ティエラの地より 〜転生少年、深淵に挑む〜   作:エアロダイナミクス

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53、深層へ

 

 

 

 

 

 鎧に比べれば、剣はまだやりやすい方かもしれない。刀身の鋼を合金にして鍛え、鍔と握りと柄頭、そして鞘を作れば良いから。単純にパーツの数の違いである。しかし、どちらが楽かなどはアンリには決して言えない雰囲気があった。それぐらい真剣な様子で取り組んでいたからだ。

 

 鎧を製作して倒れてから、彼は1日中眠っていた。魂を燃やす程の作品を作ったのだ。当然だろう。その後彼は、起き上がって食事を取ると、すぐに剣の製作に取り掛かった。

 

 剣身を熱し、叩いて打ち直していく。何回も、何回もひたすらに叩き、火にくべる。形を整え、その上からオリハルコンを重ねてまた叩く。何回かそれを繰り返したら、更にアダマンタイトを重ね、同じ事をする。こういうと、余程デカい剣になるかと思うだろうが、実際はかなり細身の剣なのだ。意味が分からない程の技術だ。鎧を作ってからアンリは覚醒したらしく、凄まじい技術を自由自在に操り、最高の剣を作らんとしていた。

 それを見ていたミシェルが、「もう私は敵わないわね…」と、小さな声で呟いていた。ど素人の俺からすれば、いや、君もアレに迫る技術があるんかい! とよっぽど突っ込もうかと思ったが、やめといた。全く、すごい子達だよ。もう遥か昔になるが、俺が同年代の頃は、なんの取り柄もないただのクソガキだったからなぁ。そんな子達を、絶対に意味もなく理不尽に殺させる訳にはいかないなと、改めて思う。街には必ず送り届けてやるからな。

 

 

 

 剣身が終わり、ジュッと水につけて丁寧に研磨し、油を塗れば、美しく輝く剣身が顕になった。銀でもなく白でもない。プラチナとも呼べる輝きは、これまで見た他の武器の追随を許さぬ程の機能美と、華やかさを兼ね備えていた。それは、ミシェルを剣にしたらそうなるだろうという変な感想を抱かせるものだったが、実際にアンリはイメージしながら作ったのだろう。

 

 その後、流れる様に鍔と握りをオリハルコンとアダマンタイトの合金で打ち、華麗な装飾を施したら、最後に柄頭へ太陽石を研磨して作った玉を取り付けた。鞘は深奥の木の魔物から削り、深淵級魔物の蒼い血(再生効果弱)で着色し、吸収石とオリハルコンで彩った。

 

 

 それを、アンリは再び瘴気に晒し、魔物化しないように注意して見張りながら浄化を繰り返して馴染ませ、遂に完成した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 それは、一つの芸術だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お嬢様。完成いたしました。お納めください」

 

 

 

 謁見の間の中央で、アンリは跪いてミシェルへと剣を掲げた。それをゆっくりと受け取ったミシェルは鞘から剣を抜き、その美しさにしばし見惚れた。しばらくそうした後、跪いたアンリに声を掛けた。

 

 

 

「……素晴らしい出来栄え。ご苦労でした。これで私の母様も報われるでしょう。貴方は1人前の鍛冶師として立派に務めを果たしました。褒美は追って下賜する事としましょう」

 

「お嬢様、ありがたきお言葉。しかし、これは僕の試練、そして間違いを犯していた僕の贖罪です。よって、お嬢様から褒美を頂くなどとても出来ません」

 

 

 

 おいアンリ、お前マジか。本当にアンリか? 以前のお前はどこに行っちまったんだよ。ほら、ミシェルも若干戸惑ってるぞ。 

 

 

 

「……貴方も本当に成長しましたね。ですが、覚えておきなさい。信賞必罰。私は貴方に褒美を取らせなければ、為政者としては失格なのです」

 

「ならばお嬢様。恐れながらお願いがあります」

 

「なんでしょう?」

 

「僕と貴女の婚約の解消を願いたい」

 

 

 

 

 !?

