ティエラの地より 〜転生少年、深淵に挑む〜   作:エアロダイナミクス

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54、復興の光

 

 

 

 

 

 

「んんん! 空気が美味い! 瘴気が薄い! 最高だなぁ」

 

「えぇ……。ナギさん、僕が聞いた話だと、深層って超一流ダイバー以外は潜らないって聞いたよ? というか、僕的にはその意見には大賛成なんだけど?」

 

「わりーわりー。だってさ、この世の地獄みてぇな深淵とか深奥に比べりゃ天国なんだよなぁ」

 

「この哀れな方は、最早普通の感覚など跡形も残って無いのですよ、アンリ」

 

「お、今俺をバカにしたな!? そんな意地悪言うなら、お前ら晩御飯無しにすんぞ!」

 

「はぁ……ナギの非常識を正してあげようとしているのに、困ったものです。これでは私達が悪者みたいではないですか」

 

「ミシェルはともかく、僕は何も悪い事言ってないよね」

 

 

 

 荒涼とした砂地を歩く俺たちは、アホみたいなユルい会話をしながら歩いていた。現在、深層の真っ只中にいる。今現在はポストアポカリプスの後みたいな廃墟と砂漠だ。キモい菌類やクソでかいサボテンとかが所々見える。普通のダイバーだと、最大限に警戒しながら進む所だ。ただねぇ……これが深奥だと、より禍々しいし、ビルの残骸とかじゃなくて建物すら魔物化してるからな。正直ぬるいんよ。あ、勿論俺以外の2人は最大限に警戒してるよ?

 

 

 ただ、浮き足立ってはいるね。何故ならもう明確にゴール見えたからな。実はドニさんの羅針盤が、距離まで出して来たのだ。我がマドリーまで後190レグア(約1000キロ)!!

 

 う〜ん、遠い…でもまぁ、指標が出たからな。何日か歩けば着くなら、なんて事無いんだわ。深淵みたいに、真っ暗な中、怯えながら希望もなく歩くのなんて、マジで拷問だったからね。

 そして更に! ラブやんが古の地図データ持ってて、大体の場所がわかったんだよなぁ! それによれば、俺たちがいた洞窟はノルマンディー地方だったらしい。道理で魔物達がやたら銃っぽいの持ってた訳だよ。ノルマンディー上陸作戦。俺ですら知ってるからなぁ。

 

 ま、それはともかく、間違いなくこの子達の街はパリだろう。と、言う事は、あと27〜36レグア(150〜200キロ)以内だ。ん〜頑張れば1、2日で着くな! ようやくだ! もう帰れないかってちょっぴり不安だったけど、折れずにいてよかった……。

 

 現実的には4日、かな。この子達に無理はさせたくないし。つまり、確実にどっかでお泊まりだ。なるべく中層辺りがいいんだけどな。進行次第だし、拠点探し次第だな。

 

 

 お、これはこれは鳥人間君。君らも魔人のなれ果てかな? 悪いが一方的にやらせてもらうね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、6時間近く歩き、瘴気もだいぶ薄くなったが、拠点はまだ見つからない。崩れかけで危ないのや、明らかに蟲の巣みたいなのばっかりだったから。しかし、しばらくしたら、景色はちょい気色悪い荒野から切り替わり、幽霊でも出そうな廃墟に辿り着いた。幽霊っつーか…魔女の館っぽいのが沢山ある街。

 

 

 中世の街だね! でも深奥みたいにイカれきって無いから、マイルドホラーかな。確かに魔物はちらほらいるしクソでかいけど、特殊能力とか属性攻撃とか超能力とか使ってこないだろう。そんなのにリソースを使える様な瘴気量じゃない。ただ単純に身体能力が強いだけだ。

 

