「っ〜!!」
痛みで言葉が出ない
下を見ると、落ちた腕と金属の板が水に沈んでいっている
何をされたのか……
「なんだ外しちゃったか、まぁいいや」
人型怨霊は両手に斧を構える
その斧は急に手元に現れたのを見た感じ、そういう武器なのだろう
腕が再生する。追魂体質様々だ
「……治るんだね、いい体じゃん。どこで見付けたの?」
「私が怨霊ってのはバレてるんだね」
体の中にある25万を超える核
その中に人間の魂が無い事に気付けるのは相当凄い事だ
「あなたの事ちょっと気になるし、ちょっと話したいからこれやめてくれない?」
怨霊からの攻撃を全て斧で対応されている
向こうに対話の意思がある今、攻撃を続けても意味無いから停止させる
「ありがと、もう一回聞くけどどこでGETしたの?」
どの程度答えるか……
これ、いい感じにプレゼン出来れば「じゃあちょーだい」→取り憑く→能力が効く
っていうルートあるかもだけど、さすがに確証無いし…
いや、実力差あるし賭けてもいいかも
「生前の私の体だよ、再生能力あるしデフォルトで空飛べるから便利なんだよね」
「へぇ……」
釣れるか?
「それで?その
……そりゃそうじゃん、気になるのは能力だよねそりゃ
「まぁ正解だよ、『怨霊を操る程度の能力』。私の魂に宿る力で、集合霊を回収するのにも攻撃にも使ったよ」
「そう、なら見逃す条件としてあなたに頼みがあるの」
「……予想出来るけど、何?」
まぁ、あれしかないよね
「私をその能力の対象に取らない。支配下に置こうとしない」
「私にメリットある?脅迫じゃんただの。しかも再生能力と怨霊操作、あなたが最終的に勝つ事が出来ない事が分かった上での話でしょ」
有利なのは私。戦闘面で勝てなくても負ける事は無い上にチャンスもある
「えぇ、見逃すだけじゃ足りないなら……」
あ、あるんだ……
「地上にいる、同僚の情報かしら?」
「!!」
同僚…多分人型怨霊の事だろう
いや、地上に人型怨霊が?
でも目の前に一匹いるし……
「それって、人型怨霊の事?」
「ええ」
…………いやいやいやいや
「何体いるの?」
「頼みを聞いてくれるなら、教えるわ」
……どうするか
①提案を飲む。コイツは一生攻撃出来なくなる代わりに人型怨霊の情報が手に入る
②戦闘続行。人型怨霊の情報は無くとも、コイツを攻撃出来る
……いや
「じゃあ飲まない、今から楽しくない弾幕ごっこだよ。怨霊『大地に着かぬ者たち』」
「なーんだ、残念」
レミリアとの約束もあるしね
今はどう考えても緊急事態、だからこそやる事は決まっている
『助けを呼んで』
紅魔館に駐在させている怨霊にそう命令した
◇ ◆ ◇
「お嬢様。吸血鬼とはいえ、こんな時間に起きていてはいけませんよ」
「いいじゃない咲夜、まだせいぜい1時半。それに、今から用事とあるのだし」
「用事?」
紅魔館にて、咲夜とレミリアが話していた
レミリアは吸血鬼だが、昼型の生活をしている
そのため、普段はこの時間に起きている事はない
「あと…45秒後、この部屋の扉が開くからそのタイミングで外に出て湖の中心に向かいなさい」
「湖の中心…お嬢様、もしや……」
「えぇ、頑張りなさい」
『運命を操る程度の能力』
未来視や、運命の分岐点の観測が出来る能力
幻想郷においてそのような力は占いくらいでしか存在せず、その占いも完全にこなそうとすると『異空間への干渉』が必要になることから危険である
レミリア・スカーレット。そんな彼女の存在は幻想郷にとってかなり重要とも言えるだろう
◇ ◆ ◇
上から落ちてくる大量の金属の板を回避しながら相手の位置を把握し続ける
最初に腕が落ちたように、落下による加速の影響で当たれば一発で部位破損。体は再生するが痛いし、服がどんどん使い物にならなくなる
「弱いんだから諦めれば?」
その声が聞こえた瞬間、咄嗟に結界を起動する
首元の結界に手斧が止められている
距離も位置もしっかり把握していたばずなのに、一瞬目を離した瞬間にこれだ
怨霊のスピードじゃない
「……そういう能力か」
落下する金属・急に出てくる手斧・仮にも怨霊なのに音とは思えない速度
そこから考えれる力は『物質の創造』
金属も手斧も説明出来て、速度はただ作った物を蹴ったなら納得出来る
そして、シンプル故に対策も出来ないタイプ
「もう分かったのか?」
「!!」
右手に強烈な痛みを感じ、確認すると手首から先が無かった
速度の差が激し過ぎる
反応する前に攻撃を受けてるから、結局勘だよりの防御しか出来ない
「治るし守るし、楽しくないわね」
「私も楽しくないから安心して!」
結界を張る度に金属音が響く
結界作るのに霊力を使ってるからジリ貧でしかない
既に何度か切られてるし、早めに終わらせないと
「怨霊 『六道からの脱出』」
対象を中心にして怨霊を出し、動きを制限してから本命をぶつけるスペル
ぶっちゃけ近接戦だから効果は発揮にしくいけど、そもそもスペルがほぼ無い
今作るか…
「その程度の弾、当たるとでも?」
囲うように出ては消え行く怨霊達の弾幕は全て防がれている
だけど……
「これはどう?」
一発目の太いレーザー
当たればダメージは入ると思うけど……
「いいじゃんそれ!」
レーザーを発射した直後、人型怨霊は壁を作る
多分、防がれた
そう思った時だった
「へ?」「?」
壁が消え、レーザーは無防備な彼女に命中した
……何が起こった?
そのまま彼女の周囲に大量のナイフが現れ、彼女が生成した壁もすぐに消え去って全てが刺さる
……?
本当に何が起こったの?
「誰だ!」
もう一度ナイフが周囲に現れたかと思うと、全て斧で叩き落とされている
「お前か?」「私じゃないよ」「ちがうわよ横」「?」
横を見ると銀髪に茶色の目の美人さん、咲夜
「あ、咲夜か。助けに来てくれてありがとう」
「お嬢様の指示です」
「レミリアの……」
まぁいいか
「軽く情報共有するね、相手は人型怨霊。能力は多分物質の創造、あとなんでか私の能力の対象に取れない。それと、幻想郷には人型怨霊がコイツの他に最低一体いるらしい」
「なるほど」
そういえばコイツの名前知らないな
「ごめん名前聞いていい?私は『生きる怨霊』の霊 黄泉だよ」
「お前、呪われるリスクとか考えなさいよ」
……確かに
「だから偽名よ、逢魔って名乗るわ」
逢魔ヶ時から取ったのかな?
「じゃあ逢魔、二対一だし勝ちに行くよ」