 

 

 は? お、お前、どういうこと!?

 

 

「!? あ、アンリ、それはどういう事!?」

 

 

 ほら、流石のミシェルも俺と同じリアクションしてるぞ! お前、本当にどうした!? 俺は口出すわけにもいかんから端っこからその様子見てるけど、ちょっとビビるわ。お、アンリが顔を上げた。

 

 

「そもそも、僕等が婚約状態だった事こそが良くなかった。僕はそれで慢心してしまった。成長を諦めてしまった。僕は、今は無理でも貴女とはこれからは対等になりたい。だから今、僕達の関係を一度壊しましょう」

 

 

 お、おい…アンリよ、本当に何言ってんだ。お前、そこは結婚してくださいじゃねーのかよ!! ミシェルも何か言えよ!

 

 

「…………アンリ、それは貴方にとって褒美には成り得ません。他の望みは無いのですか?」

 

 

 そーだそーだ! 言ったれミシェル!

 

 

「僕にはまだ、貴女は眩し過ぎる。それに、僕から見て、貴女が誰を見ているのかぐらいハッキリと分かる。そんな中で僕は対等面してしゃしゃり出て、貴方を悲しませたくない」

 

「!! それは……」

 

 

 それまで跪いていたアンリが立ち上がり、ミシェルの目をしっかりと見つめながら言う。そこには、以前のナヨナヨしたアンリではなく、気迫と自信に満ち溢れた男がいた。

 その変わりように、流石のミシェルも動揺してこっちを見た。いや、ちょい待てって、こっち見んなし。流石の俺もこの空気で口挟むの嫌だぞ! しかし、アンリは容赦なくこっちを向き、その確固たる意志を持った瞳で俺を見据えた。

 

 

 

「ナギ=シュトルバーン。貴方は、強い。公爵級魔人を苦もなく打ち破る。貴方は正に英雄だ。人類の希望だ。そんな貴方となら、お嬢様とも対等に愛することが出来ると思う」

 

「ちょっとアンリ! それ、どういう意味!?」

 

「どうもこうもそういう意味ですよ、ミシェルお嬢様。貴女はこれまで男なんかに興味は無かったでしょう? でも、彼が現れてからは違った。貴女は間違いなく恋する人の目をしていた」

 

「ちょっ…ちょっとやめてよ! そんなんじゃないから!!」

 

「僕はね、正直に言えば、お嬢様に気後れしてたんです。たとえ結婚したとしてもこのままじゃそれは変わらなかったでしょう。でも、そうして結婚したって、僕は嬉しくともなんともない。そして、そのままゆっくり腐っていくでしょう。今回それがはっきりと分かりました」

 

「…………」

 

 

 ミシェルの言葉にも気後れせず、堂々と反論し、遂にミシェルは沈黙した。

 

 

「……俺から見りゃ、今のお前は負けてねーと思うぜ?」

 

「僕の状態は僕が一番よく分かっています。今、僕は積み上げた力を全力で出した、それだけです。それでも貴方やお嬢様には何歩でも劣る。ここからだ。ここから僕は積み上げていかないといけない。そのためには、今の婚約者の状態じゃダメだと思う」

 

「……そっか。だがな? それは婚約してても可能なんだぜ?」

 

「先ほども言いました。これはケジメです。そもそも僕は、無事に帰れたときに婚約を破棄されるでしょう。同じ事です。それとも、僕たちを無事に帰せなかったりしますか?」

 

「馬鹿言え! 俺の全てを賭けて、全力でお前らを守って五体満足で帰してやらぁ!」

 

「ふふ、ならばこの仮定は間違いなく起きる。そうでしょう? お嬢様」

 

「え? ……えぇ…そう、ね」

 

