キングエンジン(魔改造)でキヴォトス闊歩 作:匿名ゴボウ
さて、私が先生と共にアビドスへ来て、約一週間が経過した。
今思ったが、いくら最優先で依頼を受けると言ったとは言え、一週間ぶっ続けで雇われるとは思わなかった。なんか訳わからない内に先生の友達ポジに座っちゃったし、そろそろ別の依頼を受けないと私の生活費が稼げないんだが?
その理由もあるし、何より万が一本気を出した時の事を考えると、一度拠点に戻って少なからずブラマカスタムの持ち出し用冷却機を持ってきた方が良い。キングエンジンは体温の上昇はすぐに行えるが、戦闘後の排熱はかなり時間を掛けないと終わらないのだ。
そういえば先生とアビドス高の生徒達は近い内にブラマに赴く用事が出来たと言っていたな。ならばその時に少し席を外し、一旦拠点で持ち物の再整理を行った方がいいかもしれない。
そうだな、そうしよう………。
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___prrrrr!
「ん?」
先生と生徒達と共にブラマへ来た後、私は皆に断りを入れて一旦拠点へと帰っていた。
冷却室の奥の奥に何故か溶けたスクラップに埋もれた携帯用の冷却機(約50kg)を少し時間を掛けて引っ張り上げ、一応念のため壊れていないか全ての機能を一通りテストしていた時に、私のデスクから一本の電話が入った。
恐らくボスではない。何故なら既にボスには期間不明の依頼を受けると言ってあるし、終われば連絡を入れると約束していたからだ。
一応周囲にもその事は触れ回って欲しいと頼んだが、それを知らない常連の依頼者が電話をかけてきたのだろうか?
申し訳無いが、既に別の依頼を受けている為依頼を受けられない事を伝えねば。
そう思って受話器を取った時だ。
『た、助けてくれ!!』
「why!? どうした!」
『か、カイザー銀行ブラックマーケット支部に強盗襲撃! 人数は五人! 全て何処かの生グアァ!』
『動かないでって言ったでしょ! どうしようせんぱっ、一号! 救援呼ばれちゃった!』
『もう終わったからてっしゅー。急いで逃げるよぉー』
はっ、え? 今の黒見少女と小鳥遊少女の声じゃ…。
ご、五人って言ってたよな? ま、まさかアビドス高の生徒全員で銀行強盗やらかしてるのか!? 先生はどうした!? まさか私がいない間に何かあったのか!?
こうしてはいられん! 今すぐ行かなければ!
テスト途中だった冷却機を引っ掴み、空いた手でドアを蹴破るが如く開けて外へ飛び出す。
すぐさまキングエンジンを始動させ、私はすぐさまビルの屋根経由で銀行へと向かっていった。
辿り着くと、そこにはマーケットガードの集団と、野次馬。そして荒らされた銀行の跡。
あぁ…せ、成功しちゃったのか。あの子達。
トルクを響き渡らせながら銀行の近くへと着地すると、マーケットガード達がこちらを向いた。
「遅いぞオールライト! 何をしていた!」
「すまない。別の依頼でブラックマーケットから出ていたんだが、つい先程依頼主に断りを入れて拠点へと戻っていたんだ。そしてそんな時に救援の電話がね。参ったな、まさかカイザー銀行に強盗を仕掛ける輩が居たとは」
すいません、ウチの依頼主の生徒さん達なんです。
「全くだ! 追わせていた別働隊は全滅したとの報告があった上に、犯人は『覆面水着団』とかいうふざけた名前の五人グループだと! あんな輩に我々が出し抜かれたとあっては我々のメンツが保たれん!」
すいません、ふざけた名前の五人グループの生徒さん達は我々の仲間なんです。
「それで、被害は?」
「現金約一億円相当と、未だに処理されていなかった何らかの書類。それらをたった五分の間で奪って行ったそうだ」
「成程…恐らく本来の目的はその帳簿かな? 金はついでか、それとも次回の為の資金か。何にしろ、また来る可能性の事も考えて、ここは勿論、他の銀行の警備も厳しくした方がいいね」
「そうだな。…あまり我々が言うことでは無いが、一週間だ」
…うん? 一週間?
首を傾げる私に、言葉を続けるマーケットガードの部隊長。
「一週間お前が不在のブラックマーケットは、かなり荒れた。住人は荒くれ者に脅かされ、数々の店舗には小悪党の寄せ集めの強盗が多発。挙句の果てには我々マーケットガードを襲撃する輩まで出始めた。どれもこれも、お前がブラックマーケットを空けたことで起こった事件だろう」
「そんなことになっていたのか!?」
一週間空けただけなのに!?