 いや、まぁ普通のダイバーにとっては脅威なんだけどね。巨大で強いのは厄介だね。あと、数の暴力もこの辺から始まるかな? いや、中層だったかな? まぁ、目に付く魔物は片っ端からぶっ殺して、今日はこの街のどっかのお宿で一泊かね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 周辺の魔物を絶滅させて、子爵級魔人が何人かいたので問答無用に始末した。まぁ、こんな街っぽい所ならいるよね。共同で生活していたらしく、連携しながら襲ってきた。まぁ、でも気配でバレバレだったから普通に撃退した。人質作戦やるなら、まずその濃厚な気配を消してからどうぞ。ミシェル達に手が届く前に粉微塵にしたけどさ。ラブやんが周りにマシンガン配置してるから、深奥級の大群でも中々近づけないんじゃないだろうか。

 

 魔人の拠点っぽい所を後で探れば、大量の人骨が積み上げられていた。記憶を覗いたから分かっちゃいたが、あいつらはここで人肉パーティーしていたらしい。う〜ん、BANZOKU。しかも顔だけ残してるとかホントコイツらって思うよ。やっぱり魔人はクソだな!

 

 さて、この死体達もほっとけばスケルトンとかになりかねない、って言うかほぼなりかけだったから、魔人の死体と一緒に広場でファイアーした。

 

 

 さて、休むに当たって鬱陶しい瘴気を払おうと、太陽石を適当な場所に設置しようとした時、アンリが地下を探索してはどうかと提案してきた。古い街だが、アークの設置してある場所があるかもしれないと。そして、技術者として大体設置場所は分かるらしい。なるほど、一理ある。

 

 俺たちは、その提案に乗って地下探索を始めた。ちなみに入り口は魔人たちのシェアハウスにあった。地下への扉を開ければ、ちょい瘴気濃いめ。深奥一歩手前だった。しかし通路が狭い。マシンガンもつっかえる。城の時はフォローできたが、ここじゃ無理だ。かと言って待ってもらうのも不安だったが、ミシェルが殿を担当すると言い出した。尚、現在ミシェルは例の武具をフル装備してる。剣技はと聞いたら、どうやら鍛えた大人と互角に打ち合える程度はあるらしい。

 

 ……君、本当になんでも出来るんだね…。それならば任せてみよう。

 

 

 そうして、俺先頭、真ん中アンリ、殿(しんがり)ミシェルのフォーメーションで進む。地下は暗いが、2人の太陽石で光源は確保出来ている。この中で戦闘能力を持たないアンリはかなり怖い筈だが、おくびにも出していなかった。

 この程度なら慣れましたと、少なくとも表面には出していない。君も本当に強くなったね……。

 

 

 

 暗い地下道は、石壁でできており、蜘蛛の巣の様なものが行手を阻むように張り巡らされていた。これ多分、中に潜んでて、奇襲するか攻撃するかのパターンだな。という事で、先手必勝。

 

 

 【灼熱炎獄弾】

 

 

 

 ゴオオオォ…

 

 

 

 ヨシ! ついでに奥も見えたが、かなり複雑な構造だ。だが、そこでアンリが道案内を買ってでた。何となく方向がわかるようだ。それならば任せよう。本当に頼りになるな。

 

 

 

 

 

 途中から現代風の通路に切り替わり、謎の標識すらも現れた通路をひたすら降りる。構造や遺構から見て地下鉄の跡地の様だ。蜘蛛の巣は減ったが、時折不気味な塊が吊り下げられている。そこから、巨大な蟲や、人のなれ果ての様なゾンビが襲ってきたが、全て返り討ちにしてやった。ミシェルも時折、背後から来た蟲やゾンビを例の剣を使って討伐していたが、核を壊さず安心したせいで、中から寄生蟲が飛び出してきて、あわや寄生される所だった。しかし、アンリが機転を効かせて太陽石を投げ、苦しんでいる所を今度こそ討伐するという場面があった。危なかったが、ミシェルはかなり反省したらしく、同じ過ちは犯さなかった。

 

 

 そうこうしてると、一際広い部屋に辿り着いた。

 

 

 そこは、中央に巨大な柱の様な機械があり、その中央に闇を撒き散らす暗黒の【アーク】が鎮座していた。そうか。【アーク】も瘴気に侵されたら、性質が反転するのか…。

 

 

 さて、早速起動しようと思うのだが、一つ問題があった。

 