「僕はね、一から積み上げたくなったんです。誰にも頼らない、お嬢様の手も、親父の手も借りず、世界一の鍛冶師になる。僕にはお嬢様のような為政者の才能は無いし、ナギさんのような世界を救うような力も無い。だけど! 僕の手には鍛冶がある。僕は、火と向き合い、鍛冶をするために産まれてきた。それが分かったんです。だから、お願いです。僕の先ほどの願いを叶えてください」

 

 

 くっ、こいつ……男子3日会わざれば刮目して見よっていうけど、ガンギマリじゃねーか。コイツの中で何が起きたってんだ! 既にその姿からは弱々しい雰囲気は消え去り、堂々とした漢へと変わってる。いかん、むしろコイツに惚れそうだ。イケメン過ぎる。

 

 

「……アンリ。貴方は……いえ、分かりました。ならば婚約はこの場で破棄しましょう。しかし、それでは褒美になり得ない。帰還した後、必ず金品等で払いましょう。それで良いですか?」

 

 

 婚約破棄。前世で物語で散々溢れてたけど、こんな場面で、こんなシチュエーションで見るとは思わなかったな。そして、アンリは健やかな顔してやがる。何回も言うけど、本当に同一人物か疑わしいぐらいの変化だ。火とともに煩悩も消し飛んだか?

 

 

「お嬢様。ありがとうございます。しかし、今思いついたのですが、僕にとってそれよりももっと魅力的な褒美があるのです。それにしてもらえますか?」

 

「? 何です?」

 

「それは──」

 

 

 

 

 アンリはその後、マジでぶっ飛んだ褒美をねだった。コイツ…イカれてやがる……だが、キライじゃないぜ、そういうの。その褒美が実現するならば、本当におもしろいことになるだろう。俺も()()は見てみたい。だから、必ず帰してやるぜ。2人とも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ナギさん」

 

「ナギでいいぜ。他ならぬお前ならな」

 

「いえ、僕の中では()()貴方は格上だから。しばらくこれでいきます」

 

「……ま、いいけどな。本当に変わったなお前」

 

「それもこれも貴方のおかげですよ。本当に感謝してます。感謝するついでにお願いしたいことがあるのですが」

 

「うん? なんだ?」

 

 

 

 謁見の間に無造作に並んだベッド。俺たちはそこに2人で横になりながら話をしていた。ミシェルは小屋のベッドだ。ちなみに俺の分のベッドは目の前の男が作ってくれた。本格的な奴で、寝心地がダンチだ。いやそれはいいが、俺にお願いとは何だろう。嫌な予感がする。

 

 

 

「2つあるんですが、まず1つ。やりたいことができたので、帰還を遅らせてください」

 

「……明日旅立つ予定だろ? なぜだ?」

 

 

 そこでアンリはベッドからむくりと起き上がり、真剣な表情で言った。

 

 

()()()()()()()()()()()()()からです」

 

「俺の?」

 

「そう。貴方の光の聖剣はともかく、二振りの大剣と鎧はそろそろガタが来てませんか?」

 

 

 うっ…そうなんだよな。整備はこまめにやってるが、どうしても刃こぼれとかしちまってる。自動修復もしてはいるが、流石に素材の質が追い付いてないんだよな。そりゃ、あのクオリティで打ち直してくれるなら万々歳なんだが……。

 

 

「それに、本音を言えば、僕は貴方とも対等になりたい。でも、今僕にできるのはそれだけです。帰ったら多分色々な状況がそれを許さなくなる。だから、今だけなんですよ。それに、痛快じゃないですか。貴方が大活躍すれば、僕の剣と鎧の価値も上がる。鍛冶師にとってこれ以上無い栄誉ですからね」

 

「言うねぇ! ならば、お願いしよう。俺にとっても願ったり叶ったりだ。あの鎧と剣を見て確信したね。お前なら俺の装備を託せるってな!」

 

「ふふふ…それは嬉しいです。じゃあ、明日からまたよろしくお願いしますね?」

 

「おう! ミシェルには俺から言っとく……そういや、2つ目はなんだ?」

 

「あ~んー……いえ、お嬢様の事ですよ」

 

「あ…それか……」

 

 

