ティエラの地より 〜転生少年、深淵に挑む〜   作:エアロダイナミクス

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61、死闘2

 

 

 

 

 

 回廊を抜け、様々な部屋を調べ、敵を撃退しながら進む。ここまで敵は散発的にしか出てこない。しかし、徐々に徐々に瘴気は濃くなり、周囲の状況も一変してきていた。具体的には、近未来的な金属の壁に、徐々に肉質の蔦が貼り付くようになっていた。そして、それは徐々に範囲を広げ、最終的には回廊の壁全てが肉塊に覆われてしまった。定期的に蠕動でもするかのような動きを見せるその肉塊の中にいると、さながら、魔物の口の中にいるような気分になる。それでも彼等は目的の場所までひた走る。必ず目的を達成するために。

 

 

 しかし、コルテスがそのようなことを許すはずも無かった。

 

 

 

 前方天上の肉塊が盛り上がり、そこから()()()()()()()()()()()()。それが肉塊から徐々に形を整え、コルテスの姿に変わる。

 

 

「残念だったな。ここは行き止まりだ」

 

「!? コルテス……!!」

 

「君達の着眼点は良かった。吾輩が8体もの分体を出して、足止めを喰らっている間に本体を探して撃破する。最大最高戦力のマリアを囮役にするなどという奇策まで用いて吾輩を出し抜こうとした。それは称賛に値する」

 

「…………」

 

「図星だろう? しかし、ダメだな。詰めが甘い。吾輩が更に分体を操れる可能性を考えなかったのかね?」

 

「フロウ……マズいぜ。さっきの奴と同じなら、俺達だけじゃ…」

 

「まだよ! コルテスの分体はコレで打ち止め! ここさえ乗り越えれば後は本体が待っている!」

 

「ほう? そうかね? まだ出せるとは考えないのか?」

 

「出せるならばとっくに出している! アイヴァンとエレーナの時に。今ここでそのカードを切ってきたと言うことは、本体が近くて仕方なく出したということ。だから、ここを乗り切ればゴールが近い!」

 

「…………ふむ。この状況下で冷静な判断が出来るか。優秀なことだ…。しかし、どうする? 君達では吾輩は越えられまい」

 

 

 

「みんな、作戦Dで行くわ」

 

 

 

 フロウが宣言する。その宣言に、ルチア始めエルもサラも驚いた。それをやると言うことは、この状況をフロウは本気で最後の障害と断じているということ。だからこその作戦だからだ。

 

 

 

「にゃはー。仕方ないねぇ。ミスっちゃだめだよ? 最悪の時は任せてね」

 

「正直自身は無ぇけど……やるしかねぇな! 気張っていくぜ!」

 

「分かっちゃいたけどギリギリの綱渡りね。いいわ。やりましょう!」

 

 

「作戦会議は終わったかね? では始めようか。勝敗の決まった戦いをな」

 

 

 コルテスの言葉と同時に飛んでくる8本の蛇腹剣。それを、土属性で減衰しながら、飛び上がり躱す面々。その際、微かに蛇腹剣が掠るのも厭わず、エルが2つのショートソードを横にして、その上にサラが乗る。エルはそのショートソードをコルテスに向かって力一杯振りかぶった。乗っていたサラは恐ろしい勢いでコルテスへ向かって跳躍する。その際に光の雷を身に纏い、更に加速。とんでもない勢いで吶喊する。

 

 

 

【紫電一閃】!!

 

 

 それは、技と言うには単純だ。雷を纏って槍と共に超高速で貫く技だからだ。しかし、シンプル故に強い。そして、それはエルというパートナーが協力して更に威力は高まる。流石のコルテスもあまりの速さに避けるか防ぐかの選択肢しか無く、ギリギリで躱した。そこにルチアの雷撃が来た為自身も同じような技で返す。そして、相殺に成功。折り返して戻って来たサラと、全身を光を帯びた炎に包まれたエルが突っ込んで来て、それらを蛇腹剣で弾き、迎撃した。

 

 

 しかし、肝心のフロウが見えなくなっていた。

 

 

 警戒はしていた。だが、ダイバー達の猛攻に晒され、一瞬見失った。フロウにはそれで十分だった。

 

 

 

