生きる怨霊の地上生活   作:にけth

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余裕の恐怖

 博麗神社にて

 

「そーいや、霊夢。豊布都の持ってた剣ってあるか?」

「一応残してるわ、売ろうかと思ったけど重すぎて運ぶ気が起きないのよね」

 

 豊布都の敗北によって御仏 公鮮の肉体は何故か服ごと塵になった

 ただ、その前に落とした銀の剣は残っている

 

「魔術的価値とか気になるからとりま見せてくれよ」

「裏の物置に置いてるから着いて来なさい」

「サンキュー」

 

 霊夢の隣を歩く魔理沙

 二人とも捜索の依頼を終えて特にやる事が無くなっているらしい

 

「これよ」

「これが黄泉の仇かー」「死んでないわよ」

 

 剣先から柄頭まで完成に銀で作られた剣

 豊布都の動けるようになってから2日でどうやってこんなもん用意したのかは不明だが、とりあえず凄い物だ

 

「魔術的な価値…全く無いな……能力をこれに使った形跡も無い……」

「つまり?」

「あいつ…完全にブラフ目的で用意しやがったな……」

 

 もし能力で雷を付与出来るなら、魔理沙を攻撃する時に使っていたはずだ

 

「そういえばあの加速もデフォルトスペックだったわね」

「あいつの出来る事ってまじで雷を落とすだけだったって事かよ……」

 

 『雷を操る程度の能力』と『落雷を発生させる程度の能力』では話が違う

 豊布都は余計な警戒をさせようとしていたようだ

 

「てかさ、あいつの敗因なんだと思う?」

「まぁ決まってるでしょ、神という余裕によるバカみたいな油断と初見殺しの手札だけで二回戦を正面からした事ね」

「まーそんなもんか」

 

 その状態からなんとかする手段が、中遠距離戦を得意とする魔法使いに対して相性の悪い剣一本しか無かったのも敗因の一つだろう

 

「それはそうとこれの処理、あんたも手伝いなさいよ?」

「うわめんど…普通に河童に売りゃーいいだろ」

「いいわねそれ、天才?」

「おっと、気付くのが遅かったようだな」

 

 ◇ ◆ ◇

 

「人型怨霊とは、通常の怨霊が最低1000年存在し続けると極々稀に変異する存在です」

「怨霊って進化とかするんだ……」

 

 初見だと亡霊と区別がつかない所まで予想出来た

 

「その強さは怨霊の比では無く、過去に旧地獄から脱走した人型怨霊に私の所属する白玉楼も含めた複数の組織が敗北しています」

「ちょっと待って妖夢負けたの?」

「……忘れてください。それで、人型怨霊は本気を出せば妖怪が主軸になっている幻想郷を滅ぼす事が可能です。それも個人で」

 

 怨霊の危険性は何度も紫や霊夢から教えられた

 それの強化版…やばいね

 

「過去のその人型怨霊ってどうしたの?」

「退治…とは少し違いますけど、まぁ解決はしました」

 

 質問の答えになってるの?これ

 

「以上ですね、とりあえず頭の片隅にでも置いておいてください」

「分かった」

 

 罰関連で命を投げ出すのは昨日禁止されたし、今後死ぬ予定はない

 だから、いつか出会う可能性はあるだろう

 

「質問だけど、それ。私もなる可能性あるの?」

 

 私の質問に対して妖夢は少し考える素振りをした後

 

「分かりません、でも可能性はありますよ」

「そっか……」

 

 その時は紫やみんなの仲間であり続けたいな……

 そんな事を考えていると唐突に妖夢が

 

「あの…」「どうかした?」

「お茶ってもらえますか?おまんじゅう食べていると喉が……」

 

 あ……

 

「ごめん忘れてた!」

 

 ◇ ◆ ◇

 

 あの後、普通におしゃべりした後に妖夢は帰った

 途中で聞いた話の一つだけど楼観剣は妖怪の打った刀であるために妖刀らしく、普通の人が使うと乗っ取られるらしい。白楼剣は魂魄家しか扱えず、無理やり使うと凄い反動が来るんだってさ

 両方ともまともな武器じゃない事がよく分かった

 それと余ったおまんじゅうはもらった、時間をかけてちょっとずつ食べよう。めちゃくちゃ美味しいし

 それはそうとして、お仕事だ

 

「……今日はお試しに行ってみるかぁ」

 

 そうと決まればルート選択、流石に初日からお隣さんの妖怪の山に凸るのは怖いから霧の湖に行く

 霖之助の地図によれば間欠泉センターは東から南までの270°が妖怪の山に囲われており、残り90°から出た先に霧の湖があるらしい

 ちなみにその霧の湖を抜けてそのまままっすぐ進むと人里、その人里から続く道を通れば博麗神社に行ける

 

「最悪、まっすぐ東に逃げればどこからでも博麗神社に着くのいいね」

 

 幻想郷の極東にある博麗神社は、東へまっすぐ進めば博麗の大結界の影響で最終的にたどり着くようになっている

 深夜だし霊夢には悪いけど、もしもの時は頼ろう……

 

「あとは……」

 

 紅魔館の位置。吸血鬼の館だし夜の間に活動してると思うんだけど……

 咲夜が寄ってくれって言ってたし場所くらいは確認しておこう

 多分主を怨霊関連の危険から遠ざけたい感じだろうけどまぁ頼れる所は増やして起きたいし……

 

「よし!それなら今から行こう!」

 

 ◇ ◆ ◇

 

 今はお昼時。天気はかなり曇ってるとはいえ、真っ暗になるほどではない

 ……だというのに暗闇があった

 興味本位で近付こうとしたが、すぐにやめた

 だって中に入ると『何か起こる』気がしてならないんだもん

 『何か起こる』可能性は高くても、それが『良い事』である可能性は限りなく低い。ならば何も起こさない事が正解だよね

 

「……なんか、近付いて来てない?」

 

 ……そうじゃん考えてみれば当然じゃん!

 これが自然現象じゃない事ぐらい

 

 体の向きを90°回転させ、全速力で逃げる。どう考えても妖怪か妖精だ、捕まったら最悪死ぬ可能性まである

 

「まてまてなのだ〜!」

「!!」

 

 中にいる!

 身近に恐怖がある事を急に実感してしまった

 恐怖は妖怪の力になる

 だから、妖怪を見ても怖がってはいけないのに……

 

「助けてぇぇぇー!!」

 

 視界がぼやけている

 妖怪は怖い、普通の答えかもしれないがこれからの生活には邪魔だ

 戦っている間と違って追われている間は余裕がある

 窮地において余裕がどれほど危険か、今理解した

 感情が混ざってしまうのだ

 昨日の切られた後の痛みのように、余裕が無ければ余計な事を気にしなくてすむ

 

 昨日の痛みですら出なかった涙も、恐怖だけで視界の邪魔をする

 理解はした…頭は冷静だ……だけど………

 

「怖い!」

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