 

 

「ナギさん…アレ、どうするんです?」

 

「そーだなぁ。この部屋だと、壊れる可能性があるからこっちも強い兵器は使えないしな」

 

「ならば、古めかしい方法で倒すしかありませんね。具体的には、剣のみでの討伐が理想でしょう」

 

 

 そこに居たのは、蜘蛛型の巨大なロボット。それも2体。奴等はまだ動いていないが、一歩でも進めば襲ってくるだろう。

 

 

 

「まぁ、ここは広い。俺が出て一気にやる」

 

「ナギくん、お願いがあるんだけど」

 

「……まさか、私がやるとか言わないよな?」

 

「そのまさかです。一体ください」

 

「あのなぁ……俺は君らを五体満足で帰すって誓ったんだが? それにアンリはどうすんだ?」

 

「問題ありません。あの例の盾が有れば十分でしょう」

 

 

 表情を見れば、引く気は無いらしい。しかしなぁ。

 

「……私は、こうして戦闘することは今後無いでしょう。ですから、最後に試してみたいのです。自分がどれだけ出来るか」

 

「いや、そういう問題じゃなくてね?」

 

「お願い。私も安全マージンを取るし、決して無茶はしないから!」

 

「……まぁ、いいよ。ただ、保険は付けさせて貰うからな」

 

「それで十分です。では行きましょう」

 

 

 

 そうして、アンリの前に盾を配置し、ミシェルにはマシンガンを傍らに浮遊させた。万が一の時はラブやんが引き金を引く予定だ。柱の機械は壊れるだろうが、ミシェルには変えられない。それについてはミシェルも了承していた。

 俺たちは警戒ラインの手前に並んで立つ。背後からアンリが「ご武運を」と激励してくれた。本当に肝が据わったね、君。最後に確認だ。

 

 

 

「ミシェル、ちょっと確認するぞ。アレはどういった攻撃が想定される?」

 

「そうですね、まず巨体の突進、そして機動力が問題です。また、足先も金属に見えるため、踏まれて刺されたら最低でも重傷を負いそうです。更に、前面に2丁ある筒は、洞窟から出た所の血の色の湖沿岸で出くわした魔物と同じタイプの武器でしょう。超高速で礫を飛ばしてくる厄介な武器で、敵のメインウェポンだと推察されます。また、肉質の部分には口らしき物も見え、巨大な口で噛みついてくる可能性もあるでしょう。他にも付属した武器らしき形状も有り、属性攻撃を仕掛けてくる可能性も捨てきれません」

 

「……概ねあってる。そこまで分かってるなら対処法は?」

 

「まず散開して、一体ずつ対処、敵の筒攻撃と突進攻撃に注意しつつ、敵の瘴気の中心点に剣を差し込みます」

 

「おう、ほぼ正解! ただね、言うは易く行うは難しなんだが……ミシェルは雷は持ってないだろ?」

 

「はい。それが弱点ですか?」

 

「そうさ。機械系の奴はたいてい雷属性が有効だ。それがあればかなり怯むから楽ではあるんだけどね」

 

「実は、私には秘策があります。なので心配ご無用です」

 

「……まさか」

 

「それはお楽しみ、ということで」

 

 

 

 ……マジか。もし俺の想像が本当なら、このお嬢、とんでもねぇぞ…。ならば、心配はあまりいらないかもしれない。だが、とりあえず俺は俺で速攻で倒そう。

 

 

「よし…じゃあ行くぞ。記念すべきミシェルのボス戦だ!!」

 

 

 

 

 まずは2人がそれぞれ別方向で斜め前に散開する。それぞれの蜘蛛型魔物ロボは、俺達の目論見通りに一人一人につき、対処しようとした。俺達に筒の照準を合わせ、強力な弾丸を放ってきたが、俺達はそれを適確に躱し、接近する。俺は接近と同時に詠唱を終え、ドニ剣(属性剣)に雷の魔術を付与、そのままフェイントを掛けながら流れるように吶喊し、案の定あった火炎放射器を避けながら飛び上がる。飛び上がると同時に別の落雷の魔術を喰らわせて、動きが止まった奴の核に、落下と同時に雷属性の付与された大剣を突き刺し、沈黙させた。

