市場を紫と一緒にまわった後、紫にオススメされた椛鯛という魚を購入した
縁起のいい海の魚らしい。あとすごく美味しいらしい
『腐っても鯛』っていうことわざがあるくらい、なんか凄いらしい
関係ないんだけど、椛鯛を入れてるトロ箱。キュッキュして触り心地が悪いし不快
「そろそろ帰りの時間よ」「はーい」
紫に呼ばれたので紫の方へ向かう
やり残した事は…無いね。楽しかった
久しぶりの幻想郷だなぁ
少し離れた人気のない所で紫がスキマを開き、話し始める
「夕方頃に見せたい物があるから迎えに行くわ。楽しみにしてなさい」
「そういえば『驚かせるつもりでいる』って言ってたね。内容予想出来ないけど」
幻想郷から出る時、なんか言ってたのを思い出した
「あと、霊夢を少しでいいから警戒しておきなさい。あなたに関係した事を何か企んでそうよ」
……霊夢が?いや、そりゃ怒るよね。気質への干渉は
帰ったらすぐ謝らないと……
「分かった」
霊夢が企むかぁ…のんびりしてる霊夢がそんなの想像しにくいな
「まぁ、今のは忘れて行ってきなさい。博麗神社の参道に繋がっているわ」
「分かった。いろいろありがとう」
そうしてスキマに入った
◇ ◆ ◇
スキマから出て、幻想郷に帰ってきた
外の世界に比べて空気が美味しく感じる
とりあえずさっさと行こう
「……何だろう、この雰囲気」
空が暗くなり、すぐに雨が降り始める
傘なんか持ってないから怨霊を上に出して傘代わり。久しぶりに怨霊を出した気がする
「……」
なんだろう、上の方から凄く近寄りがたい…圧?がする
そんな事考えながら参道の階段は登るんだけど
「夕立かな?まだ2時だけど」
雨が本当に強い。雷が落ちても不思議じゃないくら…
「……」
実際に落ちた、しかも博麗神社の方向。大丈夫かな?
とりあえず階段を駆け上がる
前の私が運動不足だったせいか、簡単に呼吸が荒くなってしまう
「霊夢ー!魔理沙ー!ただ…」
やっと階段を登切り、境内が視界に入る直前には声が出ていた。普通に考えたら建物の中にいるのになんで今言ったんだろう
「「黄泉、
そんな疑問が吹き飛ぶような光景が目に入る
そして胸に痛みが走る
「…いま……?」
倒れている魔理沙に剣を向けている緑の服を着た男の人。それの後ろからお祓い棒を突き付けている霊夢
緑の人は何故か一瞬で消えた。その瞬間に痛みが走った気がする
胸の方を確認すると背中から体を貫通している剣
……なんで背中から?普通前からじゃないの?
喉の奥から何かが逆流する感覚を感じた
「コフッ、ゴホッゴホッ…」
吐血。前の私も含めて初めてだ
椛鯛の入ったトロ箱を落とし、胸を押さえようとする
だけど、手が痺れて何も出来ない。なんで麻痺ってる?
吐血の影響か、急に気分も悪くなり始める
体も動かないあたり、割とどうしようもない
せめて状況だけでも把握しないと……
頭がぼぉっとしてきた。考えないと…少しでも頭を働かせないと
とりあえず傘代わりの怨霊を高く飛ばし、視界を共有する
私の背後にはさっきいた緑の男。霊夢と魔理沙は動けてないっぽい?上からじゃ分かりにくいけど多分人質にでもなってるのかな?
もうダメだ、頭がどんどん働かなくなってくる
もし人質になっているとすれば、二人が動けない理由になる。胸を刺しておいて人質?いや、おかしいか
とりあえず動けていない時点で二人が動けば何かが起こるということ
『何か起こる』事はほぼ確定していて、それが『良い事』である可能性はほぼない。それなら何も起こさないのが正解だろう
だから、私が動く。意識を失うまでに
「…ォ」
……舌が麻痺って声が出ない
なら、スペル宣言を別の方法でするのみ
核に霊力を流し、怨霊を出す
『私の懐からスペルカードを落として』、そう命令した
スペル宣言は何も言葉でする必要はない。伝わればいいのだから
怨霊『大地に付かぬ者たち』
スペルの起動を確認して、目を閉じてしまった
刺されてから今の間まで5秒も経っていないと思う
「痛い……」
なんでこんなしょうもない単語だけ舌が回ったんだろう
真っ暗な中、どんどん何もかもが無くなっていく
雨音が、石の匂いが、血の味が…そして痛みが
◇ ◆ ◇
「おい霊夢!最悪な状況だぞ」「…分かってるわよ」
黄泉が豊布都の手元にある。肉体が脆弱だった為に今まで優位を取れていたが、黄泉の体…追魂体質はおそらく人間の中で最も強力な体
「とりあえず動きを止めるわ」
霊夢が黄泉にお札を投げ、貼り付ける
黄泉の体の動きを封印した。豊布都に乗っ取られても安心という訳だ
「……怨霊に投げて大丈夫か?お札なんか」
「……長引かなければ問題ないわ」
怨霊に対してお札は火に水同様の弱点だ
長期間お札の影響を受け続けるとそのうち成仏させられてしまう
「痛い……」
黄泉の意識が落ちると同時に黄泉の懐から落ちる血の滲んだ紙
それを見た霊夢は一瞬嫌な予感がし
「魔理沙、一回離れるわよ」「いや何でだよ逃がしちゃうだろ」
黄泉を中心に地面に薄い霊力の層が作られる
「あんたねぇ、今のスペルカードが見えなかった訳じゃないでしょ?」
「ああ見えてたさ、知らんスペルだったな」
霊夢も魔理沙も初見である
「この前紫が服を焦がして来たのよ、『黄泉から一発もらった』ってね。スキマで移動出来る紫が練度の低い『六道からの脱出』に被弾する訳ないでしょ?」
実際には違うとはいえ、普通劣化版マスパに被弾する紫ではない
「つまり何が言いたい?」「広範囲へ広がる弾幕ってなるのが自然、だから距離を置く。以上よ」
「やれやれ、これだからお前は…」「何よ」
倒れていた体を起き上がらせながらこう言った
「あのクソ神。私を叩くのに左足、黄泉を刺すのに右足を潰したんだ、もう逃げる足は無い。黄泉の体を乗っ取ってお前のお札を突破した場合、もうどうしようもない。だから今、黄泉に便乗して攻撃するしかねーだろ」
黄泉のスペルによって空中から怨霊が湧き出ている
それらが豊布都を狙い、流れ弾が境内を荒らしている
弾やレーザーの真ん中で剣を振るう豊布都が割とかわいそうになってくる
「……あの子が人質になってる状況よ?」
「策ならあるぜ?とりあえず黄泉のスペルの効果時間は分かるか?」
「多分60秒よ、だから残り50秒」
「おっけ、あと14秒したら私をサポートしながらスペルを起動してくれ。使うヤツは察してくれよ?」
「えっと36秒だから…なるほどね」
二人の間に飛んできた中弾を霊夢がお祓い棒で弾き、二人とも逆方向へ走る
「合わせろよ?今回は私が主役だからな!」
「任せなさい」