生きる怨霊の地上生活   作:にけth

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立場という名の枷

「「「……」」」

 

 内容は聞こえなかったけどなんか話してたのに、私が入った瞬間にみんな黙った。話す子も黙る美少女だったかな?

 

「何の話してたの?」

「い、いやぁ。巫女になる前の霊夢が今とは違ってツンツンせず丸くて可愛かったなーって話だな!」「ちょ、あんた…」「……付き合い長いんだね」

 

 そういえば博麗の巫女ってどういう基準で決まってるんだろう

 

「ところでその服、似合ってるわね」

「いいでしょ!ちょっと肩がスースーするけど、買ってくれた魔理沙に感謝だね!」

 

 肩出しってそういうファッションなのかな?和服でも問題なく繋がって動けるあたり、作った人凄いね

 

「そういえば華扇、さっきの試作スペル。ちゃんと立体になるように直したよー」

「良かったわ。あのままだと上下に動くだけで解決してたからね」

 

 世界が平面なら問題なかったんだ!何故世界は立体なんだ!

 

「やっぱりスペルだったのか、ついでに名前とかあるのか?」

「まだ決まってないねー、イマイチ二字熟語の法則がよく分からなくて」

 

 霊符・恋府・呪符・包符かと思いきや恋心・想起。挙句の果てには二字熟語無しのブレイジングスター

 よく分かんない

 

「法則なんて無いわよ。あの宣言は相手に何をするのか伝わればいいだけだからね」

「そうなの?」

 

 なーんだ、じゃあ考える必要ないじゃん

 よくよく考えればさとりの「想起」は思い出させる事を表してるんだろうし、本当に伝えるだけの名前なのか

 

「ただし、ラストスペルは別よ。あれには前の二字を付けないの」

「あれ?って事は魔理沙、昨日かなり追い詰められ…むぐっ!」「ちょーっと黙ろうなー」

 

 まぁ、ラストスペルはあんまり関係ないだろう

 

「むが、むまべば…」

 

 上手く喋れなかったので、口を覆ってた魔理沙の手をどかす

 

「なら、名前決まったよ。怨霊『六道からの脱出』ってのはどうかな?」

「……天道を志す仙人の前で発表する名前じゃないわよね…それ」

 

 あちゃーやっちゃった

 

「すまん、六道の意味知らねぇ」

「神教の私でも知ってる話なのに…六道ってのは仏教用語で天道・人間道・地獄道・餓鬼道・畜生道、そして修羅道の総称よ。たまに修羅道を除いて五道とも呼ぶわ」

 

 霊夢の続きに前の私の知識を挟むね

 まぁ輪廻転生に関わる話。死後どんな世界に行くのかって事だね

 天道は天人の世界、楽しいけど死ぬ時は苦しみながら死ぬ。人間道は人間の世界、四苦八苦に悩まされる。地獄道は生前の罪を償う世界、それだけ。畜生道は基本的な生き物、畜生の世界で本能のままに動く。餓鬼道は餓鬼の世界、正直よく分かんない。修羅道は修羅の世界、そのまま

 

「あなたは怨霊でしょう?そもそも輪廻転生の輪から外れた存在では?」

「生き方の例えだよ」

 

「まぁ、私はその六道から逸れるつもり。天人にはならないし四苦八苦するつもりもない、知らない罪を償う気も無ければ本能に生きる気も飢える気も修羅に生きる気もない。弾幕の方は自分から動かせてその六つの道を現す弾幕を避けさせるって感じだね」

「なるほどな」

 

 ギュゥゥゥっと急にお腹が鳴った。そういえば昨日の昼から何も食べてない……

 

「お腹空いちゃった……」

「早速飢えてるじゃねーか!」

 

 ◇ ◆ ◇

 

 場所は変わって地霊殿、部屋が埋まるほどの書類に囲まれたさとりが死にそうな顔をしながら手を動かしていた

 

「お姉ちゃん大丈夫ー?」

 

 楽しそうな顔をしながらやってきたのは妹の古明地こいし

 薄緑色の髪に同じ色の目、服はさとりの服の外側(?)の方が少し薄い黄色になり内側が黒になっている

 桃色だったさとりのサードアイと繋がっているコードは紫色になっており、身長・体格ともにさとりと大差ない。さとりの色をそのまま反転させたカラーだ

 

「数ヶ月はかかるから一周まわってゆっくりしてた所よ。そうだこいし、倉庫からハンコ用のインク瓶を何本か持ってきてくれない?無かったらペットに買ってくるように伝えて」

「はいはーい、わかったー」

 軽くスキップしながら部屋を出ていく妹を見て、さとりの表情はほんの少し明るくなっていた

 

「少し休もう…」

 

 脱走した怨霊が誰か。全て調べてリストと照合

 責任責任と騒ぎ続ける無関係の者への言い訳や説明

 

 主な内容はこれだけだが、なんせ24万。数が多すぎるために地底では大問題、さとりには一晩で積もった大雪のようになっている

 たった一時間の出来事のせいでめんどくさい事になったのだ

 幸い犯人探しは紫によって楽出来たが、地獄より立場の低い旧地獄には「閻魔大王が地上に送らせたから」という何も間違ってない責任の押し付けも難しい。この件に黄泉の名前を出すという事は映姫に文句を言っているのと大差ないため、脱走の原因の言い訳を上手く考える必要がある

 

「これも八雲 紫の狙いの一つね……」

 

 地底のいざこざから黄泉を守るため、黄泉の情報を包み隠さず渡したのだろう。っとさとりは予想した

 これから紫によって動かされ続けるであろう黄泉を少し不憫に思いながら、さとりは少し前の自分の呟きを忘れて書類の山を整理するのであった

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