「!?」

 

「これ、貴方へのプレゼント」

 

 

 

 カッ! と眩い光が辺りを照らす。それは太陽石。街にとってあまりにも貴重な激レアアイテムをマリアは持ち込んだ。必ずコルテスを討伐すると決意して。

 

 その石に光を込めれば、凄まじい光が辺りを覆う。つまり、魔物や魔人にとっては爆弾に等しいのである。

 

 

 それを、フロウはコルテスの前に掲げた。流石のコルテスも、全力で防御せざるを得ず、フロウに向けていた蛇腹剣をすべて防御にまわして、自身も防御態勢をとった。それでも、光の波動からは逃れられない!

 さらに、コルテスが怯んだ好きにルチアが再び凄まじい雷の攻撃を合わせ、追撃にエルが炎と風、サラが雷と火の複合攻撃を放つ。

 

 

「う、おおおおぉぉぉぉ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 ぷすぷすと焼け焦げた匂いを発し、防御態勢を取ったまま、コルテスは生きているのか死んでいるのか分からない状態になった。しかし、間髪入れずにルチアがフロウ達に言った。

 

 

「今が一番いい状態だよ! さっさと先に行っちゃえ!」

 

「……恩に着ます」

 

「任せとき。…でもちょっち早めにお願いね!」

 

「分かりました。エル、サラ! 行くよ」

 

「ルチアさん、お願いします!」

 

「早めに戻ってくるからね!」

 

 

 

 

 

 先に行くフロウ達を見守るルチア。彼女は覚悟を決めていた。そもそも、これしきの攻撃で沈むのであれば、公爵級魔人とは言えない。そうであるならば、自分の役割は足止めだ。このレベルの敵にどれほど足止めできるか分からない。しかし、あのまま全員で揃っていても、恐らく彼は再び分体を出すだろう。故に、最大攻撃で弱らせた今こそが、最大のチャンスであったのだ。そして、自分はこの敵と心中するつもりで足止めをする。それがこの作戦での最低条件であるが故に。

 願わくば、弱った状態でいて欲しいというのが本音だ。しかし、そうは問屋が卸さない。

 

 

 

「……おのれ。やるではないか……まんまと先に行かれたようだな。だが、この先には行かせん。貴公はすぐに寝かせてやろう」

 

 

 周囲から瘴気を集め、肉の壁に手をつきながら傷を徐々に回復させるコルテス。肉体の損傷や、瘴気量はそれで完全に元に戻る。人間からすればまったく反則と言うほかない。残存霊力は約半分を切った。しかし、やらねばならない。

 

「あー…やっぱりね。あんまりこーゆう状況にならないように今まで生きてきたんだけどなぁ…でもま、未来のためにいっちょ頑張りますか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ルチアに任せて先に進めば、肉塊に包まれた巨大な部屋があった。その奥中央の肉塊が盛り上がり、その中に巨大な目玉と複数の触手を持つ奇怪な生物がいた。目玉の周りには様々な怪物の顔面があり、周囲には卵のようなものが複数付いている。あまりにも醜く、冒涜的な怪物。生理的な嫌悪を催す生命体。

 

 

「キモすぎ……コイツが本体か?」

 

「……違うわ。コレはただの()()。気を付けて。どんな攻撃をしてくるか分からない」

 

「参ったわね……これ、攻略しなきゃ先に進めないの?」

 

「やらなきゃ全てが終わる。もうすぐよ。気合い入れて!」

 

 

 先制と言わんばかりに、フロウが火と水と土の爆発攻撃を行った。しかし、怪物は巨大な瞳を閉じてやり過ごす。それでも、触手の何本かは潰れた。お返しとばかりに触手を向かわせる怪物。しかし、それをエルが炎の剣で斬り払う。怪物は同時に卵からトカゲとエビを掛け合わせたような蟲に似た生物を嗾けたが、それはサラの雷と風で全て潰された。

 

 そうこうしていると、怪物の瞳の中心に莫大な瘴気が集まり始めた。明らかに敵がなにか巨大な攻撃をしようとしている。

 

 

「フロウ! マズいぞ…この部屋じゃ逃げ場がねぇ!!」

 

「落ち着いて、エル! 私に任せて。貴方達は他の攻撃に対処して!」

 

