時間で到着できるようにしろとガブリエラさんにも言われた。
アラン平原はその名の通りだだっ広い平原である。しかし、その分見渡しがよく、魔物に見つかりやすいというデメリットがある。その分、ここには貴重な薬草素材がわんさか自生しているため、エリダ草やレクペラ草が取り放題である。それ以外にもおなじみフリオ茸も生えているのでできる限り回収していきたいところだ。
ただ、ここにはジャバリやコルミロの妨害も多く、地中からモグラ型のルナールという大きな角付きモグラが強襲してくることもあるので、注意が必要だ。コイツは角を煎じれば非常に有効な解熱剤になるらしいので、刺されないように注意しながら狩っていきたい。
ガブリエラさんはオレ達のやり方を見ながら、注意点があればその都度指摘してくれた。例えば周囲の警戒の仕方や、新しい素材の採取方法など、非常に役立つ情報ばかりだ。座学だけでは中々身につかないから助かる。やはり講習を受けておいて良かった。
寄ってくる魔物を前衛2人が退治して解体しつつ、オレ達も最後に規定の量の採取を終え帰還しようとしたとき、背筋にチリチリとする気配を感じた。ビクッと振り返ると、ガブリエラさんも険しい顔をしている。
「気付いた? 今日はラッキーだったね。こんなことは滅多に無いんだけど」
「? お姉様、一体何があったんです?」
「貴女達はもっと気配を探れるように訓練すべきね。まぁいいわ。
「ゲッ! 中層級!? マジですか!!」
「うろたえるな。浮き足立てばソイツから順に死んでいく。さて、いち早く気付いたナギ君は相手がどんな奴か分かるかな?」
「えぇ、これは……恐らくですが気配から察するに二足歩行の棍棒持ち。文献から考えるとオーク……では無いでしょうか?」
「正解。さすがね。そしてもう完全に捕捉されたわね。彼我の戦力差を考えていけると思ったんでしょ。私は気配を隠してるし。さて、どうする?」
「どうするって……恐らくソイツからは完全に捕捉されているんだろ? ならば逃げると言う選択肢はちょっと厳しいかもな……仕方ない。迎え撃つ!」
「ちょっとエル! 中層級よ!! 行けるの!?」
「普通は厳しいだろうが、前衛2人に遊撃、後方支援が揃ってる。それに、お前等ならそうそうな相手じゃ無い限り負けねぇ。オレはそう判断した。ナギ、相手は本当に一体なんだな?」
「あぁ。他の魔物の影も無い。恐らく奴を恐れて逃げていったんだろう」
「よし、気合いを入れろ! ここが正念場だ!! 必ず勝って生きて帰るぞ!!!」
全く、初回からイレギュラーが起きるとは思わなかった。しかしこれがガブリエラさんの講習の時で良かった。いざという時の安心感が違う。そのガブリエラさんはオレ達の決定には何も言わず、戦闘準備だけはしている。
もうすぐ接敵と言うときに、ガブリエラさんがオレ達に告げた。
「これから中層級のオークとの闘いとなる。アタシは一切手を出さない。ただ、死人が出る前に助けてあげるわ。それが元で引退するんならその程度だって事よ。この程度は乗り越えて見せなさい」
そのセリフを聞いてオレ達全員が奮い立つ。そうだ。この程度超えられないようじゃ、ドニさんの夢を叶えるなんて無理だ。だから、この震えよ、止まれ!
「ゴアァァァァアアア!!!!」
平原の切れ目の森から姿を現したソイツは、予想通り豚が二足歩行をしたような姿だった。オークだ。こちらからおよそ100メートルの距離。しかし奴はものすごいスピードで一気に距離を詰めてきた。その体長はおよそ3メートル! かなりの巨体である。そんな巨体が凄まじい速さで動くのだ。脅威としか言いようがない。これが中層級だ。
「速いッ!」
「焦るな! 相手をよく見て攻撃を躱せ!!」
オークは棍棒を振りかぶり、前にいる2人を狙いながら振り下ろす。その膂力から振るわれる棍棒は音を置き去りにする。しかし、その攻撃の動作を見ていたエルとサラは同時に左右に移動しながら躱した。棍棒は大きな音を立ててその地面を抉る。抉れた地面の跡を見て、一撃でも貰ったらアウトだと自覚する。そして奴は再度棍棒を振り上げ、オレに向かってきた。今度はオレか! だが、集中だ。奴の動きは単調だ。その強力な力でこれまで敵をねじ伏せてきたのだろう。それは凄まじい速さと威力を持つが、そこに〝技〟は無い。霊力の身体能力強化もただただ単純に強化するだけでは無い。それを今から見せてやる!
オークは初撃を躱された事から、今度は横薙ぎに切り替えたようだ。力一杯踏み込みをし、確実に捉えんと狙いを定めて振る。しかし、オレはその時点で準備は完了していた。即ち、踏み込みの時点で部分的に下半身の強化を終え、振りかぶり始めた時点で真上にジャンプする。そう。いちいち戦闘時に全身強化する必要は無いのだ。必要なときに、必要な場所へ。それが戦闘時の極意だと、身体が理解しているようだった。そして駄目押しとばかりに背後からフロウの身体強化の支援が飛んできている。コレなら行ける!
ジャンプして恐ろしい程の風圧を躱すと同時に、自分は背中の剣を取り外しながら前方に回転する。そして、奴の頭に剣を霊力で強化して叩き込む!
