ティエラの地より 〜転生少年、深淵に挑む〜   作:エアロダイナミクス

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67、帰還2

 

 

 

 

 

 オープニングヒットは、マリウスとエルから始まった。それぞれ、ルチアとサラをいやらしく触られたからだ。2人とも、凄まじいパンチを相手の顔面に叩き込んでいた。マリウスのなんか、漫画かよってほどめり込んでら。あーあ。あれ、今後一生固いもの食べられないねぇ…。

 直後にアイヴァンとエレーナがコンビ技で蹴りを入れて、3メートルは吹っ飛ばした。うん、折れた音したねぇ。マリアなんかは、相手の喉に手刀で突きを入れて、金的だ。ヤバ。あれ死ぬんじゃね? サラもフロウも生き生きと奮闘してる。サラは槍無くての体術もかなりやるね。フロウの動きは変則的だけど、死角から入って拳でぶちのめしてる。フロウはちょいと心配だったけど、自分でやるって顔してたから任せた。

 ミシェルとアンリは中心に立っていて微動だにしない。安心してくれ。指一本触らせねぇからな。まぁ、リュシーが側に立って護衛してるから大丈夫かな? こうみるとまるで水戸黄門様だ。勿論ドラマの方の。俺、助さん役ね! リュシーはうっかり八兵衛かな。

 

 

 ちなみに俺は、助さんよろしくマリウスにちょい遅れたタイミングでに5人同時にボコった。フロウ達をいやらしい目で見た時点で絶許なのに、実際やろうとするなら万死に値します。丁寧に股間を砕いたので、もう一生勃たないねぇ。

 

 ん? 回復? するわけねーじゃん。こんな奴らに。

 

 

 そもそも、俺たちが武器奪って霊力封じた程度でどうにかなるわけないんだわ。仮に3倍の人数でもな。伊達にスーパー肉野菜食ってない。ここ最近毎食それだったし。つか、コイツら手慣れてやがるから毎回こんな事してたんだろうな。何人犠牲になったやら。魔人じゃないけど、コイツらは〝悪〟だな。よって、容赦はしない。これからの人生、惨めに犠牲者に詫び続けな。

 

 

 

 

 圧倒的な暴力に、奴等も焦り出す。こんなはずじゃ無かっただろう。勝ち確で奪って来たコイツらは、技量もクソもない。おら、霊力使えや。そんなんじゃマドリーの銀級(シルバークラス)より弱いぞ?

 

 どんどん()()()()いき、遂にはガエタン他4名となった。

 

 

 早。

 

 

 相手も同士討ちの危険性があるからか、属性使わなかったからね。もうちょい慎重に来れば良かったのにね。

 

 

「な、な……なんなんだ貴様らは!」

 

「いや、殺されたり犯されたりされようとしたら抵抗するわ。アホか」

 

「こ、この野郎…調子に乗りやがって……! だが、ここまで手を出したんだ! 貴様らは魔人確定だぞ! 確定したら例外なく処刑だ!」

 

「だ・か・ら〜。それをきちんと中で調べろって言ってんだよ。あからさまに殺そうとしたろ、お前」

 

「う、うるさい! お前が魔人じゃないなら、オレの攻撃を正面から受けても大丈夫なはずだ!」

 

「もう言ってる事無茶苦茶だぞお前。魔女裁判かよ。まぁいい。受けてやるよ。ホラ、来なよ」

 

「ちょっ、ナギ! それは流石に」

 

「いいから、フロウ。黙って見てな。俺の奥義、見せてやるぜ」

 

「馬鹿め……! 余裕こきやがって! テメェは必ず殺してやる!!」

 

 

 

 ガエタンもとい馬鹿は、俺のドニ剣(属性剣)を振り上げて、俺に走って向かってきた。素直な奴。阿呆すぎて話にならん。というか、俺の剣を勝手に使って殺そうとするってどういうこと? これがNTR…? ま、お前じゃ使いこなせんよ。アンリが俺の為に仕上げてくれた特別製だからな。

 

 

 振り下ろされる大剣。えーっと、オーダーは、正面から、攻撃を受ける。OK、余裕。

 

 

 一歩前に踏み出す。大剣が振り下ろされる。剣で斬るということは、実はかなり難しい。適切な角度で、適切な速度で、適切な場所に、適切に振り下ろす。それが出来なければ、斬れるものも斬れなくなる。剣士はそれを安定させるために素振りをするのだ。振り下ろしたその剣がスピードが乗って、最適な斬るポイントがある。正面から受ける。それは危険に見えて、実は防ぐ方法は簡単なのだ。

