ティエラの地より 〜転生少年、深淵に挑む〜   作:エアロダイナミクス

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55、ゲリラ戦

 

 

 

 

 

 

 魔人達は、久しぶりの獲物に舌なめずりをしていた。侯爵級を筆頭に、伯爵級3人、子爵級5人、男爵級6人という構成の彼等は、群れで狩りを行っていた。一昔前までは、パリスの街を中心に様々な街で人間達と死闘を繰り広げていたが、それも公爵級の影に隠れてこっそりと行っていた。一回、数を頼りに公爵級と敵対したのだが、その時絶対的な強さを誇る公爵級にボコボコにされ、貴重な女魔人も奪われて散々な結果となってしまった。以来、彼等は公爵級にはかち合わないようにしていたのだが、その侯爵級があまりにも無秩序に人間を襲うので、街が壊滅していき、いよいよ周囲には一大都市であるパリスしか残らなくなってしまった。

 

 おかげで、一大イベントであるはずの蝕にも手出しが出来ず、鬱憤がたまっていた。そこで、鬱憤晴らしに探索するダイバーを探し、遊びで殺し回っていた。

 

 

 そして、そんな探索の成果が実り、ついに、生きのいいダイバーを生け捕りにすることができたのだ!

 

 

「うぅっ……」

 

 

 ひとしきり殴られ、呻いているその女はまだ若く、健康的だ。彼女が群れから逸れ気味でいたのが功を奏した。残念ながら他の仲間には逃げられたが、記念すべき女ダイバーを捕まえた彼等は、どのように陵辱してやろうかと、拠点への道を急いでいた。瘴気に完全に侵蝕される前に楽しみたいからだ。残存霊力ももうほぼ無く、あと30分程度で侵蝕が始まる。それに合わせてパーティーを楽しみたい。

 

 

 彼等は、久方ぶりの楽しみに胸を躍らせていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………な、なんだコレは…」

 

「何が起きた! おい、レイフ! アルゴ! ランバルト! 返事しろ!!」

 

「完全に浄化されている……太陽石が復活したか…? いや、ここまでの効力はアレにはないはずだが…」

 

「光が強すぎる…ここは深層だぞ!?」

 

 

 魔人達は絶句していた。自分たちの拠点があまりにも変わってしまっていたことに。最早そこは人間の街と何ら遜色のない場所へと変貌していた。

 

 

 

「リーダー! どうしやす!?」

 

 

 リーダーと呼ばれる魔人が、その顎髭を撫でながら考える。これは、恐らくダイバーの仕業だ。不可能と思われていた街の【アーク】の起動を達成したのだ。あそこには、自分たちでも苦戦しかねない魔物のガーディアンがいたはずだが、それも撃破したらしい。と、なれば、かなりの手練れ。この街の状況ならば霊力も回復しているだろう。先に帰っていた魔人や残っていた魔人達もおそらくやられている。つまり、半数以上がそのダイバー達に殺されているのだ。

 

 

 

 ──人間風情が。許せん。

 

 

 

 しかし、現実問題としてむやみに突撃するのは悪手だ。各個撃破されかねない。ならば、慎重に、敵を削る。我々の利点は数だ。数で敵を押しつぶす。シンプルだが強力だ。たとえ人間の白金級でも退け、斃すことすら出来るだろう。方針は決まった。

 

 

 

「テメェら! 一カ所に固まれ!! ここに潜んでる奴は強敵だ。固まって一匹ずつ処理するぞ!! 全員殺したら拠点を復活させる!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「判断が遅い」

 

 

 

 

「は……?」

 

 

 

 後方で反応した男爵級3人が、未知の方法で核を貫かれて殺された。その3人は、捕虜の女を連れていた女だった。慌ててふり返れば、首を落とされ崩れ落ちる魔人達と、崩れ落ちる女を抱えた男が1人。反応すら出来なかった。侯爵級は瞬時に爆炎の瘴気術を浴びせ、他の魔人達は散開して次々と様々な属性の術をソイツに浴びせていった。その爆風はたちまち周囲を覆い、視界が悪くなる。凄まじいエネルギーが炸裂したためだ。普通ならばこれで跡形もなく砕け散る。女は惜しかったが、未知の敵を始末できたと思えば悪くはない。

 

 

