ティエラの地より 〜転生少年、深淵に挑む〜   作:エアロダイナミクス

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6、実地訓練

 

 

 

 

 

 俺が霊力を覚醒させた後、ドニさんはダイブを控えめにして俺に訓練を施してくれることになった。いまだにあの精神世界で起こったことは意味が分からない。つか、今ではほとんど覚えていない。覚えていないがろくな事じゃ無かったことだけは魂から理解した。ありゃヤベぇ。多分だけど、極限の集中が、恐らく瘴気と何らかの形でリンクしたとかじゃないかなと思っている。逆にそうじゃないと怖いわ。とにかく、瞑想は二度とやらないことを固く決意した。ドニさんも、あの時何かあれば俺を殺す気だったと思う。彼の殺気からはそう感じられた。

 

 俺は【暗黒領域】で拾われた。だからこそ、ずっと警戒していたのかもしれない。ならば、瞑想して変な場所に行ったって事は言わない方がいいだろう。もしバレたら更に警戒されて、最悪「処分」されるかもしれないからだ。あの雰囲気はマジだった。それは不味い。だからこそ、俺は黙っていようと決意した。

 

 

 

 

 

 さて、まずは座学だ。この霊力だが、本来は人間の魂とか精神のエネルギーらしい。人間は普段そのような力は内に秘めているだけで出てこない。しかし、瘴気という特殊な環境に晒されることで、人間の魂というか精神が悲鳴を上げ、防衛反応を示すらしい。そして、自分を守るように表に出てくる。それが霊力だ。これがあれば、瘴気をかなり防ぐことができるようになる。そして、基本的に瘴気を浄化する作用があるらしい。だからこそ、浄化担当という役割も存在している。霊力は無限に出るわけでは無く、当然使えば消耗する。使えば使うほど消耗していき、最終的に無くなる。そうなると、精神にかなりの変調をきたしてしまう。すると瘴気の浸食が早まり、かなり危険な状態になるという。ダイバーはその点から考えてもかなり危険な職業である。それが出来ない人間は浄化担当にまわるわけだ。よく出来ている。

 

 

 

 

 

 霊力は、他にも様々な使い方がある。例えば、現在の肉体を強化したり、超能力的なことが出来たり、霊力を変換して別の物理現象を引き起こしたりする。これがどのような原理であるのかは分からない。しかし、人々は昔からこの方法を編み出して瘴気に対抗してきたようだ。むしろコレが無ければ人類は滅亡一直線だったと思う。

 

 霊力は人によってその色が変わる。まだ、その法則がどのようなものかは明らかになっていないが、霊力を使って行う技にそれが現れる。青白い霊力を発現しているドニさんは、どうやら氷などの冷気を扱う攻撃が得意なようだ。これは本人の性質にも関わってくるのではないだろうか。ドニさんは冷静沈着で寡黙な性格で、彼は冷気がよく似合う。逆に、赤めの色をしているダイバーは炎系が得意だったりする。この法則は考察すると面白そうだ。とにかく、霊力はその人の精神の力とも言えるので、その変化を見るにその人の何となくの性格が垣間見えるのも面白い。ただ、霊力はやろうと思えば色々な変化が出来るらしいので、あくまで得意、不得意という感じらしい。まぁ、自分の性にあった攻撃をするのが一番だろう。

 

 

 

 俺についてだが、俺の霊力は白、と言うかほぼ透明に近い。これがどういう事か俺にも分からない。あのうっすら記憶に残る瞑想の光景からすると、むしろ……と思ったが、あのときの状況を考えると、この色で良かったと思う。そして、残念ながら俺の霊力は様々なモノに変化は出来なかった。ガッデム!