 

 フロウが集中し、彼等と目玉の間に巨大な土塊を出現させる。しかしそれでは、土ごと貫かれて終わりだ。どうするつもりかとエルとサラが問おうとしたとき、フロウはその土の表面に火属性で何かをやり始めた。よく見れば、生成した土の成分もただの土では無い。

 

 

 敵のエネルギーの集中が終わる。

 

 

 

 そして、超巨大な、部屋全体を覆うようなビームが放たれた。それは目の前の土属性など粉砕し、奥の人間ごと貫く勢いの攻撃。

 

 

 

「……間に合った。そして、賭けに勝った」

 

 

 

 

 瘴気のビームは、フロウの作った3面の()()()に反射され、その方向が再び自身に向かう。為す術も無く極太のビームに貫かれ、巨大な目玉の怪物はその形を跡形も無く消し去った。

 

 

 

「おま……マジか!? すげぇな!!」

 

「流石…やるわねフロウ!!」

 

「あの手の攻撃は純粋なエネルギーの塊だって聞いたからね。これが属性攻撃じゃ無くてよかった」

 

 

 大敵を倒し、すこしばかり歓喜の意を表すメンバー。思えば、彼等は幼少の頃から活動していた仲間だ。それが、まさかこんな歴史に残るような戦いの重要な場面に派遣されるとは、あの頃には思いもしなかった。

 

 

「よっしゃ! これであとちょっとだぜ!! コレで勝てば俺たちゃ英雄だ!」

 

「テンション上がってきたわ! あとちょっと、頑張るわよ! ところで、この先の道はどうなってるのかしら?」

 

「落ち着いて。あの目玉の下に大穴があるわ。どうやら更に地下のようね」

 

「うっ……この真っ暗闇を落ちるのか……」

 

「やるしか無いわ。全員、光の属性を強めに出しといて。エル、風の属性で落下速度を減少させながら行くわよ。私も手伝うから」

 

「この場合私は役立たずね…敵の攻撃に備えて、待機しとくわ」

 

「お願いね…じゃあ、行くよ!!」

 

「「おう!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その戦闘は、あまりにも一方的だった。ルチアは金剛石級(ダイヤモンドクラス)で、白金級(プラチナクラス)には及ばないものの、その実力はかなり近いところまで迫っている。光にも目覚め、そして更に風の属性にも目覚めたルチアは以前の階級制度なら白金級(プラチナクラス)にもなれたであろう。

 しかし、それでも公爵級魔人と闘うには、彼女は力不足が過ぎた。

 

 ルチアは術者タイプである。最低限の体術の心得はあるが、基本は後方で雷属性を乱舞することが彼女の真骨頂だ。しかし現在、その強みを全く生かし切れないまま、彼女はその短剣で複数の蛇腹剣を捌いていた。

 

 

「くっ……かっこつけてみたけど……こりゃヤバいわねー…」

 

「謙遜することは無い。貴公は十分使えるダイバーだ。今まで材料にしてきた者とは格が違う。ただ、吾輩がもっと格上だっただけのこと」

 

「それでもねぇ! やんなきゃならないの!!」

 

 

 ガギィン! と蛇腹剣を弾き雷を出そうとするも、すぐに他の蛇腹剣が襲ってくる。その一つ一つの精度が、最上級の使い手のそれであるために気が抜けない。マリアとの模擬戦を繰り返していたからこそここまで対応出来るだけであって、それが8本あるとなればかなり厳しい。コルテスの言うように、一般のダイバーであれば瞬殺だっただろう。

 

 

 しかし、コルテスには余裕がある。いかに9体の分体を制御しながら8本の蛇腹剣を制御しても尚、コルテスは最上級の剣技を維持している。そして、ルチアの大体の実力を察知したコルテスは4本の蛇腹剣をルチアに全力で向かわせ、術を繰り出す。それは瘴気術。単純にして魔人達の奥義。いくら光で減衰されるとは言え、その拘束力は並ではない。

 

 

詰み(チェックメイト)だ」

 

 

 