 一方、ミシェルはというと、蜘蛛の攻撃を見切り、舞のような流れるステップで射線から逃れていた。あれは武術の動きだけではない、バレエダンスのような動きもあるな? 見ていて全く危なげが無いが、じれた蜘蛛型ロボは追い詰めて全身で押しつぶそうとミシェルをジグザグに追う。しかし、もう少しで追い詰められると言うときに、ミシェルの声が聞こえた。

 

 

 

「轟く雷よ、我が剣より生じて敵を穿て」

 

 

 

 驚くことに、ミシェルは魔術を使った! 確かに概要は話した。魔術に関する本は残念ながらスペイン語だったために読めなかったらしいが、深奥の城で、少し貸してくれと言われて貸したんだ。それだけで使えるようになるとは普通思わないじゃん? しかもアレはオリジナルだ。法則を完璧に理解し、正確に霊力を乗せなければ出来ないはず……。俺は本を読めて、理解してても一週間かかったからな……。

 

 そして、動きが止まった蜘蛛を、俺と同じように核に剣を差し込み、無事に破壊することが出来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しっかし、とんでもねぇお嬢様だなぁ、ミシェルは」

 

「ありがとう。今後はもう無茶はしないわ。でも、驚いたでしょ?」

 

「あぁ、すっげぇビックリしたぜ! さすがはミシェルだ!! ……ところでアンリ、流れ弾は飛んでこなかったか?」

 

「えぇ、大丈夫でしたよ。あの盾いいですね。ただ、かなり無駄がありそうですから帰ったら改良していいですか?」

 

「え? マジ? そりゃ助かる…って、それは後にして、とりあえず本命を何とかしよう。ミシェル、本当に良かったぜ! ただ、これからは無茶しないでくれよな!」

 

「ふふ、こちらこそ、我が儘を聞いてくれてありがとうございます」

 

 

 

 

 さて、彼等の有能っぷりはとどまることを知らないが、それはさておき、本命の機械だ。まずは光属性で完全に浄化してみよう。

 

 

 

 うん。できた。しかし、機能が完全に停止してるな……それに、太陽石の増幅もきちんと出来ていない。しゃーねぇ。分解して修理だ!

 

 

「ラブやん、遂に俺達の出番だぜ!」

 

『了解です。最近制作に関してはマスターの影が薄いですからね。いいところを見せてくださいよ?』

 

 

 とりあえず空間全体に太陽石で結界を張り、そこから作業に取りかかる。ラブやんのサポートも受けつつ、丁寧にパーツを分解し、中身を確かめていく。すると、中ににちゃぁっと気持ち悪い液体が残っていた。間違いなくコレが原因だな。浄化したはずなんだがなぁ。とりあえずその液体は集めて別の容器にしまう。浄化しても残ってるなら、何らかの効能があるはずだからな。んで、残って付着していた液体の残骸を水属性で綺麗に流し、再び元に戻す。

 

 その過程をアンリとミシェルは興味深そうに見ていた。まさか、これで覚えたとか言わねぇよな? よな? もし、お前等までコレできるようになったら、俺の唯一出来ることまで抜かされるだろ! とは言え、好奇心旺盛なことはいいことだ。冗談で感じたことだがマジでコイツ等なら出来そうな気がする。アンリは盾の構造の欠点とかにも言及してたし。

 

 

 そんな事を考えながら、再び太陽石に光属性をチャージし、セット。今度の核になる太陽石は光属性だからな…すげぇぞ? 多分。よし! 機動!!

 

 

 

 カッ!!!

