能力が勝手に働いた理由はおそらく私の汚染の進行か、罰を与えさせようとしてるのだと思う
怨霊としての魂が、怨霊としての本能を果たそうとしているのだろう
「まず、起き上がらなくちゃ……」
ダメだ、手足が熱くなって動かない。もしかしてマズイ?
「あなた、人間?こんな所で何してるの?」
低めで美しい女声の後、視界に長めの革靴が映った
首が起き上がらないせいで靴以外見ることが出来ないので諦める
間欠泉センターって事は近くにある人がいる場所守矢神社だけで、そこの巫女さんとは声が違う。そもそも妖怪の山の裏側にある場所だ、多分妖怪だろう
「怨霊が…来てます…離れて…下さい……」
舌が動きにくく、発音が難しい。声がかなり小さいけど、伝わってる事を祈る
「そう。あなた、名前は?私はアリス・マーガトロイド、魔法使いよ」
あれ?魔法使いってことは人間?
「
自分の名前が5文字と、短い方で助かった。私の知ってる1番短い人は3文字だが
「とりあえず怨霊の話を真と見てひとまず博麗神社に送るわね。人間がなんでこんな所にいるのかとかどこで知ったのかとか気になる所だけど……」
「ありがとうございます……」
あ、だめだ。もうどこも動かない
全身が熱く、目眩に襲われている。汚染が終わるのは時間の問題だろう
そういえばなんで熱いんだろう?幽霊は冷たいから囲まれたらガチで凍死するってよく聞かされてたけど真逆だし…
「……!『止まって!』」
声を張り上げ、叫ぶように言った。アリスさんの後ろに、怨霊が見えたのだ
『蒼符「博愛の仏蘭西人形」』
能力を使ったコンマ数秒後に聞こえるスペル宣言。長生きしてるとそういう状況にも慣れるのだろうか?
「いくわよ!」
体に糸が巻きついたかと思ったら周りにかわいい人形があり、私の体は宙に浮いていた。そのまま移動し始める
魔法使いらしいし、多分これも魔法によるものだろう
今、生まれて初めて空を飛んだ。体質のせいか幽体離脱もした事が無かったため、上から見る景色はとても美しく感じた
……完全に汚染したら、私も出来る事が増えるのかな?
空を自由に飛んでみたい。魔法も操れるようになりたい。幸せになりたい
こんな夢、誰もが願うが叶えられるのは極々一部。結局は達成出来ず、私と同じように諦めて妥協する
人間には出来なくても怨霊には出来る事はある、と思う。空を飛んだり、人を染める。これだけで人間には出来ない
……なんで、祓ってもらえない前提の話を始めているのだろう?今から行くのは博麗神社だ、きっと祓ってもらえる
「あっ、う…」
アリスさんが怨霊を破壊したのだろう。私に魔力が流れ込んで来て気持ち悪くなる祓う祓わないの話は置いとく
視界の端には人形。黄色、黄緑、青と、色鮮やかな弾を出している。こんな状況じゃなかったら見とれてそうなほど綺麗だ
「霊力の流れが…やっぱり……」
反応を見るに、アリスさんは多分私に吸い寄せられている事に気が付いたのだろう。いや、もしかしたら私を見つけた理由がそれだったかも知れない
私の周りの人形の速度が上がったのか、アリスさんと距離が開く
やっと、アリスさんの全身(後ろ姿)が見えた。それと、その先にいる怨霊も
怨霊の数は数百とか、数千とかでは無かった。最低でも数十万はいる
『グランギニョル座の怪人』
アリスさんの周りに16個の黒いモヤが現れ、オレンジと桃色の弾が交差するように発射される
アリスさんの出している20体ほどの人形にはレーザーのようなものを撃たせており、人形達を自分の弾に当たらないように細かく動かしている
周りの人形がさらに加速する。私の周りの人形は糸ではなく、多分魔法で動かしてるのだろう
……だとしたら並列思考能力頭おかしくない?
弾幕を張りながら20体程度の人形を同時に操りながら魔法で私と人形を動かす。頭おかしい
そんな事を考えてると、博麗神社に到着した
正月や祭事くらいでしか来たことが無かった気がする
「ひゃふっ!」
到着した瞬間人形達にポイッと落とされた。高さが低かったため、実際に痛かった訳ではなく驚いて反応した感じである
当然そんな私をスルーして人形は奥へ向かう
◇ ◆ ◇
赤く大きなリボンに巫女服、我らが楽園の巫女。博麗霊夢と金髪白黒帽で普通の魔法使いこと霧雨魔理沙が博麗神社の境内で頭を抱えていた
「この行方不明事件、いろいろと分からない事が多すぎるのよね」
「だなー。依頼主は「顔も名前も思い出せない」とか訳分からん事言ってたし、居なくなったのが今朝。行方不明として届けるには早すぎるんだよな」
現在は昼の11時(めんどいので午の刻とは表記しない)である
「それに、行方不明者の部屋には首吊り用としか思われないロープと転がってる椅子。自殺していたなら死体は残ってるはずだし……」
そんな会話をしていると、閉じてない紙切れを持ったアリスの人形がふわふわやってくる
「珍しいな、あいつが来るなんてな」
人形から紙切れを魔理沙が受け取り、書いてある文字を読む
「人の手紙を盗らない、それでなんて?」
「『その子をお願い』だってさ」
「その子?」
霊夢が疑問を口にすると、
「ひゃふっ!」
少し遠い所でそんな声が聞こえた