ポンコツ機械がフリーナの英雄になる話   作:ルヴレ

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ちょっと距離とります(物理)

 

 

「ジゼットには、誕生日ってあるのかい?」

「えっと……完成日は七月の五日です」

 

 フリーナは、突然思い出したので、ジゼットに尋ねた。

 ジゼットは、無表情だが少し困った様子で、言った。

 あれからジゼットは変わった。無感情だった瞳に、ほんの少し感情がこもるようになったのだ。きっと、ジゼットをよく知らない人は、ジゼットの変化に気づかないだろうが、フリーナはもちろんジゼットの変化に気づいている。クロリンデや、ジゼットが最近仲良くなったと言う、リネットもだ。

 

「突然、どうしたんですか?」

「せっかくだから、キミの誕生日を祝いたんだ!」

「……? なんで製造日を祝うんですか? 人間ならともかく、私は機械です。生命が誕生したわけじゃないし、めでたくもないと思います」

 

 フリーナは、そんなジゼットの冷静な返しに、むすっとした。

 

「機械も人間も、そこまで変わらないと思わないかい? キミがこのテイワットに生まれたことも、めでたいことだと思うよ」

「そう言うものですか? ……人間の概念を理解するのは難しいです。頭がぐるぐるして、ホットになります」

 

 ジゼットは、無表情で頭に手を添えた。ちっとも難しそうな顔をしていないが、ジゼットが、戦闘系の知識を詰め込みすぎて、容量がないから普通の機械よりも頭は悪い、といっていたから、本当に理解に苦しんでいるのだろう。

 

「何か欲しいものはないのかい?」

「特にないです。欲しいって何ですか? それもほかほかしますか?」

「そう言われると、難しいなぁ……。何かないのかい? このケーキが食べたい、とかこのブローチが綺麗、とかこの香水の香りが好き、とか……」

「…………好き? 綺麗?」

 

 色々と例をあげてみたが、さらに混乱させてしまったようだ。これは、フリーナから何か贈るしかないだろう。

 今度はフリーナが難しい顔をする。ジゼットに好き嫌いがあるとは到底思えない。恐らく、何を渡しても、無表情で「ありがとです」の一言で終わってしまうだろう。

 もっとジゼットがびっくりするようなことをしないと、喜んでもらえないかもしれない。

 びっくり……そこまで考えて、フリーナはまた突如思いついた。

 

「いいことを考えた! よし、ジゼット。僕は大切なことを思い出したから、今日はもう仕事をしなくていいよ。今日の残りは好きに過ごすといい!」

「はい。分かりました」

 

 フリーナは、浮ついた様子で部屋を出ていく。その後ろ姿を、ジゼットは小さく首を傾げて見つめていたのだった。

 

 

 

 

 

 

「フリーナ、一緒にケーキを食べに……」

「あ、ごめん! 僕は他に用事があるんだ。また今度ね!」

「それなら、クロリンデはどこか一緒に……」

「すまない、私も用事があるんだ」

 

 ……おかしい。

 ジゼットは、こてんと首をかしげる。こうやって同じ理由で周りから断られ続けて、二週間ほど経つ。フリーナが誕生日の話をしてから、突然二人がジゼットを避けるようになった。

 ジゼットは、人間だと心臓があるあたりの場所に、手をのせた。何だか、こころが少し冷たい感じがする。今までは、ぽかぽか暖かく感じていたのに。

 

「それじゃあ、ジゼット。また今度」

 

 二人とも、なぜか少し慌ただしく部屋を出ていく。

 ジゼットは、一人ぽつんと部屋に取り残された。

 

「……嫌われたんでしょうか」

 

「嫌い」と言う気持ちは、ジゼットにはあまり理解ができない感情だ。けれど、人間には嫌い、と言う感情があることは知っていた。

 例えば、相手の嫌なことを言ったとき、相手を傷つけたとき……そう言うときに、嫌われるらしい。そして、嫌われた相手は避けられたり、誘いを断られたりする。そうデータには記載されている。

 