 くっ…言わないかと期待したのに口にしやがった。しょうがない。俺も腹をくくろう。

 

 

「貴方はどう考えているか知りませんが、お嬢様は本気ですよ?」

 

「そうさな。俺も思う。だがな、俺には人生においての目的があるんだ」

 

「そうでしょうね。それに貴方は英雄だ。きっとひとところには留まれないでしょう」

 

「縁起でもねぇこと言うなよ! 英雄とかでもねぇし……でもまぁ、きっとそうなんだろうなぁ。だからこそ、俺じゃお嬢は幸せにはできん……俺にはマドリーに残してきた気になる娘もいるからな……だから、さっきも言ったが今のお前ならお嬢を幸せに出来ると思ってるんだぜ?」

 

「いえ、僕は本当にその気はありません」

 

「なんでだよ!!」

 

「僕は、お嬢様の表面しか見られない程度の浅い男でした。有象無象と何も変わらない。僕にはもっと時間が必要なんです。その時間が無いままくっついちゃうと、間違いなく良くないことになる。何年かかるか分からないし、女性を待たせるわけにはいきません。周囲の圧力もあるでしょう。だからこれが最上なんですよ」

 

「あのなぁ…んなもん、ぶっちぎってやりゃいいんじゃないか?」

 

「ぶっちぎるためには力が必要です。ですから、その力が付いたと確信したら、お嬢様を貰いに行きますよ。でもね、それ以前の問題として、お嬢様の気持ちはどうなります?」

 

 

 うっ……そうだよな。俺も鈍感系じゃない、むしろ敏感系だから当然気付いている。気付いてはいるが、気付いていない振りをしている状態だ。今まではそのままアンリとくっつけと思ってたが、こうなった以上それも辛いものがある。

 実際、あんないい女いねーしな…。そんな女が惚れてくれることなんて、あり得ないほどの幸運だ。婚約破棄して、俺が袖にしたとしても、そりゃ帰ったなら、結婚を希望する男なんざ掃いて捨てるほどいるだろう。だが、そんな有象無象にあのミシェルがなびくとは思わない。だからといって、俺なんかとくっついたりしちゃお互いのためにも良くない。俺にはフロウがいるし…どーすっかな……。

 

 

 ……よし、こうしよう。

 

 

「いいぜ。俺は決めた」

 

「どうするんです。お嬢様とくっつくことをですか?」

 

「いや? 俺にはやるべき事がある。まずはマドリーに帰らにゃならん。そして、師匠の街を復活させるって使命とか、クソ魔王をぶっ飛ばすっていう大事なお仕事があるんだ。だからな? お嬢にプロポーズするわ」

 

「……矛盾してません?」

 

「してねぇんだわ。()()()()()()()()()()()()って言ってくれたら、結婚する」

 

「!! それって……」

 

「くくく……盛大に振られてやるぜ。一世一代のプロポーズ。しかし、世界は二人を引き裂く、ってな」

 

 

 そうさ、俺はそうする。たとえ、ミシェルに相当嫌われたとしてもだ。ミシェルは頭がいい。だから、出来ることと出来ない事の区別は明確に行っている。その中で最善を選び取る女だが、彼女は自分の街を最優先にするだろう。領主の娘として、絶対にそれは譲らないはずだ。何故なら、自分を犠牲にしてでも街を守るほどだから。アンリは俺の答えを聞いて考え込んでいる。うん、不快だよね。俺もそう思う。

 

 

「……茶化さないで真面目に答えて欲しいのですが、貴方は、お嬢様の事をどう思っているんです?」

 

「決まってんだろ! 最高の女。古今東西現れねぇ、完全無欠の最強のイイ女。正直状況が許すならマジで結婚したいぐらいだ」

 

「奇遇ですね。僕も同じ意見です」

 

「ならオメーが結婚しろや」

 

「今はダメなんですって。やる事があるからね」

 

「ちくしょー! 俺だってそうなんだぞ! マジで!」

 