 襲いくる8本の死。その迫る刃を見て、ルチアは走馬灯の様なものが脳裏に流れていた。新人時代、尖りまくってただ力を求め、その時代の最高峰達と鎬を削った日々。そんな切磋琢磨した同期達を失い、自暴自棄になって暴れ回った時、マリウスに拾われ、その根性を叩き直された。アイヴァン、エレーナという愛すべき難物達とも出会い、再び切磋琢磨してマリウスの背中を任されるまでになった。それは、何物にも変えがたい黄金の記憶。

 ルチアはこの作戦に参加する事に後悔は無かった。マリウスのあんなに落ち込んだ姿を見るぐらいならば、前に進んだ方がよっぽどいい。それを叶えてくれたマリアにも感謝しているし、恩を感じていたからこそ、この無謀とも思える作戦に参加したのだ。恐らくはアイヴァンもエレーナも同じ気持ちだろう。

 惜しむらくは、自分がここで脱落してしまう事。それだけが心残りだ。あぁ、後少しで貫かれる。この後は実験材料として悲惨な道を辿るだろう。しかし、その前にフロウ達が達成してくれれば、それもなく死ねる。だから祈る。どうか、上手く行きます様に。そして、私が安らかに死ねる様に、と──

 

 

 

 

 

 ギィン!!

 

 

 

 

「なに!?」

 

 

 

 金属音。ハタと目を開けてみれば、懐かしい背中が2つ。随分とボロボロだが、それでも泣き出したい様な、抱きしめたい様な気持ちになる背中だった。

 

 

 

「……待たせたな、すまんルチア」

 

「貴女は死なさないわ。私がいるから」

 

「アイヴァン! ルチア! 無事だったのね!!」

 

「あの程度で死ぬわけがなかろう。我々『天上天下』は、どんな状況だろうが折れぬ」

 

「戦闘も問題無し。第2ラウンド、状況を開始する」

 

 

 

 それを見て、ルチアは再び力が湧くのを感じた。2人ともボロボロだ。特にアイヴァンは左腕を肘から失っている。それでも闘気を漲らせて、コストの高い金属性のゴーレムをフル稼働で操っている。ルチアも、全身に切り傷や火傷を負っているが、より静かで深い闘気に満ちている。

 それを見て、ルチアは反省した。何を諦めようとしていたのか。そして彼らに勇気づけられた。例え、この闘いが絶望しかなくても、彼らとならなんでもできる。そういう気にさせてくれた。

 

 

 その希望が、彼女に更なる光を齎す。

 

 

「……ここに来て出力が強まるとはな……。希望を持つ事で出力が変わるのか? それにしても、やはり深奥程度では話にならんか。良かろう。3人いようが無意味だと言う事をしっかり刻み付けて、絶望に溺れるがよい」

 

 

 コルテスの雰囲気が変わる。より研ぎ澄まされた瘴気の奔流を放ち、表情も真剣だ。その姿は、分体とは言え彼が本気中の本気で来る事を表していた。最早貴重な検体を殺しても構わないというほどに。

 しかし、そんな敵の様子を物ともせず、ルチアから出た言葉は仲間への感謝であった。

 

 

 

「ありがとう、2人とも……今日は死ぬにはいい日だね」

 

「……(いにしえ)の言葉。死ぬにはいい日など──」

 

「──死ぬまでないのだ!!」

 

 

 

 

 そうして、長年パーティーを組んで来た3人の金剛石(ダイアモンドクラス)ダイバーと、最上級魔人の最後の激突が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 64本もの蛇腹剣の襲撃。それは空をも埋め尽くすほどの攻撃で、逃げ場など存在しない。しかし、周囲360度を囲まれても尚、マリアは2本の蛇腹剣で致死の攻撃を全て弾いていた。流石に弾くだけで精一杯ではある。しかし、確実に向かってくる剣戟を打ち落とす。それは、絶技といっても差し支えなかった。その間、マリウスはその包囲網から抜け出し、近いコルテスから順に攻撃を仕掛けようとする。しかし、コルテスは複数の瘴気術で近づけさせない。様々な場所で起きる爆発音。それを最高速度で躱し、時には大きく損傷を受けながらも進む。それはまるで傷を負っても突進してくる闘牛のように。かといって、何人かのコルテスがマリウスを仕留める為に集中すれば、マリアがその隙を突いて攻撃を差し込んでくる。数の暴力により圧倒的な不利に見えたが、その実状況は拮抗していた。

