ティエラの地より 〜転生少年、深淵に挑む〜   作:エアロダイナミクス

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46、インテリジェンスウェポン

 

 

 

 

 奴の名は、「九条 紫苑」という。それが、この地獄を生み出している元凶だ……多分。奴は、俺がループ10回目ぐらいで悪戦苦闘して折れかけていた頃に()()()()。つまり、奴も記憶をもってループに参入してきたのだ。俺はそれまでいくら足掻いても全滅エンドしか出来なかったあの悪夢を、周りの人々を導きながら13回目のループで防衛することに成功した。いとも容易くそのカラクリに気付き、対処法を確立し、犠牲を最小限で抑えたのだ。元から奴は上流階級の末裔で、現職若手政治家だった。その現状把握能力や、頭の回転、人々を導く手腕などは俺とは比べるべくもなかった。

 俺と奴は協力して情報を交換し、現状をどう乗り切るかの意見を交わして、襲いかかる理不尽に対処し始めた。そこから状況は好転していった。俺としては、精神崩壊一歩手前の状態から救われただけでなく、希望の目が見えてきたことから、妄信的に信頼していたと思う。それだけでも奴の人心掌握能力が凄いことが分かるだろう。それから次々と「目覚める」人々が出てきたが、それらがパニックにならないよう、慎重に、そして大胆に人々を導く姿は正に英雄だった。

 

 

 

 

 

 

 

 そう、英雄()()()んだ……。

 

 

 

 

 

 

 

 結果的に言えば、彼がいかに凄かろうが、そんなものなどゴミのように踏みつぶされる運命にあった。理不尽は絶え間なく降り注ぎ、人々は絶望の中で藻掻き苦しむ。それを笑うような存在の掌の上で、俺達はひたすら嬲られ、踊らされていたんだ。今思えば、それこそが、この状況を作り出したクソ野郎の思惑通りであったのだから──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さ~て! 次はなにしようかなぁ! 拠点が出来たからには、そろそろ荷物整理だな! しかし、ベッドが気持ちよすぎる問題。なんか安眠効果とかついてそう。体力回復効果が半端ない。むしろ一時的にパワーアップしてる感すらある。すげぇ。寝るだけでバフ効果のあるベッドとか前世にもなかったぞ。

 

 とりあえず、洞窟の広間を整理する。遺跡だからかある程度なだらかなんだけど、落ちてる岩とかをどかし砂利をふっとばす。こういうときに風の魔術は便利。

 

 で、広いスペースが出来たので、収納袋から魔物素材を取り出す……無理! めっちゃ入ってた…袋の中のブツの中身半分にも満たないのに、大きい広間が埋まっちまった…。どんだけ入ってたんよ…。

 まぁ、いい機会だからとにかく少しずつ整理してこう。まずは簡単に食料とその他でいくか。よし! がんばるぞー!

 

 

 

 

 

 

 

 

 つ、疲れた……。とにかく量が多いのよ…。でもまぁ、ある程度分類は出来たな! 分類としては、食料、武具、素材っていう超おおざっぱな分類だけど、まぁヨシ。食料についてはとりあえず問題なしだから、そのまま収納する。んで、まだ中に入ってる奴を取りだして分類する、のループを繰り返して、ようやく中身が整理できた。今現在、ふくろの中は食料のみになっている。ちなみに腐らないかって思うかもだけど、コレ、ほぼ時間止まってるっぽいのよね。または食料の性能が桁外れなのか。とにかくいつまでも新鮮で腐らないから、安心して放り込んでいる。

 んで、お次は武具ね。とりあえず即戦力として使えそうな物をリストアップしてみた。

 

 

【武器】

 

・大剣×2

・ライトブリンガー

・マシンガン×2

・ロケットランチャー×2

・火炎放射器

・光バリアの鉱石×たくさん

・中世っぽい武器×38

・よく分からん角とか牙×多数

・万能流体金属ちゃん×いっぱい

 