 まさに、今の状況と同じだ、とジゼットは思う。

 ジゼットは機械だから、人の感情の機敏に疎い。もしかしたら、どこかで人を傷付かせることを言ったのかもしれない。

 フリーナの英雄、なんて名乗ったのに嫌われるなんて。

 ジゼットは、無表情で立ち上がった。

 

 嫌われたらどうしたらいいか。ジゼットにはよくわからない。だから、誰かに聞こうと思った。けれど、クロリンデやフリーナからはどうやら嫌われているようだから、他の人に聞いてみたい。

 ヌヴィレットに聞いてもいいが、フリーナにもし伝わったら大変だ。特にフリーナと仲がいいわけでもない人物……。

 ジゼットはしばらく考えて、一人の人物を思いついた。

 そして、そのまま部屋を出ていった。

 

 

 

 

 

 

「リネット、嫌われたときって、どうすればいいんですか」

「……いきなり、どうしたの」

 

 ジゼットが考えた人物とは、リネットだった。リネットは、前にケーキを買うのを手伝ってもらってからは、時々会って話したりもする。

 リネットは、ジゼットの突然すぎる発言に、一瞬だけ眉を顰めた。

 

「嫌われたって、誰に? それに、嫌われてもそんなに気にしなくてもいいと思う」

「……誰に嫌われたかは、言えません。でも、きっと嫌なこと言っちゃったんです。それで、嫌われちゃって。話そうとすると、どっかに行っちゃうんです」

 

 ジゼットの無表情な目が、どこか悲しそうに揺れている。リネットは、きっとジゼットにとって大切な人に嫌われてしまったのだと、察した。

 そして、小さな友達のために、しばらく考える。

 

「少し、距離をとってみたら?」

 

 たくさん話しかけて、嫌がられたらきっとジゼットはもっと傷ついてしまう。そう考えての、発言だった。

 ジゼットは、リネットにそう言われて、何度も首を縦に振った。

 

「それも、そうですね。一回距離をとってみます」

「仲直りできるといいね……って。もういない……」

 

 ジゼットは、頷いたらなぜかものすごいスピードで、走り去っていった。

 ……そう。ただ距離を──そう、普通の意味で距離を取るなら、きっとよかった。

 けれど、ジゼットはとんでもないポンコツである。リネットの「距離を取るといい」と言う言葉を、すっかり物理的に距離を取ればいいと勘違いしていたのだ。話さないようにする、とかではなく、フォンテーヌから離れよう、みたいな意味だと思ってしまったのだ。

 だから全力ダッシュでフォンテーヌから今すぐ出て行こうとしているのだが……残念ながらリネットは気づいていない。

 

 

 

 

 

「明後日まで仕事がお休みでよかったです。それにしても、砂漠に来るのは、久しぶりです」

 

 勘違いしたジゼットは、フォンテーヌを出て身一つで砂漠に来ていた。

 仕事が休みの三日だけ物理的に距離をとって、またフォンテーヌに帰るつもりである。フォンテーヌから、スメールまではそこそこ距離があるせいで、砂漠に着いた頃には、すっかり日が暮れていた。

 砂漠の夜は、よく冷える。けれど、ジゼットは機械だから体温はないし、基本的にどんな気温でも順応できる。そのおかげで、薄着でも震えることはなかった。

 

「……寒い」

 

 そのはずだったが──なぜか、寒くて寒くて仕方がない。もしかして、冷却水が溢れてしまったのだろうか。そうだとしたら、一大事だ。ジゼットは、槍を地面に突き刺して、ひと休みした。

 

「……お前は、もしかして、あの学者の機械か」

「あなたは誰ですか? でも、確かに私は機械です」

 

 そんなふうに休憩していたら、一切の音も立てず、いつのまにか変わった帽子をかぶっているマハマトラが、ジゼットに近づいてきた。

 ジゼットは、特に警戒もせず、無表情でこくりと頷く。そんなジゼットに、彼は説明する。

 

「教令院では、機械生命体を作ることは、禁じられている。お前を作った学者は、最近にそのせいで逮捕された。だが、お前の居場所だけは特定できなかった。探していたところで、今お前を見つけたんだ」