 

 

「……拮抗するだけで精一杯、か。しかし、やはり予想は当たりでしたね。貴方は、分体を出せば出すほど精度が落ちる。その力、1人1人は全盛期より遥かに劣る。それで数押ししようなど片腹痛い」

 

「通常のダイバーならば初撃で沈むのだがな? 人間もあながち捨てたものではないな」

 

「マリア! もうちょっと出力上げらんねぇのか!?」

 

「ならば貴方もそうしなさい! 此方は出来ることはやっています」

 

「さて……貴公達がここまでやるとは思ってもいなかった。1人減らせばたちまち均衡が崩れるだろう。見事なものだ。しかし吾輩はこのままでもいくらでもいけるぞ? はたして貴公達はそれがいつまで保つかな?」

 

 

 

 公爵級魔人は無尽蔵だ。周囲にいくらでも補給できる瘴気があるから。しかし、人間はそうはいかない。このまま続けてもいずれ均衡が崩れる。しかし、それを承知の上で、マリアは臨んでいた。きっと運命を動かす者がその均衡を崩してくれると信じて。

 

 

「マリウス…弟子達を信じなさい。彼等ならきっとやってのけるはず」

 

「チッ……仕方ねぇ。もうちっと気張るか」

 

「貴公等の希望も時間の問題だと思うがね。そもそも吾輩の本体だぞ? マリアならともかく、他の者にどうこうできるわけもあるまい」

 

「次代に望みを託す。それも人間の良いところよ。貴方にはもう分からないでしょうけれど」

 

「ふん。ならばその幻想を打ち砕いてやろう。まずは貴公等を血祭りにあげて心を折ってやる」

 

 

 

 再び始まる激闘。しかし、その激突は徐々にコルテスの側に傾いていった。凄まじい精度で選択を迫られる。一秒にも満たない時間に取捨選択をし、正解のみを引き続ける。それは、人間離れした集中力とスタミナである。しかし、人間である以上、どうしてもミスが起きてしまう。それもカバーできるのがマリアの白金級(プラチナクラス)たる所以ではあるが、それでもミスは増え続ける。人間は無限に動けるわけでもないのだ。そして、それが積み重なると……細かい傷が増え始める。そして──

 

 

 

「くっ……!」

 

「そらそら、どうした? まだまだ吾輩は健在だぞ?」

 

 

 致命傷を避けるために、細かな傷が増える。傷が増えれば集中力がそちらに裂かれる。そうなれば、さらに致命的な攻撃を食らいそうになり、それをカバーするためにより傷が増えていく。悪循環が生まれていた。文字通り、マリアが戦線の要である。ここが落ちれば後は無い。しかし、現実は無情である。

 

 

「ぐっ……!」

 

 

 ドスドスドス!!

 

 

「マリア!!」

 

 

 コルテスの剣がマリアの左肩を抉り、そこで均衡が崩れた。そこに、複数のコルテスの剣がマリアを貫く。マリアの惨状に気を取られ、マリウスの攻撃も止まる。そこへ、最大級の属性攻撃がコルテスを襲う。雷と風と水の複合術。それはルチアの雷の威力すら上回り、マリウスの全身に浴びせられた。

 

 

「ぐがああああああぁぁ!!!」

 

 

 それでも、マリウスは術終わりに、コルテスへと向かった。一撃でも多くこの魔人へと打撃を加えるために。しかし、彼が接近する前に、複数の蛇腹剣が彼を貫いた。

 かくして、2人の人類最高峰は、無惨にもその身体を貫かれ、吊された。彼等はそれでも辛うじて生きていた。コルテスが実験に使うために。しかし、瀕死であり、その意識も辛うじて残っていると言うところだ。

 

「運命は……必ず………」

 

 マリアが微かに口を動かし、呟く。それは最早意味の無い言葉の羅列。

 

 

 そんな2人を、8人のコルテスが見上げながらぼやく。

 

 

「……全く手間をかけさせおって……いかんな。吾輩ももう少しで殺してしまう所だった。だが、これで漸く孫弟子達を追えるな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──馬鹿が。んな事させるもんかよ」

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