生きる怨霊の地上生活   作:にけth

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デメリットの無い条件

「はぁ、はぁ…なんとか逃げきれた……」

 

 肩で息をしながら安堵の息がもれる

 あの暗闇の中に入れられるとどうなるのか、想像もしたくない

 

 そんな事を考えているとポツッ、ポツと落ちてくる滴

 

「うへぇ…雨かぁ……」

 

 初日からついてない、紅魔館に挨拶に行かずに帰って夜に再挑戦するのが正解かもしれない

 とりあえず怨霊を傘代わりに使って雨を凌ぐ

 

「いや、普通に……」

 

 必死に逃げ回ってたから正確な場所が分からず、こっからまっすぐ家に帰れる自信はない

 それなら適当にふらついて紅魔館を探す事を優先しよう

 

 ◇ ◆ ◇

 

 紅い屋根に一面に広がる暗い灰色の壁。この巨大な建造物は館というより古城という表現が正しいように思える

 ここに吸血鬼がいると聞くと凄くしっくりくる外見をしており、一つも窓が無い所をみるにここで合っているのだろう

 雨が降り出してすぐに霧が立ち込めてきて、ガクブルしながら歩き回ってたけど妖怪に遭遇する事は無かった

 その霧が止んだら急に目の前に広がった訳だけど、ただの偶然か結界とか何かが関係あるのかはわかんないや

 

「こーんにーちわー!」

 

 ……まぁ、誰も出てこないよね

 別に門番や警備員が必要そうな入口じゃないし、いたとしても雨降ってるからそりゃね

 

「どうやって呼ぶか……」

 

 館の入口にドアノッカーがあるし、門空いてないから怨霊使って叩くのでいっか

 そう考えて怨霊を出した直後、

 

「やめてください」

 

 ドアが開いて咲夜が出てきた

 

「ごめん、誰もいなかったから……」

「ここは妖怪の館です、あまりそれを出さないでいただけるとありがたいのですが」

「……ごめん、普通に謝るよ」

 

 まぁ…「寄ってくれ」って言ってた理由が主を怨霊関連の厄介事から離すためだったのなら、平気で怨霊を紅魔館の敷地に入れた私に問題があるよね

 これから気を付けよう

 

「分かればいいのですよ、中へどうぞ」

「ありがとう」

 

 ◇ ◆ ◇

 

 咲夜に案内された応接室?みたいな所で座って待っている

 かなり大きい机の上には温かい紅茶とお菓子が先に置いてあり、「どうぞ」って言われてるから多分食べていいのだろうけどこういう雰囲気初めてで体固まっているんだよね

 ……あれ?ちょっと待って、なんでアポ無し訪問なのに紅茶が温かい状態なの?

 咲夜が用意したにしても、瞬間移動で温かいのを用意するなんて無理だし

 まぁいいか、多分紫が伝えてくれたのかな?

 

 机の上を見るのをやめて部屋をぐるっと見回すと高そうな壺やら鏡やらが飾られている

 鏡を覗き込むと当然見えるのは私の顔。がっつり濡れてるけどやっぱりかわいいね、ザ・美少女

 鏡、人里で買っておこうかな?

 

「……紫色、ちょっと濃くなった?」

 

 まじまじと眺めているとふと気がついた

 アリスの鏡を見た時より若干目や髪の色が濃くなっている気がする

 そういえば体の再生速度も上がってるし、体が魂にゆっくり定着していってるんだろうね

 

 ◇ ◆ ◇

 

 そんな感じに時間を潰していると、咲夜が帰ってきた

 

「ご機嫌よう。私はこの紅魔館の主、レミリア・スカーレット。あなたについては聞いてるわ」

 

 一緒にいたのは青白い銀髪に紅い目、身長は私よりちょっと大きいくらい

 紫と似たような帽子を着けており、それに妖夢と同じような感じの赤いリボンが着いている

 衣服は…赤い紐の通った白を基調としたなんかヒラヒラしてるヤツの下に赤いシャツ、スカートはヒラヒラしたヤツとほぼ同じデザイン

 紅い瞳から圧力を感じる

 

 あと、昨日の宴会に…多分いた気がする。挨拶回りで会った気がする

 ただ…昨日はなんかもうちょい

 

「急に訪問してごめんね、ところで昨日と雰囲気変わった?」

「要件を言ってもらおうかしら?」

 

 完全にスルーされた

 

「要件ね…周辺の怨霊の情報を教えてほしい、それと……たまに遊びに来ていい?ご近所だし」

 

 うん、まぁ言いたい事は言った

 

「……以上かしら?」

「うん、以上」

 

 レミリアが咲夜の方を見てため息ついている

 

「分かったわ、身構えていた必要は無かったようね」

「??」

「自身の立場を自覚してください、博麗の巫女・妖怪賢者から任命された者です。普通は関わりたくないものですよ」

「……あ」

 

 『襲われなくする方法はやっぱり肩書きなんだね……』ふと思い出した言葉だ、華扇が妖怪の山に住んでると聞いて言った言葉

 妖怪が襲いにくくなる肩書きはすでに持っていたらしい

 

「では、これはどうかしら?紅魔館は怨霊についての情報をあなたに定期的に渡し、あなたの部屋も用意する」

「ほうほう」

 

 よかった、問題なく呑んでくれた……

 交渉事初めてだから…って条件だして譲歩出してないじゃん!みっすた!

 

「代わりにあなたはその部屋に常に怨霊を最低一体駐在させること。あなたの対応出来ない怨霊が紅魔館へ危害を加える危険性がある場合、それを使って知らせなさい」

「分かった」

 

 むしろ情報の伝達が早くなるからありがたい

 

「咲夜、用意してきなさい」「承知しました」

 

 ドアを開けて咲夜が消えていった

 妙だな、瞬間移動なのにドアを開けた?

 

「さて、私…というよりパチェの掴んでいる情報よ。確認しなさい」

 

 どこにしまっていたのか分からなかったが、どこからともなくレミリアが資料を出した

 

「ありがとう、とりあえず今晩向かうよ」

 

 確認すると霧の湖に3ヶ所、妖怪の山に12ヶ所

 

「すでに知ってるでしょうけど、幽霊は短時間にあまり動き回らない。これは30分前の情報だから今夜は問題ないはずよ」

 

 30分前?

 怨霊関連の事なんて普段からそんなに観測するような事なの?

 ……なわけないよね

 

「……もしかして、私が来るの予想してた?」

「えぇ、そういう運命だったわ」

 

 運命?

 能力によるものなのか頭いいだけなのか分かんないな

 いや、能力なんてそんなポンポン獲得出来る物じゃないしめちゃくちゃ頭いいんだろうね

 

「ところで軽い商談をしたいの、どうかしら?」

「お金、ほぼ持ってないけど」

 

 紫からの報酬くらい?持ってるのは

 そういえばあのお金、人里の平均の月収よりちょっと多かったんだよね…

 

「私が欲しいのははした金じゃないわ、あなたが一番理解しなければいけない。あなたの保有するそれの価値を……」

「?」

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