生きる怨霊の地上生活   作:にけth

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始まらない入院生活

「いやぁ、上手く行ったな」

「せめて突撃する瞬間くらい合図を出しなさい!煙の反対側でタイミングが読めないから」

 

 霊夢と魔理沙は挟み撃ちにするために最初に煙の逆方向へ行った。その状態からのブレイジングスターである

 

「まぁ結果論だ、血は止まってるみたいだがとりあえず永遠亭に連れて行っておくから後は任せるぜ?」

 

 魔理沙の右腕には黄泉が抱えられていた

 今回の勝負では、お互いに勝利条件が最初とは変わっていた

 豊布都は『黄泉の居場所を突き止める事』から『黄泉の体を乗っ取る事』に変わり、それが失敗した事によって勝利条件は無くなったために『耐え切る事』に変わった

 魔理沙は『豊布都を倒す事』から『黄泉を助ける事』に変わった

 

 最終的な勝利条件は『黄泉を助ける事』

 そのために3人がかりで攻撃し、気を張り詰めさせ、ブレイジングスターによる一回目の突撃によって警戒で頭いっぱいにし、二回目で黄泉を救出する

 

 単純な事だが、自分の事で精一杯な状態で黄泉にまで頭がまわるかという話だ

 

「さっきのお札だけとるわね」

 

 動かせないために着けたお札をペリッと取る霊夢

 

「ついでにあんたも診てもらいなさいよ?普通に怪我してるんだから」「わーってるって」

 

 そう言って魔理沙は飛び立っていった

 

「あとは…あんたね」

 

 お札で完全に身動きの取れない豊布都を見ながらそういう

 

「追魂体質について、知ってる事は全て話してもらうわよ」「断る」

 

 まぁ予想通りの反応だ

 

「それなら完全に封印しちゃうけど?」

「脅しに屈する神がいるとでも思うのか?」

 

 封印しちゃえば情報を聞き出す事は出来ない。豊布都の強めの態度はそれが原因だ

 

「…どうせ無理だと思ってたし仕方ない。ならば取引で聞き出すわ、どうせあんたの望みなんて予想出来るし」

「ほほう?」

 

 ◇ ◆ ◇

 

「…痛い…うぅ……」

 

 胸が痛い…

 目を覚ますと一番に知らない天井が目に入った

 博麗神社の境内に入ったのは覚えてる。なんで知らない所にいるの?

 

「あ、そうだ」

 

 なんか緑の服を着た人に刺されたんだ

 そっからスペルを…結局使えたんだっけどうだっけ?

 

 胸元を見ると綺麗な服。白い装束なあたり私の普段着と似てるけど、まぁ関係ないだろうね

 ……痛み治まるまで寝直すのもアリな気がしてきた

 

「お、黄泉起きたか!」

 

 障子が開く音の直後に凄く聞き慣れた声

 

「おはよう魔理沙、ここどこ?」

「永遠亭だな、まぁ療養所だ。かなりハイテクのな」

 

 療養所かぁ…前の私の記憶には全くないあたり、健康的だったんだろうなぁ

 

「胸の傷、塞がってるんだけど…なんというか凄すぎない?」

 

 胸を刺された、多分心臓も貫通してたはず。そんな中で生きてるしなんなら完全に血も止まってる

 

「あーいや、それはお前の体が原因だ。『傷付いていない魂に適応する』とかいう理論でどんな怪我も素早く治せるらしいぜ?」

「ほんといい体だよねぇ。空飛べるし便利」

 

 多分人間の肉体としては最高レベルのスペックなんじゃないかな?知らんけど

 

「そーいや、私を刺した人ってなんだったの?なんか倒れた魔理沙に剣を…って魔理沙は怪我してないの?大丈夫?」

 

 倒れてる魔理沙に剣を向けた男が霊夢にお祓い棒を押し付けられていたのを覚えている

 その直後に刺されたから詳しい状況は分かんないんだけど

 

「私か?まぁあんなのはよくある事だし問題ないぜ?」

 

 よくあるんだ……

 

「急に出て行ったかと思ったら翌日になって数本折って帰ってくる馬鹿には『大丈夫』の意味を学び直させるべきよ」

 

 折れてたんだ…って誰!?

