目眩がした。汚染によるものだろう
「無理しなくて良かったのに、相変わらず行動力すごいねぇ」
後ろから小町さんの声が聞こえてきた。後ろ!?
目眩が治り、怨霊達を見てみると固まっている。私が干渉したのは一瞬だけのはずかのに、固まってるのだ
「とりあえず離れるますか……」
汚染が一気に進んだ影響か、表現はしずらいが体に何かが入ってくるようなムズムズした変な感覚になってる
とりあえず、怨霊達はどうせすぐに動き出すから急ぐ。今の一瞬の間に理解出来ない事がたくさん起きた
「いくつか聞いていいですか?」
「まあそう言われると思っていたさ」
だいたい質問内容がバレてるパターンかな?
「まず1つ目、なんかワープしませんでした?」
小町さんが鏡を取りに行った時や場所が入れ替わった時、それになんか後ろにいた時。スルーしてたがさすがに気になる
「あーそれはあたいの…というか死神の力だね。軽く説明すると『距離を操る程度の能力』で、便利なんだよねぇ」
能力か。そういえば博麗の巫女が空飛んでたりしてるって聞いた事はある。同じく博麗の巫女がやってた占いやヒダル神?のお祓いとかも能力の1種なのかな?
「その能力で私と場所を入れ替えたり、自分の場所を弄ったりした感じですか…なるほど」
つまり私の勇気の行動は意味が無かった訳か。悲しくなってきた
「まぁ、そんな感じ。お迎えに行くためには必須なんだよねぇ。三途の川の長さもこの力で弄ってるし」
なるほどなぁ。そもそも三途の川って長さ変わるんだ
「じゃあ2つ目。一瞬の足止めのつもりでさっきの集合霊に干渉したんですけど、なんで
「それは正直分からないねぇ。気質自体に変化は無いっぽいし」
変化が無いのなら、『私の気質の色が強すぎて黒が白になっちゃいました!』とかいう事も無さそうだ
「有り得るとしたら、それこそあんたの能力じゃないかなぁ。無自覚の内の…『怨霊を操る程度の能力』って感じかなぁ」
私、死ぬまで恵まれた才能に気が付かなかった模様
「試したいなら使ってみればいいんじゃないかな?さっきの集合霊に『帰れ』とか『どっかいけ』とか」
「嫌ですよ…やり方分かりませんし気持ち悪いですし汚染進みますし……」
現在、体感15%ほど。さっきの干渉1つで10%程度進んだのだ。娯楽小説とかにたまにある『寿命を使って強くなる』みたいな実感の無いものとあまり変わらなくても、余命が迫ってる状況なら話は別だ。使いたくない
「そういえば、さっき能力らしきものを使った後からなんか体に入ってきてるような感覚があるんですよね。ちょっと気持ち悪くて困ってるんですけど……」
ムズムズ、ゾクゾクと擬音語でしか表せない感覚になっている。常時これだ、落ち着かない
「なんか変だと思ってたらそういう事だったのかぁ」
「?」
心当たりがあるならありがたい
「周囲の霊力があんたに集まってる」
「霊力…ってなんですか?」
魔の力だし、ロクでも無いことは確かだろう
「魔力・妖力・神力に並んだ力の1種だね、霊力は人間や幽霊が扱う力」
……?どゆこと?まぁいいか、重要そうでは無さそうだし
「あんたが能力を使えるようになったからか、それとも汚染が進んだ特異体質によるものか。怨霊が破壊された時にばら撒く霊力を吸い寄せている。あたいが軽く流した魔力は吸ってないみたいだしね」
体質か能力かはあまり重要じゃ無さそうだけど、その2つの点を見れば怨霊が関わってると考えるのは自然か
…いやちょっと待って、怨霊が絡んでるなら汚染進むじゃん
「ちょっとマズくないですか?」
「気付いちゃったか。マズいね」
「地獄とかいう怨霊の溜まり場で怨霊を操れる存在が暴走、考えただけで恐ろしいね。せっかくだしあたいの力で間欠泉センターまでひとっ飛びはどうだい?」
「どうして最初からやらなかったんですか……」
「いやぁちょっと話したくてつい」
「……」
おしゃべりが好きなタイプなのは分かってたけど、まさかここまでとは……
「今の今まで考えて無かったんですけど、人里に入っていいんですかね?そのうち暴走する可能性が高い怨霊が」
私の見た目はもう変わってしまった。特徴的な目や髪も、今となっては違う色だ。私に興味の無かった家族も気付いてくれないだろう
親友の墓参りくらいしかする事がない。私は祭事や祭り以外で人里からあまり出た事がないから、墓参りが終わったとして、その後が分からない
「それは盲点、例えば人里に行って墓参り。そのあと博麗神社で霊夢に祓ってもらうとかどうだい?素早く終わらせると安全だし、未練を果たせずに成仏するってのは怨霊にとって1番の罰ともいえるからね」
「いいですねそれ。ただ、成仏は罰では無くて救いだとと思うんです。親友を人として扱わせるのは、この方法では少し難しいかもしれません。心苦しいですが、罰を受けることは諦めて時間があれば償いに動こうと思います」
「いいんじゃない?それで」
かなり妥協したとはいえ、綺麗にまとまる方法が見つかった。もともと既に死んだ身だ、これも贅沢ではあるだろう
「それじゃあ最後に。保険?というかおまじないだね、もし祓われる前に体が完全に汚染され、暴走するような事になっては危険だからね。能力を使って、自分に何か命令しな」
「使い方、分かりませんよ…でも、そうですね……」
『絶対に、人を襲わない』。私にはそれくらいの事しか思いつかなかった
「願いはしましたけど…能力、しっかり働いてるといいですね……」
「願いに応えない力なんてない。絶対に働いてるさ」
全て、早く終わらせよう
「それじゃあ、そろそろ送るさ。これから頑張れよ」
「ありがとうございました!」
閻魔殿に着いた時と同じ言葉を交わす。話してたのはたった半日程度なのに、それ以上の時間が流れてたように感じる
「あんまり意味はないんだけど、目を瞑って」
言われた通りに目を瞑る
「5、4、3、2、1」
◇ ◆ ◇
急に明るくなり、目を開いた。ゴツゴツした岩が並び、見渡す妖怪の山が見える
「早く行かないとね……あれ?」
違和感を感じた直後、自然と体が倒れた。大量の何かが、私の中に入ってくる
油断していたのだ。まさか、地獄よりも地上の方が破壊された怨霊の数が多いとは思ってもいなかったのだ
「やめて…」
体が勝手に能力を起動する。おそらく、旧地獄に向けてだろう
汚染が一気に進行する。もう70%を越えている
「助けて……」