ティエラの地より 〜転生少年、深淵に挑む〜 作:エアロダイナミクス
1日3回、感謝の投稿!
気付いたら再び闇の中にいた。
「気付いたか? 早かったな。ここに来るのはもう少し後だと思ったが」
!! お前は……いや、今はいい。それよりも、早く〝力〟をよこせ!
「そう急くな。ここはお前の意識世界。ここと外では時間の流れが違う。まずは落ち着いて考えろ」
そう言ってる場合じゃ無いんだ!! オレもそうだけどこのままじゃみんなが……!!!
「ふむ。かなり追い詰められているようだな。だが、よく考えてみろ。お前は
は? 何を言ってるんだ! 死ぬだろ!! どう考えても!!!
「いや、今のは忘れてくれ……そうだな、〝力〟が欲しい、と言うことでいいな?」
そうだ! 早く!!
「では、対価が必要だ。対価は相変わらず同じ。【思い出すこと】。お前には現在
いい!! 早くやってくれ!!!
「……後悔するなよ? では始めよう。この〝力〟はお前の根幹を成す〝力〟だ」
ザザザザザザザ──
闇が切り替わる。そこは以前の光景とはうって変わって恐ろしげな風景へと変貌していた。何もかもが捻れた世界。岩も、木も、雲も、空でさえも。まるでゴッホの絵画を無理矢理ねじ曲げて色を塗り直したような、そんな世界だ。
そこでオレは闘っていた。そう。相変わらず絶望的な状況でも抗っていた。少なくともオレはそんな地獄で折れなかったと言うことだ。
背後には様々な人々がいて、オレ以外にも闘う人々がいた。オレ達が抜かれれば、後方の人々は無惨に喰われるだろう。もうそんな光景は見たくない。だから必死に闘っている。
しかし、以前の状況に比べると人数が極端に減っている。100名前後いたはずだが、今は30名ほどまでになっている。この違いは何だろう。女性や子供の数が減っている。生き返るにも何らかの条件を満たさないと駄目なのか? だが、ある意味こんな地獄から抜け出せただけでもマシなのかもしれない。
オレ達はリーダーの元でひたすら闘う。そう、こんな絶望の中でも闘い続ける事ができたのはソイツのおかげだ。その中で、オレ達は霊力を使っていた。炎や氷、雷、風、土などの様々な属性を駆使して、魔物を牽制する。そんな中でオレは、霊力で肉体を強化して敵に直接攻撃し、その角を折ってソレを武器にするなど、かなり奮戦していた。
だが、そんな奮闘も無限には続かない。
徐々に周囲の怪我が増え始め、終いに腕や足を千切られる。そうすればもう終わりだ。一斉に集られて喰われる。嫌な断末魔が周囲に響く。しかしそれでも闘い続ける。
余計な力みは不要。むしろ枷になる。最小の力で、最大の効果を。そうして肉体を最大限に活かして闘う方法は身についた。霊力は喰われ続け、死に続けて、それでも折れなかった時にいつの間にか使えるようになった。
だが、それでも。それでも届かない。
やがて、オレも巨大な爪を受け止めた反動で半身を抉られ、その一瞬の隙を突かれて敵に喰われた。
うっすらと見えたその先には、なすすべも無く喰われていく同胞達。あぁ。
いつになったらこの地獄を抜け出せるのだろう。
そうして、地獄は続く。何回も何回も何回も何回も。やり直しの最初は襲撃はない。しかし、時間経過と共に化け物が現れ始める。
最初は対処できる。そう。対抗できている。それもこれもrukTe@4@/egのおかげだ。
──最初は。
次第に敵の数が増え始める。徐々に対応しきれなくなっていく。どうもこの襲撃には波があるらしい。第5波ぐらいが最終段階だ。一度そこまで行った。しかし、必ずそこで力尽きる。だからその先が波の終わりだと信じて闘い続ける。そして死ぬ。
