「…そろそろ解放してくれない?」
未だ縛られてる両手両足。古い縄なのに力を加えても千切れないし…もう昼だよ?長いよ?
白いスカートで長時間階段に座るの嫌なんだけど……
「…まぁいいでしょう、ただし余計な事したら……」「やはり全ては暴力、いい世の中だね!」
「……」「あ、ちょっと待ってやめ…ひゃん!」
◇ ◆ ◇
「…さっきからなんで服屋ばっかり見てるのよ……」
時は遡って数時間前、服屋から出てきた魔理沙に対して霊夢がそう言った
「なんでって、服を見るためだが?」
「あんたそういうの興味ないでしょ」
霊夢も魔理沙もともに服は霖之助が作ったものだ
「てか、神霊が自由に走り回ってる可能性があるんだろ。お前はそっち行けよ」
「あんなの、探すだけ無駄よ。様子見以外選択肢は無いわ」
「どうせサボりたいだけだろ……」
依頼主、御仏 公鮮の家内にはあの世に関わる神霊の儀式の準備がされていた
失踪と関連付けるとすると、当然神霊が関わってきたものだと考えるのが自然だろう
最悪の場合、その神霊が人里に放たれてる可能性もある。というかその可能性が大きい
「なんで服なんか見てるのよ……」
「黄泉の服、本人曰く死装束だっただろ?普通あの手の服の腰部分ってフレアスカートじゃねーだろ。そんで、あれのセットを売ってる店をさがしているんだ」
「確かに死装束は基本広がらない物を使われる事が多いけど…見つけて何になるの?」
黄泉の履いてるスカートは広がるタイプの物だ。基本おしゃれとして使われるもので、冠婚葬祭に関わる時は使われない
「まぁ、やっぱり御仏 鬼灯って名前が気になってな。鬼灯の花言葉には『偽り』『誤魔化し』ってのがあるんだが、これを意識して名付けしたなら偽名の可能性が高まるわけだ」
「こじつけじゃない?さすがに」「まぁまぁ聞いとけって」
こほんっ、と咳払いする
「苗字の
本当に偽名なら、魔理沙の説は通るかもしれない。いくらこじつけであっても、本来調査というものは疑う所から始めるものであるため、考え方自体は何も間違っていないのだ
「…偽名を証明したいなら服屋なんかまわらずに役所で調べた方が早そうなんだけど……」
「まっ、まぁそれはそうとして黄泉って服一着しか持ってないだろ?買ってやりたいなーって!子供には優しくだしな!」
「昨日、酒飲ませて気絶させてた大人が何を言ってるのかしら?」
魔理沙は黙り込んだ
「とりあえず、霊夢は役所に行ってくれ。私は服を探す!見つけたら過去の購入者を調べればいいだけだからな」
「分かったわ、そういえばあの子の服についてなんだけど」「なんだ?」
霊夢が微妙に言いずらそうにしている
「全身白にフレアスカート。あれ、死装束というより神に向けた生贄用の衣装の方がしっくりくるのよね」
「……確かにな」
◇ ◆ ◇
霊夢を見送った後、魔理沙は考え事を始める
(生贄か…追魂体質の事を考えるとそのために育てられた可能性もあるのか……)
同一人物説が真として、黄泉の最も異常な点である特異体質についてだ
(魂を追いかける体質の人間に神霊の魂を宿らせた場合どうなるんだ?肉体の主導権はしっかり神霊に移るのか?)
専門職でも専門家でも無い魔理沙には答えは分からない。いや、前例が無い事もふまえると専門家でも分からないだろう
考えを巡らせてるうちに次の店に到着した
「あれ?ここって……」
適当な路地を通って建物の後ろの家を確認する
「御仏の家の裏かよ、なんで最初に来なかった……」
先日来て話を聞き回った場所での発見。灯台もと暗しとはこういう状況の事を言うのだろう
無言で店に入る
「…なんか、拍子抜けだなぁ……」
入ってすぐに見つかった。白の和服と同じく白のフレアスカートのセットが
黄泉は服に帯を着けてないのだが、それが気になってスカートを見ると腰部分にホックがついている
「ちょっといいか?」
店員に聞く
「この服、最近御仏って人に売ったりしたか?」
「はい、しましたが…どうかされました?」
(よっしゃぁぁぁぁぁぁ!)
心の中でガッツポーズする魔理沙
「最近仕事で家にいない御仏から頼まれて買いに来たんだが、なんかいやーな感じがしてな。念の為ちょっと詳しく知っとこうかと思って」
自然にそれっぽい嘘を並べる魔理沙
嘘や隠し事のために必要の無い余計な言葉を並べるのは人によっては違和感を持たれるから気をつけよう
「はぁ、まぁいいですけど…御仏さんの買った物は店長が昔作ったまま売れてなかった物なのですが、まぁご存知の通り着る場所が無いんですよ。だから売れない前提で高くして放置していたのですが、二週間前にそれが売れて店長ははしゃいでましたね。あなたが持ってるそれは調子に乗って店長が作った物です」
安い水を高そうな瓶に入れて、そういう味を理解出来る特定の人物に対して売りつける。下手に安くするよりも価値を臭わせて高くした方が売れる例はそれなりにある
(二週間前か…鬼灯が篭もり始めた時期と同じか)
「ありがとな、まぁ御仏にとっては価値のある物だったってことか」
「そうなりますね」
「支払いは御仏のツケにしといてくれ」
「分かりました、ありがとうございました」
そうして貴重な情報と黄泉の着替えを用意出来た魔理沙は満足げに歩いていった
◇ ◆ ◇
「……という訳だ、服屋まわるのが実際に正解だったとは!私を天才と崇めてもいいんだぜ?」
「あんた、サラッと盗むわね…少し感心したわ……いくらくらいしたの?」
「200円☆」「…大金ね……」
現代の価値でだいたい30万円くらいだ
「そっちの方はどうだったんだ?」
「御仏 公鮮という名前は見つからなかったわ。私が発見出来てないだけか偽名なのか」「十分だな!」
「んじゃあ、残りの疑問をまとめるか。ここからは黄泉と鬼灯が同一人物であるていで進める」
「死因・行方不明・追魂体質・タイミング・服・偽名。まぁ状況証拠としては十分ね」
現在、黄泉の縄が解かれる程度の時間。二人は満足気に帰っていった