キングエンジン(魔改造)でキヴォトス闊歩 作:匿名ゴボウ
やっぱオールマイトっつったら筋肉っしょ
さて、またまた翌朝だ。
昨日はあの電話の後、今度こそ掛かってきたボスからの斡旋依頼をいつもよりヤケクソ気味に張り切って頑張った結果、なんと活動してから初めてファンレターというものを貰った。
今どき手紙なんて古風な…と思ったが、そもそも私は個人メールを持ち合わせていないから仕方ないのかとも思った。
どうやらファンレターの主はゲヘナの生徒らしく、丁寧ながらも少々言葉遣いの荒い語句が見受けられた。
簡潔に要約すれば、『あの時助けて貰った鶴です。ファンになりました。頑張ってください』との事だ。
正直いつの話か忘れた上に、ブラマにはゲヘナの生徒なんかは大勢居る。そしてそれ以上に助けた人がいる。
何はともあれ、こうして手紙でファンである事と感謝と激励を伝えられた為、中々やる気というものが湧き上がってくる心情である。
そのやる気を持って今日のシャーレの先生関連の仕事を頑張りたいところだが…やはり気が乗らないな。そもそも私はこんなに面倒事が嫌いな性格だっただろうか? Hmm…転生前は厄介ごとに首を突っ込むことが多かった記憶があるが、身体に精神が引っ張られているのか…?
…どうでも良いか。幾らやる気が無けれど、人は助けられる。やる気の有無は仕事の出来には反映し得ない。さて、そろそろ先生がやってくる時間だと思うが…。
「“おはようございます。貴方がオールライトさん…ですか?”」
「グッモーニン、シャーレの先生。いかにも、私がオールライトだ。今日はよろしく頼むぜ」
「“はい、よろしくお願いします。それにしても…ガタイが良いというか、凄い筋肉ですね?”」
「HAHA! 本当なら大きくしたいんだがね、遺伝子に恵まれなかったのか中々大きな筋肉にならないのだよ。これでも一般男性の数十倍はカロリー摂取はしているのだがね」
やはりオールマイトムーブをするならば外せない物が、筋肉であると私は思う。
故に私はオールマイトのような筋肉を目指し、筋トレや戦闘を優先的に熟していたのだが、幾らやっても幾ら喰っても筋肉や脂肪の肥大化は起きず、こういう機能を意識したシャープな筋肉になってしまう。
違う、違うのだ我が肉体よ。可動域が狭まっても良い、動きが鈍くなっても良い、ただオールマイトのような見た目の筋肉が欲しいのだ。
そうは言っても我が肉体は応えてくれない。だから私は地道に努力するのだ。
「それで、今日の依頼は護衛だけかな?」
「”はい。今から行く学校は砂漠にある上に、定期的な襲撃もあるらしいので、もし私が危険な目に遭う時は守って欲しいですね“」
「成程、それなら私の得意分野だな。期待していてくれ」
「”はい。お願いします“」
…なんか違和感というか…距離感があるな? 何故だ? 生徒相手には脚を舐め回す程仲が良いと覚えているんだが。
気に食わないな…と言っても私自身先生とそこまで仲良くしたい訳でもないし、別に何も言わなくても良いだろう。
歩き出した先生と、それに続く私。
初めは会話が無かったが、気まずい空気を払拭してくれようとしているのか、先生から話題を振ってくれた。
「”オールライトさんは、普段は何処でお仕事をしているんですか?“」
「ブラックマーケットだな。私はそこで所属している傭兵事務所から仕事を斡旋してもらっている」
「”ブラックマーケット…名前の響きからして、裏市場のような場所なのですか?“」
「概ねその認識で合っているな。製造ストップされた武器や兵器、危険な薬物、出所の不明な金や貴重品なんかが大量にある。とはいえそれらは生徒の手に渡る事は少ない。幾ら闇市場と言えど、治安維持部隊に目を付けられたくないから未成年厳禁の店はよくあるからな」
「”成程…因みに、どういう学園の生徒がいるとか分かります?”」
「大体はゲヘナだな。関係無い話だが、少なくとも一人のゲヘナの生徒が私のファンらしくてね。健気にファンレターを送ってくる可愛らしい子供だよ」
「”ファンレター? もしかしてアイドルのような仕事をしているんですか?“」
「いや、私のようなアイドルが居てたまるか。私の傭兵稼業は殆どが治安維持だ。それ故に守るものが多くなる。ファンレターは、その守った者からの贈り物だろう」
「“成程、立派な仕事をしていられるんですね”」
「君の教職だって生徒を導く立派な仕事だろうに。少なくとも、私のように救う事に対価を求める人間は、当たり前の人間であって尊敬される人間ではない。君のように、何も得ず、何も求めずとも子供達を救い導く存在こそ、聖人と呼ばれるべき存在だろう」
…ん? 返事がないな。
そう思って先生に目をやると、彼は少しむず痒そうに、複雑そうな表情で私を見ていた。
「“しょ、初対面で随分と褒めちぎるね…?”」
「言っとくがソッチの気はないぞ。それに私にだって選ぶ権利はある」
「“どういう意味かな? って違う。えーと…そうだ、出会って思ったけど、オールライトさんはどういう風に戦うんですか? 銃器の類は持っていないようですけど”」
「勿論この肉体さ」
そう言ってマッスルポーズを取る。
力を入れた隆起する力瘤に「“おぉ…”」と声を漏らす先生。
「先生はどうだか知らないが、私には異能がある。少なくとも小隊規模の相手なら瞬殺できるさ」
「“それは心強いですね。頼りにさせてもらいます“」
ふむ、どうやら今までのコミュニケーションで先生からの不信感を煽る要素は無かったようだな。ちょっと敬語外れ掛かってたし、普通に接していけば仲良くなれるタイプだな。
…いや、仲良くしたいわけでは無いんだがね?