繰り返すたび、徐々に人数が減り始める。それは後方にいた者のほうが顕著だ。彼ら、彼女らも無抵抗では無い。霊力でもって後方から闘っている。しかし、後方にいるからこそ、心が耐えきれなくなっていく。
そして「壊れる」。そうなった者は終わりだ。無惨に喰われても復活しない。それを確認するたびに魂が悲鳴を上げる。それ程の喪失感を味わう。仲間が無惨に喰われるのも堪えるが、それ以上に永遠に失われてしまう哀しみは形容しがたい。
最初はそうなって復活しなくなった人間がいたことを見て、次々と復活しなくなった。それもそうだ。ここよりも地獄などあるはずが無いのだから。
しかし、もし、
そう考える者も多かった。だからこそこの無限の地獄を戦い抜く。辛い、苦しい、それぞれがそれぞれに闘う理由がある。
恋人に会うため。大切な人を守るため。平和な暮らしに戻るため。理由は様々だ。
だからこそ闘う。戦い抜いた先にそれが待っているはずなのだ。それは始まりの時に が言っていた。微かな希望だ。確たる保証があるわけでも何でも無い。辛い、苦しいなどの感情はとうに擦り切れた。だが、その微かな希望がある限り、諦めるわけにはいかない。だからこそ、それを信じて無限とも思えるこの惨劇を折れずに闘う。なぜなら──
オレは たいから。
意志を持つのだ。強い、意志を。何者にも負けない。自らの死ですら負けない。同胞の断末魔などにも負けない、強い、強い意志を。
それこそが を目覚めさせる。
ザザザザザザザ──
◇
【SIDE:???】
最初は心地よい悲鳴を聞きながら作業に没頭していた。次第に弱くなっていく声、だが気にしない。家畜の解体でそれを気にする者などいない。だが殺してはいけない。その加減は何百にも及ぶサンプルを弄ってきた自分には容易いことだ。この個体にはまだまだ探求の余地がある。何故この個体は瘴気に浸食されないのだろうか。
瘴気とは霊力の一種であると先ほどはこの個体に説明した。その中で、霊力とは少し違うとも言ったが、それは少し違うようで決定的に違う。
「濃い」のだ。それもとてつもなく。そして、瘴気には〝意志〟がある。それこそが瘴気を瘴気たらしめる。ただの闇の霊力では決して無いのだ。圧倒的な〝意志〟によって、その強さは霊力とは一線を画す。霊力は確かに唯一の対抗手段かもしれない。しかし、対になるほど対抗できていると思い込んでいるのは滑稽だ。なぜなら、霊力には〝意志〟が無いから。瘴気に〝意志〟があるからこそ、この世界はこのような状態になっている。では、その〝意志〟とは一体何か。
それが、この特殊個体を調べれば分かるのではないか。そう期待した。そもそも、瘴気に対して、霊力という殻を抜きにした生身の状態で浸食されないと言うだけでもユニーク極まりない。この瘴気で浸食できないものは龍脈に流れる星のエネルギーなどぐらいだ。ならば、この小僧にそんなエネルギーと同種の物が眠っている可能性がある。だからこそ徹底的に調べなければならない。
一通り開いてみたが、他の家畜どもと中身はそう変わらない。ふむ。やはりここは脳を触らなければならないか。非常に繊細な作業を要するためこの施設だと難しい。やれやれ。
後ろの家畜どもも順調だ。もう少しで引き返せないところまで行くだろう。この特殊個体を研究し尽くしたら後はアイツらだ。瘴気をもっと有効に活用して、せめて深奥の生命体程度には引き上げたいものだ。あのマルコスとかいう馬鹿にはできていたが、あれはただ魔物の瘴気をそのまま移植しただけだ。その個体の意志を残しながら魔物や我々を超えた存在へと変える。そう、
やはりキーとなるのは〝意志〟だ。何者にも屈しない強い意志。そうだな。ここはやはり拷問だろう。おっと、とりとめも無いことを考えていたらこの特殊個体のことをすっかり忘れていたぞ。うん? 目が虚ろだな。壊れたか?