 魔理沙の後ろには薄紫の髪に赤い瞳。丈の短いコートに赤いネクタイといった制服(?)っぽい服、そしてウサミミを生やした妖怪。まぁ十中八九、兎妖怪だろうね

 

「悪かったって、私はいいから診るなら黄泉を診てやれよ。こっちのが重症だぜ?」

「傷口は塞がってたし内出血で出来た血栓はもう取り除いた。念の為の輸血も終わったからあとは安静にしてればいいって伝えたはずよね?」

 

 めっちゃ説明してくれるじゃん

 じゃあ胸の痛み(物理)以外は何の問題もないのか

 

「……気になったんだけど、魔理沙は何で昨日ここに来たの?元気そうだけど」

 

 そう言った瞬間二人は目を合わせる

 

「いやぁ、人里で倒れてた所を鈴仙が拾ってくれたらしいんだよな」

「戦闘の痕跡だらけだったけどね」

 

 人里で戦闘の痕跡?有り得ないでしょ

 人里に妖怪がいていい訳ないし…あれ?

 

「人里での戦闘は気になるけど、それはそうとしてなんでひと目で妖怪とわかる鈴仙が人里にいるの?」

 

 どう見ても兎妖怪だけど……

 

「……あのね、妖怪にとって人里は『侵略禁止』ではあっても『立ち入り禁止』では無いのよ」

「なるほど」

 

 侵略ってのがどの程度の範囲がよく分からないけど、なんかあるんだろうね

 

「いや、入っちゃダメに決まってんだろ。…入ってるヤツは山ほど知ってるが」

「あ、そうなの?」

 

 鈴仙を見た感じ、かなりこっそりと侵入してるのかな?

 まぁ、違反が原因で実質的なルールが緩くなる事ってあるよね

 

「あと、やっぱ人里での戦闘って?」

「お前が知るべき事じゃねーから気にすんな」

 

 うわぁ気になる…

 どうせ話してくれないだろうし聞くのはやめとくけど

 

「まぁいっか、ところで私何時間くらい寝てたの?」

 

 紫が迎えに来るって言ってたから時間を知りたい。確か、私が幻想郷に帰ってきた時間は2時だったはず

 

「ざっと3時間だな、割と早起きだったんだな」

「ありがとう、ちょっと紫と約束あるから出るね」

 

 今は9月下旬、秋分も過ぎたから紫が来る夕方ってのは5〜6時。もう5時は過ぎてるから行かないと

 

「……一応私も着いていっていいか?」

「大丈夫だと思うよ」

 

 まぁ見せたいものらしいし、特に問題ないよね?

「行く前にこいつ(鈴仙)から性格診断でもやってもらおうぜ!結構説得力のある結果が帰ってくるぞ?」

「それならどうせだしやってみたいね」

 

 性格診断…複数の質問に対しての答えからその人の性格を割り出す物。これで分かるのって性格じゃなくて気質だよね?

 

「いいけど…そろそろお金取った方がいいのかしら……」

 

 ◇ ◆ ◇

 

 占いが終わり、永遠亭から博麗神社に向かっている途中の話だ

 

「てか、なんで相乗りしてんだよ。お前飛べるだろ」

「私の出せる速度は怨霊と同じだからね、遅いんだよ」

 

 私の飛行の仕組みは怨霊として飛ぶ動作に追魂体質が付いてきて飛ぶ。要は怨霊としての速度がそのまま飛行速度になるのだ

 

「まぁいいか、そういや外の世界でどんな事があったゆだ?思い出話くらい聞かせろよ」

「そう言えばそうだね、まぁ今日の出来事しかまともな思い出にならないんだけど……」

 

 初日は大きい建物で時間を潰し、2日目はなんかよく分かんない所に閉じ込められた

 よくよく考えるとうっすい旅行である

 

「まぁいいか、とりあえず初日ね……」

 

 博麗神社に着くまでにこの話が終わる事は無かった

 もしかしたら私が思ってる以上に楽しんでたのかもしれない

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