 

 

 

 ──このように。

 

 

 

 パシッ

 

 

 

「ほら、()()()()()()()()()()()()。これで文句ないだろ」

 

「ば、馬鹿な……」

 

 

 実に簡単。振り下ろしの前のタイミングに合わせて一歩踏み出し、スピードが乗る前に押さえる。それだけだ。多少の力さえあれば、このように片手でもいける。多分マリウスのオッサンもできる。コルテスとの最後の戦いに比べればあくびが出るほど余裕だわ。

 

 

 お、炎。あっち! この野郎。往生際が悪いな! そうくるならこの俺も容赦せんぞ! おら、廻し受け! 炎系は大体コレで完封だ! ちなみに飛び道具系もいけるぞ! お、呆然としてるな。じゃ、遠慮無く。

 

 

 

 ドゴッ!

 

 

 

 うん。彼のタマは見事に潰れたな。南無。さて、他の奴等は……あ、やられてら。みんなちょっとは俺の方見てた!?

 

 

 

 そうこうしていると、門がようやく開き出す。は~長かった。でもスッキリ! さて、コイツ等が勝手に使ってた俺達の武器を回収しますか。ん? ラブやん? ラブやんは渡すわけ無いから腰にずっと差しっぱなしだよ。上手いこと水筒かなんかだと思ってくれたらしい。これで奪われてたら本格的にNTRだったから良かったわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【SIDE:ブガロッティ】

 

 

 

 

 

 ──正直、本当に魔人の線を疑ってはいた。だからこそ、公爵級魔人を討伐しただの、光の勇者だのは作り話だと思っていた。実際に見て、光る太陽石を見たとき、うまいこと逃げ出した小娘と小僧が、たまたま探索中のダイバーの集団に出合って、その際太陽石を大量に持っていたから助かったのではというストーリーが浮かんだ。それで、格好が付かないから盛っているのだろう。いかにも小娘の考えそうなことだ。

 

 しかし、人間ならばそれはそれでいい。むしろ好都合だ。領主は、小娘を失って意気消沈している。ここでもう少し責め立てれば、奴も引退か病気で一線を引くだろう。そうなれば鍛冶組合長バチストが奴の後釜に座る。バチストの息子は残念だが、もともとそういう路線で婚約していたのだ。当然だろう。さすれば、今以上に街全体がよくなる。領主の無駄な慈善事業を削り、本当に必要な所にカネを回せるのだ。

 

 そう思っていたからこそ、小娘が本当の人間だろうが別にどうでも良かった。むしろアレは邪魔だ。無駄に有能で領主以上に領主の仕事をして、マズいところをかぎつけられそうになったことは一度や二度では無い。見た目とその突出した能力で、民衆からの支持も厚かった。アレが帰ってきたならば、今以上に我々が締め付けられるのは間違いない。バチストの息子ではアレは制御できないだろう。だからこそ、2人とも死んでもらう。

 

 

 そう決めて、急いで段取りを組んだ。子飼いのダイバーを全員導入して、事に当たる。向こうは11名。約3倍だ。()()()()()同数でも問題ないが、念には念を入れた。旅人イベントは貴重な稼ぎ場だ。子飼いどもも、相手に女が混じれば喜んで参加する。今回は絶世の美少女である小娘が相手だし、他にも綺麗どころがわんさかいる。……奴等のエサにするのはいささか勿体ないが、仕方あるまい。領主にバレたら流石にワシも危険だからな。

 

 

 小娘は無駄に有能だから、こう言った場合のダイバー組合の規定まで知っているはずだ。それを逆手に取る。うまく掛かれば……後はお楽しみだ。連れのダイバーには悪いが、いつものように街の礎となってくれ。

 

 

 

 

 ……こうしてじっくり相手を見てみれば、本当に綺麗どころが多いな。やはり勿体なかったか。しかし、もう子飼いどもはもう交渉に入っている。仕方あるまい。部下の忠誠を保つためには多少の犠牲も必要なのだ。ここからはよく分からないが、装備も一級のようだ。素晴らしい。我々の子飼いがより戦力が増す。良いことだ。そして……あのなにやらさえない黒髪の小僧の収納袋には、ちょっと覗いただけでも凄まじい量の品が入っていた。しかも、中身は見たこともないものだらけだ。これはこれは……素晴らしい! こういうものは、ダイバー組合で使うべき物だ。これで財政も潤うだろうし、しばらく豪遊できそうだ。部下達が美味しい思いをしているのだからワシも少しくらいは遊んでもバチは当たるまい。

