「どうして、こうなったの……」
閻魔大王は確かに「黒」だと言い、私に罰を用意してくれた。だけどその直後に事態が変わった
「私は…死んだんじゃないの……」
自然に流れる涙が止まらない。今、私の中で最も邪魔な存在となった
特異体質。初の事例だそうで、まだ名前はない
本来は肉体に魂がくっつくらしいけど、私の体質はその逆の性質を持ツ。
死んだ私は霊魂となって地獄にいたのだが、今はもう霊魂ではなく…肉体を持ってこの地に足をつけている
「地獄でも…裁いてもらえないなんて……」
地獄にある施設は生きてる人間ではなく、死んだ人間の霊魂に対しての物しかない。つまり、私に罰を与える物が無いのだ
『生きた人間がいていい場所じゃない、地上に返ってもらおう』っと、そんな感じの事を言われた。地上まで送ってくれる人を派遣したらしいから、今はただ待ってるだけだ
せっかくやってきた地獄でも、罰を受ける事が出来なかった。これでは、親友が…
「気持ちの整理はついたかい?」
聞き覚えのある声が聞こえて、思考が止まった
「……行きます」
送ってくれる人というのは、小町さんのことなのだろう
「あのまま知り合いの家に行こうとしたら、あたいの管轄じゃないのにまさか呼び出しとはねぇ。……あんたも大変だったんじゃない?」
「はい……」
下を見ていた顔を前に向け、目が合う
私の顔を見た小町さんの表情が変わり、手に持った大鎌を振るったかと思うと、その場から消えていた
30秒もしないうちに帰ってきた小町さんは今とってきたであろう手鏡を私に渡す
とりあえず自分の顔を覗き込む
「え……?」
鏡に写っていたのは、桃髪で桃目。アクセサリーなどは着けず、ただただ真っ直ぐ伸ばした髪のいつもの私だと思っていたが、違った
「目が…紫?」
右目が薄い紫色になっていたのだ。桃色に近い紫色。だいたい葵色か藤色あたりで、それこそ目の色が少し変わった程度。当然私はもともとオッドアイではないから確実に変化している
「十中八九怨霊によるものさ」
「……?すみません分かりません」
怨霊の影響を受けたのか、私が怨霊になっていたのか。この一言からは理解出来なかったが、後者は考えにくい。私は誰かを恨んだ覚えはないのだから
「怨霊というのは人を怨んだ霊ではなく、何かに執着しすぎた霊のことさ。怨みも1種の執着だから怨霊になる訳だけど、そんな事はどうでもいい。つまりあんたは怨霊になってたって事だ」
「私が?」
罰に執着していた事に関しては心当たりがある。が、納得出来ない
「話の続きは歩きながらだ。落ち着いて聞いて欲しいんだけど、無理があるよねぇ」
裁かれなかった事、目の色が変わった事、怨霊の事。この短時間でショックを受ける事が固まっているが、いったん話を聞こう
「聞きます……」
「それじゃあ、まず霊魂について。霊魂とは一言で言えば魂なんだけど、その性質の1つに形状を変化させる力がある。輪廻転生だったり、神霊化だったり。その中の1つに怨霊化、今あんたが置かれてる状況だねぇ」
神霊化するのが霊魂の性質なら、いまので1つだけ心当たりが出来た
「質問いいですか?」
「思ったより早い質問だねぇ」
「今の状況は、私の霊魂が怨霊化してる中で完全な怨霊になってしまうのを防ぐ。または遅らせる事だと解釈しています」
「……少し勘違いしてるみたいだけど、その修正は後でするとして、とりあえず今は質問の続きをどうぞ」
「
怨霊から変化出来る先に神があるのだとしたら、目指さない理由はない
「…いや、最終段階はそれでも、今は違うんだよねぇ」
あ、違うのか。じゃあ何だろう
「そもそもの話、あんたはすでに完全な怨霊さ」
そういえば小町さんは『怨霊になってた』と言ってる。何故私は言葉をそのまま受け取らなかったのだろうか?現実逃避してただけなのか、変化した目の色を見て誤解していたのか
「本題は魂ではなく、体。魂にくっつく体質のせいなのか、体が魂に影響を受けて汚染され初めている」
「汚染が進むとどうなるんですか?」
少し間が空く
「人間の体に持ち主の魂が怨霊として帰ってくる事なんて、前例が無いから何も言えない。それでも、怨霊は毒だからねぇ」
心霊現象などでその手の存在に関わった者が不幸になる。というのはよくある話なので、『毒』というのは間違ってないだろう
「怨霊はその溢れんばかりの欲で人を襲ったりする。欲の種類でも変わったりするけど有毒な物質をばら撒き、長いこと放置されてたらその怨霊の毒性は増すばかり。虫で例えるならカメムシみたいなものさ」
「それは…嫌ですね」
自分がカメムシになるのは、まぁ嫌だ