_______________
その後暫く、話し合いながら先生と二人で件のアビドス高校へと向かっていく。
先生は自分の趣味や特技、仕事の大変さやこれから行くアビドスの簡単な概要などを話し、私は傭兵稼業の話に続けてどんな仕事があるか、どんな解決策を以て依頼をこなすのかを話した。
そうして話せば話すほど時間が経つのは早く、先生が言うにはあと数分歩けばアビドス高校が見えてくるらしい。
「そういえば定期で襲撃が来ると言っていたが、今はどうなんだ?」
「”生徒達からの連絡はありませんし、特に問題はなさそうですが…戦闘中により連絡不可能って可能性もありますので、直接行って見ないと分かりません“」
「そうか…少数なのに良く頑張る少女達だな」
「”まだ会って間もないけれど、自慢の生徒達ですよ“」
さて、ここで漸く大きな文明だった事が見え隠れする大きなビル群の廃墟の向こうに、一際大きな建物が見えてきた。
先生には見えているか分からないが、私の目には襲撃が起こっているように見える。
しかしここでそれを伝えれば、先生は多分絶対「”私の事は良いから早く生徒達を“」とか言い出しかねないので、それだと契約違反になる為私としてはあまりやりたくない。
生徒達には悪いが、あと少し耐えてもらうしかないな。
「少し急ぐか」
「“そうですね。勘ですが、少し嫌な予感が”」
先生としての直感か、私の案に頷く先生。
ゆったり目だった歩みは先生にとっての競歩に変わり、私はそれに普通に歩いて着いていく。
やがて先生の目から学校が見える時には、先生は最早走り出していた。
「“皆…!”」
「嫌な予感が当たったようだ。どうする? 先生。私ならば五秒でカタが付くが」
「“ではお願いします! 私の身はご心配無く! 弾丸なら凌げますので!”」
「オーケイ! では行くぞ! ___私が来たァ!!!」
すぐさまキングエンジンを始動。
鼓動のトルクが上がるにつれて上昇していく身体能力をふんだんに使い、私は超スピードでアビドスへとかっ飛んだ。
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彼の第一印象は、気さくな人、だろうか。
アビドスでの護衛を頼んだ彼は、どこかアメリカンな風貌をしていた。
言葉もどこか英語字幕を日本語訳にしたような感じだった。しかし会話をしてみると、流暢な日本語で、敬語でなくとも綺麗な日本語を扱っていた為、恐らくハーフの日本人なのだろう。
少なくとも、悪い大人では無かった。
普段治安維持の依頼をしているだけあって、弱い者に合わせるのが得意なようで、歩みの遅い私の速度に合わせてくれたり、砂に脚を取られて転けそうになると肩や腕を掴んで支えてくれた。
気さくで、弱い者を助けて、治安維持を仕事としていて…そうだね、彼はヒーローのような人物だ。
例えるならスーパーマンかな? 力量までは分からないけど、私にはそう思えた。
そんなヒーローな彼は、私のお願いを聞いて、とてつもないスピードでジャンプしてアビドス高校へと向かっていった。
風に煽られて舞う砂埃を仰いで払いながら、私も急いで後を追う。
数分走って漸く校門まで辿り着くと、既に事態は収束していた。
「“皆! 大丈夫!?”」
「あ、先生。私達は大丈夫」
「めっちゃ強いお兄さんが腹パン一発で全員のしちゃったからねー」
「え? ホシノ先輩あれ見えたの?」
「んーん? だってくっきり拳の形がお腹に残ってるからね」
ホシノが指差す倒れ伏したヘルメット団の腹部には、クッキリとした拳の跡。
衣服にも遺るその一撃は確実に意識を刈り取っているようで、気絶したフリをしているヘルメット団はいないようだ。
「HAHA! 遅かったな先生! 言った通り四秒でカタが着いてしまった!」
「“ありがとうございます。オールライト”」
「気にするなよ先生! 褒めるなら今まで耐えていた生徒達を褒めるべきだ!」
「ん、この人分かってる」
「こーらシロコちゃん。人に指を差してはダメですよー」
「構わないさ。元より人に後ろ指差されるような仕事をしてるからね! ここじゃ当たり前だろう?」
「後ろ指差される仕事って…どんな仕事してるのよ」
「決まってるだろう? ___ヒーローさ」
親指で自分を指差すその姿は、とても自信に満ち溢れている。
一瞬だけ、ヒーローらしい黄色いマントが見えたような気がした。
今私は、その在り方に、酷く憧れを持った。
周りからバカにされようと、人を救うという一本の強い芯だけで極限にまで達したその力。そしてそれの使い方。
ただ導くだけの私とは、全く違う生き方。
まさしく、彼はヒーローだ。
敬語の先生って物凄く違和感あるのって私だけなのかね?
んで申し訳程度の無双要素と、小さじ1/4程度の先生視点ね。
やっぱヒーローっつったら黄色いマントっていう固定概念から生まれた幻覚はさぞカッコよく見えただろうね。私も見てえよ(豹変)
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