「あぁ。それだけお前は悪にとっての恐怖そのものであったということだ。それと同時に、お前は我々やここの住民にとっての希望そのものだった。誰かが言っていた、治安維持に貢献し、マーケットガードと共に住人を守るお前のことを、『平和の象徴』だと」
「!」
「情けない話だが、この地を守るには、我々だけでは些か力不足だ。不正や横領の噂の多い我々では、真の意味でこの住民の方々を安心させる事はできない。だからこそお前の力が必要だ」
そう言った部隊長は踵を返して背を向ける。
「行け、オールライト。今はこちらではなく、依頼を済ませるべきだ。元々この地を守るのは我々の仕事。お前の力を借りずとも、やってみせるさ」
「…あぁ、分かった。出来るだけ早く終わらせるよ。それまで頑張っていてくれ」
「…当たり前だ」
歩き去っていく部隊長。彼とはブラマでの事件を鎮圧する時に何回か共に戦った気がする。最初に会った時はまだ下っ端だったのに、私が活動開始して短期間で部隊長に登り詰めた正真正銘の天才だ。
さて、私も戻ろう。恐らくブラマの外付近にいる筈だし、先生の護衛の続きをせねば。
…あと滅茶苦茶話を聞きたいし。
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簡単に説明するなら、カイザーローンの不正探しの行動だったらしい。
現に奪った書類にはカイザーローンの名義でヘルメット団に対する援助金の他、何か理由をつけて借金以外への支払いを行ったりと、色々と真っ黒な文章が出てきたとのことだ。
しかし証拠探しにしては少々…というか滅茶苦茶はっちゃけ過ぎでは? とも思ったが、まだ私の考えは甘かったらしく、なんと通りすがりのトリニティ生をリーダーに仕立て上げたというのだ。
流石に「おいコラ!?」と突っ込んでしまったが、そのすぐ後に「ブラックマーケットで通りすがりのトリニティ生…???」と訳の分からん文に頭がフリーズしたりと、色々と疲れたことをここに記そう。
本音を言えば説教したいし、何より止めなかった先生にもっと説教してやりたい。しかし顛末を聞くと情状酌量の余地も、私の中の良心が「これは仕方ない」と訴えかけてくるのもあり、口を出すに出せない状況なのだ。
…しかし、気になることといえば一つ。
先程、小鳥遊少女が誰にも何も言わずにフェードアウトして学校を出たかと思いきや、小一時間経過した後に普通に戻ってきたのだが、何か浮かない表情をしていたのが気掛かりだ。
表情は見た感じ普通だが、これはこの世界で人を救い続けた私にしか分からないような表情の変化…そうだな、出会った時もそうだったが、貼り付けた笑みに覆われたその『助けて欲しい』という顔が見え隠れしていた。
だがどうする? 正直、話を聞いて助けようにも小鳥遊少女に「貴方に関係ないことだから」と一蹴されてしまう未来しか見えない。
こんな時、オールマイトやあの
___考えるまでも無かったか。
今はお昼時だな、と呑気なことを考えながら、私はあるものを片手に動き出した。
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アビドス高校、アビドス廃校対策委員会の教室。
そこではアビドスの皆全員が、それぞれ自由に過ごしていた。
その中で、私は昨日の事を思い出していた。
『こんにちは、暁のホル…いえ、小鳥遊ホシノさん』
『貴方の身柄を我々に引き渡す対価として、アビドス高校の負債を半分にしてあげましょう』
『お返事はお早めにお願いしますよ。クックック…』
顔を思い出しただけで苛立ちが募る。それを眠りの表情で覆い隠し、その上でクジラの抱き枕で顔を隠す。
この感情は誰にも見せては行けない。誰にも悟られては行けないと思っているから。
寝ようにも眠れない時間が続く。しかしそろそろ小腹が空いてきたので、後輩達にお昼にしようかと今起きた体で提案しようとした瞬間。
コンコンコン。
「? どうぞー」
「私が普通に来た!」
律儀に返事を待ってから扉を開けたオールライトが、何故か独特な姿勢で立っていた。
近くに先生はおらず、どうやら彼一人で来たようだ。
「あれ、先生は?」
「先生なら職員室でまだ書類に埋もれてるね。私も手伝おうとはしているんだが、先生から依頼以外の仕事はしなくても良いと言われてな…」
「ん。じゃあ何で来たの? いや、来ちゃダメって事じゃないけど」
「それはだね…小鳥遊少女!」
「うへっ? なに?」
急に呼び掛けられて少し驚いた。
「お弁当。一緒食べよ?」
「いや乙女か!」
セリカちゃんのツッコミが、教室に響いた。
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アビドス屋上。
そこで私と小鳥遊少女が、二人並んで座って弁当を食べていた。
「…」
「…」
食事の際は黙って食べる主義なのか、はたまた気まずくて喋れないのか、少なくとも後者である私は今大変気軽な気持ちで誘ってしまった事を後悔しております。
まさかこんなに重苦しい空気になるとは思わなかったぜ。ただ打算ありきで誘っただけで何もしてないのにこんなに空気が淀む事あるか?