「テメェ等、一旦止めろ!」

 

 

 そうして、魔人達が属性攻撃を打ち止め、砂埃が晴れたとき、まず現れたのは、3人の魔人の粉々の死体。そして……他には()()()()()()

 

 

「ば、馬鹿な!? 何故…!!」

 

「女まで…! 一体どうやって…!!」

 

「落ち着け! 周囲を警戒しろ!」

 

「「「「おう!!!」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鬼さん、こちら。手の鳴る方へ」

 

 

 

 その時、鈴を転がすような美しい声が魔人達に掛けられた。バッと魔人達がふり返れば、目も眩むような金髪碧眼の美少女。それを見た瞬間、魔人達は沸騰した。これまでの活動の中で、これほどの女は人間時代ですらも見たことが無かったからだ。

 

 

 

「うおぉぉぉ!! 超上玉じゃねぇか!! お嬢ちゃん、俺達とイイコトしようぜぇ!!!」

 

「なっ、馬鹿ども!! むやみに突っ込むんじゃねぇ! 罠かもしれねぇだろ!!」

 

 

 しかし、リーダーの声も彼等には届かず、本能を剥き出しにしてその女に向かう魔人達。元々理性の楔が外れたような彼等だ。表面上は強調できても、本能的には烏合の衆である。そうして、7人ほどの魔人がその超絶美少女の元へ殺到した、その時。

 

 

 

 

 ヒュルルルル……ドーン!!!

 

 

 

 恐ろしい程の爆発が彼等を襲い、7人はまとめて肉片となった。恐ろしい程の攻撃力! 巻き込まれかけた魔人も戦慄し、その足を止めた。

 

 

 しかし、時既に遅く、15人いたはずの彼等は残り5人となっていた。

 

 

「くっ…クソ…!! なんて奴等だ!! 野郎ども、一旦ここは退くぞ!」

 

「リーダー! 女も奪われて! ここまでコケにされて黙ってられるか!! 俺は行くぞ!」

 

「馬鹿め、お前も見ただろう! むやみに突っ込んだらミンチだぞ!」

 

「知るか! 人間如きがあれ以上は出来ねぇはずだ! そうだろ!! リーダーは臆病風に吹かされたようだな! 勇敢な奴は俺に付いてこい!!」

 

 

 

 グシャッ

 

 

 

 仲間を扇動していた魔人は、核ごと瘴気の牙によって潰された。その力は、まごう事なき侯爵級だった。地獄のような声を出しながら、侯爵級のリーダーは残った魔人達を威圧した。若干変身までしている。

 

 

 

「テメェ等……この俺に逆らうとはいい度胸だな…! テメェ等もこうなりたいか?」

 

 

 

 その威圧に、他の魔人達は戦慄し、ぶるぶると首を振る。魔人達の中では、力の差は絶対。それを覆そうとする行動は、反逆行為に他ならない。周りを先導した伯爵級魔人は、侯爵級によって捻り潰された。

 それは、彼等の中では当然の行動だった。

 

 

 

「よし、落ち着いたようだな。馬鹿が。生き残りたいなら頭を使えって何回も言ったはずだ…。今、俺達が相手している奴は相当の手練れだ。むやみに突っ込んだらたちまちやられちまう。一旦ここは退いて、態勢を立て直すぞ」

 

 

「ソイツは無理な相談だな」

 

「!! 貴様、いつの間に……!」

 

「意識の間隙って分かるか? そういうことだ。それにしてもお前等がアホで助かったぜ。まだまだ策はあったんだけどな。もう4人になっちまったから、余裕だな。なんか1人自分たちで殺しちまったし」

 

「貴様!!」

 

「待て! マルク!! ……貴様は何者だ?」

 

「見りゃ分かるだろ。人間様だぜ。薄汚ねぇ魔人君?」

 

「……ぐぐぐ…おのれ、人間風情が…! だが、肝心な所で頭が悪いようだな…この俺様達は、人間どもからA級手配されてる蜘蛛の巣団。近隣を支配する最強の魔人の略奪団だぜぇ!」

 

「ふーん。もう4人しかいないけど、団なの?」

 

「うるさい!! 貴様がやったんだろうが!! 許さんぞ……!! テメェら、変身だ!」

 

「「「おう!!!」」」

 