「……そうですか。それより私の問いに答えてくれませんか。

 あなたは、誰ですか。悪者ですか? それとも、私の敵ですか」

 

 ジゼットは、彼の言ったことが、よく理解できなかったし、言いたいことすらもわからなかった。

 けれど、これだけはわかる。ジゼットは彼に明確に敵意を向けられている。彼の目が、それを示していた。

 

「俺は、大マハマトラのセノだ。お前は指名手配されている。お前が抵抗しなかったら敵ではない。暴れず、俺に着いてきてくれ」

「私はフリーナの護衛のジゼットです。だから、着いていくことはできないです。フォンテーヌに帰らないとダメですから」

 

 じ、とお互い無表情で見つめ合う。セノが武器を構えるのと、ジゼットが武器を構えるタイミングは、奇しくも同時だった。

 ──正確には、ジゼットの武術はセノのコピーだ。だから、構えるタイミングが同じなのも、必然と言える。

 全く同じ動きで、お互いに槍で薙ぎ払う。セノは、ジゼットと自分の動きが全く同じことに気づき、ほんの少し顔を顰めた。

 

「お前の動きは……俺のコピーか」

「はい。スメールでいちばん強そうで、戦う姿を記録しやすいのもあなたでしたから」

 

 ジゼットは無表情で槍を構えながら、そう言う。

 ……余裕そうに見えるが、内心ジゼットは少し焦っていた。機械に焦ると言う感情があるかは定かではないが、脳内のプログラムが、忙しなく動く。

 セノとジゼットが戦った場合、90%の確率で、ジゼットは負ける。ジゼットはセノよりもさらに小柄で力がないし、神の目も当然持っていないから、元素も扱えない。耐久性も、難がある。

 セノよりも優れている点は、スピードくらいだろう。

 

 セノが、鋭い一撃をジゼットに入れてくる。ジゼットは全身を使って上手く受け流したが、さらに追撃された。ジゼットは冷静にそれも受け止めるが、鍔迫り合いになる。

 ジゼットは力負けして、掠ってしまい、一撃を入れられてしまった。

 パリン、と鈍い音がして、当たった頬の部分の陶器が砕け散り、地面に落ちていく。

 ジゼットは、攻撃された勢いを利用して、後ろに下がった。

 

「投降するつもりはないか」

「私は三日後が仕事なので、帰らないとダメなんです」

 

 頬の割れ目から、無骨な機械の部分が見えている。掠っただけで、これである。ジゼットはやはり勝ち目はないと思いつつも、投降ができなかった。

 投降したら、スメールから出られなくなるか、壊されるか……そんなところだろう。きっとフォンテーヌに戻れることはない。

 なぜ、こんなにもフォンテーヌに戻りたいかなんて、わからない。

 一つわかるのは、指名手配されている時点で、「英雄」なんかではないことだ。逃げるなんて、さらに英雄らしかぬ行動だろう。ジゼットの中のプログラムが、「投降しろ」と命令してくる。

 

 ジゼットは、ぐっと強く槍を握りしめた。そして、セノを強い目で見る。その目は、どうしても機械なんかに見えなかった。人間のような、強い意志の込められた瞳。セノは、驚いて一度小さな瞬きをした。

 ジゼットは、フリーナに嫌われていてもよかった。

 ただ、ジゼットの寿命が尽きるまで、フリーナのそばでフリーナを支えたい。ジゼットの願いは、それだけだった。

 

「投降は、できないです。私は、フリーナのところに、帰るんです」

 

 ジゼットは、恥も、作られた意味も全てを捨てて──セノに背を向けて、走り出した。

 セノはジゼットの後ろを、追いかけていく。砂漠に、二人の足跡が残り、風によってすぐに消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 ……ジゼットがうっかり勘違いをして、大ピンチに陥る大体二時間前。

 フリーナは緊張した顔で、ジゼットの扉をノックした。その手には、目隠しが握られている。

 

「ジゼット……いるかい? ジゼット?」

 

