生きる怨霊の地上生活   作:にけth

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外の世界!

 スキマから出て周りを見回した瞬間、自分の目を疑った

 前の私に外の世界の知識はほとんどない。強いて言うなら何故か地獄関係の知識…まぁ、六道の辻として有名な地名くらいだけど……

 だからある程度の予想外なら驚いたりしなかっただろう

 だけど今、目の前にあるのは上にピンクの…なんだあれ……が付いてすごい数のガラスで覆われている巨大な建物

 高さだけで20mは余裕で超えている。もしかしたら30m行ってるかも?

 横幅もすごい。300mくらいある?目でみただけじゃ分かんないや

 

「これって店なんだよね?」

 

 紫の言ってた『大きめの店』。このサイズで大きめじゃない事は多分無いだろうし、店かどうか確かめるのは多分大切だ

 というかそもそも朝から何も食べてないしお腹すいた

 

 前しか見てなかったけど、周りも確認する

 地面は黒く舗装されている。細かい石が見えるが、それぞれが連結している。少し進めばレンガに変わっており、そこは幻想郷と大した違いはない

 んで、周りには地面に書かれた白線に囲まれるように配置された両面に黒い車輪が2つずつ着いた物。サイズはバラバラだけど、どれも最低2mはある

 

「まぁいっか。とりあえず入ろう」

 

 ここがめちゃくちゃ大きい店だった場合、3日間ここの近くで時間を潰すことになるだろう

 建物の正面へ向かって歩いていると…

 

「プッ!」「ひゃん!」

 

 左から大きな音が鳴り、全身がビクッ!っと反応する。左を見ると周りに配置されてる物とと同じような物。中には人が入っており、中にいる人と目が合う

 車の人いらないバージョンなのかな?それともロープウェイのロープいらないバージョン?とりあえず乗り物なのかな?

 

 っと硬直しながら考えているとまた「プッ!」という大きな音。やっと理解した『邪魔ださっさと行け』って言ってるのか

 ささっとレンガの所まで走る。そうすると乗り物に乗ってた人は普通に進んでいった

 幻想郷にアレと似たような物が普及するのは何十年後になるんだろ…人里の外でも安全に移動出来るようになるかもだしそこそこ早いかもだけど

 …ごめん、やっぱりすぐ壊されそうだから普及はしなさそう。それにその乗り物関連で新しい妖怪とか生まれそうだし

 

 周りの建物を出入りしている人達を真似して歩くと、自動で開くドア。なんかすごい

 内部は外見と同じでかなり広く、昼間だというのにたくさんの明かりをつけている

 あと、ここは多分お店であってる。3日間、ここの近くで過ごすのが安定といえるだろう

 

「ごはん…どうしよ」

 

 とりあえず大事になるのがお店選び

 私は何も分からない。紫が5000銭を半日で稼げると言っていた事から、物価は幻想郷と比べて相当高いのだろう

 だから物の基本の価格が分からない

 そして幻想郷は忘れ去られたものがやってくる場所。外の世界で絶滅した生物もやってくる

 つまり、幻想郷で安いものが外の世界では高い可能性もある

 ならどうするか……

 

「……残金気にし続ければ解決するよね?」

 

 ◇ ◆ ◇

 

「……なるほどね。怨霊由来の霊力が気質に私の干渉し、若干情緒不安定になってたと」

 

 黄泉が大型ショッピングモールで数時間単位であたふたしている間、紫は博麗神社にばら撒かれた黄泉の霊力を片付けていた

 

「……ところで、その黄泉どこ行ったの?私はあんたと置いて休んでたんだけど」

「少し遠くまでおつかいをさせてるわ。3日もすれば帰ってくるはずよ」

 

 『霊力の排出』というおつかいとは真逆のような行為だが、まぁいいだろう

 

「……霊夢、あなた気付いていたでしょう?勝手に放出されてる霊力のこと」

「当然でしょ、博麗の巫女なんだから。気質への干渉には気付いてなかったけど」

 

 巫女であり、霊力を扱う霊夢は霊力の流れが当然見える。少し前には実際に前の黄泉に怨霊の霊力が集まってるのを確認して向かっている

 

「ところで霊夢。あなたは先日、私があの子を連れて帰ろうとした時にこう言った『博麗の庇護下にある者だからダメ』だと。あの発言、私は今も本当にあなたから出た言葉なのか疑ってるレベルなのよ」