 

 

 ゴキゴキゴキ……

 

 

 魔人の姿形が醜く変化していく。伯爵級の3人は角が生え、全身から毛を生やして鳥のような顔に。そして、侯爵級はその身体を巨大化し、腕が異様に膨れあがった異様なバケモノに。その顔や身体は紫色に変わり、顔はそれこそゲームの魔王のような角だらけの鬼の面へと変化した。彼等は変身したら一様に瘴気量が爆増し、深層の魔物と同等、侯爵級に至っては深奥層の中級魔物に届くほどになった。

 

 

 

「はぁああああ…これで貴様も終わりだ。女2人を渡したら見逃してやらんことも無いぞ?」

 

「…………」

 

「どうした。あまりの衝撃に怖じ気づいたか。くっくっく……ダガ貴様は許さん…拷問に掛けて永遠に苦しませてやろう…」

 

「……魔人ってのはどうしてどいつもこいつも拷問好きなんだろうね。嫌になるわ。ま、いいか。じゃあ始めるぜ。あ、最初の提案だけど、断る」

 

「貴様…! 殺してやる!!」

 

「それはこちらの台詞だな」

 

 

 

 黒髪の少年はどこから出したか、不思議な筒状の機械を取りだした。理性の乏しくなった魔人達でも分かる。その僅かな記憶に残ってるソレは、たしか【アーク】を守る蜘蛛型の魔物が持っていた──

 

 

 

 

 ダダダダダダダ!!!

 

 

 

 

 そこから凄まじい威力の礫が乱れ飛ぶ! 慌てて散開した4人だったが、2人がその礫に掠ってしまった。

 

 

 

「ぎゃあああ!! 痛ぇ~!!!」

 

「とっ、溶ける!! 何だコレは!!!」

 

「そらそらそらそら! 逃げろ逃げろ~」

 

 

 慌てて四方に散開し、敵を取り囲むように動くも、その礫に掠ってしまった奴等は礫に蜂の巣にされ、あっけなく核を貫かれて死んだ。残りは2人。しかし、逃げ惑うしか出来ない魔人達。そのうち1人がどこからか発生した土の属性の罠に足を取られて、あえなく同じ末路を辿った。

 

 

 

 残り1人。

 

 

 

 

 侯爵級魔人ジル=ゲランは、焦っていた。何故だ。どうしてこうなったと。今、やられている相手はたかが人間の筈だ。生前でも金剛石級のダイバーだったゲランは、恐ろしい程の威力の弾丸を必死に逃げながら、必死に街より離れようと足掻いていた。しかし、街から離れようとすれば、謎の属性攻撃が行く手を阻み、出られない。火、土、水の属性から、少なくとも3人はいる。いや、今雷も来た。4人だ。ッ氷、5人!? いや、風もある! 6人か!! 糞、集団で隠れてたのか!? しかし、気配をまるで感じさせない。精々今激しく弾丸を飛ばしてくる奴を含めて2人だ。属性攻撃の方は、弾丸ほどの強さは無いが、当たればたちまち弾丸の餌食だ。この弾丸は様々な属性で出来ているらしいが、一番痛いのは光っている謎の属性だ。当たった部下どもは、当たった箇所が溶けた。おのれ……こんな、こんなに追い詰められるとは!!

 

 

 

 ……? 攻撃が、やんだ?

 

 

 

 ズッ……

 

 

 

 

「う…ぎぁあああああ!!!」

 

 

「はい、残念。色々気を取られ過ぎちゃったねぇ。実はアレ、自動で動くんよ」

 

「く……糞が…貴様は一体……」

 

「答える義務は無い。だけどまぁヒントをやろう。お前の核を貫く光、それがすべてさ」

 

「光……光だと…! ふざけるな…今更……!」

 

「……まぁ、そうさなぁ。そこはすまんかった。だから、来世では安らかに生きられることを祈れ。お前の罪を反省しながらな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「終わりましたね。お疲れ様でした」

 

「おう! アンリ、ロケランのタイミングバッチリだったぜ。ありがとよ。ミシェルも流石だな!」

 

「どういたしまして……ところで、この娘はどうしますか?」

 