 何度もノックをしても、返事が返ってこない。いつもなら、「何ですか」とすぐに返ってくると言うのに。フリーナは、疑問に思ってそっと扉を開く。

 そして、唖然とした。

 

「いない……」

 

 もう、今は夜だ。きっとみんな、夕飯を食べているであろう時間だ。ジゼットは、この時間は決まって自室にいる。そのはずだった。

 

 フリーナは、ジゼットが隠れている可能性も考えて、ベッドの下を覗き込んだ。もちろん、いなかった。

 もしかして、家出? 確かに、フリーナはここ二週間、事情があってジゼットに会えなかった。

 不安になって、棚にある、ジゼットのモラが入っている引き出しを引く。

 中には大量のモラが入っていた。持ち出した形跡はない。

 

「……ある。それなら、家出じゃない。普通はモラを持ち出すはずだ」

 

 まさかジゼットが、モラを持ち出すことを全く思いつかないほどアホなことなんて、考えもせず、フリーナは慌ててみんなを集めた部屋に戻る。

 そこには、大量のご馳走やみんなからのプレゼントが並べられている。「ジゼット、誕生日おめでとう」と言う文字と共に。

 ……そう。ジゼットの誕生日をサプライズで祝うため、フリーナたちはジゼットを避けていたのである。そして、運悪く、今日はジゼットの誕生日だったのだ。

 

「みんな、ジゼットがいないんだ! 何処に行ったか、知っている人はいるかい!?」

「……そういえば、今日の昼に、全速力でスメールの方へ走っていくジゼットを見かけました。ただ遊んでいるだけだと思いましたが……」

「誰かから逃げてた可能性もあるってことかい!? ど、どうしよう……! またジゼットが誘拐されてたら……」

 

 クロリンデの証言で、フリーナは顔を青くする。クロリンデも、心配そうに顔を顰めた。最近、子供を狙う殺人が多いことも、不幸なことに二人の心配を加速させている。

 ……ただ、物理的に距離を取っていただけなのだが、そんなことに気づく人は誰もいないし、教えた本人のリネットは、少し遅れてしまって、ここに向かっている最中である。

 フリーナは、最悪の可能性を考え、首を横に振って慌てて取り消した。

 

「手分けして探そう。僕は、スメールの近くまで行ってくるよ」

「……スメールの方に行ったのは確かです。私も同じ方向へ向かいます。途中までは一緒に行きましょう」

 

 二人は、慌ててスメールの方向に向かった。

 ……本来なら、フリーナは行くべきではないと、わかっていた。けれど、やはりジゼットがどうしても心配だった。ジゼットが酷い目にあっているかもしれないのに、ここで待っているなんて、罪悪感でできなかった。

 

 

 

 

 

「ジゼット、一体何処にいるんだい?」

 

 結局、スメールとの国境付近に来たが、ジゼットを見かけた、と言う情報は見当たらなかった。

 フリーナはスメールとフォンテーヌを繋ぐ船の上で、遠くに見える砂漠をぼんやりと見つめた。

 そして……偶然だろうか。それとも、わざとなのだろうか。フリーナが見ていた場所から、一瞬雷元素が爆発するような──そんなものが見えた。

 もしかして……と思い、フリーナはその地点を見つめる。そこは、幾度となく砂埃が立っており、間違いなく誰かが交戦していた。

 

「あれ、ジゼットじゃないか……?」

 

 雷元素の神の目を持っている人物と、神の目を持っていない人物が、戦っているようだ。そして、すぐに雷が鳴り止まないと言うことは、実力は同じくらいらしい。

 神の目持ちと張り合えそうな人物など、そこまでいない。

 

「ジゼット!」

 

 フリーナは、慌てて船の操縦士に、早急に砂漠の方へ向かうように、頼んだ。

 そして、船がジゼットの方へ近づいていくうちに、確信する。

 時々砂埃の間から見える、子供くらいの小柄な人影。槍を握っているようだった。あれは、間違いなくジゼットだ。

 

