「なんか、様子が変わったな」
「一回離れた方が良さそうね」
今まで移動していただけの怨霊が、急に止まって仲間同士で討ち合っている
20分くらい弾幕を張り続けて魔力を消費二人は一旦見守る事にした
「……霊力がなんか移動してない?」
博麗の巫女である霊夢は霊力の動きを察知する事が出来る
「どこ行ってるんだ?まあ正直予想は付くが」
「
「だろうな、私は一旦こっちを見張っとくぜ」
◇ ◆ ◇
「人間の私は完全に消えたかな?」
立ったまま気絶していた黄泉は目を瞑り呟いた
桃色の髪は濃い紫に変わっており、ショートだったのが腰あたりまでに伸びている
完全に両方が紫になった目を開き、着ていた装束に付いた汚れを払う
「怨霊に呑まれて、気質が染められて。何も考えずただ集団に溶けた存在になる事も私への罰になる思ったのに。残念」
人間の黄泉が怨霊の破壊を命令してしまったのだ。罰はまた他の形で用意する必要が出来た
「とりあえず、ここから出ないとね。割るのは簡単そうだけど」
地面に引かれた白線に触れ、霊力を大量に流す。もっと効率のいい方法はいくらでもあるが、霊力の概念もついさっき知ったばかりで霊夢の張った結界を割っている黄泉(怨霊)は普通に天才だろう
「怨霊の核は霊力と一緒に回収してるし、試してみても良さそうだね」
目の前にポンっ!と怨霊が現れる
怨霊は破壊されると霊力をばら撒くのだが、何も残るのは霊力だけでは無い。雑念や意識を扱っていた器官である核も、残る物の1つだ
その核に霊力で形を注ぐと蘇生が出来る。要はインスタントだ
そのインスタント怨霊にも能力が適応されるため、駒としては強力だ
「成功、それじゃあ弾撃って」
現れた怨霊が白い小弾をばら撒く。その光景を見て、黄泉は満足そうにしている
「それじゃあ残りの核と霊力の回収、あと他には邪魔してきた3人に一発ずつ仕返しだね」
体が宙に浮く。これは怨霊の浮遊能力に『魂にくっつく体』が噛み合った事で起こっているようだ
「あ、その前に……」
博麗神社の上で黄泉は止まる。自分の前に怨霊を30体ほど用意して全員で1つの巨大な赤い弾を作る
それを発射し、自分自身にぶつける
服は破け、頭からダラダラ血を流しているのはお構い無しに進む
「公平じゃない審判とか嫌だしね」
まるで自分が裁く側のような言い回しだがその逆で、裁かれる側だからこそ全て公平である必要があると考えているらしい
目にかかった血を手で拭い、正面を見ると小さく写る霊夢
怨霊を50体ほど作り、敵意を見せる。わざわざそんな事する理由は簡単で、黄泉に『人間を襲うな』とお祈り感覚で言われたからである
わざわざ目立つような事をしたのもあって、二人が気付いたようだ
「あんた、さっきの子に取り憑いてた幽霊?」
数十秒後、ある程度近くに来た霊夢が投げかける。普段感覚で異変解決している巫女だが、1人の人間を犠牲にしてしまった可能性に思い至って少し焦っているようにも見える
「私は取り憑いてはないね、もともと自分の体な訳だし」
ただただ言う意味も無い、ややこしいし場を混乱させるだけの無駄な言葉を吐く
「あ、そうだ。これ伝えた方が早そうだから言うね。これが異変と認識されるのならだけど、怨霊をまとめて移動させてたの私だよ。要は主犯」
魔理沙と違って霊夢は異変を面倒な物として捉えてるため異変扱いしていなかったが、なんか自首されて何とも言えない気持ちになっている
「とりあえず、あんたを祓えばいいのね。分かったわ」
霊夢目線、なんか家に女の子がポイされたかと思えば怨霊の集団が近ずいてき、ポイされてたヤツに憑いてた幽霊がなんか出てきたかと思えば自首。天子と同レベかそれ以下なので呆れている
なんなら今回は天子の時と違ってさっさと祓って被害ゼロにすれば何も問題ないのだ
「霊符『夢想封印』」
手に持った12枚の御札が手から離れ、虹とも白とも言ってもいい色の輝きになる。対象は当然周りの怨霊ではなく黄泉本体
黄泉もそのスペル宣言を皮切りに攻撃を始める
とはいっても、弾幕を初めて扱う身である黄泉は扱いやすい小弾を霊夢に狙いをつけて怨霊に撃たせている
「あ、これ追尾してくるのね」
正面から来た全てを一旦回避出来たが、後ろの怨霊が潰れた事で気が付いた。しかし、これに気を取られてると霊夢の投げる普通の御札に被弾してしまう
普通の御札は基本回避。当たりそうだったら怨霊ガードと、対応出来る間は問題無さそうではあるが……
「上に逃げるのが正解かな?」
全方位から来たら避けるのが大変だから来る方向を一方にまとめる、というのは正しい判断だろう
インスタント怨霊を大量に生産し、弾数を増やす
「全く美しくないわね」
白の小弾が四方八方から自分狙いで飛んでくる。綺麗な訳でもなく、何かギミックがある訳でもなくただただ数が多いだけ
美しさを求める弾幕ごっこでこのレベルで価値の無い物など他にあるのだろうか?
「そうかも。アリスさんの使ってたヤツは確かに綺麗だったよ」
夢想封印の対処をしながら怨霊ごとに放つ弾幕の色を変える設定をする。黄色、黄緑、青と、それぞれに分ける
「マシになった?」
「全く」
美しさなどそんな事を考えてる余裕は無いはずなのだが、黄泉は眼前の夢想封印を置いてそっちを優先するのはただ単に楽しいからであろう
「種類を増やせば変わるかな?」
両手のひらを霊夢に向け、20体の怨霊を作り出す。そしてそいつらを全て犠牲にして1本の太いレーザー弾を作り出す
魔理沙のマスタースパークほどは太くも威力も無いが、十分だ。正直比較対象が悪すぎる自覚はあるが……
「やったか?」
同じ手段で夢想封印の弾を打ち消しながら確認する
当然倒せている訳もなく、空中に出来た巨大な御札の結界に阻まれていた
「……その御札便利過ぎない?」
攻撃出来ます!壁に出来ます!即時展開出来ます!再利用出来ます!っと、便利要素の積み重なった怨霊を武器にしているヤツが言ってはいけない事を言った