「どうもこうも。気絶してるが手当して一緒に連れ帰る一択だろ。幸い侵食される直前だったから、しばらくしたら回復するだろ。それに、俺もレクペラ草の上位互換みたいな傷薬もってるからな。ミシェル、悪いが手当を頼んでいいか?」

 

「レクペラ草…あぁ、そちらでも似たような名前ですのね。…上位互換とは?」

 

「深淵に生えてる草を引っこ抜いた奴だな。似た奴だったから採ってきたが、毒ではないはずだ」

 

「……効能が恐ろしい気がしますが…承りました。お任せください。調合の心得も多少はありますから」

 

「そーだろーなって思ってた。じゃ、頼んだぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、なんなのよコレは……」

 

 

 

 ミシェルは、そのあまりにもな効能に驚愕していた。任された当初、どうしようかと迷ったが、基本に立ち返ってレクペラ草の調合に則り、すり潰して水で煮込み、網で漉してから汁を抽出した。一応補助としてライトブリンガーも相談役として付けられ、スーパーミスリルを5キロほど借りてから行ったが、その余りの便利さに、真剣に幾らかナギに融通出来ないか考えるほどだった。

 それはともかく、濾した残りの草は軟膏に、そして汁は飲むタイプの回復薬としてアンリの作った瓶に仕舞う。

 

 

『私の意見はあまり参考になりませんでしたね』

 

「そんな事ないわ。軟膏を作る際の混ぜ合わせる材料選びとか、抽出する温度調節や計測はとても参考になったわ」

 

『それは良かった。マスターも喜ぶでしょう』

 

「……そ、そう?」

 

『そうですよ。貴女が頑張る事、それこそがマスターの役に立つのですから』

 

「嬉しい……」

 

『やはり人間は面白い』

 

「? 何か言った?」

 

『いえ、何も。ところで、一応形にはなりましたが、どうしますか? すぐに処置しますか?』

 

「そうね……流石にいきなり使うのは躊躇われるから、私が先に試すわ」

 

『宜しいので?』

 

「えぇ。流石に、ね」

 

 

 そうして、スーパーミスリルでその珠の様な肌に傷を少しつけて、軟膏を指先にとって、傷に塗りたくった。すると……

 

 

 !!

 

 

 

「な…! コレは…」

 

『凄い効果ですね。塗った箇所が回復するどころか、活性化していますね』

 

 

 そう、塗った軟膏はすぐさま傷口に浸透し、傷は跡形も無く消え去った。それどころか、塗るために触れた手や、傷口周辺だけ圧倒的な輝きを放ち、珠の様な肌は、更に光り輝く肌へと生まれ変わった。

 

 

「こ、これでそうなら…」

 

 

 ゴクリ、と生唾を飲み、目の前の透明な瓶に入っている黄金色の液体を見つめる。

 

 

『よろしいので?』

 

「す、少しだけなら……」

 

 

 そうして、瓶の中身を半分だけ呷る。直後、液体は食堂から胃、そして小腸、大腸を通して全身へ。凄まじいスピードで浸透した液体は、ミシェルの細胞の損傷すらも回復し、老廃物を排出する。そして何が起きるかと言えば……

 

 

「うっ……」

 

 

 全身から黒い汗を掻き、トイレへと駆け込むミシェル。トイレで激しく排泄をし、その最中にも黒い汗や垢の様な塊が全身から噴き出し、全身をかきむしる。髪の毛も抜けては生え替わり、歯も生え替わる。目からは目玉が取れそうな勢いで涙を流し、惨憺たる姿を晒していた。当然ながらその姿は、殿方には絶対に見せられない物であり、1人で対処を勧めてくれたナギには心底感謝した。その後、ふらふらになってトイレから出てきたミシェルは、水場で着ていた服を脱いでから、全身を水属性で流し、服を洗って乾かした。この時ばかりは複合属性の魔術に感謝した。

 

 

 そして、再び出てきたときには、ミシェルの姿は恐ろしい程の美貌が更に輝きを増し、およそ人類の頂点かと思われるほどの美貌を手にしていた。

 

 

 そこで、冒頭の台詞に繋がるのである。

 

 

 

『……人間に取っては恐ろしい程の効能ですね。恐らく細胞自体が極限まで活性化しています。少なくとも確実に寿命は延びていることでしょうし、もしかすると、再生能力まで獲得しているかもしれません。正直、そこまで変わるとは思いもしませんでした』

