ティエラの地より 〜転生少年、深淵に挑む〜   作:エアロダイナミクス

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 1日3回! 感謝の投稿!
 若干グロ注意です。
 今まで仕事があんまり無かったR-15タグの出番!


24、代償

 

 

 

 

 

 闇の中にいる。

 

 

 

 何も見えず、何も感じられない。

 

 

 

 ただ、意識だけははっきりしている。

 

 

 

 

 地面も空も、果ては自分すら曖昧だ。だが、何故か不快ではない。むしろ穏やかだ。

 

 

 

 

 闇の中にただ揺蕩う。

 

 

 

 

 あぁ、()()()()

 

 

 

 ずっとここにいたい…

 

 

 

 

 誰かが近づいて来た。

 それは自分の目の前で止まる。すぐそばまで来ているはずなのに全く姿が見えない。当然か。ここは真の闇の中だから。

 それが自分に語りかける。その声だけが闇の中で響く。

 

 

 

「久しぶりだな。ナギ」

 

 

 ……誰だ? お前は。

 

 

「つれないな。まぁ無理に思い出さなくてもいいがな」

 

 

 お前は誰だ。オレは知らないぞ。こんなところで一体何の用だ。

 

 

「心配するなと言っても無理だろうから、とりあえず聞け。あまり長居はせんからな。さて、お前、〝力〟を使ったな?」

 

 

 何の事……いや、〝アレ〟か

 

 

「そう。〝アレ〟だ。お前が手にした〝力のカケラ〟だ」

 

 

 アレで「カケラ」か……だが、何故お前がそれを?

 

 

「俺は『管理者』。お前を見張る者。故にお前の〝力〟を封じている」

 

 

 封じる? 何の為に……。余計なお世話だ。今すぐその〝力〟を解放しろ

 

 

「そう言うと思った。だからこそオレがいる。そもそもお前、あれほどの〝力〟に【代償】が無いと本当に思っているのか?」

 

 

 代……償……?

 

 

「そう、代償。今からお前はそれを支払わなければならない」

 

 

 どういう事だ……

 

 

「今までは俺がサービスで無償にしてやっていた。その代わりお前は覚えていないがな。だが今回は違う。お前が、自分の意志で〝力〟を使った。よって、その分は代償を受けて貰おう。なに、ただ【思い出す】だけだ」

 

 

 思い出すって……何を…?

 

 

「お前が見る悪夢のその一部。そして【地獄】をな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 闇が晴れる。

 

 

 しかしそこに現れたのは絶望だった。

 

 

 薄暗い紫色に染まる空。鈍色に輝く荒涼たる大地。

 

 

 年齢も性別もバラバラの集められた人々。その中にオレはいた。

 

 

 そして……

 

 

 周囲には幾千、幾万にも及ぶ異形の巨大な怪物の群れ。

 

 

 

 オレ達を見ている。眼があるかどうか分からない奴ですら全てがこちらに注目している。その濃密な視線は物理的な圧力をもって襲いかかる。今は時が凍り付いたかのように動かない。しかし、それが解除されたら……。

 

 

 ……な、何だ…

 

 

 この絶望的な状況は一体何なんだ!

 

 

 

「これは一つの真実。これから起きる事を認識しろ。それが代償だ」

 

 

 

 その言葉を皮切りに、止まっていた時が動き出す。地獄の宴が開かれる。逃げる事も許されず、四方八方から伸ばされる手や触手を振り払い叩き落とすが、そんなもの焼け石に水というものだ。

 直ぐに手足を四方八方から掴まれ、持ち上げられる。直ぐには殺さない様だが、嬲り殺しにするらしい。これなら直ぐに殺してくれた方がマシだ。

 抵抗出来ない程の握力により、掴まれた箇所は既に恐ろしい音を立ててグチャグチャに歪んでいる。激しい痛みに絶叫が迸る。それが自分の声とは分からない程に。

 同じ様に近くから様々な悲鳴や絶叫が聞こえる。オレの他も似たような状況らしい。というか、どんな者もあの状況では無理だろう。

 中には女性や子供の声すら聞こえる。そういう声を聞くのは精神的に非常にキツい。

 

