ティエラの地より 〜転生少年、深淵に挑む〜 作:エアロダイナミクス
……ちっ。そういや、寝たら思い出すんだったな。嫌な事思い出した。何度思い出しても嫌な記憶だ。生々しい恐怖と絶望は今でも俺にこびりついている。奈落や深淵で仮眠した時思い出さなかったのは、俺が似た様な状況に陥ってたからだろう。今なら何故そうなったか推察は出来る。
──やめやめ。気が滅入る。神経が苛立つ。
切り替えて進もう。今俺は深奥層の下部にいる。深淵ほどじゃ無いが、ここもここで狂ってる場所だ。下水なのにこんな部屋があったり、結晶坑道にぶつかったりするから。訳分からんが、深奥だからな。正直それだけで納得できる。時間も空間も歪んでそうだし。時間については深淵でも本当に苦しめられた。逃げられたかと思ったら巻き戻されたり、仕留める直前に時間が飛んだり。アレは敵の能力かな? でも、敵も困惑してたからフィールド特性もあるかも? いや、時間すっ飛ばし攻撃もくらった事あるから半々か。その時は光バリアで誤魔化してマシンガンばら撒いて逃げたなぁ。まぁ、ここはそんなにあからさまじゃないといいけど。
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更に1週間程迷路下水を迷い、遂に巨大な円形の縦穴を発見した。やっとか…もう永遠に辿り着かないと思ったぜ。もう一回やれって言われても勘弁だ。マジで。
それで、上方は闇で覆われてて見えないが、かなりの規模のデカさと深さだろうね。壁は汚水でぬるぬる。最初の石壁以上に登る気しない。ま、丁度俺の出たトコの近くに螺旋状に壁に沿った階段があるし、それで行く。親切だな今回。じゃあ行くか。
あのさぁ……なんでメッチャボロいの? 馬鹿なの? 頻繁に崩れるわ、そもそも階段が広範囲で崩壊してるわ、もうメチャクチャだよ。階段から落ちかける事多数。実際に落ちた時も一回(その時は霊力の手を伸ばして対処した)。んで、最終的に慎重に昇ってったら階段がその途中から完全に崩壊して、続きが遥か上方に微かにしか見えないってなった。実質行き止まりって奴だ。
マジ悪意しか感じない。実質行き止まりと書いたが、実は多分行く方法がある。それは、階段の横壁にこれみよがしに設置された、入口。まさかとは思うが、また迷路とか言うなよ? しかもくる途中何個もあって、完全に惑わす用じゃんか…はぁ、行きたくねーなー…何とか上の続きまで届かねーかなー。こんな時にあの火炎放射器が失われたのが残念でならない。アレ、こんな場所にはピッタリなんだけどな…。
ま、いいや。どうやら下から大量の
◆
扉を開けて横の入口に入る。下からの客は大量のクソデカゴキブリ君。と言っても5メートルサイズだからまだまだだ。深淵だと平気で20メートルサイズだったし。それがあの数で来られると超面倒臭い。奴等は集団でくるのが真骨頂だ。深淵の時はマシンガンでなんとか蹴散らして逃げた。トリガーハッピーになりそうなぐらいばら撒いたなぁ。
おっと、深淵の話はやめよう。
とりあえず、行くか。また蟲くん他、ネズミ君蜘蛛くんナメクジ君その他意味の分からん生物達のオンパレードだろうし…気が滅入るがしゃーない。よし、扉開いて…突入!
…………ん? ちょっとマシになったな。具体的には下水や汚物にまみれた汚ねぇ壁が若干綺麗になってるし、地面も汚物水はない。。まぁ、その代わりと言わんばかりにあちこちボロボロで、血痕が至る場所に飛び散っている。そこかしに綺麗にひしゃげた鎧の骨。生々しい鎧死体。腐りかけの鎧死体。それが見渡す限りに通路上の端に散乱してる。バケモノかなんかに蹂躙された後か、それとも戦争で死守命令して散った奴等かな?まぁ、死体の様子見るとバケモノに蹂躙されて潰されたに一票だな。分かった。次は
近くを通ろうとすると、ガクガクと死体どもが震え、動き出す。やっぱりね。まぁいい。ヒト型は割と楽しいんだ。かかってこい。
頭の潰れたゾンビの大剣を躱しながらカウンターをお見舞いし、同時に来る直剣を俺の大剣でガードする。四方から来る槍は体捌きで躱しながら踊るように剣を振り回す。それで彼らは綺麗に分割されていく。コイツ等も中々の精鋭だな。だが、甘い。俺を殺したいなら今の倍で同時に襲いかかってくるといい。まぁ、四方八方以上は無理だから結局無理だけどな。おっと、後方の魔術師っぽい奴からの仲間を巻き込まんばかりの瘴気術だ。冷気か、珍しい。俺も試してみるか。周りにいる連中を二振りの大剣を回転させて一掃しながら、
【浄化せし火と豊穣たる土の御業よ。弾丸となりて闇を紅に染めよ。其は万物を焼き滅ぼす者也】
飛んできた氷の巨大な複数の塊に対し、俺の身体から膨大な莫大な熱量を持った岩石弾が発射された。それは敵の瘴気の氷にぶつかり、そして競り勝った。そりゃそうだ。数ある中でも結構複雑で難しかった
かっこいいから!