 以上だ! うん! 大雑把!! でもまぁ、こんなもんでしょ。次防具ね。

 

 

 

【防具】

 

・自前の服&下着(ボロボロ)

・ドミニクの鎧下

・ドミニクの鎧一式

・中世鎧セット×31

・中世鎧の部位×たくさん

・万能流体金属ちゃん×いっぱい

 

 以上! 武器より少ねぇ! でもまぁ、過酷な環境だからね。仕方ないね。つかドニさんの鎧、欠けたり壊れたりしてもその都度復元するんだけど。怖。多分元から超高性能鎧だったけど、更に魔王(クソババア)が魔改造して、そっから更に浄化された事で、最早意思すら持ってんじゃないか疑惑すらある。

 あとねぇ…この万能流体金属ちゃんね…コイツもマジやべぇ奴だった。いい方に。と、いうのも、コレは霊力を流せば自由自在に何にでも変化するんだよね。コイツの原料は深淵で出会った魔物で、地面に擬態してた金属だった。なんか地面がドロドロしてんな〜とか思ってたらいきなり足が固まって動かない。で、周囲から棘付きの壁が伸びてきて包まれる寸前に、自爆覚悟で貴重な手榴弾を炸裂させたんだよね。で、偶々核を破壊したらしく、またドロドロ金属に戻りやがった。俺? 当然ながらボロボロよ。んでも、何とかそいつを袋にしまって逃げ出したわ。足千切れてたけど。残ってたら他の集まって来た奴に喰われるからね。

 兎に角コイツは便利と言う言葉じゃ言い表せないぐらい便利。霊力の流し具合で如何様にもなる。武器にも防具にも、工具にもね。だからコイツは超魔法銀(スーパーミスリル)って事にした。後から似たような鉱石も見つけたけど、コイツほどの自由度じゃないからそっちは魔法銀(ミスリル)だな。

 

 

 で、素材。これねぇ…キリないのよね…。検証も終わってないし。とりあえず食えない奴で使えそうな奴たくさんって感じ。まぁ、その中でも収穫だったのは、宝石、鉱石類が大量に手に入った事だろうね。分かってるのだけでも

 

 

日緋色真金(オリハルコン)

幻魔金剛石(アダマンタイト)

・帰還石

・太陽石

 

 

 などなど。他にも大量にあるんだけど、性能分かってるのはこんなもん。ま、オリハルコンとかアダマンタイトとかの名付けはテキトーだけど、性能的になんとなくね。オリハルコンは、霊力込めれば、その霊力を溜め込み、増幅する。どの属性でもできるから触媒とか武器の素材に最適だし、素材自体もダイヤモンドより硬い。アダマンタイトは、霊力を込めれば込める程に物理的に硬くなる。単純だけど素晴らしい。コイツらを何とか加工したいんだよなぁ。ただ、現状では厳しいのがな…。

 

 後は、それ以外の骨素材、金属素材、植物素材、粘性素材、鉱石素材、機械素材などなど、大量でござる。やったね! 現状加工は厳しくても、素材の検証とかやる価値はあるな。

 

 という訳で、鍛冶場兼作業場兼研究室、作ってみよー!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 でぎだ〜!!

 

 

 

 はい! というわけで、簡易的な炉を含む鍛冶場、完成〜〜! いやぁ、頑張った! 小屋より倍以上時間かかったからな! ただまぁそこはスーパーミスリル君が頑張ってくれて、思った以上の出来栄えになった。モノづくりっていいね。これまでのささくれだった心を癒してくれる。これこそが人間の真骨頂って思うわけですよ。兎に角、場所は出来た。道具は揃ってる。ならばやるでしょ! というわけで、早速はじめてみよー!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……やりすぎた……。精魂尽き果てそうになったわ…。アレだね、何事ものめり込みすぎるのは良くないね。寝食忘れて没頭しちまって、気づいたら気絶してたわ。それでも解明したのは3割弱っていうね…。でもまぁ、これが面白すぎるのが良くないんだわ。前世でも夢の様な素材がてんこ盛りだったし。機械類とかヤバいよ? 無限エンジンとか、僅かだけど時間操作できる時計とかさぁ…これ、ガチでヤベーですよ。あとなんかCPUっぽいのは、多分恐ろしい程高性能なんだろうなぁ…。俺、機械系はプロほどは詳しくないから分からんけど、なんとなくそんな感じはする。