「はは……本気でそう思ってるようですね。安心しました」

 

「当たり前だろ? こんな時に嘘つく奴はクソ野郎だ」

 

「違いない……じゃあ、明日に備えて寝ましょうか」

 

「そうだな……悪かったな。アンリ」

 

「こちらこそ。ナギさん。では…」

 

「「おやすみ」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふ……この私が、イイと思った男()()に振られちゃうなんてね……。でもね、2人とも。私は欲しいモノは必ず手に入れる主義なの。覚悟しておくといいわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次の日から、俺とアンリはミシェルと話し、俺の武器を打ち直して貰うことを交渉した。ミシェルはその意見に快諾してくれた。本当にイイ女だな。全く、世の中ままならないもんだ。ただし、その打ち直しには自分も参加させてくれとミシェルは言ってきたので、アンリと俺は快諾した。

 アンリは早速俺の2つのドニ剣から取りかかってくれた。基本は同じだが、大剣なので12歳のアンリには重く、その部分だけでも手伝った。そうして、ミシェルとアンリは2人で大剣を打つ。そして、俺はそれを支えるという役割分担で行ったが、アンリはこの前と同じように鬼気迫るほどの真剣さで槌を振るってくれた。しかし、ミシェルも同じように真剣な表情で一緒に槌を叩いていた。俺には鍛冶の事なんて殆ど分からないが、少なくともミシェルは本気でアンリと勝負をしかけていたし、アンリもそれに負けじと、更なる気迫で迎え撃っていた。

 そうして、相乗効果で2人の技能はぐんぐんと高まり、凄まじい勢いでドニ剣が生まれ変わっていった。

 

 1つの剣はオリハルコンを中心に。もう1つの剣は、アダマンタイトを中心に。それぞれの特色を出しつつ、使い分けが出来るように、2つのドニ剣は新生していった。そもそも、深淵の瘴気に晒されたこの剣は、半分魔物化しているような状態で、それを制御しつつ打ち直すことは至難の業だったはずだ。しかし、それを苦もなくガンガン作業を進める2人は、最早誰も敵うことのないほどの匠の域に至ったのではないだろうか。そうして生まれ変わったドニ剣は、属性剣と斬鉄剣という特徴を持ち、属性攻撃を微妙に吸収し、更に自己再生(強)がつくという、意味不明なほどの業物へと生まれ変わった。それらは、それぞれ魔物の革のベルトで背中から吊り下げられるようになり、二つの剣を交差して背中に差し込む形となった。2つの剣は区別しやすいように、鍔の部分にマドリーの紋章である獅子、そして、パリス(2人の故郷の街)の紋章であるアイリスの花があしらわれた。

 

 

 

 鎧についても、ミシェルの鎧と同じく、デザインを一新し、素材から厳選して打ち直した。貴重な鉱石をふんだんに使い、霊力増幅、頑強、不壊、復元能力、吸収能力、属性攻撃力上昇などの効果に加え、魔物の毛皮を布地にあしらい、俺の好きな深い青色のマントを新たに取り付けてくれた。ブルーが基調の鎧だったが、プラチナのような輝きがベースになり、アクセントとして元のブルーが映える形になった。それがすっごいイイ!

 以前の鎧も相当かっこよかったが、今の鎧は最強にかっこいい!! もう、最高! なんつーか、着ているだけでテンションが上がる。この鎧のいいところは、ベルト各種で収納袋も簡単に取り出せるし、収納も多いこと。ドニ剣が背中に移動したから、それ以外の道具が取り出しやすくなったことなども利点の一つだ。やっぱり鍛冶だ。鍛冶は世界を救う!