 

「これは戦争が起きるほどのシロモノね…。100倍に希釈したら丁度良いかもしれない」

 

『それが無難でしょうね。それでも恐ろしい効能が見込めますが』

 

「とりあえず、薬はできた。治療に入りましょう。この娘は、助かった記念として、特別に希釈無しの残りの薬も飲ませてあげましょうね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ! ここはどこっすか!? いや、それよりも、おトイレは!?」

 

「いいわ、こっちよ」

 

 

 

 全身から汗を拭きだし、垢の塊を排出しながら訴える若い女ダイバーをトイレに案内し、その激しい音を聞きながらミシェルは本当に男子がいなくて良かったと胸をなで下ろした。今、彼等は盾の改良に勤しんでいるはずだ。

 自分のこんな姿が見られたら流石に憤死しそうだ。それから、げっそりした、それでいて艶々した姿の女ダイバーを見て驚愕した。確かに若く、少女とも言っていい年齢の可愛らしいダイバーだったが、それでも一般人の域を出なかった。しかし、今は恐ろしい程の美貌に変化している。スタイルすら変わっているその姿は、街のどの役者よりも美しかった。

 

 

「……あの……本当に重ね重ね申し訳ないっすけど、シャワーとかありますか……?」

 

 

 ミシェルはその娘を水場に連れて行き、火と水の混合魔術で全身を隈なく石鹸で洗ってあげた。自分の時もそうだったが、全身から凄まじい量の垢が流れ落ち、水が黒く染まる程であったが、洗い終わった後には、絵画に描かれる程の美少女が完成した。

 それからミシェルは汚れた装備や服を洗い、風魔法で乾燥させると彼女に着せて、漸くひと心地がついた。

 

 

 

「ほんっとうに! ありがとうございます!! 私はもうダメかと思ってました! それで…一体何が起きたっすか!?」

 

「その前に、私の名はミシェルよ。貴女の名は?」

 

「これはうっかり! 私、リュシー=ブランと言います! 16歳っす! 銀級(シルバークラス)のダイバーで、仲間と探索中に魔人の集団に襲われました。他の仲間は逃げおおせたっすけど、私だけ鈍臭くて逃げ遅れて捕まりました。後は分かんないっす……」

 

「私は14歳だから、敬語じゃなくていいわよ。それにしても、本当に貴女だけ逃げ遅れたの?」

 

「あ、これは地なんで気にしないでください。それに、貴女ほど綺麗な人にタメ口は無理っす…。あと、私は鈍臭いからいつも仲間のサポートしか出来なくて、基本荷物持ちでしたから……」

 

『要は、切り捨て要因という所でしょうか』

 

「うわっ! どっから声が!?」

 

「あぁ、気にしないで。これはあるお方のアーティファクト。自分で喋る機械よ」

 

「なるほど……そのお方…が私を助けてくれたんですか?」

 

『肯定。私の名はライトブリンガーと申します。以後お見知りおきを。そして、貴女を助けたのが我がマスターです』

 

「えっ…でも、あの魔人たちは15人ぐらいいて、しかも侯爵級までいましたよ!?」

 

「事実よ。まぁ英雄、と呼ばれてもいいぐらいの人ですから」

 

「ミシェルさんは、その方の奥様ですか?」

 

 

 その爆弾発言に、それまで冷静に対応していたミシェルが動揺を露わにする。

 

 

「!? い、いやだわ…奥様なんて…!」

 

『否定。ただ、今後は分かりませんがね』

 

「はえ〜……それでも貴女ほどの人を惚れさせるなんて…とんでもないイケメンっすね!」

 

「いえ、そんな……普通よ普通! いつもとんでもない事を平然とやってきて反応にとっても困るんだから! それに乱暴な口調で上品さのかけらも無いし…でも、底抜けに強くて明るくて、どんな時も前を向いてて、ウジウジしなくて、ピンチの時に助けてくれる頼もしさもあって…優しいのよ」

 

「はっはぁ……ラブっすねぇ……」

 

「違うわ!」

 

『話が進みませんね……』

 

 

 

 

 得てして、年頃の女子の話はそういうものである。話が一段落したのは、空腹が限界になった2人が一旦話し合いを中断した2時間後であったという。

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