 

 新人にカネをちらつかせて遊ぶのは毎年の楽しみだが、最近は厳しくなってきたからな…。さて、首尾良く首輪を付けたか。もうこれでワシの勝利だ。領主め。間に合わなかったな。貴様はいつもそうだ。だから再び娘を失うのだ。

 

 

「よし、お前ら、後は好きにしていいぞ。ただし、死体は奥の方で処理しろ」

 

「な! 話が違います! 私達はもう無力のはず! 少なくとも中に入れて尋問が普通でしょう! それがダイバー組合の規定の筈です!」

 

 

 くくく……焦っておるな。この人数差で、霊力も封じられた。生殺与奪は握られたのだ。馬鹿め。

 

 

「あー? 聞こえんなぁ。そもそもワシが組合長だ。そんな規定は知らん。安心しろ。お前たちの成果はワシらが有効に使ってやる」

 

「まさか……噂ではありましたが、本当に貴方たちは逃げて来たダイバー達をこのように殺していたのですか…!」

 

 

 お? 今頃気付いたのか? 馬鹿な奴。こんなのに上に立たれようとしていたのかと思うと虫酸が走る。

 

 

「さて? こんなご時世だ。街に迷い込む人間などは存在せんよ。いたとしたらそいつは魔人だからなぁ」

 

「どこまでも腐ってますね……」

 

 

 何とでも言え。さて、ワシはこの収納袋の中身を検分しなければならんからなぁ。他にも袋はあるし、今回はリスクを負っただけのことはあったようだ。

 

 

「ガエタン! さっさとこの魔人達を連れて行け! 領主が来るらしいからな。何、ワシがこいつらは魔人で、辛うじて撃退したとでも報告しておくからな」

 

「へっへ……ようやくお楽しみタイムだぜぇ! 野郎ども! 連れてけ! 女はなるべく傷つけるなよ! お嬢様は俺が頂くからな!」

 

 

 さて、最初の所だけ見届けて、後は任せよう。ワシはこれから来るという領主に誤魔化すストーリーの練習をせねばならんからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……は?

 

 

 

 

 なん、何? 人が、飛んでる? えっ。どういうこと…?

 

 

 待て、なんで部下どもがやられてるんだ!! 奴等は霊力すら封じられているはず……! どういうことだ!! いや、冷静に考えろブガロッティ。アイツらは霊力を封じられてないのか!? いや、きちんと封じられている印が出ている……ということは、奴等は素の能力で圧倒しているのか!? 馬鹿な! 奴等は仮にも最低銀級(シルバークラス)だぞ!? あぁ…次々とやられていく…! 貴様ら!! もっと頑張らんか! どれだけ貴様らに美味しい思いをさせたと思ってる!!! 特にシスター服と筋肉ダルマが本当にヤバい。ウチの最高戦力のヴァネッサでもあの域にはいないだろうというほどに。しかし、本当にヤバいのはあのさえない黒髪だ。どうなってるんだアレは! あいつ1人で20人は倒してるぞ! それに、ガエタンは仮にも金剛石(ダイアモンドクラス)だ。その奴が、いとも容易く、赤子の手を捻るように伸された……。

 

 

 

 はっ! まさか……! まさかまさかまさか……! 例の奴らの話は本当だった…? 本当に奴らは公爵級魔人を打ち破る程の実力者だった…? そんな馬鹿な!! そんな事、あるわけが無い! そうだったら今頃もっとこの街は発展している!! クソ、マズいぞ、もうすぐ領主が来る…! 流石に直に見れば気付くだろう。本当に自分の娘だと言うことに…! おのれ……ここは一旦この場から離れよう! 後で何とでも言い訳は出来る。部下の暴走のせいにして全てを逃れるのだ!! そうとなれば急ぐか! さらばだ、馬鹿な部下ども!! すぐには満足に喋ることもできんだろう。その間に奴らは裁判して処刑だ。そのための子飼いなのだ。甘んじて受け入れろ! 