むしろそれ以外の理由、いる? 俺も下水で一週間彷徨うと、気が滅入るんだよ。深淵ほどじゃないけどさ。で、この面白、もとい、有用な技術を片っ端から試しましたよ、ええ。結論から言えば、超便利って程でも無いけど、かなり使える。何より詠唱が、詠唱がマジでいい! 俺の前世と現在の少年心を呼び覚ましたわ。レオナルド、アンタマジで最高。古の魔法剣士ごっこが捗るから、思わず下水なのに練習にのめり込んだもん。一週間かかった原因はそれも割とある。もう気付いたら俺も魔術呼びが定着したよね。詠唱する霊力の技はこれから魔術ってことにしよう。この魔術のいいところは、これ、頑張ればオリジナルとか作れるかもしれないということ。レオナルドのノートに作る上での法則とかしっかり書いてあったし。夢が広がるわ。絶対帰って研究しよ。やる事いっぱいだな! 早く帰ろうぜ!
初めて使ってみた複合魔術は、かなり敵を巻き込んで炸裂した。なんとこの魔術、属性を掛け合わせる事が出来るのだ! これだけでも凄い技術だよね。で、その爆発の中で俺は残った敵を大剣とライトブリンガーで斬り払う。結局はこのスタイルが割と馴染んでるんだ。ライトブリンガーさんの有能っぷりは深淵でも大活躍してたし、大剣は大剣で物理攻撃としてかなり重宝するし、盾としても有効だ。実は大剣は二つあるから(ドニさんが持ってたやつ)大剣二刀流もできるが、様々な敵に対応するならこれだ。左手に大剣。右手にライトブリンガーだ。気分はスター〇ォーズ。俺も攻撃手段が選べて嬉しい。是非ともこれと【詠唱】を極めたいところだ。まだまだ【詠唱】ストックは沢山あるからな。色々使って楽しく攻略していこう。深淵? あそこ楽しめる要素無いから。
さて、近隣の敵は殲滅完了。コイツ等の肉体も瘴気で出来てたからか、瘴気の霧になって消えた。これは俺の体験した所感だが、多分だけど魔物には3種類いる。元の生物や物質が瘴気に晒されて変化した奴と、瘴気そのものが変化する奴。そして、ある場所の物質や物体を媒介にして魔物になる奴。それでいうとコイツ等は3番目だ。こういう奴は素材集めにはいい。解体も必要ないからだ。次に元の生物の変化。コイツ等は解体が必要だが、いずれも凄く有用な部位が沢山取れる。魚とか魚とか魚とか。一番ムカツクのは2番目。苦労して倒したのに絶許。物凄い徒労感に襲われる。その点コイツ等は3番目だからいいね。では、お楽しみの素材あさりのタイムです。剣とか鎧とか無事な奴は持って帰ろう。ちなみに全員きちんと核は潰してます。これやらないと多分コイツら第2形態とかに変身するからね。複数相手でもこれは怠っちゃダメ、絶対。
話がそれた。素材を集めるに当たって、3番目は楽な方ではあるけど、こういう複数戦の時にいちいちその場に行って拾うのが面倒な場合がある。だが、実は俺はこの問題を解決したのだ。
【土の神秘よ、その御業にて我が元へと集え】
落ちてる鎧や武器の金属部分が、その魔術によって反応し、カタカタと震えた後、こちらに飛んで来る。つまりこれは磁力だ。俺の周囲に土属性で磁石の板を造り出し、それに反応して金属系は集まって来るって寸法よ。便利だね。
術が終わると磁石板が消えて、それにくっついてた武器鎧が散らばる。それを片っ端から集めて浄化して収納。うん、霊力は使うけど本当に便利。さ、進もう。
ほくほくして歩いていたら、微かに振動が。あ、これヤバい奴じゃん。振動が強くなってきた。前方から通路を埋め尽くす程の巨大なワームがキモい口を開けて迫ってきた。隙間ナシ! やってくれる。
後方に走って逃げる!
……と思うじゃん? 普通はそれが正解なんだろうね。でも違うんだ。こういう時は
「うおおおおおぉぉぉぉ!!!」
ボーっと立ってた俺が、まさか雄叫び上げて突っ込んで来るとは思わなかったのだろう。奴の巨大に開いた口が閉じる動作がコンマ3秒遅れた。俺としてはそれで十分な時間だ。
馬鹿みたいに開いた口に生え散らかした牙の一本にも触れない様に気をつけながら、俺は奴の喉奥へと飛び込む。敵がデカい分、中は俺が飛び込めるぐらいはある。そして、その勢いを駆ってこのワームの中をダッシュ! 無論、両手の刃はコイツの中身を切り裂きながら! これ系の奴等は圧倒的に中の方がやりやすい。消化液と締め付けぐらいしか攻撃手段が無いからな。で、今コイツはその両方をやろうとしているが、無駄だ。いくら腹を窄めたって、切り裂きゃ同じだからな。そして、500メートルぐらいを一気にダッシュで駆け抜け、核を発見。コイツ、ワームじゃなくてヒュドラタイプだった。つまり、何本もの頭やら触手で襲ってくるタイプ。危うく違う首へ行くとこだったが、無事に中枢へと辿り着き、核を破壊した。
◆
ヒュドラモドキを倒した後も順調に探索を進め、漸くさっきの大穴への扉へと辿り着いた。開けると、ビンゴ。さっきより遥か上だ。階段も繋がってる。そして…外が見える。漸くゴールか! よっしゃ、いくぞー!