……いや、痛みに意識を手放しただけか。良かった。これで壊れられたら台無しだ。慎重に行かねば。とりあえずこれを閉じて──
うん? なんだ? 臓物が元の位置に戻っていく……。意識がなく、霊力も無いのにか? 自動でここまでの損壊を修復するなど、人間には無理なはずだが……これは、もしかするととんでもない掘り出し物かもしれんな! よし、そうときまれば徹底的に解剖して──
熱っ! 何だ!? 吾輩は痛みなどは感じぬ筈! 今のは……この身体から発しているのか? ッ!! なっ、なんだこれは!? 痛い、痛いぞ!!!
◇
突如、拘束していた身体から不可思議なエネルギーが溢れ出す。それは霊力とは決定的に異なる力。虚ろだった瞳に再び光が宿る。
ナギは瘴気によって手足を貫かれていたが、全身から発したその力によってそれを蒸発させた。彼の肉体は急速に修復を始めていた。何よりも先ほどとは存在の格が異なっていた。その彼が呟く。
「今度こそ……
魔人は急激に展開された〝力〟に驚愕して、一瞬思考が途切れた。それ程の衝撃だった。その後、彼は望外の喜びに震えた。
「な、何だ!? 何なのだこれは!! ハ、ハハハハハ!!! まさかこんな未知のエネルギーと出会えるとは!! これこそが吾輩の求めていた物!! これこそが真の瘴気の対となる存在!!」
未知の事態に興奮する魔人。彼の興味はナギの〝力〟に釘付けだった。これこそが探し求めていたモノであると。これこそが【神】への未知を拓くモノであると。
この魔人の力は中層級程度の物ではない。多少の損害など問題なく瘴気で修復し、観察を続ける。そんな魔人に対して、完全に目覚めたナギが言葉を発する。
「お前は……瘴気が闇の霊力だと言ったな? だが、お前こそ、
「ほう! それは興味深いな。是非吾輩に教えてくれないかね? もしかすると、その〝力〟のことかな?」
魔人は仲間達に向けていた触手を一旦解除し、全力でナギに向かわせる。先ほど仕留めたときよりも素早く、多角的に。しかし、触手は全て接触と同時に蒸発する。
「それは──」
ナギから莫大な〝力〟が溢れ出す。そして、一旦溜める動作をした後、それは彼の全ての周囲に等しく放たれた。
「くっ!!」
彼からその周辺一帯に〝力〟が拡散する。それは全範囲攻撃であったために逃げ場が無い。魔人は瘴気でガードをしようと試みたが、その企みは圧倒的な力の前には無力であった。瘴気の盾は瞬時に蒸発し、ついで、魔人もその力に晒される。
「これは……まさか──」
そして魔人は一つの可能性に辿り着いた。霊力では無い。霊力にこれほどの力は無い。これは瘴気と同等の〝力〟。言うなれば【意志を持つ霊力】! 霊力と言うにはおこがましい程のその力は、霊力の更に上の段階といえる。そして……その属性は……
「光……!!」
次第に魔人は溶かされていく。溶かされていく中、彼は嗤った。
「フハハハハハハハハ!!! 愉快!! これは愉快だ!!! 吾輩は必ずその〝力〟を解明してみせる!!! 貴様とは再び深淵で会うだろう! 我が名はフェルナンド=コルテス! 覚えておくがいい! 吾輩の名を! その時を楽しみにしておくぞ!!!」
「……言われなくても必ず滅ぼしに行く」
「ではしばしの別れだ! また会おう!! 特異固体よ!!」
哄笑を響かせながら彼は塵と化して、最後に消えていった。がくり、と彼は膝から崩れ落ちる。何とかなった。ギリギリだった、と思いながら。そう、まさにギリギリだった。精神的なダメージも、肉体的なダメージも。頼りとなるその〝力〟でさえも。もう絞り尽くした。それでも勝てたのは、なんとしてでも彼らを助けたいという強い意志。それが、ここまでの〝力〟を引き出した。
その甲斐あってか、彼のいる場所は完全に浄化されていた。ハッと後ろを振り返る。すると、先ほどまで浸食され苦しんでいた仲間達は完全にその浸食から開放され、その場で倒れていた。彼は死んでしまったかと焦るも、胸が上下している事を確認し、安心してその場で意識を失った