 霊力は、人によっては念じれば、俺を纏う霊力の一部が炎に変わるし、氷を発現させる。できたモノはどうなるかというと、念じるのをやめてしばらくすると消えてしまう。しかし、確かに熱いし、氷は冷たい。水もあるが、こうした理由から飲んでも意味ないらしい。あくまで精神エネルギーが変換している現象であるため、幻に近いモノだという。その代わり、その意志の強さや強靱さによって威力が大幅に変わるという。

 まぁ、オレは使えないんですけどね! マジで残念すぎる。オレみたいなのは無属性と言うらしいが、それはそれで強いらしい。身体強化や感覚強化などが他の属性よりも優れているということだ。前世でよく見た漫画の強化系みたいだ。うろ覚えだけど。こういうのは正統派に強くなる可能性を秘めてるってよくあるパターンだから、頑張って鍛えよう! 本当は格闘ゲームの炎使いとか雷使いみたいになりたかったんだけどね…。まぁそれはいい。霊力を使えるだけでも御の字だ。

 

 

 

 

 次は、この霊力自体を鍛える訓練である。ドニさんは俺に丸い石を差し出した。コレを霊力のみで動かしてみろ、というものである。いや、まずその霊力が動かないんですが……。

 

 そう言うと、ドニさんは自分の霊力をスッと動かし、石を()()()。そして、そのまま宙に浮かす。マジか。とりあえず、俺は今見た現象を頭に叩き込み、トライすることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 ……出来ねー!

 

 

 

 

 

 

 

 コレは……すごく難しい。まず霊力はちょっと動いたけど、そっからどう頑張っても身体の先に行かない。どうしても。参ったな……。だが、出来るはずだ。実際に見ているからな。やらねばならない。それは俺の命に関わってくるからだ。さすがに死ぬのは嫌だ。こんな何も分からない状況のまま。どれだけ時間が掛かっても、必ずやり遂げてみせる!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【SIDE:ドミニク】

 

 

 

「おい、ドニ。()()()の様子はどうだ? 最近家に引きこもって姿を見ないが」

 

「……あぁ。ナギは今霊力の訓練中だ」

 

「どこまでいった?」

 

「石を動かす訓練だ」

 

「は?」

 

「石を動かす訓練だ」

 

「いや、2回言わなくていい。お前、それって初心者にやる訓練じゃねぇだろ。色々とすっ飛ばしてないか? で、出来そうなのか?」

 

「あぁ。今は苦戦しているがな。すぐにでも出来るだろう。奴は動かすだけならすぐ出来た」

 

「マジか…天才じゃないか! しかし、そうなるとアレだな」

 

「うむ。今見極め中だ。本当にナギがこの街の益になるか、それとも害になるかをな」

 

「まぁ、お前さんなら心配いらねぇか。アイツも訓練の順番がバラバラだから苦労するとは思うが、根気よく面倒見てやってくれや」

 

「分かっている。もうそろそろ実地訓練も取り入れようと思う」

 

「はやく魔物退治できるようになりゃ助かるんだがな……ま、俺等の役に立ってくれることを祈るぜ」

 

「そうだな。私も楽しみにしている」

 

「じゃ、仕事の方頼むぜ、折れない男(アンブレイカブル)

 

「……その呼び方はあまり好きでは無いと言ったはずだが…まぁいい。承った」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【SIDE:ナギ】

 

 

 

 クソっ! マジで出来ない……。あれからもう10日経つ。一向に動かせる気がしない……。参ったな。ドニさんはアドバイスをする気は無いようだし、自分で解決するしか無いか。あの事件以来、俺に対する目がかなり厳しくなっているからな。たまに話しかけてくれるあの女の子(フロウっていう名前らしい)だけが今のオレの癒しだ。だが、コレばっかりは流石に解決出来ない。下手に他のダイバーさん達に聞いてまわることもできない。どうしたものか……。

 俺は悩んでいた。霊力が動かない。完全に固定されているかのごとく、光は自身の周りを照らすだけだ。コレ、本当に動くのか? いや、ドニさんはやっていた。まるで、光から自身の手を形作っていたような……。

 

 

 

 

 

 ……!?