 

 

 

 

「どこに行くのだ? ブガロッティ」

 

 

 

 

 振り返れば、そこには怒りに震える領主の姿があった。

 

 

 

 あっ……終わった──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 門が開くと、素晴らしい意匠の鎧を身につけて、マントをなびかせた偉丈夫が出てきた。1人のダイバーを引き連れて。なにやら後ろでジジイが喚いてるが、兵士達に取り押さえられてる。ざまぁ。

 そして、この連れてきたダイバーは、多分この街の白金級(プラチナクラス)だ。土属性かな? 何となく雰囲気がガブリエラさんを思い出す。向こうもこちらの実力に気付いたらしく、相当警戒している。その様子を見て、偉丈夫は我々に険しい顔を見せたが、それでも隠しきれない喜びが垣間見えていた。

 

 

 

 ミシェルは、彼を見たとき、一瞬涙をこぼしそうになったが、ぐっと堪えて、彼の前まで出て行った。そうして、彼の前で跪く。

 

 

 

「お父様。このミシェル、公爵級魔人に攫われましたが、数奇な運命を経て戻ってくることが叶いました」

 

「……顔を上げよ……本当に、ミシェルか……ヴァネッサ、どうだ?」

 

「…………」

 

「どうした、ヴァネッサ。これが魔人ならば私はこの娘を斬らねばならん」

 

 

 そう言って、すらりとその剣を腰から抜いた。この親父、本気だ。それに気付いて慌ててヴァネッサと呼ばれた白金級が反応を返す。

 

 

「申し訳ない。あまりの驚きに夢中になってしまいました。この方達が魔人かどうか、ですね? 無論、人間です。疑いようもありません。ブガロッティは何を見て魔人だと思ったのか、意味が分かりませんね。恐らくこうして小銭稼ぎを今までしていたのでは?」

 

「……それは、真か」

 

「はい。このヴァネッサが断言しましょう。私が驚いたのは、この方達の実力についてです」

 

「? どういうことだ?」

 

「少なくとも私と同格……それが5人。そして、明確に格上が2人。更に、最早底が見えない者が1人います」

 

「な……!」

 

「彼らなら、公爵級魔人の討伐という事も可能でしょう。少なくとも私は無理ですが彼らならできる。そう思います」

 

「そうか……そうか……」

 

 

 このヴァネッサって人、よく見てるな。ところで、底が見えない者って俺の事? ちょい雑じゃない? そんな益体もないことを考えてたら、領主の目から涙が溢れ出した。

 

 よく見たら、この人も相当窶れてる。……そりゃあそうだよなぁ。そして、涙も仕方ない。俺達は何も見なかった。そうしよう。

 

 

「……お父様!」

 

 

 ミシェルが辛抱たまらず彼に飛びついた。そして、彼は剣を捨て、彼女を優しく受け止め、しっかりと抱きしめた。もう2度と手放さないかのように。

 

 

 それを見て、不覚にも感動しちまって涙がこぼれてきた。良かったなぁ。本当に、良かったなぁ…。周りを見れば俺達のメンバーは大体涙流してら。マリウス、恥ずかしいからって後ろ向くなよな。バレバレだぞ。

 

 領主と娘が抱擁を交わした時、後ろの方で歓声が上がった。いつの間にか民衆が集まり、兵士達もこぞって喜びの声を上げていたのだ。ミシェルは相当慕われていたようだ。帰ってこれて、送り届けられて本当によかった。

 

 

 

 しばらくそうして抱き合っていた2人だったが、ミシェルが不意に顔を上げて、彼から離れる。もう少しいいんだよ? まぁ、いいならとりあえず目的は達成したし、中に入ろうぜ。

 

 

 

「お父様…私は、魔人に攫われたとき、もう全ての事を諦めました。しかし、たまたまそこに、光をもたらす英雄様がいてくださったのです。その方は私を助けてくださっただけでなく、お母様とポレットの形見も探し当ててくれました……これです」

 

「な、なに……これは…! た、確かにネレイスの髪飾り…! そしてこれはポレットの……そうか……」

 

「そして、この下郎達に奪われそうになりましたが、この鎧と剣は、お母様が使用していたもののようです。それをアンリが打ち直してくれました」

 

「お、おぉ! アンリ。お前も無事で何よりだ!」

 

「お久しゅうございます。そして、あの時醜態を晒してしまい、申し訳ありませんでした。こうしておめおめと御前にお目に掛かるのも心苦しく思っています」

 

「いや、無事に帰ってきたのだ。そんなことは気にせずとも良い。……それにしても、お前は雰囲気が変わったな。まぁ、それは良い。後でじっくりと話を聞かせて貰うぞ」

 

「はっ」

 

「それで…その英雄殿以外の方達は?」

 