そんな私の嘆き虚しく時間は進み、気持ちゆっくり食べていたはずの弁当は全て平らげてしまった。見れば小鳥遊少女も同時に食べ終えていたようだ。
「ふぅ、お腹いっぱいだ〜」
「オールライト特製弁当のお味は如何だったかな?」
「美味しかったよ〜。…え? オールライトが作ったの?」
「HAHA! 似合わないかい? 少しでも食費を抑える為に自炊は欠かしてないのさ」
「うへぇ、なんか負けた気分…それで、何か話があったんじゃないの〜?」
「おっとバレていたのか。まぁ少々強引なお誘いだったからな、少し君と二人でお話ししたかったのさ」
「お話し、ねぇ。で、何?」
む、少し雰囲気が鋭くなった。早く話さないと問答無用で帰られそうだ。
「単刀直入に聞くぜ? 小鳥遊少女。君は…ここを、アビドスを出ていくつもりかい?」
「ッ!」
思わずと言った感じで小鳥遊少女が私を睨む。
「おっと! そう睨まないでくれ、悪意のある発言ではないんだ。それで…話を聞かせてくれるかい?」
「…前にも言ったけど、貴方には関係ない話だよ。これは私個人の話…だから気にしないで?」
「そうか、なら仕方ない…とはいかないのが私でね。小鳥遊少女、君が何に苦しみ、何を恐れているのかは私には分からない。しかし、私は絶対君の助けになれると思うんだ」
「…何も知らないくせにそんなこと言えるの?」
「そうだ。誰しも人を助ける時、最初は何も知らないものだ。だからこそ、助けを求める者に寄り添う。話を聞き、共感し、同情し、そして助ける。お節介はヒーローの本質だからね♪」
私はオールマイトのように、そしてその師匠のように、口の端を指で押し上げる。
「笑えていない者を心の底から笑えるようにするのが、私の仕事さ」
「___だとしても、貴方には関係ない。私は苦しんでいないし、今だって笑えるの…これ以上、私に関わらないで!」
「ならば! どうして君は、『助けを求める顔』をしているんだい?」
無理をしなくても良いんだ。
大きな借金を抱えた学校の先輩として、最上級生として、後輩達に心配させたくない気持ちは大いにわかる。
しかし、君は子供なのだ。君は笑うべきなんだ。苦しめられるべき人間ではないんだ。
「ッ___放っておいてください!」
弾かれたように、小鳥遊少女は弁当の空を放り捨ててその場を走り去った。
包が解けて箱が散乱して、辺りを散らかす。
私はそれを拾い集めながら、もう一度決意する。
「放っておかないさ。私はヒーローだ」
はい。何かと理由を付けてオールライトさんにはブラックマーケット編では退場していただきました。何も知らないところで突然仲間が銀行強盗してびっくりだね(笑)
ブラックマーケットの住民にとって治安維持活動を行っていたオールライトの存在はとても大きいです。数値化すると、治安最悪だった犯罪率200%のブラックマーケットが、オールライトの活躍により30%にまで抑えられた為、ブラックマーケットの住民からしたらオールライトはまさしく『平和の象徴』なんですね。
奇しくも憧れと同じ異名を持ったオールライト。しかし本人は今の今まで知らなかったという。
さて、私的にここからが本番ですね。アビドス黒服初登場からの場面は、ぶっちゃけ一切のイメージが湧いておりません。だからここはオールマイトムーヴパワーでゴリ押ししたいと思います。それ以外やってないだろって? HAHA! Texas SMASH!
個人的にお弁当誘うオールマイト入れれて満足してしまった自分がいる…。あれってやっぱり原作でも自炊して作ったやつなんですかね? 図体のデカいオールマイトがキッチンでチマチマと包丁で野菜切ってるの想像すると萌えるね(異端)
ホシおじは救済します(デデドン!)
『助けを求める顔』を出したかった。あとお節介はヒーローの本質ってのも文に入れたかったし、入れる予定だったヒロアカのシーンを落とし込めて満足でございます。
※日間ランキング7位を確認しました。皆様方、誠にありがとうございます。マジでなんでこんな事になってるのか分かんねえ。