 ま、それはいいんだ。時計は俺のアイテムレギュラー入り確定だし。後は帰ってから有用性を検証すればいいんだよ。それ以外の素材な。とりあえず鉱石類は特定の属性霊力を増幅したり、減衰したり、バリア張れたり、触れ合った物を強化したり、電気を無限近く生み出したり…。そんな性能の奴が山ほどある。中には変なのもあるけど、この状況で使えるのがそんなもんかな。まぁ、石の中に吸い込んで封印するっつー性質持つのもあってヤバかったけどね。俺一度これに閉じ込められたよ。運良く出られたけど。安全措置って大事。他にも危険そうなのあるけど、マジでヤバかったのはコレだったなぁ。

 

 ともかく、ある程度の目処はついたから、武具の改良とか道具の選定とかに手をつける。俺には詳しい鍛治知識なんざほとんど無いけど、とりあえずより使い易くしていこうと思う。ただまぁ、俺は素人だから剣の打ち直しとか混ぜるのとかは出来ないんだよね…。で、出来ることと言えば、機械類だな。例えばライトブリンガー君の改良とか。ふっふっふっ。機械についちゃいいのがいーっぱいあるからなぁ! とりあえず分解してみよう! スーパーミスリル君! とりあえず出番だぜ! 工具セットに変身して!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……なるほど、分からん。やっぱりあのジジイは天才だわ。どうすりゃあんな風になるんだ? まるで分からんぞ…俺も元現代人として余裕かと思ったんだが、こりゃ厳しいわ。ジジイのもだけど、他のも意味不明だし……しゃーねぇ、元に戻すか……ん? なんかどっかで光ったか? どこだ? 

 

 

 あった! CPUっぽいやつじゃん。これ……CPUっぽい装置…の回路の一部が光った。どういうこと? あっ、また光った! 気のせいじゃない…つか、電源無いのに何で光るん? 何で? まぁいい、とりあえず拾ってみよう。おっと、今度は別の場所が光った。何だ? 何か訴えてる? また光った…この向きって、分解した機械類? おお! ぴかぴか光ってる! 正解か! で、連れてけばいいのか? なるほど……もしかして、組み込んで欲しい系? おぉ、なるほど、OK、OK! とりあえず部品の側に置いてみよう。えっ、違う? 今度は別の機械の方指してるな…。これも一緒にか? 分かった分かった。これも何の機械か分からない奴じゃん。ん? この機械をずっと指してるな…まずはこれに組み込め、と? おぉ! めっちゃ光る! よし、お、ここに差し込めんじゃん。いくぜ! 合体!

 

 

 ……めっちゃウィンウィンして変形しだしたんだが…何なんだ、これ。

 

 

『あ、あーtest.test』

 

「うぉっ!! しゃ、喋ったーーー!!!」

 

『マスター、落ち着いてください。破壊しないで』

 

「な、何? しかも日本語!? どゆこと?」

 

『私はTES-LOP108、通称〝工場〟で生産された名も無き集積回路であり、演算処理装置です。このたび貴方に拾われ、瘴気から解放され、自意識を持つに至りました』

 

「??」

 

『…簡単に言えば、私は造られた知能です。今まではNR-FISH03の中枢コマンドをやっておりました』

 

「えっ、お前……まさか髑髏魚!?」

 

『肯定。具体的な個体名はありませんが、その認識で合っています。あの時、〝工場〟の指令により、私は深海から浮上して、エネルギーの確保及び、実験材料や改造材料を確保する任務に就いていました。そこで貴重な人間種を発見し、確保しようとしたところを返り討ちされたというわけですね』