「その方達は、私たちがこの街を目指している時に、別の公爵級魔人を討伐していたところ、私たちが通りかかり、英雄様は助太刀をされました。その甲斐あって、無事にその公爵級も斃れ、そのままここに帰還した次第です」

 

「……俄には信じられんが……お前が言うならそうなんだろうな。ここではなんだ、後で館にてもう少し詳しく話を聞かせて貰おう。して、その英雄殿はどの方だ? この、修道服の方か? それとも後ろの体格の良い方か?」

 

「いいえ、違います。お父様。……この黒髪の方が、私を絶望から救ってくださり、光をもたらした英雄、ナギ=シュトルバーン様です!!」

 

 

 

 

 ドーン! という効果音が聞こえてきそうなぐらいの勢いで俺を紹介するミシェル。紹介する際に俺の側まで来て、俺の腕に抱きついてきた。いや、ちょっと演出過多じゃない…? 後ろの兵士以下一般人達が騒ぎまくってる。いや、ほんと英雄的な扱いじゃなくてね、ちょっと街で優遇してくれるぐらいでいいんだよ…? ほら、領主サマも困ってんじゃん。どうすんのさ!

 

 

 

 

「……なるほどな。まずは礼を言おう。ナギ=シュトルバーン殿。此度は我が娘の危機を救ってくれて、本当にありがたく思う。この娘は私の、そして街にとっての宝なのだ。それを取り戻してくれた貴殿は、真の英雄である! それなのに、このような扱いをしてしまって私は慚愧に堪えぬ。本当に申し訳なかった。此奴等は厳しく取り調べて、しっかりと罰を受けさせる。後ろの組合長もな。それでどうか許して欲しい。また、報酬はその分も含めて別に用意するので一緒に館へ来てもらえぬだろうか? 後ろの方々もよければ是非お願いしたい」

 

 

 ……困ったなぁ。お偉いさんとの会話なんて、前世でも今世でも経験無いのに……。お礼と、謝罪をしてくれたんだよね? とりあえずソレっぽく言っとくか。

 

 

「あーゴホン! ……いえいえ、そのようにお言葉をいただけるだけで十分でございます。私はたまたま通りがかっただけの者で、お嬢様を助けられたのも偶然に過ぎません。ですが、こうしてこの街に送り届けることが出来たことは本当に喜ばしく思います。あぁ、この者達も大した事はなかったので、どうかお気になさらぬよう。ただ、私たちの収納袋も奪われておりますれば、それは是非とも返していただければと思います」

 

「な! そんな事まで……! というか、まだ霊力封じを付けられていたままだった! 本当に申し訳無い!! モリス! ブガロッティと其奴等を検分して鍵を探せ! そして、隠し持ってるだろう収納袋を取りもどすのだ! その際、()()手荒くなってしまっても構わん! 徹底的に調べて我が前へ引きずり出せ!!」

 

 

 うん。ブチ切れ。まぁそりゃそうよ。仮にも領主の娘暗殺未遂だもん。普通に死刑だよね。ジジイはモリス含む兵士達にフクロにされ、服を破られて全裸になってる。汚ねぇ。しかし、おかげで俺達の収納袋は戻ってきた。これで一安心、と。兵士達はこちらにもわらわら来て、子飼いどもを同じようにフクロにしてる。辛うじて鍵を差し出しても、受け取った後知らん顔で殴ってるな。まぁ、領主命令だからね。仕方ないね。この後彼ら、厳しい尋問というか拷問も待ってるだろうけど大丈夫かな? これを見逃せば不正に目を瞑ることになるだろうから徹底的にやるだろうし。裸のジジイもそれは多分同じだろうね。いまだに俺達が魔人だって騒いでるけど。

 

 

 引きずり出されたジジイは、領主に剣を向けられて漸く観念したようだ。コイツも元ダイバーかもしれないけど、隣のおねーさんには絶対勝てないだろうし、諦めるほか無いだろう。そうして、俺達に付けられた霊力封じの首輪を今度は自分たちに付けられて、彼らは連行されていった。彼らの今後は悲惨の一途だろうが、まぁ、自分たちの罪を存分に精算してくれ。

 

 

 

 

 そうして、とりあえず俺達は、領主の館に訪問する事となった。

 

 

 その際に、何故か馬車に乗って西門から向かうだけなのに、パレードみたいになってるし……! そして俺は現在、ミシェルと領主に挟まれて、道端に集った民衆達に手を振ってます……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どうしてこうなった!?

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