 

 

 とにかく、そんなわけで、俺の剣と鎧は完成した。完成したときに3人でハイタッチを決めた。それぐらいにテンションがアゲアゲだったのだ。そのあと歯磨きもせずに2人ともぶっ倒れたが。5日間徹夜は流石にあかんかったか。でも、言い訳させて貰えば、睡眠なんてとってる場合じゃないぐらいみんな白熱してたんだよ……。俺? 俺はまぁ、応援してただけだから…。

 

 

 

 

 

 で、流石に休養日を2日ほど設け、いよいよ旅立ちの日。

 

 

 

 

 

 俺は全ての装備を確認し、道具やその他の物もしっかりと収納した。城に設置した太陽石はそのままにしておく。ここは深淵に近い。クソ魔人が支配していたから、周囲に魔物は少ないが、それでも特濃の瘴気が漂っている。少しでも瘴気の流出を減らしたいし、()()()()()()()()()()()()()、ある程度は綺麗に保っておいて欲しい。だからこそ、俺はこっそり帰還石も仕込んでおいた。

 それにしても新しい鎧……メチャメチャ着心地がいい! 以前も良かったよ? でもコレは輪を掛けて快適だ。動きを邪魔しない。なんて言うか、着てないような感覚だ。それに、これからやっと深奥層を抜けられるかと思うと、嬉しさもひとしおだ。

 

 

 

『よかったですね、マスター』

 

「お、久しぶりに声だしたなラブやん」

 

『マスターが楽しそうだったもので、邪魔しちゃいけないかな、と』

 

「ライトブリンガーさん、よろしくお願いしますね」

 

「お世話になります」

 

『いえいえ、いいんですよ。私もこの2週間、面白いものを沢山見ることができて満足です』

 

「へっ、やっぱり人間観察してたか。どうだ、何か分かったか?」

 

『えぇ! 良かったですよ? 人間って本当に面白い。興味が尽きませんね』

 

「そりゃ良かった。じゃ、行くぜ。準備はいいか? みんな」

 

「ええ!」

 

「はい!」

 

 

 

 

 

「それじゃ、出発!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 じわじわと広がる視界。実は帰還石はこれで2回目だ。最初はドニさんが死んだ時。そして今だ。そう考えると、俺はダイバーとしては初心者みたいなもんだし偉そうな事言えないんだよなぁ。でもアレだ。ゲーム始めたてのプレイヤーをいきなりラスダンまで連れてく鬼畜仕様が良くないんだ。まぁ、そのおかげで2人を助けられたからいいんだけどね。

 

 さ、ここは洞窟か。岩を乱雑に削っただけの簡易的なものだ。その分、キモいのとかは無いからありがたい。ただ、クソ魔人の使ってた道具が放り捨ててあるだけだ。どんな道具かはここでは言わないでおくが、流石クソ魔人だな! 悪い意味で期待を裏切らない。

 しかし…という事は、この帰還石は当たりだな。空気が軽い! 瘴気薄い! 良かった。深淵とかに行ったらどうしようかと思ったぜ。まぁ、アイツの事だ。深淵に突撃するような度胸は無かっただろうけどな!

 

 

「……当たり、ですね」

 

「見覚えがあります。奴の言う事が本当ならばここは深層、でしょう」

 

「そうだな。これでようやく一歩前進だ。さて、早速浄化すっか!」

 

『マスター、マスター。気付いてますよね? 反応が近づいてますよ?』

 

 

 そうなのだ。この喜びを穢すアホが近くまで来てる。全く……いつになったら気分良く過ごせるのか。2人に太陽石を渡し、下げさせる。

 

 

 

 

「貴様ら〜ダイバーかぁ? なんだその気持ち悪い光はよォ〜。おっ、コレは当たりな人間じゃないかぁ…くくく。アイツ、逃げられたなぁ?」

 

「何だテメェ。侯爵…いや、伯爵級か。お前こそこんな所で何してんだ」

 

「人間風情が…この俺様に偉そうな口をきくんじゃぁない。俺様はここの支配者、ヤニック=ギヨ様だ!」

 

「辺な名前だなぁ。つかお前、ここの支配者ならあのクソ魔人の手下ってとこか?」

 

「違うわ! 俺様はいずれ奴も殺してこの一帯を支配する者だ! 覚えとけ!!」

 

「ふーん……とりあえず邪魔だからどいてくれるか?」

 

 

 

 俺が煽りまくったおかげでコイツは今にもブチ切れそうな程プルプルしてる。そろそろいいかな?