 自分の事でいっぱいいっぱいで他がどういう状況か分からないが、断末魔の声の末に内臓を吐き出す様な声や、くぐもった水音から悲惨な末路である事は間違いない。汚らしい咀嚼音がそこら中から聞こえる。どうやら喰われるようだ。オレの周りの化け物は口を開けて嗤っている。オレたちを嬲りながらひたすら狂った様に嗤っている。

 

 

 腕や脚が巨大な口に齧られる。オレは、オレも喰われるのか。痛い。痛い。痛い。嫌だ、嫌だ、嫌だ。こんな所で訳も分からず喰われるのは嫌だ。必死に踠くが奴等は止めようとしない。いや、寧ろ引っ張る力を更に強める。これ以上は千切れる…! 辞めてくれ! 辞めてください!! 辞めろ!!! 

 顔面からあらゆる液体を撒き散らし懇願するが、無論それで止まるわけも無い。そして遂にその時は訪れる。

 

 

 ブチブチブチッ

 

 

「あ、ギャァアアアアァアアア!!!……ぐびゅっ」

 

 

 

 背骨が千切れ、内臓を撒き散らし、オレはいくつかに分かれた。そして迫る口、口、口。妙に歯並びの揃った巨大な口や、サメの歯のような鋭利な歯が何十にも並んだ口が迫る。そして、オレの身体や頭に食らいつくと、そのままその巨大な歯でオレを押しつぶし、磨り潰す。頭蓋は簡単に割れ、己がミンチになっていくところまで認識できた。

 漸く意識が遠のき、再びの闇が迫る。良かった、もう苦しまないで済む……

 

 

 

 

 

「さて、いかがだったかな?」

 

 

 な、何だったんだ、今のは……! あまりにも…あまりにも酷すぎる。これが真実だと?

 

 

「その通り。まぁほぼ地獄のような光景だったな。そして紛れもなく今のは真実だ」

 

 

 じゃあ何故オレはこうして生きている! アレは確実に死んでいたぞ!

 

 

「それもその通り。だがね、地獄だと言っただろ? お前はまさかアレで終わりだと思ったか?」

 

 

 な……! 馬鹿な……まだ、ある…のか?

 

 

「そうだ。とにかくお前は認識した。これからは夢に見ても思い出せるだろう。というか忘れることはできなくなる。しかし、これ以上はお前にも負担だろうしここら辺にしておこう。もし、お前が更なる力を欲したら、続きを、いや、その全貌を見ていくことになる。ゆめゆめ忘れるな。〝力〟には代償があると。あぁ、そうだ。言い忘れていたが、お前はまだ引き返すこともできる。今俺が見せた代償を忘れて、再び元に戻ることも可能だ。その場合は〝力〟を失って、再び渡すことはできんがな。どうするね?」

 

 

 

 

 

 そ、それは……オレは…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【SIDE:ガブリエラ】

 

 

 

 

 

「おはよう。随分うなされていたみたいだけど、大丈夫?」

 

「……あぁ、大丈夫。大丈夫さ」

 

「随分ひでぇ顔してるぜ? もうちょい寝ててもいいんだぜ?」

 

「いや、いい。起きるよ」

 

 

 組合の医務室での会話である。漸く最後のナギが目を覚ましそうだと言うことで駆けつけた。ナギは随分うなされていたようだが、一番最後に目を覚ました。メンバーがそれぞれ声を掛けるが、彼は心配ないと身体を起こす。あれだけの力を発揮したのだ。その反動だろう。

 

 

「良く頑張ったわね。これで全ての講習は終了よ。アンタ達はアタシにも引けを取らず最後まで抗い、見事勝利した。立派だわ。査定にも考慮しとく様に言っとくわね」

 

「お姉様……♡!」

 

 

 サラが目をハートにして見つめてくるが、全員がスルーして続ける。

 

 

「褒美に霊力の最終段階について教えてあげる」

 

「最終段階? そんなのがあるんですか?」

 

 

 サラが問いただす。他の面々も疑問を顔に浮かべている。ナギはよく分からないが。

 ともかくその疑問は最もだ。これはトップ層しか使えない奥義の様なものだから。

 

 

「霊力の属性は人それぞれ、これは知ってるわよね? でも、霊力はそれそのものでも強力な力を発揮する。それ単体でも攻撃手段として使える程に」

 

「んなこた知ってるけどよ。属性の方が強いから属性に変化させて使ってんだろ?」

 