 

 

 

「うおっ! 眩し!!」

 

「こ、これは……!」

 

「眩しすぎて見えない…凄まじいですね」

 

 

 あまりの凄まじい輝きに、部屋全体が光に溢れて何も見えなくなったので、設置した太陽石を手探りで回収しつつ慌てて空間の外へ出たのだが、そこにも光が浸透して、恐ろしい勢いで光が闇を侵蝕していく。夜から朝になるときのような感覚だ。

 

 というか、通路まで眩しすぎて見えなくなってきたので、3人で急いで通路を戻り、地上へと向かう。

 

 地上への扉まで戻り、魔人シェアハウスから外に出ると、驚愕の光景が目に飛び込んできた。このエリア全体を覆う闇が吹き飛び、巨大な光の柱が天まで昇っていたのだ。

 

 

「「「…………」」」

 

 

 あまりの光景に呆然としていたが、気付けば街全体に魔物の気配は消え去り、中世の魔女の館のような雰囲気の街の景観は、明るい、ただの住宅街へと変貌していた。太陽はさんさんと辺りを照らし、まるで普通の人類生存権のような温かい風景を生み出していた。あれだけ街を不気味に彩っていた菌類やキモサボテンは、普通の植物へと変わり、街を彩るただの風景と化していた。

 

 

「これは……すげぇな」

 

 

 思わずぽつりと呟いたが、2人もそれに言葉無くこくこくと頷いていた。それほど衝撃が大きかった出来事だったのだ。以前、霊開研でプロトタイプのアークに光を込めたとき、ヤバい光が起きたが、街を支える規模のやつに光を込めたらこうなるのか……。もう、ここは完全に浄化されているし、しばらく瘴気の侵蝕も起きないだろう。むしろ、魔物すら近づけまい。すると、それまで黙っていたミシェルが感極まったように震え、そして全力で俺に抱きついてきた! ちょ、待てよ! それは流石に俺に効く!

 

 

「…………ナギくん、私は確信しました。貴方はやっぱり世界を救う英雄です! この絶望の世界に舞い降りた天使です!! そして、神様が私に遣わしてくれた私の王子様なのです!!!」

 

「ちょっ、落ち着け! ミシェル! 俺は英雄とか天使とか王子様とかはガラじゃねぇってば!」

 

「いや、ナギさん…流石にこれは僕でもそう思うよ……」

 

「マジか、いや確かに衝撃的な光景だったけどな……とにかくミシェルは落ち着けって」

 

 

 腕に絡みついて離れないミシェルをなんとか落ち着かせ、興奮冷めやらないまま俺達はとりあえず空いている住宅に入り、散らかっていた部屋を掃除して、ベッドを出し、それぞれ就寝した。

 太陽石も必要ない、瘴気の存在しない中で眠るのは久しぶりだ。2人もどうやら安心して眠ったらしい。小さな寝息が聞こえる。ありがたいことだ。さて、俺も少し休もう。ここが深層だということを忘れそうになるぐらい穏やかな気分だ。さて、これなら明日にでもかなり近づけるだろう。そのためにも、あと少し、がんばらなきゃなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 真夜中に目が覚める。瘴気のない空間では、夜は普通に訪れる。だから辺りは暗いが、それは普通の暗さだ。

 

 

 

 

 しかし違和感。俺は休息しているときに何かしらの違和感を覚えたら即応できるような体質になっている。今はとりあえず寝たふりをしよう。そこに、微かな忍び足音。ここは2階。1階まで来てるな。人数は2、いや、3人か。コソコソ話してる。

 

 

「なんだココは……こんな所、あったか?」

 

「いや、無かったはずだ。というか、俺達の拠点だろ? 何が起きた。これじゃ人間の街だ」

 

「クソ、瘴気がないと息苦しくて敵わん! むしろ清浄な空気に汚染されてる感覚がある…どうして瘴気に侵されないんだ…」

 

「人間の気配がする。どうやったかは知らんがそいつらがやったんだろう。足跡からしてまだガキだ」

 

「おのれ…この様子じゃ拠点を変えねばならないぞ…」

 

「仕方あるまい。この鬱憤は上のガキどもで解消しよう」

 

「1人は足跡的に女のようだな…久しぶりに楽しめそうだ」

 

 

 

 はぁ~。まぁ当然ながらまだいるよね。お前らみたいな奴。子爵級……いや、伯爵級か? まったく、これだから油断は出来ないんだよね。ゆっくり眠るのはやっぱり人間の街だけか。