 

 

 

「あ! クソ魔人!」

 

「! なっ!?」

 

 

 引っ掛かったな、バカめ。俺は奴の視界を逸れて接近し、新生ドニ剣(斬鉄)で四肢を叩き斬った。ヒュー! スッゲェ斬れ味! 光の付与も格段にスムーズで、しかもそれが増幅されてる! 斬った後剣を振れば、血の一滴すら付いていない。スッゲェな!

 

 

「!? な、何が起きた!」

 

 

 戸惑ってる魔人。いや、早く反撃しなよ。これじゃあのクソ魔人に勝つどころか眷属にも勝てないんじゃないか?

 お、身体から黒い触手複数。でもショボいな。これなら弱体化してたコルテスの方がまだマシだ。

 全て斬り伏せ、ライトブリンガーを起動しながら近づくと、漸く状況が分かったらしい。慌てて命乞いを始めた。直ぐに殺そうかと思ったが、いい事を思い付いた。

 

 

「おい、アホ魔人。一つチャンスをやろう。2つの質問に正直に答えろ」

 

「うっ、くっ、正直に答えれば見逃してくれるんだな!?」

 

「あぁ、約束しよう。正直に答えたらな……1つ目、人間の街、パリスは知ってるな? 方角はどっちだ?」

 

「……き、北だ! 正確には北北東だ!」

 

「……次だ。お前はこれまで、何人の人間を殺した?」

 

「そ、それは……殺して……いや、殺しました! でも10人以上は誓って殺ってない! これからも殺らないと誓う!!」

 

「……そうかい」

 

 

 俺はドニ剣を肩口へと仕舞い、背後を振り向く。ミシェルが「危ない!」と叫ぶが、()()()()()さ。

 

 

「あ、ぎゃああああ! 痛いいいぃ! な、ナンデ!?」

 

 

 振り向きざまに、襲いかかった魔人の腹に位置していた核を、ライトブリンガーで貫き破壊した。

 

「馬鹿が。許すわけ無いだろ。それにお前は何一つ正直に答えなかった。だから死ね」

 

「痛たたたた!! や、やめてくれ! 本当は南西なんだ! それに殺したのは30人ですぅ!!」

 

「はぁ〜…それも嘘。本物の地獄で殺した97人に詫び続けな」

 

「な、なんでそれを…」

 

 

 魔人は、言葉を言い切る前にドニ剣で首を刎ねられた。その首はしばらく苦痛に歪んだ表情をして呻いていたが、やがて沈黙し、動かなくなった。鋭い犬歯やうっすら生えていた角なども元に戻った。

 

 

「お疲れ様です。一時はどうなる事かと思いました」

 

 

 少し頬を膨らませ、ミシェルがプンプンといった感じで抗議してきた。可愛い。

 

 

「もう! 真剣に聞いてください! ところで、何故嘘と分かったのですか?」

 

「いや、すまんすまん。俺は基本的に敵の思考はかなり読み取れるんだ。瘴気の動きを見る事でね。弱い奴なら記憶まで読み取れる。というか、それが出来なければ一瞬で死ぬ環境にいたんでね。必死で身につけたのさ。ただ、高位の魔人はその辺も隠す事が出来るから気をつけないといけないけどね」

 

「……やっぱり貴方もどうかしてるわ。私が理解できない事ばかりだもの。それで、方角は東で合ってるかしら?」

 

「お、よく分かったね。正解。推理かな?」

 

「そうよ。タネも仕掛けもない、簡単な推察だわ。では案内をよろしくお願いしますわ」

 

「あいよ。じゃあ2人とも着いてきてくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あの2人が何言ってるか全っ然わかんない。本当に人間なのかな?」

 

『貴方も大概ですけどね、アンリさん。まぁ、あのお2人がおかしいだけですからご心配なく』

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