「最後まで聞きな。所謂無属性のフラットな霊力だけど、これを身体強化や回復に充ててるでしょ?」

 

「まぁ、そうだな」

 

「あれって筋繊維を補助したり、身体の自己治癒を手伝ったりしてるわけよ」

 

「…………」 

 

 

 ナギは目が虚だ。大丈夫だろうか。

 

 

「いわば、霊力が肉体の代わりになってる。では逆に、()()()()()()()()()()()という事も……不可能ではない」

 

 

「…………は?」

 

「そんな事が出来るんですか?」

 

「驚くのも無理ないわね。これは超高等技術の一つ。【霊力同調】、と言われている」

 

「【霊力同調】……なんかスゴそう……」

 

「で、コレを使うメリットなんだけど、霊力は物理攻撃を透過するから攻撃を躱すことができる。更に言うと、属性の霊力ならその特性を十全に活かすことが出来る。アタシの最後の技もそれに若干当たるわ。つまり、ナギの最後の攻撃はそのまま喰らってもすぐに再生できた。まぁあれをルーキーに出した時点で負け確みたいなもんだからいいけど。それに、属性にもよるわね」

 

「メチャメチャ有効じゃねーか! 攻撃が実際に効かなくなるんだろ!? そりゃ使えたらマジで無敵じゃん!」

 

 

 エルネストが興奮してまくし立てるが、そんなに期待して貰っても困る。

 

 

「ただし、コレには欠点があってね。まず霊力を馬鹿食いする。瞬間的にしか使えないと思った方がいいわ。なんなら普通に攻撃した方がいいぐらいにはね。あと、アタシとかドミニク様みたいな物理的な属性には向かないわね。アンタ達ならメリットはあるけど。無属性同調は攻撃は躱せるけど攻撃は微妙だし。それなら普通に使った方がいいわ。あとは凄まじく習得難易度が高い。トップ層が何年掛けて訓練して漸く使える程度にはね」

 

「マジか……」

 

「とにかく、練習してみる価値はあると思うわ。貴方達が〝上〟に行くつもりならね」

 

「ありがとうございます! お姉様! そんなに期待してもらえるなんて……! アタシ、絶対に覚えて〝上〟に行きますから!!」

 

 

 物凄い至近距離まで詰めてきてまくし立てるサラ。やっぱりこのコ苦手だわ……。とりあえず伝えられることは伝えたわね。ナギ君の様子がちょっと心配だけど、まぁ様子を見ていくか。

 

 

「期待しているわ。じゃ、またね。何か困ったことがあったら言いなさいな」

 

「「「ありがとうございました!!」」」

 

 

 全員で頭を下げている。さて、戻ろうかな。アタシもちょっと疲れたし。例のアレに向けてアタシも少し鍛え直さなきゃね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【SiDE:ナギ】

 

 

 

 

「ナギ、どうした? なんか調子悪そうだけどよ」

 

「あれほどの激闘だったし、今回のMVPは貴方だからね。今日は少し休みなさいよ」

 

「……本当に大丈夫? 私にできる事はある?」

 

 

 3人が心配して声を掛けてくれるが、オレは先ほどの衝撃からまだ立ち直れないでいた。結局オレは忘れないことを選択した。

 奴はあれが真実だと言った。真実であればオレが目を背けるわけにはいかない。そして、オレ自身に何が起こったのかの唯一の手がかりだ。いくら辛かろうと、必ず全てを詳らかにする。

 だが、少し……いや、かなりキツい……お言葉に甘えて少し休ませて貰おう。

 

 

「ありがとう。いや、悪いね。ちょっと無理した反動が出たみたいだ。今日明日は少し休ませてもらっていいかな?」

 

「もちろんだとも。ていうかオレ達もかなりキてるからな。では、パーティーとしての活動は明後日から。みんないいな?」

 

「OK。アタシも限界。一日中寝ようかな」

 

「分かったわ。じゃあまた明後日、いつもの時間に組合入り口でね」

 

 

 そうしてオレ達はめいめいに別れて帰路についた。しかし休むと言ったがオレは眠れそうに無い。先ほどの光景がリフレインするからだ。こういうときは身体を極限まで動かすしかないだろう。家に帰ってからひたすら素振りをするか……。

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