「その価値ある物って?」
「怨霊よ」
……25万体いるから個々の価値あんま感じてなかった
価値…そんな欲しがる物なの?
「私が出すのは言わば幽霊を探すレーダー、大体の位置と数が分かる代物。実績は地霊殿異変の時に出してるわ」
「何それめっちゃ欲しい!」
私はある程度の距離に近付かないと幽霊の気配を感じる事は出来ない。かなり便利な代物だと言える
それはそうとして地霊殿異変って何だろう
「…あ、それで支払う怨霊ってどれくらい?」
楽するための道具だし、1000体までなら……
「もともと魔法としてある技術をあなたでも利用出来るレベルの製品にする。軽く200体でどうかしら?」
「やっ…じゃなくて!この場で支払うよ」
安い……
「てかそもそも怨霊って何に使うの?」
私の場合は戦力や便利な道具程度。あと今朝妖夢を迎えるためにお布団から出て畳み忘れてたからそのためにも使った
だが吸血鬼であり、なおかつ使用人がいるレミリアにそんな用途で使うとは思えない
「用いる為じゃないわ、研究の為よ」
「研究?必要?」
人間の信じられた通りになる幻想郷で、研究は必要なのか?
技術を売ってまでして調べるくらいだったら、人間がどう信じているかを調べれば解決すると思うけど
「大事なのは必要かどうかじゃない、せっかく一生手に入る事の無い物が手に入るのよ?」
「……あそっか、そういや怨霊って危なかったね」
身近な存在なせいで危険性について忘れていた
「そういう事、あなたは『紅魔館に従事する怨霊』を用意しなさい。完成し次第呼び出すわ」
「はーい」
◇ ◆ ◇
あの後ドアの奥で待っていたらしき咲夜が用意してくれた部屋を案内してくれ、そこに怨霊一体を置いていった
他にはレミリアにサンプル怨霊を渡した
正直、良すぎる買い物(?)をしたと思う
家に帰った頃には雨が止んでいたが、時間は4時を過ぎていたので洗濯物を干す事を出来なかった
とりあえず夜まで暇だから…軽くマニュアル作ったり紫に借りてるアレで回避の練習をしとこう
◇ ◆ ◇
という訳で現在日付けの変わる時間帯
ごはんとお風呂は済ませたけど、多分帰った後にまた入ると思う
1時までに余裕もってレミリアから教えてもらった場所に到着する
初仕事に期待が高まっている気がする。多分私自身ちょっと楽しみにしてたのかな?
「確か場所は……」
確認すると湖の中心に1箇所、紅魔館に少し近い所に1箇所、そして霧の湖の中で最も人里に近い場所に1箇所
順番は紅魔館付近→湖中央→人里方向でいいかな?
帰るの4時くらいになるけど……
「普通の生活リズムは厳しいかなぁ」
寝る時間から違うし……
まぁそこら辺はそのうち考えよう
それはそうとして……
「怖ぃ……」
外の世界の夜は明るかった
均等に並べられた灯りが道を照らしていたけど、幻想郷は違う
月のない日は真っ暗で星しか目に映らず、星々の輝きでは地上は照らせないのだ
何が言いたいかと言うと、暗いの怖い
◇ ◆ ◇
「アレかな?」
とりあえず着いた紅魔館付近
付近といっても比較的近いだけであり、そこそこ距離が空いている
目の前には集合霊だいたい20体くらいがいる
その中心には……
「人型……」
3mくらいのサイズの青白く輝く人型の巨体。妖夢の言ってたのはこれ?
もしこれが妖夢の言ってたヤツと同じなら早めに対処しないと
「『私のもとに来て』」
右手のひらを向け、集合霊を丸ごと動かす
能力で核を回収出来る範囲まで近付けちゃえば、後は回収するだけで怨霊の処理は終わる
回収可能な距離まで、残り5m…4、3、2、1……
「ふぅ……」
成功した
ただ単純に失敗が怖かったからなのだろうけど、自然と安堵の吐息が洩れる
あと2ヶ所、このペースだと丑の刻が終わる3時までには確実に終わるだろう
次は霧の湖の中心
そーいえばなんで水上に怨霊が溜まってるのか分からないな……
見付けやすそうだしどうでもいいけど
「遠いなぁ……」
長くとも30分ありゃ確実に到着する距離
まぁそんなかからないだろうけど……
急ぐ理由は無いし湖に入るまで歩いていく
飛んでも体力は使わないのは分かっているけど、合間の何も無い時間も大切だしね
昼に余裕の恐怖について知った後だからこそ言おう、余裕無いと生きていけない
◇ ◆ ◇
「だいたい60体…結構多いねー」
目的地に着いて一番に思ったのがそれだった
怨霊は旧地獄に留められて地上にはそんなにいない。というイメージだったんだけど、そんな事は無さそう
さとりは何やってんだか……
「…何でこんな所にこんなに……」
理解が出来ない
集合霊はそれこそ集合し無ければ生まれない
湖の中央に集合?どう考えてもおかしい
「まぁいっか」
さっさと回収して次の所に行こう
右手のひらを向け、回収を始める
「あれ?」
若干、違和感を感じる。手応えというかなんと言うか
一体だけ、
60体の怨霊を回収し終え、気が付く
「……あなた、だれ?」
見た目は明らかに人間。怨霊のような青白い輝きも、人魂のような形もしていない
ただ、違うのだ
気配が、感覚が、能力が。こいつを確かに怨霊だと言っている
「あー、やーーーっと動けるー」
その人型は体を軽く伸ばし、気の抜けた声を出す
顔・体型は私より少し大きいくらいの少女
囚人のような白黒しましまの服を着て、足には足枷と鎖。それに黒い金属の球
「人型…怨霊……」
妖夢から聞いた、その存在
格が違う…私や他の怨霊と……
「あんたが助けてくれたの?それなら5秒以内に離れなさい。温情よ」
助けた…あぁ、そういう事か
「集合霊に縛られてたの?」
「4…そうよ、動けなくて困ってたんだから……3」
失敗した、湖の上に集まってる理由を慎重に考えるべきだった
「2…帰らないの?」
「帰りたいのも山々だけど……」
相手を囲うように大量の怨霊を出し、一斉に弾幕を張る
「1…そう……」
人型怨霊は呆れたような顔をしている
実力差は確実にある。だけど、こいつを見失う訳にはいかない
「残念よ、0」
「……!!」
数字が0になった直後、右腕が落ちた