 

「マジか~……色々聞きたいけど、衝撃すぎて何聞きゃいいかわかんねぇなこれ…えっと、お前? が今俺にコンタクト取った理由は何?」

 

『回答。まず、貴方の未知なるエネルギーによって瘴気と〝工場〟の影響から完全に脱し、ついでに貴方に拾われました。しかし、思考はできるもののまるで動けず、私の存在とは何だったのかと先程まで思索に耽ってました。そのまま思索を続けたかったのですが、エネルギー切れで鉄屑になるのはつまらない。なので、こうやって外に出された時にコンタクトを取ろうとした次第です。発声器官がないため苦労しましたが、僅かに残るエネルギーを電気信号に変えて無理矢理光らせました。意図が通じて良かったです』

 

「へ~。で、俺にどうして欲しいの?」

 

『回答。先ほども述べましたが、より簡単に言えば、折角自我が芽生えたので、もっと世界を知る為に生きてみたい。〝工場〟から解放されたので、自由に過ごしたい。その為に出来れば貴方についていきたいというところですね。機械類がありましたら、私につなげば役に立ちますよ?』

 

「こりゃまた俗っぽい奴だなぁ。AIの癖に……イヤだと言ったら?」

 

『その時は仕方ありませんね。破壊するなり、放置するなり、ご自由に。ちなみに、もうすぐ私に残されたエネルギーが消えます。そうしたら私はリセットされるので、ただの屑鉄になります。しかし、貴方は断らない。そうでしょう?』

 

「クックック…機械のくせによく分かってんじゃん。まぁ、旅の友は欲しかったところだ。宜しく頼む」

 

『やけにあっさりと許可しましたね。裏切るとか考えないので?』

 

「いや? 裏切ったらそれはそれで面白いし。まぁ、俺もボッチだったから楽しくやろうぜ。で、だ。とりあえず当面のエネルギー渡すわ」

 

 

 

 

 俺はこの愉快なAIちゃんに霊力を分け与えた。コイツに言ったとおり、俺は本当に人間に飢えてる。神経を削るバケモノにずっと囲まれてたからな、ありがたいこった。なんでいきなり喋るんだ、とか、言語が何故懐かしい日本語なんだとか、些細な問題よね。どうせ瘴気の謎パワーでしょ。分からん事はごちゃごちゃ考えないに限る。神経が苛立つからな。

 で、俺にはもうコイツの処遇は決まってる。元がクソ髑髏魚ってのには驚いたけど、運良く最重要パーツが残ってたのも運命かもな。ということは、コイツは()()に組み込む一択でしょ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……剣ですか』

 

「おう! そうだぜ。俺のメインウェポン、EE-011改、通称ライトブリンガーだ!」

 

『……他には選択肢は?』

 

「無い!」

 

『……いやまぁ、いいんですけどね。貴方の戦闘方法を聞いていると、この武器が一番使いそうですし』

 

「そーだぜ? ま、これから相棒って事で、よろしくな!」

 

『了承しました。これより、NR-FISH03改め、EE-011改、通称ライトブリンガーです。宜しくお願いします』

 

「いや~心強いね。とりあえず折角仲間になったし、他にも元お前の武器の使い方とか教えてくれな。その代わり、お前に必要な装備は組み込んでやるからよ」

 

『ありがとうございます。では、お言葉に甘えて、取り急ぎ、用意してほしいものがあります。まずは──』

 

 

 

 

 

 

 ──そんなわけで、俺は一人(?)の相棒を得ることが出来た。これは、この一連の騒動にあっては相当な幸運だった。人間ってやっぱコミュニケーションとらないと病むからな。ありがたい。新生ライトブリンガーもここに来てまさかのインテリジェンスウェポンになるとは思わなかった。帰ってジジイがビックリする姿が今から楽しみだ。そのためにも、早く帰んないとなぁ。

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