 フリーナは、船が陸に着いた途端、走り出す。小柄な変わった帽子を被った男と、ジゼットが交戦しているのが見えた。

 そして、ジゼットの姿を見た途端、フリーナは呆然とする。

 ……ジゼットは、ボロボロだった。顔の半分の陶器は、割られていて無骨な機械が丸見えになっていた。機械の部分も、幾つか銅線が飛び出して、ちぎれている。

 体の部分は服で見えないが、恐らく同じようにボロボロだった。

 

「やめてくれ!」

 

 フリーナは震える手足を何とか動かして、二人の間にたった。

 

「フリーナ……? ダメです。危ないですから、早く離れてください」

 

 ジゼットは、フリーナの前に、守るように両腕を広げて立った。けれど、フリーナは離れなかった。

 

「ぼ、僕は水神フォカロルス! この子……ジゼットは僕の護衛だ。攻撃するのはやめてもらおう!」

「俺はセノ。大マハマトラだ。人工生命体を作ることは、禁止されているから、スメールで指名手配されている。だから、その機械は教令院に連れて行かなくてはならない」

「……え、そ、そうなのかい……?」

 

 フリーナは、まさかジゼットが指名手配されているなんて思わず、たじろいだ。ジゼットは、フリーナを相変わらず守るように立っている。何も、ジゼットは言わなかった。

 

「で、でも、ジゼットは僕に保護される、と言う契約書にサインをしている。ジゼットはスメールのものではなく、フォンテーヌのものだ。だから、教令院に渡すことは、できない!」

「だが、ここはスメールだ。スメールの規則に従ってもらう」

 

 セノは一向に引く様子はない。そして、それはフリーナも同じだった。

 

「……ジゼットは、何も悪いことはしてないじゃないか! ただ、作られただけだ。中身も、人間と大差ない。どうして捕まらないとダメなんだい!?」

「フリーナ」

 

 ジゼットは、半分しかない顔で、小さく笑った。まるで、今にも泣きそうな笑みだった。

 

「もう、いいです。庇ってくれて、嬉しかったです。でも、もしフリーナも捕まったら大変です。だから、止めなくていいです。ありがとう、やっぱりフリーナは私の英雄です」

 

 ジゼットが、セノの方へ歩いていく。フリーナは、ジゼットの手を掴んで、それを止めた。

 

「だめだ……行かないで……」

 

 ジゼットは、フリーナの手をそっと握った。そして、またにこりと笑う。相変わらず、不器用な笑みだった。

 

「それなら、ひとつだけ最後に聞いてもいいですか」

「最後なんて、言わないでくれ……」

 

 フリーナは、泣きながら言うけれど、ジゼットは曖昧に笑うだけで、その答えは返さなかった。

 

「私はフリーナの英雄でしたか? ……英雄に、なれてましたか」

「──キミはとっくに、僕の英雄だ!」

 

 フリーナは、必死にそう叫んだ。ジゼットは、目を一瞬大きく開いて、それから安心するように笑った。

 

「よかった……」

 

 ジゼットは、小さくつぶやいた。そして、そのまま握っていたフリーナの手を離し、ふらふらとした足取りで、セノの方へ向かっていく。

 セノは、無表情に見えて、奥歯を噛み締めていた。セノは、責務を全うしなくてはならない。

 けれど、これは正しいのか、と言う考えがちらつく。今の教令院は、おかしい。セノは大マハマトラを辞めるか、迷っているところだったから、余計にそうだった。

 

「フリーナ、ありがとでした。きっとまた帰ってきます。だから、そんなに悲しい顔は、しないで。大丈夫ですから」

 

 ジゼットは、そんなことはないと分かりつつも、フリーナに安心させるために、嘘をついた。

 ジゼットは、セノと共にフリーナからどんどんと離れていく。

 フリーナは、遠ざかっていくジゼットを、ただ呆然と眺めていることしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アザール様、例の機械を大マハマトラのセノが、連れてきました」

「あぁ、その機械か。危険だから、こちらで処分しておく」

「はい、分かりました」

 

 

 

 




不穏なラストですが、流石に続きます!
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