 そーっとベッドから抜け出し、ラブやんだけ手に取る。いつでもそばにラブやん。基本だね。

 

 

 さて……やるか、って! うぉ! ビックリした!! 思わず声出すとこだった。

 ……何してんのさ、ミシェル。 

 

 

 

「下の気配と貴方の様子で私も気がつきました。深層では油断は出来ませんからね」

 

 

 極小さな声で話しかけるミシェル。気付けば彼女の手にも剣がある。……優秀だねぇ。俺はそうなるまでに何百回死んだか。さて、それなら話は早い。寝てるふりして返り討ち作戦だな!

 俺とミシェルはアイコンタクトで扉の横にスタンバイ。幸い向こう側に開く扉だ。おっ、ドアノブが回る。奴等は俺達がガキだと油断したのか、ずかずかと入ってきた。そしてベッドへと向かおうとするところで、ミシェルが1人の核を剣で貫き、俺は2人の首を刎ね、1人の核を潰す。ここまで0,5秒! 光のおかげでただの人間ほどに力が落ち込んでるからね。まぁ、そんなもんよ。

 

 

「!? な、なに、ぐああぁあぁぁ!!!」

 

 

 物も言えずくたばった2人の魔人と違い、1人は首だけで喋っていたが、俺が胴体の方の核付近を刺したため激痛が走っているようだ。ミシェルは容赦なく喋る生首の目に剣を突き刺して持ち上げた。君、結構えぐいことやるね。

 この騒動でアンリも飛び起きたが、俺達が対処しているのを見て安堵したようだ。

 

 

「貴方達は、ここの元住人かしら。答えなさい!」

 

「がっ、がああああぁ……や、やめろ、その剣を抜け」

 

「お願いできる立場かしら? メチャクチャにしようとしたくせに」

 

「わ、分かった! すまなかったから、その剣を抜いてくれぇ!」

 

「むぅ、どうする? ナギくん」

 

「そうだなぁ。じゃあ聞くが、この町には何人の魔人が住んでたんだ?」

 

「いっ、言うわけ…ぎゃああぁぁ!!! ここには全部で34人住んでますぅ! 今遠征にいってて不在なんです!」

 

「遠征?」

 

「人間のダイバーを襲う為の遠征ですぅ!! ()()が終わっちゃったから細々とダイバーを襲ってるんです!! 俺達は成果無くて先に戻ってきました!」

 

 

 ミシェルはこちらをちらりと見た。うん、嘘は言ってないかな。祭りってアレか。蝕の事かな?

 

 

「では、貴方達の仲間はいつ戻りますか?」

 

「あっ、明日にでも戻ってくるはずです!! 正直に答えました!! 早く剣を抜いて!!」

 

「OK」

 

 

 グリッ。

 

 

「アッ………」

 

 

 即座に核を破壊し、それから剣を抜く。ちゃんと約束通り抜いたよ。でも核を破壊しないとは言ってない。

 

 

「……終わりましたか?」

 

「あぁ。騒がせて悪かったな。ミシェルもありがとう」

 

「いえ。本当に魔人とは不快なものですね……」

 

「しょうがねぇさ。人間の悪いところばかり増幅させた存在みたいだからな。さて、明日帰ってくるらしいから今日は少しでも休むぞ。少なくとも15人の魔人がこちらに向かってるようだし」

 

「僕は何も出来ないけど、武器のメンテぐらいはやるよ」

 

「あんまり気張るなよ。コイツ等は公爵クソ魔人よりは劣る存在だからな」

 

「そうですね…蝕の時、彼等はいなかった。力によって抑圧されていたのでしょう。私としては、討伐しておきたいのですが……」

 

「ん~…。そうだな……。さすがに15人もいると安全マージンが取れないかな。正面から行けば、だけど」

 

「じゃあ、どうするの?」

 

「こういうときは由緒正しい戦法がある」

 

「どんな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「それはな…ゲリラ戦法って言うんだぜ!」

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