あの日、私は無罪になった
私は幼なじみの親友を刺した。きっかけは覚えていない
親友はナイフを使って私を刺そうとしたのだが、失敗した。その後、彼女と初めての大喧嘩をした
気が付けば周りの人の声が聞こえており、それから親友の死を伝えられたのは覚えている
目撃者が多すぎたため、私は無罪となってしまった
罪人には、罰を受ける義務がある。人を殺した私は間違いなく罪人だ。親友は、人として扱われなかったのか?
私が罰を受ける事が出来ないと親友は人として扱われない。でも、親友を殺した罪を咎めてくれる人はこの世もういない。それならば、簡単だよね?
自殺する時に使うのかは知らないが、買ってきたスカートが広がる死装束に身を包む
そうして私は首にロープをかけ、台を蹴った
◇ ◆ ◇
気が付くと、目の前には1本の道が出来ていた。視界は悪く、嫌な匂いもする。言葉を発することも出来ないし、多分合っている。とりあえず、すすむか…早く罰を受けないとだし
少し進んでいくと、明るくなってくる。まるで祭りの屋台が並んでいるかのような、縦に長い明るさだ
もう少し進んで気がついた。本当に屋台が並んでいるのだ。なんで?
お金を確認すると、かなりの額を持っている。地獄では生前稼いだ金ではなく、生前他者が自分のために使ったお金の合計が手元に入るのだそうだ。親友は、私にたくさん使っていてくれていたらしい
今から罰を受けに行くというのに屋台で遊ぼうなどという発想になるような化け物では無いので、スルーするけど
何も考えずにただただ歩き続ける。どれくらいの時間前に進んだのかは分からないが、河原が見えてきた
そこには彼岸花が咲いており、しばらく彼岸花を眺めていた。どうにもこの不吉でありながらの美しさが私は好きなのだと思う
「
ㅤそっちの呼び方かぁ……
急に聞こえてきた声に対して「合ってます」と応えようとしたが、声が出せないのを忘れていた
「じゃあ、着いて来て。船酔いとか大丈夫?」
声をかけて来た方を見る。赤髪、赤眼で紫に近い青と白色の服やスカートを履いている
手にオール、背中にかなり大きな大鎌を持っており、あとついでにとは言えないくらいに胸がデカい
死神ってほんとにいたんだなぁ
木製の船に案内される
「あたいは小野塚小町。死神でまぁみての通り三途の川渡しだよ」
私が話せなくても多分伝わってる。死神の力なのだかな?
あと、三途の川って鬼が運ぶものだと思ってたけど、死神がやるのか
持ってるお金を全て渡す
「あたいは自殺を軽蔑してる身だけど、あんたには何があったんだい?しばらく一緒にいるんだ、少し聞かせてくれないかい?」
まぁ、自殺など軽蔑されて当然だろう。それを正当化する行為も。私の命と親友の名誉を比べて命を捨てたと聞くと、軽蔑されるのは間違いない
それならば、「罰を受けるためです」と答えるのが普通だろう
「ほう?」
オールを持った小町さんの手が止まる。普通の反応だろう、私だって同じ反応をするかもしれない
軽く、話した。小町さんも何も言わずに聞いてくれた。話が終わって少しの間を空け
「地獄に行きたけりゃ、自ら死を選ぶのは間違ってないさ。多分、閻魔大王も黒だと言うだろうねぇ」
それは良かった…安心した
「でも、2ついいか?」
2秒ほど間が空く
「1つ、あんたがこれから裁かれるのは友を殺めた罪ではなく、己を殺めた罪だ。そこの所、分かっているんだろね?」
…それくらいは分かってはいる。でも、罪には他の罪と強固な鎖で繋がれる性質があり、今までバレていなかった犯罪も、たった1つの罪がバレた瞬間に余罪という形で出てくる。その溢れた余罪の中にグレーゾーンな物が混じってたとしても、纏めて黒になる事が多い
罪は罪と繋がる。パズルのようにピッタリではなくても、同じ紙に並べて記録される程度には
「なるほどねぇ。裁かれるならオマケでもいいのか」
「じゃあ、2つ目。地獄にいるあたいが言うのはアレだけど、罪への解決方法は何も罰される事だけじゃない。
償い。その大切さは勿論知ってる
被害者や被害者の遺族に対して謝罪の意を込めてするのもだ。勘違いされてるみたいだし、本音を言うべきかな?
人を殺したら当然罪人だけど、私は罪人として裁かれなかった。私が殺した親友は、人間として扱われていない。だからこそ私は罰を受けるべきである。罰を受けないと親友は人間ではない何かのままになってしまう
「…なるほどねぇ……」
理由は伝わりはしたのだろう
しばらく、おしゃべり(?)が続いた
「そろそろ目的地だ。これから頑張りな」
大きく、立派な建物が見える。閻魔殿という所だろう
船が止まってから、私は降りた
ありがとうございました。と、心の中で言う
「いいってことよ。こちらこそ面白い話を聞けて楽しかったよ」
◇ ◆ ◇
「何かに執着する者ほど、怨霊になりやすいとは言うけど……」
河原で黄泉を見つけた時の事を思い出す
黄泉の魂は、伝えられていた見た目と違っていた。わざわざ確認が必要となる程度には
「まさか、あたいと会う前から怨霊になるような者がいるとは…世界も広いねぇ」
自殺する者の九割九部はただの愚者だ。何があっても自殺はしてはいけないし、正当化もされない
しかし黄泉にとっては罰を受ける、死ぬ前から願い続けた事だ。そのためだけに愚者に成り下がった事だ。逆に、怨霊にならない方がおかしいまであるのかもしれない
「面白い話も聞けた事だし、しばらく休憩用の秘密基地にでも行くかね」
そうして、小町は友人のもとへ行くのだった