弾幕ごっこ。それはスペルカードルールに則った遊戯を表す言葉だ
噂によれば名付けは凶暴な吸血鬼が行ったらしい
そんな事はどうでもいいとして、私にとっては身を守る手段。妖怪が人間を襲う行為を、遊戯にまで落とす事によって命が賭からないようにする
そしてそもそもその弾幕ごっこで負けないためには弾幕を避け、当てる技術が必要だ
それは分かってるんだけど……
上から来た青い弾に触れ、強めの静電気を受けたような痛みが走る
「疲れた……」「56秒、もう少しよ」
「でもこれ5回目だから次別パターンじゃん」
紫の弾に被弾すると全ての弾が消え、チャレンジに失敗した事になる
それなら何回も繰り返してパターンを覚えれば良さそうだけど、弾幕は5回毎に全く違うパターンに変わる
既に150を超える回数はチャレンジしたけど、一分間ノーミスはまだ達成していない
「これ、何パターンあるの?」
「だいたい500ちょっとよ、全てパターンで慣れるには時間がかかるんじゃないかしら?」
「んなアホな……」
一個一個がめちゃくちゃ難しいのに、それが500って…
「これ、夕方までに終わるかなぁ……」
さっきから何回も触っている本に触れ、周囲が結界に囲われる
そして弾幕が展開される
「今回は……」
結界の東側からは大量の赤い中弾、西側からは青い中弾。それらは全て反対側を目指して進む
「これ、なんか変わった……?」
上を見ると予想通り赤と青の弾幕が……
「うんやっぱり……」
紫を見ると『やってしまった』という顔をしている
既に5回見た光景だ、さっき惜しかったしワンチャン成功する
開始10秒で一回目の弾の雨。全てが私に向けられるため、動く必要があるが東西からやってくる弾幕によって遮られる
それから8秒に一回降り注ぎ、毎回移動を強制される
そもそもの問題として、見えない。上を見ると東西のどっちかが見えないし、東西のどっちかを見れば反対側と上が見えない
その問題は怨霊との視覚共有でなんとかなるが、もともと輝く弾幕で眩しい上にそもそも情報を処理しきれない
いつも思うけどみんなこの問題どうしてるんだろ、足や背中にも目があるのかな?
それは置いといて弾幕に集中
体の被弾しやすい所は面積の大きい胴体ではなく意識の向きにくい足
プラプラしてるだけでなく、前後左右に移動する時に一番最後に移動する場所だからだ(最初は頭)
理想の体勢はお山座りだけど、まぁ現実的じゃないから極力意識を向ける事にする
この弾幕自体はマスタースパークのように細かい弾幕で動きを制限し、本命を狙うタイプ。タイミングを見て大きく動けば問題ないのだ
開始50秒、6回目の弾の雨。これを耐えればほぼクリア
ミスらなければいい、ミスらなければ……
「あ、成功した……」
結界とともに全ての弾が消える。なんだろう、微妙に達成感が無い……
「もしかしてこれ、順番じゃなくてランダムなの?それも一周しなくても選出されるタイプの……」
「500分の1を引くとは思わなかったのよ…」
連続じゃなくても覚えてる間に来たら意味無いけどね
「まぁ、成功は成功よ。受け取りなさい」
「いいのかなぁ……」
紫が渡して来たのは手のひらに収まらないサイズのケース、開けてみると金色のチェーンに紫色の宝玉が取り付けられたペンダント。めちゃくちゃ綺麗
「自作のマジックアイテムよ、魔力や霊力を流せば結界が体を覆うようになってるから。とりあえず使ってみなさい」
「自作って凄いね」
ペンダントを首にかける
右腕を水平になるように伸ばして手のひらを真っ直ぐに向け、その先に怨霊を30体使った赤く巨大な弾を用意する
「とりあえず霊力を流せばいいんだよね?」
その弾を自分に向けて発射し、結界を起動する
普通だったら被弾により頭からダラダラ血が垂れてくるだろうに、無傷。こりゃ凄い
「あれ?動けない……」「囲まれてる状態でしょう?」「あーそっか」
結界が体を覆う。要は体の周りに設置する
鎧みたいに纏う訳では無いもんね
一瞬だけ張って防ぐ使い方が良さそう
いや、逆にずっと張って置いて怨霊に攻撃を任せる方がいいんじゃないかな?
「ちなみにその結界、空気が入れ替わる訳じゃないからつけっぱにしてるとそのうち窒息するわ」
「!?」
あわてて結界を解除する
「動けないし長時間使えない代わりにめっちゃ硬い結界…練習しないとなぁ……」
「回避練習の本は貸すから自由に練習していいのよ?」
「あ、そうなの?ありがとう」
多分紫が一分間耐久成功した後にこれを渡した理由って防御に頼りすぎないためなのかな?
最も危険なのって自身の防御力を過大評価して回避しなくなる事だし
「そろそろ私は帰るわ。ちょっと仕事が貯まっちゃったし、冬が近いのよねぇ」
「冬支度ってそんなに大変なの?」
「当然よ、最悪命に関わるわ」
妖怪がそういうので死ぬ事は無いだろうし多分軽い警告なんだろうけど、こわいね。うん
「とりあえず、それじゃあね」
「ばいばい、ペンダント大切にするよ」
紫はスキマに入って帰っていった
◇ ◆ ◇
それからしばらくボーッとしていた。思い付く範囲のやる事は終わったのだ
お風呂でも入る?暇だし
「……あ、」
そういや香霖堂行かないと
でも人里の外ってあんまり詳しくないんだよね……
「まっ、いいか!」
◇ ◆ ◇
「それで迷って今の時間と」
「思ってたより人里の外の事知らなさすぎたんだよね」
「地図くらいあげるから人の身でそんな危ない所をうろつかないでくれ」
「なんというか…ありがとう」
今回は妖怪に合わなかったから良かったけど
いや、やっぱり人里の外で妖怪に襲われる確率なんて山で猛獣に襲われる確率と大して変わんないから襲われない方が普通ではあるとは思う
「逆にどうやってここに来たのか、僕はそっちの方が気になるんだけど」
「確か大きな湖の近くを歩いてた銀髪の美人さんに聞いたんだよね『魔法の森はどっちにあるか』って」
そういえばメイド服着てたしどっかに仕えてる人なんだろうけど、なんであんな所にいたんだろ
「いやぁおかしいな、誰が何でそこを歩いていたかが容易に想像出来てしまう」
「知り合いなの?」「多分君も後で再開出来るさ」
……?まぁいっか
「話を戻すが君の力があればそもそも迷う必要なんて無かったと思うんだけど、それが出来ない理由でもあったのかい?」
「……?あ!そうじゃん!」
以前霊夢を探すために使った方法、それは怨霊と視界を共有してあちこちに飛ばすというもの
「すっかり忘れてた……」
「手段というのはその数だけ命に繋がる、決して忘れない事だ」
「はーい……」