「いたたたた……」
頭に強い衝撃を受けてほんの少し意識が途絶えていた。昨日も華扇にやられた時に意識が途絶えてたし、これから頻繁に起こる可能性も高い
追魂体質は魂を追いかける体質、追いかけるという事はそこに小さなズレがあるということ。原因があるとしたらそれかな?
「黄泉、大丈夫?」「う、うん……」
目を開けると目の前に霊夢、めちゃくちゃ近い。額がくっつくレベルの距離
「……怨霊は!」
手元にあのグロい物が無い。飛ばされた時に落としたか?
「それよ」
紫が扇子で指した先には白髪で獣のような呻き声をあげる女性。目は血走っており、あとなんか全裸だ
「……『黙れ』」
呻き声が止んだ。能力が通じるって事はさっきのグロいヤツで間違いないみたい
「あんた、一応同族よ?何とも思わないの?」
「人間も同じでしょ?格下にはイキるし、なんなら一人を多人数でいじめる」
こいつ相手じゃなくても怨霊全てにそんな感じに思ってる。同族だけど、別に尊重しないしなんなら駒やペットとしか思ってなくてもおかしくないよね
「そういえば、核として私の中にいる時。地獄でも味わえないような苦痛を感じるんだけっけ?そりゃ殴りたくなる訳だ。後でしまってあげるからね」
「怒ってるわね(小声)」「そっとしましょ(小声)」
聞こえてるからね?
「…そういえば紫、半日はかかるんじゃなかったの?体が出来るまで。魂入れてからせいぜい10分しか経ってないけど……」
さっきばらまいた核と霊力は吸われてない。まだ途中だし回収せず置いとこう
さっき容器から出した瞬間、急に大きくなった。その勢いのまま殴られて飛ばされたのだと思う
「前例が一つしか無い事を忘れてたわ」「んな無責任な……」
前の私が半日かかったって事だよね?
10分と半日だと個人差ってレベルじゃないしなんか他に原因ある感じかな?
「とりあえず、これどうするのよ。動けないし喋れないから凄い形相であんたの事睨みつけるだけになってるけど」
「喋れるようにして質問でも投げかける?」
とりあえず一番に聞きたいこと…うん
「『答えて』殴りかかった美少女に完全に捕縛されて何も出来ない今どんな気持ち?」「煽らない」
「死……」「言葉遣いは丁寧にね」
暴言はストップさせないと
あれ?無言になった
「私から行かせてもらおうかしら。あなたは能力を保有してる?」
紫、ナチュラルに私のを質問としてカウントしてないな
「いいえ」
でしょうね。普通能力なんて持たないよ
「能力って肉体に宿る物じゃないの?さとりの能力とか目にくっついてたし」
ろくろ首は首をのばすけど、これが能力として宿っているのが肉体か魂かどちらになるかで考えると肉体になる。と思う
「勉強不足のようね」「生後3日です」「歳を言い訳にしない!」「理不尽……」
妖怪と関わりのない15、6年間の知識ならあるんだけどね
「もし人間の肉体に能力があるのなら、ここで動けなくなってるあんたと同じ体は何よ。立場が逆転してる可能性すらあるわ」
「あー確かに」
それなら妖怪と人間は違うのか
能力は魂に宿るとして、紫が聞いた理由は肉体が能力に適応しようとした事が原因である可能性を考えたからかな?
「次。今の体、生前の体とどの程度違うか。些細なことでも構わないから」
あー、これは私には答えられないタイプのヤツだ
……この質問意味ある?そりゃ違う体なんだから違いしかないでしょ
「寒いです……」「「「……」」」
そういや全裸だったね変態
あと体の話と微妙に関係なくない?