 

 

 

 

 

 

 

 まてまて、そう言えば、俺は根本的に勘違いしていたかもしれない。この照らす光は、己の魂の力が形を形成して表面上に出てきているモノだ。つまり、この霊力とは、そもそも()()()()()()()()()()()()? と言うことは、己の似姿が己に重なっているだけ、と考えられる。そう考えれば、ドニさんのやったことも理解できる。アレはただ「分離」させているだけだ。ならば出来る筈! まずは指からいってみよう。

 

 

 

 ……じわっと動いた…気がする! やはりこの認識で間違いない。どうやら人型を動かすようなイメージがあってるらしい。ならばいけるはずだ。とりあえず触れなきゃいいんだろ? じゃあ、ギリギリまで手を近づけて……よし! ちょっと触った! そして…動いた!! やった! これでクリアだ。ドニさんみたいな感じには出来ないが、霊力のみで動いたぞ!! 

 

 

 

 

 

 そう喜んでいたら、いつの間にか近寄っていたドニさんが俺に話しかけてきた。

 

 

 

 

 

「ふむ……及第点だ。いいだろう。これから()()()()を行う。ついてこい」

 

 

 

 

 

 ……いきなりすぎない? いや、これは認められたということだろう。フル装備をしている彼は、俺に予備の剣を渡してきた。うっ……お、重……! こんなのを持ってたのか! というか、20キロぐらい無いか? ヤバい重さだ。見た目は両刃のロングソードといった風情だ。本当にどこにこんな重さが詰まっているのか。そして、俺が四苦八苦している間、彼はスタスタと外に出てしまっていた。俺は必死でその後を追った。

 

 

 

 彼はどんどん街の郊外まで歩いて行き、遂に巨大な壁と街の南門に到着した。そして、門を守る兵士に挨拶し、実地訓練を行う事を告げて巨大な門を開けて貰った。彼らの尊敬の目から、ドニさんはかなりの街の人の信頼を得ている人物だと言うことが伺える。巨大な門が大きな音を立てて開く。そして、遂に俺は外に出た。俺はドニさんとしばらく門の外に向かって歩く。そして、彼は立ち止まった。

 

 

 

 

 

 

 

「ここならば瘴気も弱い。お前の訓練には最適だ」

 

 

 

 

 

 

 

 周囲はとりわけ何もない。ただ草原が広がるだけだ。しかし、それはこの周りだけである。50メートルほど先から、昏い霧のようなものがかかり、全体的に昏い雰囲気を発している。コレが瘴気…! なんとも禍々しい……。ダイバーはここから出発するのか。出来れば早くこの状況を改善したいモノだが…。

 

 ドニさんが俺をその瘴気の入り口まで案内した。こ、これはキツい…! 表出した霊力がガリガリ削られる感じがする。これは消耗も早そうだ。そりゃめげる人も続出するわけだ。これを生身で受けるなんてゾッとする。周囲をそんなモノに取り囲まれたこの街は本当にヤバいんだなと改めて実感した。

 

 

 

 

 

「それで、何を?」

 

「うむ。お前は、その剣を使い、今から私と闘え」

 

「……は?」

 

「二度は言わん。私が今からお前を剣で叩きのめす。霊力を活用して防げ。当然だが魔物も襲って来る。そうしたら次は魔物だ。私はギリギリまで手を出さん。何とか生き延びてみろ」

 

「ちょ……いきなり!?」

 

「そうだ。心配するな。お前の霊力が尽き、瘴気に侵食されかけたら助けてやる。これからの実地訓練は毎回これだ」

 

 

 

 

 

 

 

 全く安心な要素が無いんですがそれは。ちょっとスパルタ過ぎない……? 俺は何にも習ってないよ? というか、剣とか握ったことも無いよ? マジでやるのかな? とおもってドニさんを見たら、霊力がみなぎっている。そして表情が物語っている。アレはガチでやる目だ。仕方ない。コレも訓練だというのなら、やって見せよう。何とか食らいついてみせる!!

 

 

 

 

 

 行くぞ!!!

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