世界は地獄をみた。
再び、である。
第二次星欧大戦の業火は世界中に広がった。何年にも渡る熾烈な戦闘と、戦場以外の場所で行われた大量殺戮が、この星の大地を至る所で赤く染めた。
そんな中、大国の中でただひとつ中立を守ったのがオルクセン連邦である。オルクセンは永世中立国を標榜している。先の第一次星欧大戦においても、終始中立・不介入を貫いた国家である。彼らはその方針を今次大戦でも貫徹しようとしていた。
といって、気楽に構えていられたわけもない。今次大戦の始まりはアスカニアによるポルスカへの侵攻。オルクセンはその双方と国境を接している。ゆえにこの永世中立国家は、大戦の間、臨戦態勢を取り続けていたといっていい。彼らはじっと堪えた。
そのような国家の大方針を厳命していたのは、時のオルクセン大統領でも、首相でも、将軍でもない。今は亡き先王グスタフ・ファルケンハインの遺言書である。恐るべき先見性により二度目の大戦勃発をも予期し、対応方針を示していたその遺言書は、時に預言書とも呼ばれた。
預言書は教えていた。絶対に、大戦に手を出してはならぬと。ただし――同時に、全く矛盾することを厳命してもいた。全体の半ば以上が機密指定された遺言書の中にあっても、特に国家の最高機密に指定された部分に、こうある。
――だから、大戦という地獄に手を出してはならぬ。降りかかる火の粉だけを、陣営の区別なく払うことに徹し、厳正中立を維持せよ。さもなければ、出生率で劣る魔種族は亡びへの道を転がり落ちるだろう。繰り返し、警告する。地獄に手を出すな。
ただし、例外がある。
オルクセンはその地獄が終わる前に、二つのものを手に入れねばならない。それらを二つながら揃えることが、生存のために必須の条件である。
その第一は――であり、そして第二は、星だ。そのために、敢えて地獄に突入する、ごく少数の者が必要になるかもしれない。その者たちは名誉も救助も与えられることなく、命を失うかもしれない。だとしても、それは必要だ。いかなる犠牲を払っても。
我が子らよ。だから星を探せ。必ず見つけ出し、国に持ち帰れ。失敗は許されない。何としても、残らず見つけるのだ。
残念だが、私にはその星がいつ、どこに出現するのかが分からない。いくつあるのかも。しかし、見る者が見れば、ただちにそれと気づくに違いない。その比類なき輝きのゆえに。だからその時に備え、探すべき特徴を以下に述べておくことにする。
すなわち、その星は―――
(次話「逃亡者」に続く)
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