紫が毛布を取り出してポイッて被せてる。優しい
「あーそっか、そういえば私が質問に答える事以外禁止してたね。ごめんね」
『動くな』『黙れ』の二つで大抵の行為は禁止されちゃってるよね
まぁ直すつもりも反省も無いんだけど
「再度質問するわ。生前とどの程度の違いがあるか、答えなさい」
そういえば私の下にある怨霊の分際で質問からギリギリ許される範囲の答えで要望を出したのか
「生前と身長や体格の違いによる違和感はあまり違いはありません。いや、そもそも身長や体格はほとんど同じように感じます」
「それは興味深い」
肉体が違うのにほぼ同じ体か。流石に髪の色とかは違うんだろうけど、なんか不思議。十中八九追魂体質によるものだろうけど
「……なんか退屈になってきたわね」「だねー」
その後、紫が細かい質問ばっかりして暇だったから霊夢に弾幕の練習をしてもらっていた
前の私は夢想封印に対応出来ていたらしいけど…あんなんどうすりゃええねん
あの怨霊は紫の能力で切り離されて私に回収されるか、霊夢に祓われるかの選択で後者を選んだ。私の中にいる苦痛は相当なものらしい
残った体は紫が回収した。調べた後に焼却処分するとのこと
◇ ◆ ◇
回収が済んで紫が帰ってきた
「そういえば紫、一昨日の夜に私の検査するって言ってたけど。何か分かった事あったの?」
本当は昨日の間に聞きたかった事だけど、いなかったから今聞く
「……完璧に忘れていたわ」「は?」
霊夢が「はぁ」っとため息をついている
忘れてたってどっち?
「主に調べたのは脳と魂よ。それで、結論から言うと脳は全く機能していなかったわ」
「……つまり?」
脳が機能してないって事は今考えれているのはなんで?脳って考える所でしょ?
「思考は魂で行っていたのよ」
「なる…ほど……?」
……あ!そういえば幽霊って脳無いじゃん!
「もしかして大人しく運ばれてた前の私がアリス曰く急に別人のようになったのって、脳で行ってた思考が魂に切り替わったから?」
「その可能性が高いわね」
当然、人間の脳と怨霊の魂では思考回路が違う。同一人物でも別人のようになるのはおかしくないだろう
「…思考が切り替わったタイミング、それって……」
霊夢は倒れている私しか見てないらしいけど、そういえば殲滅中に違和感を感じたから博麗神社に向かったって言ってた
「霊夢。あなたの知っている通り、怨霊が同士討ちを始めたタイミングよ」
「…前の私は、2人とも死ぬ前にちゃんとあがいたんだね。それでも……」
片方は合流を妨害するために利用され、もう片方は自分ごと一掃された
報われないものなんだね……
「アリスの守りたかった黄泉は、私が殺しちゃったのね…中にいるのが怨霊だと分かってた時点で、肉体ごと封印するという選択もあったのに……」
アリスは1人目の私を守ろうとした。霊夢は怨霊の存在に気付いて起きながら『怨霊を祓う』でもなく『怨霊ごと封印する』でもなく『ただ閉じ込める』という選択をした
霊夢の対応次第で最初の私が死ななかったかもしれないのは紛れもない事実だろう。でも、
「少なくとも、私は感謝してるよ。霊夢の失敗があったから今の私がいるしね」
霊夢が保護を疎かにした事によって追魂体質の適応が終わり、霊夢が浄化して中途半端に魂がダメージを受けた事によって経験の記憶が消えた
私は霊夢がいたからこそ生まれた存在なのだ
「……少し、落ち着くまで一人にして」
霊夢は神社の中に帰って行った
ここ二日間見ていた感じ、霊夢は人間にも妖怪にも妖精にも変わらない対応をしていた
博麗の巫女としてどうかと思うが、まぁどうでもいい
巫女として妖怪を殺した事もあるだろうし、今落ち込んでるのは多分意図せず殺してしまったからなのだろう
「……悪いことしちゃったね」
「今までこんな事は無かったのよ?」
そりゃ意図せず殺す事ってあんまりないでしょ
「私に対して分かりやすく対応が違った理由ってこれだったのかな?申し訳なさというかマイナスの……」
客人という扱いではなく、保護対象のような感じ?付き合い短いから正直対応の違いを私が言える訳じゃないんだけど
「少しの間ここを離れましょう」
「……?どゆこと?まぁいいか、分かった」
私も一緒なのがよく分からないけど、紫の出した目の付いた裂け目?スキマっていうらしい。に入った