ボグッ! という鈍い音がして奴の頭部が著しく凹む。
チッ! 叩き割るまではいかなかったか!! まだまだ攻撃力が不足している。しかし奴はほぼ死に体になっている。
破れかぶれで棍棒を振り回そうとしているが、そこに前衛の2人が追撃をかける。棍棒を持つ手を炎の双剣で斬られ、熱とダメージで取り落とし、更に隙を晒す。そこに、雷のチャージを完了したサラが槍と共に突撃し、オークの核を貫いた。
あれは【雷迅撃】というらしい。攻撃力で言えばウチのパーティーでは随一だ。
そして、遂にオークは倒れ、完全に沈黙した。ガブリエラさんはぼそっと「
◇
「お疲れ様。漸く解体が終わったわね。さて、帰る前に前衛2人。アタシが何を言いたいか分かるわね?」
「あぁ…後ろを抜かれちまった。今回はナギのおかげで良かったが、ヤベぇ事には変わりねぇ」
「……」
「分かってるならいいわ。まぁ、そのためのナギ君だし、抜かれても対処ぐらいできなきゃダイバーは務まらないからね。でも前衛としては失格。来ると分かったなら、属性攻撃で少しでも怯ませて攪乱すべきね。あと、遊撃のナギ君と後衛のフロウ。貴方達は逆に動かなすぎ。敵の攻撃を待つな。理想は何もやらせないで勝つ事。その為にありとあらゆる手を取りなさい。今回はたまたまカウンターが決まったけど、カウンター狙いなんて命がいくつあっても足りないわ。今後はそんな戦法は極力とらないように気を付ける事ね」
「ハイ……お姉様、すみません……」
「申し訳ない……」
「ま、とりあえず
そしてガブリエラさん同伴の元、オレ達は漸くマドリーに帰還した。今回は講習での訓練と言うことではあるが、講習代は別に払っているので依頼料は別口で貰うことができる。そしてそのリザルトが恐ろしい結果になった。
「う~ん。各種採取物は規定よりやや多め……ただねぇ、中層級の
「「「「…………」」」」
「ね~ガブリエラ~。アンタ本当に手を出してないの? この子達金額聞いて絶句してるけど」
「失礼ね。本当にこのコ達が討伐したわよ。まー疑いたくなる気持ちも分かるけど依頼で嘘つくメリットもないし。アンタ達、とりあえず大金星と思って受け取っときなさい」
いきなり日本円にして30万円にもなればさすがにビビる。ていうか特殊個体って何? あれが中層級のオークじゃ無いの? オレ以外のメンバーも疑問が吹き出そうな顔をしているのを察してか、クララさんが補足を入れる。
「あー今回出てきたのは通常オークじゃなくてね。普通オークこんなでかくないし。そもそも浅層に出てくるような個体は大体強力なんだけど、コイツは輪を掛けて厄介でね。銀級、銅級を中心にコイツの被害があの方面で多発してたのよ。討伐しようにも強い奴が来ると隠れるっていう悪知恵ももってたからね。とにかく異常食欲の個体故、特殊個体。それも更に年季が入った奴だから組合からの討伐対象にもなってたってわけ。おめでとう。さらに討伐報酬3000ペセタ追加ね」
今度こそオレ達は完全に沈黙した。どうすんのこの空気。とりあえず喜んどけばいいのかな?
「はい。と言うわけで貴方達はこれから反省会ね。臨時収入が入って良かったじゃない。さ、行くわよ」
「ガブリエラ~。後でちゃんと組合長に報告しときなさいよ~」
「分かってるって。じゃーね。クララ」
◇
「さ、反省会しましょ」
「え、マジ? これから?」
「マジよ。アタシはビシバシ行くからね。ま、今回は上手くいったんだからそんなに難点は無いわよ。素直に喜んどきなさい」
「…でも今回はお姉様がいなかったらどうなってたか……下手したら全滅してたかもしれないし……」
「分かってるじゃない。まぁ、さすがに全滅は無かっただろうけど、結構な被害は出てたかもね。アタシがさっきラッキーだと言ったのはその部分ね。貴方達は運がいいわ。とにかくこういったことが起きるってのが暗黒領域よ。どう? 少しは実感できた?」
「あぁ。物凄く、な。オレは今回の判断が正しかったのか間違ってたのか、自信がねぇ」
「そうね。特にリーダーの方針でパーティーが全滅するか生還するか決まるから、責任は重大よ。貴方はこれからも悩みなさい。そうすればいいリーダーになれるわ。今回のケースだと逃げるのも闘うのもどちらが良かったとは言えない。もし逃げてもアイツは必ず追っかけてくるでしょうし、逃げた先が魔物の群れだったらもっと洒落になってない事態が起きてたかもしれないしね。ま、コレをいい経験により深く考えていくといいわ。さて、明日に響くといけないし、今日は休みなさい。また明日は違う場所に行くわよ」
「え”っ……明日も行くの…ですか?」
フロウが引きつった顔で尋ねると、ガブリエラさんは何を言ってるんだコイツ、みたいな顔で返す。
「当たり前じゃない。一週間しか無いのに座学で覚えられるかっての。これから一週間は毎日だから覚悟しときなさいね」
そういうわけでこの日は解散となった。他のメンバーは疲れ切った顔で宿舎に帰っていったが、1人頭1200ペスタ貰った事は素直に嬉しい。
それにしてもやっぱりあの訓練はスパルタだったんだなぁ。オレは1ヶ月ぶっ通しで訓練付きでやったから大丈夫だけど、他のメンバーは大丈夫かな? さすがにオレも疲れたが、今日は先程の戦闘の興奮によって眠れそうに無い。やっぱりいつもの訓練をしてから、明日の準備して寝るとしよう。