双子に愛されている男 作:主義
2093年度の九校戦は色々と波乱があった。だけどその中でも一番観客を驚かせ沸かせたのはなんと言っても第四高校の快進撃だろう。今まで第四高校が九校戦に勝ったという歴史は存在しない。
それは今回も達成する事は出来なかったが例年の第四高校の結果を見れば今回の結果は良いものだろう。
では何でそんな事が行ったのかと言うとそれは一重に……一人の一年生の快進撃が故だろう。
一年生の部において出場した競技は全て優勝を掴んだ男。
その男の出ている種目を見ていたものは誰もが凄さ故に言葉を忘れてしまうほどにその男は凄かった。
そしてその男の快進撃が周りの者たちにも影響を与えたのだろう。そして最終的には良い結果に結びついたのであろう。
この年、第四高校は……歴代の九校戦の中で最高順位である第二位をつかみ取ったのである。
そしてその場に姉を見に来ていた瓜二つの双子はその少年に釘付けになってしまった。
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それから一年と半年以上が経った、2095年4月上旬。
僕は二木久遠。
二木家の次期当主として生を受けて、今まで生きてきた。次期当主という重圧を受けて育ったからか分からないが、ある程度のことはそつなくこなせるぐらいには強くなった。
それは僕が思っていたよりも強くしてくれたようで同世代の子たちと比べれば、僕は少し規格外の部類らしい。元々十師族に名を連ねている者なので弱いことはないけど。
でも、僕は目立つことはいやなんだ。それは二木家に生を受けてしまったので仕方ないと割り切ることもできるけど、それでも僕はなるべく目立たず生活をしたい。
それに僕は皆が期待してくれるような力は存在しないんだから。
そんなことを考えていると一人の女性の声で現実へと意識が戻される。
「聞いているんですか?」
目の前に座っている四十代の女性が声を張り上げるわけでもなく、静かに僕のことを見ている。
「聞いています。母上」
「それなら良いですが。それでさっきの話に戻りますが、一条家のご子息であり次期当主である一条将輝さんからお会いしたとの連絡を受けているので今月の末にこの屋敷でお会いする事になりましたから覚えておいてください。それと来月にでもあなたが当主になるのですからしっかりしてくださいね」
そしてすぐに去っていく。
そんな母上の背中を見ながら僕は…さっきの言葉に一つだけ違和感を覚えた。
「は、ははうえ!」
「なんですか?」
「聞き間違いだったら申し訳ないのですが、僕が当主になるとかそんな話をされていませんでしたか?」
「しましたよ。それがどうかしましたか?」
「い、いや、そんな話は聞いてませんよ!」
「今、言いました」
「…で、ですが、それだとさすがに説明不足では…」
「これ以上に話すことはありません」
それだけ言って母上は本当にどこかに行ってしまった。
取り残された僕の脳はさすがに混乱していた。
「次期当主…」
いずれは来ると思っていた。元々そのために育てられたわけだしね。でも、それはもうちょっと先の話でせめて学校を卒業するまでは母上が当主を勤めるものだと理解していた。
だけど、さっきの母上の話が本当だとしたら僕は五月にも『二木家』の当主として生きていかなければならない。当主になったからと言って大きく変わるのかは分からない。
学校を途中で中退するようなことはないとは思うけど、少し忙しくなったり、動きにくくなったりするのかも。そんなまだ見ぬ不安を考えるのだった。
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七草家の屋敷の一部屋で双子が話していた。
「次、久遠さんに会えるのはいつかな…」
「いつでしょうね…」
二人はこの場にいない存在のことを考えながら話している。
「ボクたちが生まれるのがあと一年でも早ければ久遠さんとたくさんお話とかできてたのかな」
「それはそうですね。そしたら第四高校に通って毎日久遠様の近くにいますね」
二人は乙女の顔をして、叶わぬ願いを口にする。
「お姉さまはいいですよね。私たちなんてお話する機会自体がほとんどない。お姉さまには共通の話題もありますし、同学年なので色々とお話する機会も多いです」
「ボクも同じこと思った。もっと早く生まれたかったなぁ~」
「早く生まれてたら…」
七草の双子と言えばとても有名だ。
そしてそんな二人が心酔するほどに想っているのが、二木久遠という男なのだ。
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