「急に失礼ね」

 

 霊夢は自堕落で面倒くさがりやだ。そんな人間が自分から人を泊めようとなど普通はしない

 

「そして、弾幕ごっこの練習に付き合う。それもあなたがやる事とは思えない、普段のあなたならせいぜいお茶を飲みながら見守る程度よ」

 

 弾幕を遊戯だと思っている魔理沙やアリスは積極的に教えようとするだろう。しかし霊夢は弾幕の事を遊戯ではなく幻想郷の均衡を保つための道具だと思っている

 面倒くさがり屋が楽しむ事を理由にやってない物を他人に自分から教えに行くことなど、普通はないだろう

 

「面倒見ている理由ね…まぁ、少し同情したのよ。生まれたばかりの少女が持っていい重さじゃない物を背負わされてたから」

「まぁそうでしょうね」

「本人はどの程度受け止めてるかは知らないけど、過去の自分が旧地獄を敵に回すような行為をし、この先必ずトラブルになる。自身は怨霊だと自認してるのに扱いは人間、この点は都合よく考えてそうだけど…そして罰を求める本能。今考え直すと他にもいくつかあるわ」

 

 今のところ大してマイナスな感情になっていない頭お花畑な黄泉自身は気付いていない事だが、怨霊を操る程度の能力や追魂体質というプラスに働くハンデもあるが、黄泉にはそれ以外にマイナスに働くハンデが大量に存在する

 それらは決して一人の少女が受けていいようなハンデではない

 

「理由はそれだけよ。少なくとも、私があの時あんたに押し付けてたら確実にあの子にとって良くない方向へ行ってたでしょうね。最悪、あんたの式として働いてた可能性まであるわ」

「……何でバレてるのかしら?」「勘よ」

 

 式神とはコンピュータだ。式神になると雇い主からの指示で動くようになり、知能はありながらも完全な道具へと変貌する

 

「それで?もう一度聞くわ。あの子はどこへ行ったの」

「おつかいって言ったはずよ」

 

 おそらく罰による怨霊管理の話をしているのだろう

 

「…私が気付かないとでも思ってるわけ?あんたの服からする焦げた匂い。誰に付けられた匂いなのかは考えなくても分かるはずよ」

 

 先ほどの弾幕ごっこで黄泉が紫に当てたレーザー。それによって服が少し焦げており、客観的に見て何かあった事は分かる

 

「……さすが霊夢、簡単に嘘は通らないものね。まぁあの子によるものよ。上手く防げなかったのよ」

「バレたのはあんたのミスでしょ、普通に。とりあえずさっさと場所教えなさい」

 

 紫の事をそれなりに理解している霊夢は、戦闘後であると分かっても紫は殺していないと考えたようだ

 

「もう言い逃れ出来なさそうだし諦めるわ。代わりに、私からの質問に答えてもらいたいのだけど……」

「……まぁ勝手にしなさい」

 

 紫が黙っていればそもそも聞き出せないため、交渉では圧倒的に有利な状況でも同条件に引きずり落とされるしかなかった

 

「まずは答えから、黄泉は外の世界にいるわ。あなたに影響を与えた霊力を落とすためだけに行かせたわ」

「…あんたバカじゃないの?あの子がもし何かやらかせば、外の世界での非現実が現実として知られるじゃない!」

 

 幻想郷は現実と非現実を隔てる博麗の大結界によって外の世界から分かれている。非現実的な存在が幻想郷に流れるようになっており、外の世界の人々の間で非現実が現実として受け入れられた場合、幻想郷からそれらは出ていってしまう

 道具を使わず空を飛ぶ、不思議な魔法を使う、美しい弾幕を張る。そんな外の世界の非現実が幻想郷から出ていった場合、幻想郷への影響は計り知れないだろう

 

「今すぐにあの子を連れ戻しなさい!」

 

 霊夢がお祓い棒を取り出し、紫に向ける

 

「事情も理由も、弁明も説明もする前に仕掛けるのは感心できないわ。それに、まだ私からの質問すらさせてもらって無いのだけど……」

 

 まぁ、普通に考えて幻想郷の賢者である紫が『霊力を落とす』程度のしょうもない理由で外の世界に出したりしない

 

「妖怪退治の専門家が妖怪の事情を聞いて退治をやめる事の方が異常でしょ」

「……確かにそうね」

 

 結局紫の聞きたい事が引き出せないまま、弾幕ごっこが始まった

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