あと、ルミが可哀想です
「カヨコ……ごめん別れよう。」
三週間ぶりに彼に会って、最初に吐かれたのはその言葉だった。
「は?」
私の口からはその一言だけが漏れ、それ以降の先生の言葉は全く耳に入って来なかった。
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おぼつかない足取りでフラフラとシャーレから出て、DUを彷徨った。私の足は勝手に動き、気づいたらどこか知らない路地裏にいた。私のパーカーはぐっしょり濡れていて、肌に張り付き、不快だ。前髪からは水滴がポタリポタリと落ちる。
「雨……降ってたんだ……」
その場を確認すれば、懐かしい。ここは、先生と捨て猫の世話をした場所だっけ?
あの時あったダンボールはもうない。確かあの子猫は誰かに拾われたんだっけ?
あの時ならきっと先生が後ろから傘をさしてくれたのだろう。だが、今は、傘をさしてくれる人はいない。誰一人として。
私の顔を水滴が伝うのを感じた。これは雨なのか、涙なのか。私は水滴を何滴も何滴も垂らしながらその場に立ち尽くした。
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私はシャーレのデスクに突っ伏していた。私は先刻カヨコに別れる旨を伝えた。別にカヨコを嫌いになった訳ではない。カヨコのことは今でも好きだ。ただ……
「先生、来たよ。」
その声が聞こえた瞬間、私は心の中で溜息をついた。三週間前、私のことを散々したレイプ魔が……
「先生最近食べてないでしょ。何か作ってあげるからちょっと待ってて。」
「あ、冷蔵庫の中何もないじゃん。ちょっと買ってくるね。」
「誰のせいで食えねえって思ってんだよ……」
「今なんて……?」
「誰のせいで食えねえかわかってんのか?」
私はルミに対して怒鳴るような形で言い放つ。
「お前が散々俺のこと犯した日からな!ほとんど食欲ねえんだよ!飯の匂いがしただけで吐きそうになる!お前のせいで彼女とも別れた!全部お前のせいだ!」
「先生……」
私はルミの事を突き飛ばした。ルミはそのまま勢いに負けて床に倒れ込む。
「全部……全部……お前のせいだ……お前のせいで……」
そのまま私はルミを押し倒すような形で腕を押さえ込む。
「先生……いいよ。好きなだけ私を殴っても。私の事好きにしてもいいよ。今日は可愛い下着つけて来てるから。」
その言葉を聞き、私はふっと我に帰った。私がまだルミとそうなる前に、私がまだちゃんと先生をしていた頃の記憶が少し呼び起こされたから。
私は身を起こし、そのままフラフラと歩き、ソファに座ってから言う。
「ルミ、ごめん。今日は頭に血が昇ってたみたいで。その、頭冷やしたいし、これ以上ルミに当たりたくないからさ、今日はもう帰ってくれない?」
私が言い終わるとルミはそっか……とだけ言ってシャーレから出ていった。
チラリと窓から外の景色を見る。
ルミが傘もささず棒立ちでこちらをじっと見ているのが見えた。
「先生失格だな……」
私は誰も居なくなったシャーレでそう呟いた。