生きる怨霊の地上生活   作:にけth

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痛み

「それで?あまり紫が伝えようとしてた事が分からないんだけど……」

 

 冬眠前って言ってるのにわざわざこんな本を読んでくれるあたり、なんか狙いがあるんだろうけど

 

「……?何を言ってるのかしら?私はただ親子っぽい事をしたかっただけよ?」

「は?」

 

 いや、言ってたけど。でもさ、違うじゃん

 なんか意味あると思うじゃん

 

「でもそうねぇ、片方は実話って話。聞きたい?」

「あ、片方なんだ。両方だと思ってた」

 

 クソみたいな話だったからね

 

 ◇ ◆ ◇

 

「ところでだけど、黄泉。あなたは確実に強くなる方法をいくつ知っているか、聞いてもいいかしら?」

「強くなる方法?」

 

 おしゃべりしてたら紫がこんな話題を出てきた

 

「逢魔にやられた理由でしょ?手数の不足と出力の不足、動きを目で追えなかったし動体視力も足りてないし……」

 

 基礎スペックから何から何まで足りなかった

 

「ふふふっ。でも、あなたがそんな状態でなんで戦う事ができたか。考えてみなさい?」

「なんでだろ……」

 

 ……ボッコボコだったしなぁ。なんだかんだ攻撃ほぼ当たってないし

 

「じゃあヒントよ。そうやって足りていなかった点を補えるほどの長所が、あなたの体にはあった」

「体…ってことは追魂体質……あ!耐久力か!」「正解」

 

 追魂体質の特性の一つ、無傷な魂に適応して肉体も再生する物。それによって腕やら首やら落とされようとも生き残ってたんだった

 

「弾幕のパターンやそもそもの威力、相手の動きを見切る技術。それらはあなたには全くと言っていいほど足りていない」

 

 未熟とかいうレベルじゃないもんね

 

「だけど、あなたのその耐久力はどんな状況でも役に立つわ。それこそ、あの黒い槍にぐちゃぐちゃにされても今元気なように」

「確かに、紫の結界が割れる攻撃でも私は生き残ったんだもんね」

 

 黒い槍ってのは閉じ込められた咲夜を倒そうとした力だろう

 ……あれ?でも、元の話題って『確実に強くなる方法』だよね?

 これは体質で既に持ってるし

 

「じゃあ、強くなる方法ってのは?」

「ふふっ、長所ってのは活かすためにあるのよ。無敵に近い耐久力を殺す要素ってなんだと思う?」

 

 閉じ込められたら折角の耐久力も腐っちゃうし、それかな?

 

「幽閉」

「残念、それは回避しようが無い事よ。正解は『痛覚』痛みによって動きが鈍くなったり、気絶したり。最終的にダメージは無いのにもったいない!」

「ふむふむ…」

 

 確かに、そうだ

 追魂体質によるアドバンテージはおそらく一生私にとって有益な結果をもたらすだろう

 なら、腐らせる訳には行かないんだけど……

 

「どうやって?」

 

 痛覚に対応なんてどうやるの?

 そう聞くと、紫はスキマを出して中に入りながら言った

 

「気になるなら、着いてきなさい。ただし相応の覚悟を持った上で服を脱いでからね。10分待つわ」

「……は?」

 

 ◇ ◆ ◇

 

「グスンッ…ひっぐ……うぅ………」

 

 軽い気持ちで行ったのが悪かった……

 でも、あれはないじゃん……

 

「明日も、ね?」

「この悪魔!妖怪!人でなし!」

「なんとでも言いなさい」

 

 何があったのか

 まず、私が聞いた質問への答え。痛覚への対応方法

 さっき話題に出たように、私には再生能力がある

 この二つを結びつけられた結果が『痛みに慣れる』。凄く、簡単な答えだった。分かんなかったけど

 だが、その簡単な答えからは想像できない事をされた

 

 腕を、脚を、首を。落とす

 

 その痛みに慣れる事で戦闘中の痛みを大した痛みじゃなくする

 頭おかしいの?

 合理性の先にある物っていうのは狂気ってことなの?

 

「痛いよぉ……」「よしよし」

 

 紫の手を弾きながら、100の怨霊で攻撃する

 まぁ、一発も当たらないけど

 

 ◇ ◆ ◇

 

 紫を追い出した

 

「うーん…何しよ……」

 

 何だかんだ、やる事はいっぱいある

 家の周りの風景はまだ覚えてないし、人里に行って買い物とかもしないとダメ。紅魔館に行って咲夜にお礼も伝えないとだし……

 それに、怨霊回収も。逢魔とやり合ってから行ってないからね

 

「あ!怨霊探す技術、提供してもらえるんだった!」

 

 紅魔館に頼んでたの。完成してたら早く受け取りたい

 

「他は…なんだろ、守矢神社に挨拶に行かないとダメかな?うーん……」

 

 確か、ここの土地はご好意で貸してくれてるらしい

 向こうも私を利用してるっぽいけど、利用してくれる方がありがたいし。それはいい

 ……あれ?今思ったけどご好意って言ってるけどもしかして紫がめっちゃお金やら交渉やら頑張ってくれたのかも……

 悪いことしたな……

 

「あとは……」

 

 紫が冬眠する前に、お礼しないと!

 今日は11月9日

 妖怪だから基準にはならないけど、クマの冬眠時期は11月中旬から12月上旬。前の私の知識が間違ってなかったらだけど

 それで、わざわざ今日やる事詰めて来たのを見るに時間はないんだと思う

 幸いと言っていいのか、紫は明日も来やがるらしいし準備は早くやろう

 

「……と!言う訳で!」

 

 やる事の優先順位は決まった

 まず、人里に行く。その時にお礼の物も買う

 次、守矢神社。挨拶に

 最後に紅魔館。うん、完璧

 

 今の時間はちょうどお昼頃。人里まで1,2時間程度かかるけど、暗くなる前に帰らないとだしさっさと出発しよう

 

 ちゃんと服着て髪も整えて…うん。私かわいい

 

「いってきまーす!」

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