今度こそ障害もなく、階段を上りきった末に眼前に広がったのは、壮大な街だった。扉を開けたらいきなり地面が無くなったから落ちかけたけど、頑張って踏ん張り、屋根まで登った所で分かった。
なんつーか……暗黒街っていうか…。あまりにも大きな紅い月に照らされていたのは、19世紀ぐらいのフランスの何とか風建築の街…なんだけど、もう完全にホラーの舞台ですね、それに、地面が見えないんだけど……。ずーーっと建物が下まで続いてる。何階建よこれ。ビルかな? 道ないけど何、基本屋根伝いで行けって? どういう事? これまさか落ちたら深淵とか言うなよ? いや、あの下水に落ちるとかでも嫌すぎる。そのせいか、クサいは継続だ。フランスって確か昔下水なくてウ〇コ道に投げてたって聞いたけど、まさにそういう匂いに加えて強烈な腐敗臭が漂う。おい、あの下水は何なんだよ! その為のもんだろ! ちゃんと使えよ! 直に繋がってたら意味ねぇんだよ!
そんな感想が頭に浮かぶが、いつも通り深奥だからな、と1人納得するしか無いのが辛いところだ。
ここでも油断は出来ないな。あちこちに強い瘴気持ちが大量にいる。
ま、街っぽいから気分的にはだいぶ楽だし、なんならどっかの部屋をぶち破って休憩できそう。果てしなく街は広がってるが、とりあえず端まで進んで行こうかね。
お、いい場所発見。今俺は、クソでかいバルコニーで磔ファイアーされてたデカいバケモノが、更にデカいバケモノに変化して磔をぶち壊して襲ってきたのを迎撃した所だ。炎まみれの奴をぶっ殺し、ついでにいいアパートメントを見つけたので扉を蹴破ってみた。うん、暗いけどベッドもあるしソファーもある。十分だな。中にはなんかキモい頭の肥大したヒト型生物が3匹いたが、これも撃破。なんか精神攻撃っぽいのしてきたけど無駄なんだな。核ごとライトブリンガーで左右真っ二つにしてやった。コイツは瘴気生物だったようで、消えていった。
そして、
俺は、明らかにパワーアップしている。この何らかのエネルギーを吸収することで。気付いたのは深淵で初めて敵を撃破したとき。凄まじいパワーが俺へと流れ込んできた。霊力も、肉体も。マドリーでのダイバー生活で倒したときはそんな事無かった。最初は食べ物かと思ってたんだけど、それもありつつ、倒すことでエネルギーを得ていたようだな。
……これは俺が光に覚醒してからだ。この謎吸収は、光で攻撃して敵を倒すということが条件なのかもしれない。だから、あの時俺は無事に脱出できたんだ。そもそも初期状態だと雑魚一匹でも厳しかったからな。ありがとう、魚。キミはまた見かけたら是非倒させてもらうからな。
さ、部屋浄化して、詠唱の練習して、めぼしいもん詰め込んで寝よ。また思い出すだろうけど、流石に休息無しじゃ無理だし。じゃ、おやすみ〜。
【tips】
魔術について
・基本的には何節かの詠唱を組み合わせて魔術を発現する。元になるのは使い手の属性無しの霊力。これの便利な所は、たとえ無属性であっても属性が使える所にある。ただし、しっかりイメージし、完璧に言霊に霊力を乗せなければ発現しないし、生粋の属性攻撃よりも発動が遅く、威力も下がる。だが、魔術の便利な所は属性を混ぜる点にある。そう言った関係から最低二節は必要。ただし、手慣れてくれば言霊に乗せなくても霊力操作で代替でき、詠唱も省略出来る様になるらしい。まだまだこの技術は発展の余地がかなりある。
以下、法則の一部。
一節…使う属性
二節…対象、方向性…霊力弱、初級魔術
三節…威力(範囲)拡大…霊力中、中級魔術
四節…範囲(威力)拡大…霊力大、上級魔術
複合魔術…一節目に2つの属性を指定する。それだけでも威力が跳ね上がる為、二節で中級、三節で上級となり、四節だと超級魔術となる。
三重魔法…一節目に3つの属性を指定する。以下同じ。
ざっくりと法則開示。魔術体系考えるの楽しい! でも詠唱難しい…。ちなみに暗黒街はブラッドボーンのヤーナムのイメージ。